やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 毎日といっていい程に,医療ミスが報じられている.医療に対する国民の不信感は,ますます増大するばかりである.まさに医療現場から「安心と安全」が失われようとしている.それだけに医療に対する「安心と安全」をどう再構築し,信頼を得るかが医療関係者に問われている.
 一方,鍼灸医療については,受療者の信頼は比較的高い.実際,医療過誤の発生率も低く,全体的に「安心と安全」は保たれてはいる.しかし,過誤,副作用,偶発事故を含めた有害事象は増加しつつある.それだけに今,鍼灸医療においても「安心と安全」をしっかりと確立しておかなければ,やがて信頼を失うことになるであろう.
 それでは,鍼灸医療における「安心と安全」をつくるにはどうすればよいのか.それは,「安心と安全」の主要要因である治療機材・施術所の環境,施術者における安全対策をしっかりと講ずることである.もちろん危機管理を徹底するには,施術者がそのことの重要性を認識し,
 意識化することが基本であることはいうまでもない.そして,それを日常診療の中で確実に実行するには,いつでもどこでも使用できるハンディーな危機管理マニュアル(安全対策マニュアル)が必要である.本書は,そういった現場からの声を具現化しようとして企画されたものである.なお,施術者における安全対策では,医療人としての倫理と一定レベル以上の診療技術が要求されるが,ここでは診療技術に焦点を当てた.
 医療への不信は,1人の医療関係者のミスから始まる.鍼灸医療においても同様である.そうならないためには,鍼灸師全員が危機管理の意識を高め,それらに関する基本的な知識と診療技術を身につけることがなによりも大切である.そのことに,本書が少しでも役立てればと願っている.そして,安全対策への取り組みを通して鍼灸医療が国民から「安心と安全」な医療としてこれまで以上に親しまれることになれば,執筆者一同望外の喜びである.
 平成16年4月15日
 矢野 忠
鍼灸禁忌マニュアル 目次

 序文
 はじめに
I.治療機材の安全対策および感染防止
 機材/用品
 感染防止/機材
 機器
 施設
 施術者
 患者

II.鍼灸・物理療法の安全対策
 患者
 頭部・顔面部
 頸部
 耳・耳周辺部
 肩甲部・上肢
 胸腹部
 腰臀部
 下肢

III.主要症状と鍼灸治療の適応と禁忌
 全身症状
 呼吸器
 循環器
 消化器
 代謝・内分泌
 運動器
 神経
 精神
 泌尿・生殖器
 婦人科
 産科
 皮膚科
 耳鼻科
 歯科
 眼科

索引