第2版の序
本書を刊行して8年が経過しました.この間に学生をはじめ高齢者にかかわる看護・介護職員,看護教員など多くの方に利用していただき,支持を得られたことは本当にうれしいことでした.とくに看護教育に携わっている教員の方に副教材として使用していただけたことは光栄でした.
8年の間に高齢者数はさらに増加し,彼らを取り巻く環境や制度も変わり,さまざまな新たな課題も出てきています.今回,新しい情報を取り入れ,また皆様からいただいた貴重なご意見を加えて,改訂版を発行することにしました.
おもな改訂点は次のとおりです.
(1)初版からウェルネス型の看護課題を基盤にして事例を展開していましたが,第2版ではさらにウェルネス型を前面に出し,高齢者の生活機能を中心にできることを強調して,より適切な支援ができるようにしました(このことにあわせて,本書のタイトルも変更しました)
(2)初版と同様に5つの生活機能を取りあげていますが,これはゴードンの枠組みのなかから生活機能を重点的にあげたものであり,あくまでゴードンの枠踏みにもとづいていることを再認識しました
(3)2章の生活機能の解説にサルコペニア,フレイルなどの最新の情報を加え,さらに高齢者の栄養問題などをくわしく述べました
(4)1,2章に続く3章の事例について見直しを行いました.私たちと一緒に老年看護の教育に携わっている橋順子先生に執筆者として加わってもらい,事例を“高齢者のもてる力をいかしたウエルネス型”に全面的に書き直しました.また,2章の生活機能の解説とアセスメントをいかして事例を展開しました.情報関連図も全面的に見直し,わかりやすく表示しました.これにより,1,2章の解説が3章の事例につながって,さらに学生に理解しやすくなり,臨地実習でもいかせるようになったと思います.
第2版でも,学生をはじめ高齢者の看護にかかわる人が対象理解を深めることができ,適切な生活支援が行える一助になればうれしいです.また,看護教育にかかわる人たちの役に立つことができればたいへん光栄に思います.初版と同様に皆様からの忌憚のないご意見を聞かせていただければ幸いです.
新しい元号令和を迎えて
編者 奥宮暁子
はじめに(第1版の序)
老年看護の対象となる高齢者は,多様な経験,価値観,生活行動をもっているため,加齢に伴う心身の変化や疾病の影響に加え,長年の生活習慣からくる価値観や生き方を重視して,何らかの健康課題をもちながらも,その人らしく安全に生活できるような支援が求められています.従来,学生は高齢者に接することが少ないため,長年の生活習慣からの生活をイメージすることが難しいうえ,複数の疾病と加齢が日常生活に及ぼす影響など多くの要因が絡み合うことで,老年看護領域での看護過程を理解することは困難でした.
そこで私たちは,高齢者の生活機能に焦点をあてた看護過程を学生に展開させることを試みました.その結果,学生は疾病や病態生理からではなく,高齢者の日常生活がどのように行われているのかという生活機能からみることで,高齢者の全体像を把握することができるようになりました.また,問題解決型の看護過程ではなく,高齢者のできること,価値観などを大切にした生活を中心に考える看護過程を理解することができました.本書はこのような私たちの試行錯誤から誕生しました.
本書は3章から構成されています.第1章では老年期の身体的,心理的,社会的特徴をふまえてケアのあり方を述べたうえで老年看護での看護過程を解説しました.看護過程の展開では,生活機能に焦点をあて高齢者特有の情報収集やアセスメントのポイント,健康課題の抽出,計画,実施評価までを示しました.第2章では生活機能について概説し,そのうえで高齢者の基本的な生活機能の特徴と情報収集,アセスメントの手順を説明しました.とくに栄養(嚥下機能を含む)・代謝,排泄,清潔,活動・休憩,認知機能の5つの生活機能について具体的な例をあげながらアセスメントツールなどを紹介しました.第3章では事例を用いて生活機能ごとに,基本情報,アセスメント項目と視点,アセスメントから結論,関連図,課題抽出,看護計画までプロセスを追って展開しました.さらに,これらの各生活機能のアセスメントから得られた情報を統合することで対象者の全体像を示し,優先順位を決定していく考え方までを出すことで,「生活者であるその人全体をとらえた看護」を理解できるようにしました.
本書は,老年期の特性をおさえたうえで老年看護の特徴や配慮すべき点を述べ,さらに事例を用いて看護過程の流れを説明しているので,老年看護を学ぶ学生にとっても,また教員にとっても理解しやすく,看護実習にも役に立つと思われます.また,高齢者を担当する臨床の新人看護師にも高齢者理解の手引き書にもなると確信しています.
最後になりましたが,私たちの教育的な試みに関心をもってくださり,原稿の遅れを粘り強くフォローしてくださった,医歯薬出版の編集担当者に深く感謝いたします.
本格的な雪の日に札幌にて 2011年12月
著者を代表して 奥宮暁子
本書を刊行して8年が経過しました.この間に学生をはじめ高齢者にかかわる看護・介護職員,看護教員など多くの方に利用していただき,支持を得られたことは本当にうれしいことでした.とくに看護教育に携わっている教員の方に副教材として使用していただけたことは光栄でした.
8年の間に高齢者数はさらに増加し,彼らを取り巻く環境や制度も変わり,さまざまな新たな課題も出てきています.今回,新しい情報を取り入れ,また皆様からいただいた貴重なご意見を加えて,改訂版を発行することにしました.
おもな改訂点は次のとおりです.
(1)初版からウェルネス型の看護課題を基盤にして事例を展開していましたが,第2版ではさらにウェルネス型を前面に出し,高齢者の生活機能を中心にできることを強調して,より適切な支援ができるようにしました(このことにあわせて,本書のタイトルも変更しました)
(2)初版と同様に5つの生活機能を取りあげていますが,これはゴードンの枠組みのなかから生活機能を重点的にあげたものであり,あくまでゴードンの枠踏みにもとづいていることを再認識しました
(3)2章の生活機能の解説にサルコペニア,フレイルなどの最新の情報を加え,さらに高齢者の栄養問題などをくわしく述べました
(4)1,2章に続く3章の事例について見直しを行いました.私たちと一緒に老年看護の教育に携わっている橋順子先生に執筆者として加わってもらい,事例を“高齢者のもてる力をいかしたウエルネス型”に全面的に書き直しました.また,2章の生活機能の解説とアセスメントをいかして事例を展開しました.情報関連図も全面的に見直し,わかりやすく表示しました.これにより,1,2章の解説が3章の事例につながって,さらに学生に理解しやすくなり,臨地実習でもいかせるようになったと思います.
第2版でも,学生をはじめ高齢者の看護にかかわる人が対象理解を深めることができ,適切な生活支援が行える一助になればうれしいです.また,看護教育にかかわる人たちの役に立つことができればたいへん光栄に思います.初版と同様に皆様からの忌憚のないご意見を聞かせていただければ幸いです.
新しい元号令和を迎えて
編者 奥宮暁子
はじめに(第1版の序)
老年看護の対象となる高齢者は,多様な経験,価値観,生活行動をもっているため,加齢に伴う心身の変化や疾病の影響に加え,長年の生活習慣からくる価値観や生き方を重視して,何らかの健康課題をもちながらも,その人らしく安全に生活できるような支援が求められています.従来,学生は高齢者に接することが少ないため,長年の生活習慣からの生活をイメージすることが難しいうえ,複数の疾病と加齢が日常生活に及ぼす影響など多くの要因が絡み合うことで,老年看護領域での看護過程を理解することは困難でした.
そこで私たちは,高齢者の生活機能に焦点をあてた看護過程を学生に展開させることを試みました.その結果,学生は疾病や病態生理からではなく,高齢者の日常生活がどのように行われているのかという生活機能からみることで,高齢者の全体像を把握することができるようになりました.また,問題解決型の看護過程ではなく,高齢者のできること,価値観などを大切にした生活を中心に考える看護過程を理解することができました.本書はこのような私たちの試行錯誤から誕生しました.
本書は3章から構成されています.第1章では老年期の身体的,心理的,社会的特徴をふまえてケアのあり方を述べたうえで老年看護での看護過程を解説しました.看護過程の展開では,生活機能に焦点をあて高齢者特有の情報収集やアセスメントのポイント,健康課題の抽出,計画,実施評価までを示しました.第2章では生活機能について概説し,そのうえで高齢者の基本的な生活機能の特徴と情報収集,アセスメントの手順を説明しました.とくに栄養(嚥下機能を含む)・代謝,排泄,清潔,活動・休憩,認知機能の5つの生活機能について具体的な例をあげながらアセスメントツールなどを紹介しました.第3章では事例を用いて生活機能ごとに,基本情報,アセスメント項目と視点,アセスメントから結論,関連図,課題抽出,看護計画までプロセスを追って展開しました.さらに,これらの各生活機能のアセスメントから得られた情報を統合することで対象者の全体像を示し,優先順位を決定していく考え方までを出すことで,「生活者であるその人全体をとらえた看護」を理解できるようにしました.
本書は,老年期の特性をおさえたうえで老年看護の特徴や配慮すべき点を述べ,さらに事例を用いて看護過程の流れを説明しているので,老年看護を学ぶ学生にとっても,また教員にとっても理解しやすく,看護実習にも役に立つと思われます.また,高齢者を担当する臨床の新人看護師にも高齢者理解の手引き書にもなると確信しています.
最後になりましたが,私たちの教育的な試みに関心をもってくださり,原稿の遅れを粘り強くフォローしてくださった,医歯薬出版の編集担当者に深く感謝いたします.
本格的な雪の日に札幌にて 2011年12月
著者を代表して 奥宮暁子
第1章 老年看護における看護過程(奥宮暁子)
1.老年看護とは
(1)老年看護の対象
(1)対象となる高齢者の特徴
(2)加齢による身体機能・精神機能の変化
身体機能の変化/ 心理面の変化
(3)多くの疾病をもっている病態生理の複雑さ
(2)生活機能の考え方
(3)ケアの特徴
2.看護過程の概念
(1)看護過程の基本的な考え方
(2)看護過程の展開
(1)第1段階 情報収集・アセスメント
情報収集/ アセスメント…整理・解釈・分析
(2)第2段階 看護診断(統合・課題抽出・優先順位)
(3)第3段階 計画立案(目標・期待される成果設定・行動計画)
(4)第4段階 実践(介入)
(5)第5段階 評価
第2章 生活機能と高齢者の看護
1.生活機能とは(奥宮暁子)
日常生活活動と対象理解/ 日常生活活動と社会とのかかわり/ 生活機能の総合的アセスメント
2.生活機能別のアセスメントポイント
(1)栄養・代謝(木島輝美)
(1)栄養状態
栄養状態のアセスメント/ 必要栄養量の設定
(2)摂食嚥下機能
高齢者の摂食嚥下に関する問題/ 誤嚥性肺炎/ 口腔ケア/
摂食嚥下機能のアセスメントと訓練/ 食事援助の進め方
(2)排泄(武田かおり)
(1)排泄にかかわる機能と動作
(2)排泄機能
(3)排尿障害
排尿障害への看護ケア
(4)排便障害
便秘/ 下痢/ 便失禁/ 排便障害への看護ケア
(3)清潔(奥宮暁子)
(1)高齢者にとっての清潔の意義
(2)清潔ケアにおける留意点
清潔の必要性と身体状態/ 清潔ケアに耐えうる身体状況(心肺機能)か/
清潔ケアが行える身体能力か/ 清潔への意識,認知力/ 他者に依存することへの遠慮,気兼ね
(3)清潔ケアにおけるリスク管理
(4)活動・休息(安川揚子)
(1)活動の状況
心肺機能や運動機能の状態/ ADLやIADLの状態/ “できる活動“と“している活動”/
活動に影響している要因
(2)活動低下が日常生活に及ぼす影響
廃用症候群(生活不活発病)/ 転倒のリスクアセスメント/ 褥瘡のリスクアセスメント
(3)休息の状況
生活リズム/ 休息と睡眠
(4)不眠が日常生活に及ぼす影響
(5)認知機能(木島輝美)
(1)認知機能のアセスメント
認知症の種類/ 認知症の中核症状とBPSD/ 認知機能の評価スケール/
“せん妄““うつ状態”の鑑別について/ 感覚機能のアセスメント
(2)認知症高齢者への援助
コミュニケーション/ もてる力を引き出す日常生活援助/ その人らしいあり方を知る/
社会参加や他者との関係性を知る/ 安全と健康を守る
第3章 看護過程の実際 ─事例展開
1.事例紹介(Eさんのフェイスシート)(木島輝美・高橋順子)
2.生活機能別の展開
(1)栄養・代謝についてのアセスメント(木島輝美)
栄養・代謝のアセスメント項目と必要な視点 栄養・代謝のアセスメント展開
栄養・代謝の関連図
(2)排泄についてのアセスメント(木島輝美)
排泄のアセスメント項目と必要な視点 排泄のアセスメント展開
排泄機能の関連図
(3)清潔についてのアセスメント(木島輝美)
清潔のアセスメント項目と必要な視点 清潔のアセスメント展開
清潔の関連図
(4)活動・休息についてのアセスメント(橋順子)
活動・休息のアセスメント項目と必要な視点 活動・休息のアセスメント展開
活動・休息の関連図
(5)認知機能についてのアセスメント(橋順子)
認知機能のアセスメント項目と必要な視点 認知機能のアセスメント展開
認知機能の関連図
3.ウェルネス統合関連図(木島輝美・高橋順子)
4.優先順位の決定(木島輝美・高橋順子)
(1)抽出されたEさんの健康課題の検討
(2)健康課題の優先順位とその背景
(3)目標
5.看護計画(木島輝美・高橋順子)
[参考資料] ゴードンの11の機能的健康パターン分類を参考にしたアセスメントガイド(老年領域)(奥宮暁子)
索引
1.老年看護とは
(1)老年看護の対象
(1)対象となる高齢者の特徴
(2)加齢による身体機能・精神機能の変化
身体機能の変化/ 心理面の変化
(3)多くの疾病をもっている病態生理の複雑さ
(2)生活機能の考え方
(3)ケアの特徴
2.看護過程の概念
(1)看護過程の基本的な考え方
(2)看護過程の展開
(1)第1段階 情報収集・アセスメント
情報収集/ アセスメント…整理・解釈・分析
(2)第2段階 看護診断(統合・課題抽出・優先順位)
(3)第3段階 計画立案(目標・期待される成果設定・行動計画)
(4)第4段階 実践(介入)
(5)第5段階 評価
第2章 生活機能と高齢者の看護
1.生活機能とは(奥宮暁子)
日常生活活動と対象理解/ 日常生活活動と社会とのかかわり/ 生活機能の総合的アセスメント
2.生活機能別のアセスメントポイント
(1)栄養・代謝(木島輝美)
(1)栄養状態
栄養状態のアセスメント/ 必要栄養量の設定
(2)摂食嚥下機能
高齢者の摂食嚥下に関する問題/ 誤嚥性肺炎/ 口腔ケア/
摂食嚥下機能のアセスメントと訓練/ 食事援助の進め方
(2)排泄(武田かおり)
(1)排泄にかかわる機能と動作
(2)排泄機能
(3)排尿障害
排尿障害への看護ケア
(4)排便障害
便秘/ 下痢/ 便失禁/ 排便障害への看護ケア
(3)清潔(奥宮暁子)
(1)高齢者にとっての清潔の意義
(2)清潔ケアにおける留意点
清潔の必要性と身体状態/ 清潔ケアに耐えうる身体状況(心肺機能)か/
清潔ケアが行える身体能力か/ 清潔への意識,認知力/ 他者に依存することへの遠慮,気兼ね
(3)清潔ケアにおけるリスク管理
(4)活動・休息(安川揚子)
(1)活動の状況
心肺機能や運動機能の状態/ ADLやIADLの状態/ “できる活動“と“している活動”/
活動に影響している要因
(2)活動低下が日常生活に及ぼす影響
廃用症候群(生活不活発病)/ 転倒のリスクアセスメント/ 褥瘡のリスクアセスメント
(3)休息の状況
生活リズム/ 休息と睡眠
(4)不眠が日常生活に及ぼす影響
(5)認知機能(木島輝美)
(1)認知機能のアセスメント
認知症の種類/ 認知症の中核症状とBPSD/ 認知機能の評価スケール/
“せん妄““うつ状態”の鑑別について/ 感覚機能のアセスメント
(2)認知症高齢者への援助
コミュニケーション/ もてる力を引き出す日常生活援助/ その人らしいあり方を知る/
社会参加や他者との関係性を知る/ 安全と健康を守る
第3章 看護過程の実際 ─事例展開
1.事例紹介(Eさんのフェイスシート)(木島輝美・高橋順子)
2.生活機能別の展開
(1)栄養・代謝についてのアセスメント(木島輝美)
栄養・代謝のアセスメント項目と必要な視点 栄養・代謝のアセスメント展開
栄養・代謝の関連図
(2)排泄についてのアセスメント(木島輝美)
排泄のアセスメント項目と必要な視点 排泄のアセスメント展開
排泄機能の関連図
(3)清潔についてのアセスメント(木島輝美)
清潔のアセスメント項目と必要な視点 清潔のアセスメント展開
清潔の関連図
(4)活動・休息についてのアセスメント(橋順子)
活動・休息のアセスメント項目と必要な視点 活動・休息のアセスメント展開
活動・休息の関連図
(5)認知機能についてのアセスメント(橋順子)
認知機能のアセスメント項目と必要な視点 認知機能のアセスメント展開
認知機能の関連図
3.ウェルネス統合関連図(木島輝美・高橋順子)
4.優先順位の決定(木島輝美・高橋順子)
(1)抽出されたEさんの健康課題の検討
(2)健康課題の優先順位とその背景
(3)目標
5.看護計画(木島輝美・高橋順子)
[参考資料] ゴードンの11の機能的健康パターン分類を参考にしたアセスメントガイド(老年領域)(奥宮暁子)
索引