改訂にあたって
「基本からわかる看護疫学入門」の初版を上掲してからすでに4年がたち,今回,第2版として改訂することになりました.おかげさまで,看護系には類書がなかったこともあり,好評をいただき毎年増刷することができました.この間にも,明らかな誤記や,その他さまざまな小修正を行ってきました.また,本書の出版後に類書も次々と出版されており,この分野の重要性が次第に浸透してきた感じがします.
今回,大幅に改訂したのは次の2点です.第一点として,練習問題を最近の保健師国家試験に差し替えました.国家試験の疫学の問題自体は,ほとんど内容に変化はないのですが,一部に新しく高度なテーマが出てきました(人口寄与危険割合やコホート内症例対照研究など).もちろんそのほとんどは本書ですでに解説していたことですが,問題として触れておくと理解が深まると思います.第二点は,新たに「ライフコース疫学」の章を設けたことです.比較的新しい疫学の分野ですが,看護学の応用分野としても有益であると考え,新たに書き下ろしました.それに伴い,全体をBOOK1からBOOK3の3部構成にしました.一般的な系統講義であれば,BOOK1とBOOK2の内容で十分だと思います.
各章には重要点をまとめたPointが書いてあります.各章を読みはじめる時だけでなく,読み終わった後に再度Pointを読めば理解が深まると思います.
疫学の基本知識を身に付けておくことは,保健師の国家試験に役立つだけではありません.今後,学術論文を読んだり,量的な看護研究を行っていくうえで必須の素養となります.疫学の初歩的な考え方を知らなかったために,正しく学術論文を読めなかったり,せっかく時間と労力をかけて行った看護研究が,世に現れることなく残念な結果に終わったりする例もあります.
最後に,いつもお世話になっている医歯薬出版第一出版部の編集担当者の方々に厚くお礼申し上げます.わかりやすい教材にするためのさまざまな工夫にご尽力いただきました.また,図表の作成・文章校正など煩雑な作業の大半はアシスタントの大間敏美さんにお願いいたしました.同僚で在宅看護学講座の彦聖美講師には,直接指導する機会があったコミュニティ分野の元大学院生の立場から,本文を何度も通読していただき,さまざまなコメントをいただきました.ご協力に感謝申し上げます.また,一人ひとりのお名前を書きあげることはいたしませんが,本書を熱心にお読みくださり,有益なアドバイスをお寄せくださいました同業の先生方にも深くお礼申し上げます.
2011年12月
大木秀一
はじめに
人間の集団に起こる健康や病気に関する出来事は,すべて疫学の対象といっても過言ではありません.ですから,あえて意識しなくても,かなり身近に疫学と接しているのです.世の中にあふれる健康情報の正しさや誤りに目を向けることが,疫学の知識を身につける第一歩になります.
本書は主として看護系の学生を対象にした疫学の入門書です.看護疫学とは銘打っていますが,もちろん看護学だけに特別な疫学があるわけではありません.むしろ,疫学的な考え方をもっと看護学の分野でも取り入れたほうが地域・臨床の実践現場や研究場面でも視野が広がるのではないかという期待があります.
疫学のテキストは数多くありますが,興味がないとなかなか通読する気になれないものです.また,疫学を一度学んだことがある人のなかには,統計が多く出てくることでとっつきにくさを感じている人がいるかもしれません.本書は,疫学の基本的な考え方が理解できるように流れを重視し,なるべく各章ごとに内容が分断されないように意識しました.それぞれの概念のつながりや意味,なかなか理解しにくい基本知識(用語)や誤解をもたれやすい考え方などをできるだけわかりやすく解説しました.それでも,かなり高度な内容に触れている部分もありますので,初読では理解し難い部分もあるかもしれません.最初は読み飛ばすくらいの気持ちで,とにかく一度は通読してみましょう.
複雑でわかりにくいことを理解するときに図や表を描き視覚的に内容を整理する筆者自身の経験を踏まえて,図と表を多く用いることにしました.疫学の分析では統計学的な方法を用いますが,本書では,数式を列挙するのではなく,疫学に必要な基本的な統計知識に絞っています.
また,基礎知識を確認するために保健師国家試験の過去問題を練習問題としました.問題を解くことで知識が記憶に定着されるので,学生でない方も解かれることをお勧めします.内容的には,保健師国家試験の出題基準の疫学総論に該当する部分を網羅してあります.しかし,国家試験の対策本ではなく,あくまでも基礎知識を身につけることに重点を置いています.保健統計は毎年更新される分野ですので,本書では個別の解説はしていません.
その一方で,今後保健師・看護師として活躍する場合に有意義と思われる疫学の応用分野は積極的に取り入れました.たとえば,臨床場面での応用(臨床疫学)や保健政策を考える場面での応用(政策疫学)などです.また,疫学の広がりを示す例として,マクロな社会心理的要因を扱う社会疫学とミクロな遺伝子DNAの要因を扱う遺伝疫学を紹介しています.これらの分野は,基本書では触れられることが少ないものです.
読者の大部分は疫学の専門家になるわけではないですから,なるべく実践場面で役に立つことを重視しました.疫学は比較的少ない基本知識をしっかり身につけることである程度の理解ができると思います.その意味で,大学院生や現場の方でも論文を読むときや看護研究をするときに十分に役立つ内容だと思います.
執筆にあたっては,あまり筆者の考え方が偏らないように国内で入手できそうな疫学のテキストにはほとんど目を通しました.本書内でも,折に触れて述べていますが,書籍(というか執筆者の専門分野)によって用語の使い方や解釈・考え方についてもかなり違いがあります.筆者自身もどのような記述がよいのか決断に迷う部分が数個所ありました.ですので,初めて学ぶ場合にはあまり用語の定義の細部にこだわりすぎず,考え方の流れを習得するように努めてください.
限られた紙面のなかで,誰にでもわかりやすい説明にする作業は思ったよりも大変でした.果たして本書がどこまでわかりやすい教材になっているかどうかは読者の判断にお任せするしかありません.本書を読んだ後で,疫学的な考え方をもって,健康情報に接したり,研究に取り組めたりするようになれたとすれば本書の目的はある程度は達成されたと思います.
最後に,今回の企画の実現にご尽力いただいた医歯薬出版第一出版部の編集担当者の方々に厚くお礼申し上げます.わかりやすい教材にするためのさまざまな工夫をご教示いただきました.また,図表の作成・文章校正など煩雑な作業の大半は山梨大学の大間敏美さんにお願いいたしました.短い執筆期間で出版できましたのもそのご協力のおかげです.感謝申し上げます.
2007年11月
大木秀一
「基本からわかる看護疫学入門」の初版を上掲してからすでに4年がたち,今回,第2版として改訂することになりました.おかげさまで,看護系には類書がなかったこともあり,好評をいただき毎年増刷することができました.この間にも,明らかな誤記や,その他さまざまな小修正を行ってきました.また,本書の出版後に類書も次々と出版されており,この分野の重要性が次第に浸透してきた感じがします.
今回,大幅に改訂したのは次の2点です.第一点として,練習問題を最近の保健師国家試験に差し替えました.国家試験の疫学の問題自体は,ほとんど内容に変化はないのですが,一部に新しく高度なテーマが出てきました(人口寄与危険割合やコホート内症例対照研究など).もちろんそのほとんどは本書ですでに解説していたことですが,問題として触れておくと理解が深まると思います.第二点は,新たに「ライフコース疫学」の章を設けたことです.比較的新しい疫学の分野ですが,看護学の応用分野としても有益であると考え,新たに書き下ろしました.それに伴い,全体をBOOK1からBOOK3の3部構成にしました.一般的な系統講義であれば,BOOK1とBOOK2の内容で十分だと思います.
各章には重要点をまとめたPointが書いてあります.各章を読みはじめる時だけでなく,読み終わった後に再度Pointを読めば理解が深まると思います.
疫学の基本知識を身に付けておくことは,保健師の国家試験に役立つだけではありません.今後,学術論文を読んだり,量的な看護研究を行っていくうえで必須の素養となります.疫学の初歩的な考え方を知らなかったために,正しく学術論文を読めなかったり,せっかく時間と労力をかけて行った看護研究が,世に現れることなく残念な結果に終わったりする例もあります.
最後に,いつもお世話になっている医歯薬出版第一出版部の編集担当者の方々に厚くお礼申し上げます.わかりやすい教材にするためのさまざまな工夫にご尽力いただきました.また,図表の作成・文章校正など煩雑な作業の大半はアシスタントの大間敏美さんにお願いいたしました.同僚で在宅看護学講座の彦聖美講師には,直接指導する機会があったコミュニティ分野の元大学院生の立場から,本文を何度も通読していただき,さまざまなコメントをいただきました.ご協力に感謝申し上げます.また,一人ひとりのお名前を書きあげることはいたしませんが,本書を熱心にお読みくださり,有益なアドバイスをお寄せくださいました同業の先生方にも深くお礼申し上げます.
2011年12月
大木秀一
はじめに
人間の集団に起こる健康や病気に関する出来事は,すべて疫学の対象といっても過言ではありません.ですから,あえて意識しなくても,かなり身近に疫学と接しているのです.世の中にあふれる健康情報の正しさや誤りに目を向けることが,疫学の知識を身につける第一歩になります.
本書は主として看護系の学生を対象にした疫学の入門書です.看護疫学とは銘打っていますが,もちろん看護学だけに特別な疫学があるわけではありません.むしろ,疫学的な考え方をもっと看護学の分野でも取り入れたほうが地域・臨床の実践現場や研究場面でも視野が広がるのではないかという期待があります.
疫学のテキストは数多くありますが,興味がないとなかなか通読する気になれないものです.また,疫学を一度学んだことがある人のなかには,統計が多く出てくることでとっつきにくさを感じている人がいるかもしれません.本書は,疫学の基本的な考え方が理解できるように流れを重視し,なるべく各章ごとに内容が分断されないように意識しました.それぞれの概念のつながりや意味,なかなか理解しにくい基本知識(用語)や誤解をもたれやすい考え方などをできるだけわかりやすく解説しました.それでも,かなり高度な内容に触れている部分もありますので,初読では理解し難い部分もあるかもしれません.最初は読み飛ばすくらいの気持ちで,とにかく一度は通読してみましょう.
複雑でわかりにくいことを理解するときに図や表を描き視覚的に内容を整理する筆者自身の経験を踏まえて,図と表を多く用いることにしました.疫学の分析では統計学的な方法を用いますが,本書では,数式を列挙するのではなく,疫学に必要な基本的な統計知識に絞っています.
また,基礎知識を確認するために保健師国家試験の過去問題を練習問題としました.問題を解くことで知識が記憶に定着されるので,学生でない方も解かれることをお勧めします.内容的には,保健師国家試験の出題基準の疫学総論に該当する部分を網羅してあります.しかし,国家試験の対策本ではなく,あくまでも基礎知識を身につけることに重点を置いています.保健統計は毎年更新される分野ですので,本書では個別の解説はしていません.
その一方で,今後保健師・看護師として活躍する場合に有意義と思われる疫学の応用分野は積極的に取り入れました.たとえば,臨床場面での応用(臨床疫学)や保健政策を考える場面での応用(政策疫学)などです.また,疫学の広がりを示す例として,マクロな社会心理的要因を扱う社会疫学とミクロな遺伝子DNAの要因を扱う遺伝疫学を紹介しています.これらの分野は,基本書では触れられることが少ないものです.
読者の大部分は疫学の専門家になるわけではないですから,なるべく実践場面で役に立つことを重視しました.疫学は比較的少ない基本知識をしっかり身につけることである程度の理解ができると思います.その意味で,大学院生や現場の方でも論文を読むときや看護研究をするときに十分に役立つ内容だと思います.
執筆にあたっては,あまり筆者の考え方が偏らないように国内で入手できそうな疫学のテキストにはほとんど目を通しました.本書内でも,折に触れて述べていますが,書籍(というか執筆者の専門分野)によって用語の使い方や解釈・考え方についてもかなり違いがあります.筆者自身もどのような記述がよいのか決断に迷う部分が数個所ありました.ですので,初めて学ぶ場合にはあまり用語の定義の細部にこだわりすぎず,考え方の流れを習得するように努めてください.
限られた紙面のなかで,誰にでもわかりやすい説明にする作業は思ったよりも大変でした.果たして本書がどこまでわかりやすい教材になっているかどうかは読者の判断にお任せするしかありません.本書を読んだ後で,疫学的な考え方をもって,健康情報に接したり,研究に取り組めたりするようになれたとすれば本書の目的はある程度は達成されたと思います.
最後に,今回の企画の実現にご尽力いただいた医歯薬出版第一出版部の編集担当者の方々に厚くお礼申し上げます.わかりやすい教材にするためのさまざまな工夫をご教示いただきました.また,図表の作成・文章校正など煩雑な作業の大半は山梨大学の大間敏美さんにお願いいたしました.短い執筆期間で出版できましたのもそのご協力のおかげです.感謝申し上げます.
2007年11月
大木秀一
改訂にあたって
はじめに
本書の基本構成
BOOK1の構成
BOOK2の構成
BOOK3の構成
BOOK1:疫学の基礎
1 疫学的な考え方とは
健康に関するさまざまな情報
疫学とは
疫学の定義
集団を観察した結果が個人に当てはまるのだろうか
疫学的なアプローチの歴史
ジョン・スノウとコレラ
高木兼寛と脚気とビタミンB1
疫学が発展した背景
疫学の分化
看護学と疫学の関係
2 疫学の基本的な用語を理解しよう
疾病構造の変遷
疾病・健康事象
曝露
危険因子と予防因子
曝露と疾病の測定の仕方
疾病の自然史と疫学像
疾病の自然史と予防の概念
3 疾病の原因,疫学的な因果関係の考え方
病気や健康に関する原因とは?
曝露と疾病の関係
必要条件と十分条件
複数の原因
因果の綾
健康事象の疫学モデル(病因論)
疫学三角形
2大要因説(車輪モデル)
ロスマンの因果のパイモデル
治療と予防のどちらを重視するかで原因に対する考え方も変わる
因果関係を判定するための基準
4 疾病頻度の表し方-有病と罹患の区別
頻度の表し方(比,割合,率)
人口の静態と動態
有病と罹患
有病割合(有病率)
累積罹患割合(累積罹患率,疾病リスク)
罹患率
罹患率と累積罹患割合の違い
累積罹患割合と罹患率を観察する集団
罹患率と有病割合の関係
死亡に関する指標
死亡率
死亡率の意味
致命率(致死率)と発症率
乳児死亡率
その他の指標
相対頻度―患者数や死亡数だけを用いた指標
5 曝露の効果を表す指標―相対危機と寄与危険
曝露の効果はどのように測定できるのか?
相対危険と寄与危険の定義
相対危険の意味
寄与危険の意味
寄与危険割合の意味
人口寄与危険・人口寄与危険割合の意味
曝露効果指標の計算に用いる疾病頻度の指標
相対危険と寄与危険の役割の違い
人口寄与危険・人口寄与危険割合における曝露割合の重要性
BOOK2:疫学研究の基本
6 疫学研究のさまざまなデザイン
疫学研究方法を分類する際の視点
疫学研究方法の分類
要因分析の疫学的な進め方(疫学のサイクル)
研究デザインと因果関係の証明
それぞれの研究デザイン
記述疫学研究
分析疫学研究
生態学的研究 横断研究 コホート研究 症例対照研究(患者対照研究,ケース・コントロール研究)
介入研究
前向き研究と後ろ向き研究
疫学研究と倫理的な問題
7 疫学研究の質-真実と誤差
調査の母集団と標本
母集団の代表性と結果の一般化
真実と誤差
偶然誤差
系統誤差(バイアス)
信頼性と妥当性
内的妥当性と外的妥当性
バイアスの種類
選択バイアス
外的妥当性にかかわる選択バイアス
入院患者のバイアス 罹患・有病バイアス 所属集団のバイアス
内的妥当性に影響する選択バイアス
非回答者バイアス 追跡脱落バイアス
情報バイアス(測定バイアス)
ランダムな誤分類と系統的な誤分類
交絡
交絡の制御方法
計画段階での制御方法 解析段階での制御方法
年齢調整と標準化
直接法による年齢調整死亡率 間接法による年齢調整死亡率
主要な研究デザインに伴う誤差
誤差の良しあし
研究結果と因果関係
8 疫学と統計学-疫学研究に統計学が必要なわけ
疫学研究における統計学の利用
全数調査と標本調査
全数調査(悉皆調査)
標本調査(標本抽出調査)
標本抽出方法について
無作為抽出法
非無作為抽出法
研究計画と統計解析
統計解析の種類
正規分布
記述統計
推測統計
推定の考え方
検定の考え方
第1種の過誤と第2種の過誤
検定に必要な標本サイズ
推定と検定の関係
推測統計の結果の解釈
9 スクリーニング検査
スクリーニング検査とは
スクリーニング実施の原則
スクリーニング検査の妥当性と信頼性
敏感度と特異度の関係
検査結果の指標―陽性反応的中度
スクリーニング検査に伴うバイアス
スクリーニングプログラムの評価
スクリーニング検査の妥当性と類似する考え方
BOOK3:疫学の応用
10 臨床疫学とEBN(Evidence-based Nursing)
医療の進展と有効性への疑問
根拠に基づく医療とその波及
EBM/ EBNの定義
EBM/ EBNのプロセス
ステップ1:問題の定型化
ステップ2:情報収集
ステップ3:批判的吟味
ステップ4:患者への適用
ステップ5:結果(ステップ1〜 4)の評価
臨床疫学と疫学
エビデンスの水準
EBMとEBNの違い
EBNの実践のために求められるもの
11 政策疫学-地域保健と疫学
健康政策と疫学
地域の現場における科学的根拠と意思決定
機序(病因)疫学と政策疫学
実数や寄与危険関連指標の重要性
地域集団のバイタルチェック
健康政策のサイクルと疫学研究
新公衆衛生運動の歴史と疫学の貢献
予防医学実践の2 つのアプローチ
集団アプローチの背景
12 遺伝疫学-遺伝要因と環境要因の考え方
遺伝要因と環境要因
ふたごの研究
家族集積性と家族歴
遺伝疫学とは
DNAレベルでの宿主要因
遺伝要因と環境要因の考え方
交互作用とは
遺伝(遺伝子)−環境交互作用
遺伝形質の予防の考え方
オーダーメイド医療とは
13 社会疫学-社会構造が健康に与える影響
ロゼト効果
個人が属する社会の影響
社会疫学とは
社会疫学の考え方
社会生態学的モデル
集団アプローチ
社会学・心理学などの概念の適用
社会疫学の分析方法
社会疫学の問題点と課題
社会的要因の複雑な関係
社会的要因の把握の仕方
理論と実践の兼ね合い
14 ライフコース疫学-人生を通じての健康リスク
疫学の考え方の移り変わり
成人期・高齢期疾患のリスクはいつから始まるか
胎内環境仮説
疫患の発達起源仮説
リスクの世代間伝達
ライフコース疫学とは
リスクの蓄積と連鎖
ライフコース疫学の基本的な概念
時間の流れに基づくリスクの捉え方
リスク因子が作用するタイミング
リスク因子が作用するメカニズム
ライフコース疫学の課題
ライフコース疫学の展望
おわりに―さまざまな視点からの疫学的アプローチ
参考文献
索引
はじめに
本書の基本構成
BOOK1の構成
BOOK2の構成
BOOK3の構成
BOOK1:疫学の基礎
1 疫学的な考え方とは
健康に関するさまざまな情報
疫学とは
疫学の定義
集団を観察した結果が個人に当てはまるのだろうか
疫学的なアプローチの歴史
ジョン・スノウとコレラ
高木兼寛と脚気とビタミンB1
疫学が発展した背景
疫学の分化
看護学と疫学の関係
2 疫学の基本的な用語を理解しよう
疾病構造の変遷
疾病・健康事象
曝露
危険因子と予防因子
曝露と疾病の測定の仕方
疾病の自然史と疫学像
疾病の自然史と予防の概念
3 疾病の原因,疫学的な因果関係の考え方
病気や健康に関する原因とは?
曝露と疾病の関係
必要条件と十分条件
複数の原因
因果の綾
健康事象の疫学モデル(病因論)
疫学三角形
2大要因説(車輪モデル)
ロスマンの因果のパイモデル
治療と予防のどちらを重視するかで原因に対する考え方も変わる
因果関係を判定するための基準
4 疾病頻度の表し方-有病と罹患の区別
頻度の表し方(比,割合,率)
人口の静態と動態
有病と罹患
有病割合(有病率)
累積罹患割合(累積罹患率,疾病リスク)
罹患率
罹患率と累積罹患割合の違い
累積罹患割合と罹患率を観察する集団
罹患率と有病割合の関係
死亡に関する指標
死亡率
死亡率の意味
致命率(致死率)と発症率
乳児死亡率
その他の指標
相対頻度―患者数や死亡数だけを用いた指標
5 曝露の効果を表す指標―相対危機と寄与危険
曝露の効果はどのように測定できるのか?
相対危険と寄与危険の定義
相対危険の意味
寄与危険の意味
寄与危険割合の意味
人口寄与危険・人口寄与危険割合の意味
曝露効果指標の計算に用いる疾病頻度の指標
相対危険と寄与危険の役割の違い
人口寄与危険・人口寄与危険割合における曝露割合の重要性
BOOK2:疫学研究の基本
6 疫学研究のさまざまなデザイン
疫学研究方法を分類する際の視点
疫学研究方法の分類
要因分析の疫学的な進め方(疫学のサイクル)
研究デザインと因果関係の証明
それぞれの研究デザイン
記述疫学研究
分析疫学研究
生態学的研究 横断研究 コホート研究 症例対照研究(患者対照研究,ケース・コントロール研究)
介入研究
前向き研究と後ろ向き研究
疫学研究と倫理的な問題
7 疫学研究の質-真実と誤差
調査の母集団と標本
母集団の代表性と結果の一般化
真実と誤差
偶然誤差
系統誤差(バイアス)
信頼性と妥当性
内的妥当性と外的妥当性
バイアスの種類
選択バイアス
外的妥当性にかかわる選択バイアス
入院患者のバイアス 罹患・有病バイアス 所属集団のバイアス
内的妥当性に影響する選択バイアス
非回答者バイアス 追跡脱落バイアス
情報バイアス(測定バイアス)
ランダムな誤分類と系統的な誤分類
交絡
交絡の制御方法
計画段階での制御方法 解析段階での制御方法
年齢調整と標準化
直接法による年齢調整死亡率 間接法による年齢調整死亡率
主要な研究デザインに伴う誤差
誤差の良しあし
研究結果と因果関係
8 疫学と統計学-疫学研究に統計学が必要なわけ
疫学研究における統計学の利用
全数調査と標本調査
全数調査(悉皆調査)
標本調査(標本抽出調査)
標本抽出方法について
無作為抽出法
非無作為抽出法
研究計画と統計解析
統計解析の種類
正規分布
記述統計
推測統計
推定の考え方
検定の考え方
第1種の過誤と第2種の過誤
検定に必要な標本サイズ
推定と検定の関係
推測統計の結果の解釈
9 スクリーニング検査
スクリーニング検査とは
スクリーニング実施の原則
スクリーニング検査の妥当性と信頼性
敏感度と特異度の関係
検査結果の指標―陽性反応的中度
スクリーニング検査に伴うバイアス
スクリーニングプログラムの評価
スクリーニング検査の妥当性と類似する考え方
BOOK3:疫学の応用
10 臨床疫学とEBN(Evidence-based Nursing)
医療の進展と有効性への疑問
根拠に基づく医療とその波及
EBM/ EBNの定義
EBM/ EBNのプロセス
ステップ1:問題の定型化
ステップ2:情報収集
ステップ3:批判的吟味
ステップ4:患者への適用
ステップ5:結果(ステップ1〜 4)の評価
臨床疫学と疫学
エビデンスの水準
EBMとEBNの違い
EBNの実践のために求められるもの
11 政策疫学-地域保健と疫学
健康政策と疫学
地域の現場における科学的根拠と意思決定
機序(病因)疫学と政策疫学
実数や寄与危険関連指標の重要性
地域集団のバイタルチェック
健康政策のサイクルと疫学研究
新公衆衛生運動の歴史と疫学の貢献
予防医学実践の2 つのアプローチ
集団アプローチの背景
12 遺伝疫学-遺伝要因と環境要因の考え方
遺伝要因と環境要因
ふたごの研究
家族集積性と家族歴
遺伝疫学とは
DNAレベルでの宿主要因
遺伝要因と環境要因の考え方
交互作用とは
遺伝(遺伝子)−環境交互作用
遺伝形質の予防の考え方
オーダーメイド医療とは
13 社会疫学-社会構造が健康に与える影響
ロゼト効果
個人が属する社会の影響
社会疫学とは
社会疫学の考え方
社会生態学的モデル
集団アプローチ
社会学・心理学などの概念の適用
社会疫学の分析方法
社会疫学の問題点と課題
社会的要因の複雑な関係
社会的要因の把握の仕方
理論と実践の兼ね合い
14 ライフコース疫学-人生を通じての健康リスク
疫学の考え方の移り変わり
成人期・高齢期疾患のリスクはいつから始まるか
胎内環境仮説
疫患の発達起源仮説
リスクの世代間伝達
ライフコース疫学とは
リスクの蓄積と連鎖
ライフコース疫学の基本的な概念
時間の流れに基づくリスクの捉え方
リスク因子が作用するタイミング
リスク因子が作用するメカニズム
ライフコース疫学の課題
ライフコース疫学の展望
おわりに―さまざまな視点からの疫学的アプローチ
参考文献
索引








