やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第5版改訂(改題)の序
 今回,保育所保育指針が改定され,これを受けて保育士養成課程が改正された.「子どもの保健II 演習」大要をみると,一人ひとりの子どもの健康の保持および増進につとめるよう「保健計画の作成と実践と評価」の必要性が示されている.内容は,健康と安全,衛生管理,環境,疾病への対応として,とくに,感染症の予防,慢性疾患,アレルギー性疾患,障がいのある子どもへの対応,事故防止,看護と応急処置,災害の危機管理,心とからだの問題,健康づくりと地域保健活動などである.
 保育所保育指針の改定,および保育士養成課程の改正に伴い,本書においても,目的については,改定・改正内容を踏まえて掲げ,目標,演習内容については,すべて改定・改正項目に準じ,改訂を行った.
 今回本書の改訂で大きく改めたのは,書名を「小児保健実習」から「子どもの保健II 演習」に改題したこと,内容を保育所保育指針の改定,および保育士養成課程の改正にそって全面的に見直し,大幅な加筆修正のうえまとめたこと,より見やすい紙面を目指してイラストやデザインの大部分をリニューアルしたことである.子どもの養護技術に関しては,図説を多くし,看護と応急処置については,保育現場の現状を吟味し学習しやすいように改訂した.
 内容の充実によりボリュームアップした本書を,これまでと同様「子どもの保健II 演習」の授業や保育現場においてお役に立てていただければ幸いである.
 2011年1月
 白野幸子

第1版の序
 近年,わが国の乳幼児の死亡率は著しく減少し,また日本人の平均寿命も大きく延びてきている.これらの根本をなすものは予防医学,保健学の進歩によるものであり,とくに乳幼児の予防医学,保健学の向上によるところが大きい.一方,乳幼児は年齢,月齢の小さいものほど未熟であり,これらの保育にあたっては,医学的知識をもとにした養護が必要である.
 家庭における保育はもちろんのこと,児童福祉施設,とくに乳幼児保育に携わる人びとには小児保健の知識は欠かすことのできないものであり,たんに日々の保育において,疾病や事故防止といっただけのものでなく,子供の心身の成長,発達をも左右するものであるから,保育と医学とは密接な関係があり,けっしてこれを切り離して考えることはできない.大学や短大の保育科,保母養成課程のなかで,小児保健学が重要な科目として扱われているのも意義が深い.
 本書,小児保健実習は,私が数年間短大,保母養成課程において小児保健(III)を担当して,いろいろな角度から学習し,検討してまとめた内容のもので,小児保健の理論に基づいた実技編であり,保母など保育者を志す学生用の実習テキストとして書きあげたものである.少々膨大になってしまい,規定の授業時間では学習しきれないと思われるが,そのぶんは授業時間外または保育の実践の現場で学習し,役立てていただきたいと思う.また,一般の若い人,母親などにも読んでいただいても理解でき,参考になるテキストとして書いたつもりである.
 1981年3月
 白野幸子
序章 子どもの保健II 演習について
 1.子どもの保健II 演習目的
 2.子どもの保健II 演習目標
 3.子どもの保健II 演習内容
第I章 保健活動の計画および評価
 1 保健計画の作成と活用
 2 保健活動の記録と自己評価
  1)健康状態の観察
   (1)身体状態の観察
   (2)体温の観察
    1.正常体温とその変動
    2.体温測定方法
   (3)脈拍の観察
    1.正常脈拍とその変動
    2.脈拍測定方法
   (4)呼吸の観察
    1.正常呼吸とその変動
    2.呼吸測定方法
   (5)便・尿・生歯の観察
   (6)視力・聴力の観察
  2)身体発育の測定方法と評価
   (1)身体発育の測定方法
    1.体重測定法
    2.身長測定法
    3.座高測定法
    4.胸囲測定法
    5.頭囲測定法
   (2)評価の方法
    1.乳幼児身体発育値と比較して評価する方法
    2.計測値による評価の方法
    3.標準発育増加量と比較して評価する方法
    4.指数による評価の方法
  3)精神,運動機能の発達,発育の観察とその評価
   (1)新生児の生活時間
   (2)精神,運動機能の発達と発育の観察
    1.新生児の諸反射運動
    2.精神,運動機能の発達と発育順序
   (3)評価の方法
    1.検査法の種類
    2.検査結果の表しかた
    3.評価の方法
 3 子どもの保健に係る個別対応と子ども集団全体の健康と安全・衛生管理
   (1)保育における健康管理の意義
   (2)日常の健康管理
    1.健康観察
    2.家庭との連絡
   (3)疾病管理と疾病予防
   (4)健康診査(健康診断)
    1.健康診査(健康診断)内容
    2.入所時,入園時健康診査(健康診断)
    3.定期健康診査(健康診断)
    4.月例健康診査(健康診断)
    5.臨時健康診査(健康診断)
    6.職員の健康診査(健康診断)
   (5)健康教育
   (6)衛生管理
第II章 子どもの保健と環境
 1 保健における養護と教育の一体性
 2 子どもの健康増進と保育の環境
   (1)保育環境
    1.寝室
    2.乳児室(ほふく室)
    3.保育室(遊戯室)
    4.医務室,保健室
    5.調理室,調乳室
    6.食堂
    7.トイレ,手洗い場
    8.浴室,沐浴室,シャワー室
    9.屋外遊戯場,玄関ホール
    10.観察室
    11.事務室,保育者控室,応接室,物品収納庫,塵芥処理場など
 3 子どもの生活習慣と心身の健康
   (1)睡眠習慣のしつけ
    1.幼児の寝かせかた
    2.睡眠のしつけ・自立
   (2)食事習慣のしつけ
    1.食事行動の発達
    2.食事習慣のしつけ・自立
   (3)排泄習慣のしつけ
    1.排泄のしつけ
    2.排泄習慣の自立
   (4)着脱習慣のしつけ
    1.衣服の着脱のしつけ
    2.着脱習慣の自立
   (5)清潔習慣のしつけ
    1.清潔のしつけ
    2.清潔習慣の自立
   (6)あいさつ・後片付け
 4 子どもの発達援助と保健活動
   (1)養護技術
    1.乳児の抱きかた
    2.乳児の寝かせかた
    3.寝具のつくりかた
    4.背負いかた(おんぶ)・抱っこ
    5.育児用品の使いかた
    6.食事の与えかた
    7.排泄のさせかた
    8.衣服の着せかた,脱がせかた
    9.身体の清潔
    10.居室の衛生
    11.日光浴と外気浴
    12.乾布摩擦,冷水摩擦
    13.乳児体操
    14.外出,旅行,海水浴・プール
    15.運動,遊びと玩具
    16.あやしかた,ほめかた,しかりかた
第III章 子どもの疾病と適切な対応
 1 体調不良や傷害が発生した場合の対応
 2 感染症の予防と対策
   (1)小児の疾病予防と対策
   (2)感染症の予防と対策
   (3)予防接種
   (4)幼稚園,保育所に感染症(伝染病)が発生した場合の措置
 3 個別的な配慮を必要とする子どもへの対応(慢性疾患,アレルギー性疾患等)
 4 乳児への適切な対応
 5 障がいのある子どもへの適切な対応
第IV章 事故防止および健康安全管理
 1 事故防止および健康安全管理に関する組織的取組
   (1)事故防止
   (2)安全教育
   (3)健康安全管理
 2 救急処置および救急蘇生法の習得
  1)救急(応急)処置
   (1)救急(応急)処置の意義
   (2)危険な徴候
    1.チアノーゼ
    2.瞳孔の対光反応
    3.脈拍
    4.呼吸
   (3)基本となる処置
    1.患児の体位
    2.基本の処置
  2)救急蘇生法(心肺蘇生法)
   (1)救命の連鎖と救助者の役割
   (2)感染対策
   (3)心肺蘇生法
    1.成人(6歳以上)
    2.小児(乳児・1〜6歳未満)
   (4)AED(自動体外式除細動器)の使いかた
    1.成人(6歳以上)
    2.小児(1〜6歳未満)
  3)傷病者(児)を運ぶ方法
    1.担架による運搬法
    2.担架によらない運搬法
  4)包帯の使いかた
   (1)包帯の目的ならびに種類
   (2)主な包帯の使いかた
    1.巻軸帯
    2.スピード包帯
    3.三角巾
 3 保育における看護と応急処置
  1)保育における看護
   (1)一般看護
    1.罨法
    2.薬の与えかた
    3.浣腸
    4.採尿,採便,便器,尿器の使いかた
    5.消毒
    6.安静・休養室
    7.病床,病衣
   (2)症状に対する看護
    1.啼泣
    2.脱水
    3.チアノーゼ
    4.食欲不振
    5.便秘
    6.頭痛
    7.鼻閉
   (3)疾病の看護
    1.感冒(かぜ症候群)
    2.肺炎
    3.気管支喘息
    4.乳児嘔吐下痢症
    5.周期性嘔吐症(自家中毒症)
    6.腸重積症
    7.そけいヘルニア
    8.食中毒
    9.蟯虫症
    10.乗り物酔い(動揺病)
    11.日射病・熱射病(熱中症)
    12.熱疲労・熱痙攣
    13.光化学スモッグ
    14.齲蝕症(虫歯)
    15.百日咳
    16.突発性発疹
    17.麻疹(はしか)
    18.風疹(三日ばしか)
    19.水痘(水ぼうそう)
    20.流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
    21.手足口病
    22.伝染性紅斑(リンゴ病)
    23.蕁麻疹(じんましん)
    24.アトピー性皮膚炎
    25.伝染性膿痂疹(とびひ)
    26.先天性心疾患
    27.てんかん
    28.熱性痙攣(ひきつけ)
    29.脳性麻痺
    30.肥満(子どもの肥満)
    31.糖尿病
    32.急性糸球体腎炎
    33.ネフローゼ症候群
    34.尿路感染症
    35.精神遅滞
    36.小児自閉症
    37.先天性股関節脱臼
    38.先天性筋性斜頸
    39.口唇裂・口蓋裂
    40.急性・慢性中耳炎
    41.急性・慢性副鼻腔炎(蓄膿症)
    42.急性結膜炎
    43.不登校(登園・登校拒否)
    44.病児の遊びとしつけ
  2)応急処置
    1.痙攣(ひきつけ)
    2.呼吸困難(咽頭,喉頭,気管内異物による場合を含む)
    3.食事性アレルギー(アナフィラキシーショック)
    4.嘔吐
    5.下痢
    6.腹痛
    7.発熱
    8.咳嗽(せき)
    9.ガス中毒
    10.発疹
    11.耳の異物
    12.眼の異物,鼻の異物
    13.転落
    14.鼻出血
    15.歯痛
    16.虫さされ
    17.創傷
    18.咬傷・ひっかき傷
    19.止血法
    20.火傷,熱傷
    21.骨折
    22.捻挫(ねんざ)
    23.脱臼
    24.肉ばなれ
    25.脳貧血,起立性調節障害
    26.ショック
    27.溺水(水のおぼれ)
 4 災害への備えと危機管理
第V章 心とからだの健康問題と地域保健活動
 1 子どもの養育環境と心の健康問題
  1)家庭環境
  2)社会環境
  3)自然環境
 2 心とからだの健康づくりと地域保健活動

 資料
  保健室常備薬と救急用具 健康診査票 乳児健康管理票 連絡カード 幼児健康診断(査)票 保健調査票 保健だより
 索引