はじめに
食看護学(Nursing and Nutrition Ecology)は,2001年に誕生し,学問の世界に入ったばかりである.その中心を貫く考えは,“看護とは患者の生命力の消耗を最小にするように整えることである“(F.ナイチンゲール『看護覚え書』第4版/湯槙・他訳,現代社,1983)」である.「食」生活をどのように整えると,「人々の生命力の消耗を最小にする」ことが可能であるかを問い・探究し“生活を整える”ことに真っ向から向き合う学問である.
食看護の実践者は,人々が“ヒト“としての側面と“ひと”である側面の二側面を持っていること,また,“ひと”は「食により生き,生かされている」ことを理解しそれを支援し,さらに,食の援助をめぐるチーム医療の中心としての役割を担うことを通して,人々の健康の担い手として「生きる力」・「ゆたかな生活」・「QOL(Quality of Life)の向上」を支え続けることをその基本とする.
食することは,生命を維持する基本的条件であり,食物を身の内に摂り込み自身の身体を創造する主体的な営みである.また,不断の日常の営みとして生涯にわたる基本的な生活現象である.したがって,食は,人間の営みが集約される社会現象の影響を強く受けている.例えば,生活習慣病として増加している糖尿病,心臓病,また,腎不全による透析療法,高齢化に伴う脳疾患の問題,さらに社会現象としての子どもたちの「キレ」などである.食看護ではこれらのさまざまな問題を抱える人々に向き合い,その人らしい食が形成されるよう「その人」へ働きかけることである.
本書の第I章では,どのような社会現象が食卓に反映され“その人“の食となるのかに触れ,第II章では生活習慣としての食習慣のありようについて述べる.第III章は,看護の実際として,“食生活を支える看護”について事例をもとに展開する.第IV章では,看護者が支える「食」への援助とは何か,および「食看護学」としてのこだわりを原点として,今後の「食看護学」の方向・展望について述べる.
本書が,人々の「食」の営みを支え,さらに「ゆたかな生活」を可能にすることに役立つことを願い,また,人々を支える看護者に生かされるものであることを願っている.
さて,個人的なことで大変恐縮ですが,本書の出版を間近に控えた2007年8月8日に,「食」看護への道を誘って下さいました偉大なる恩師小林富美栄先生が急逝されました.感謝の念を持って先生に本書を捧げます.
最後に,本書の出版を見守り,ご尽力くださった,医歯薬出版編集担当者,関係各位に深く感謝致します.
2007年8月
編者代表 尾岸恵三子
食看護学(Nursing and Nutrition Ecology)は,2001年に誕生し,学問の世界に入ったばかりである.その中心を貫く考えは,“看護とは患者の生命力の消耗を最小にするように整えることである“(F.ナイチンゲール『看護覚え書』第4版/湯槙・他訳,現代社,1983)」である.「食」生活をどのように整えると,「人々の生命力の消耗を最小にする」ことが可能であるかを問い・探究し“生活を整える”ことに真っ向から向き合う学問である.
食看護の実践者は,人々が“ヒト“としての側面と“ひと”である側面の二側面を持っていること,また,“ひと”は「食により生き,生かされている」ことを理解しそれを支援し,さらに,食の援助をめぐるチーム医療の中心としての役割を担うことを通して,人々の健康の担い手として「生きる力」・「ゆたかな生活」・「QOL(Quality of Life)の向上」を支え続けることをその基本とする.
食することは,生命を維持する基本的条件であり,食物を身の内に摂り込み自身の身体を創造する主体的な営みである.また,不断の日常の営みとして生涯にわたる基本的な生活現象である.したがって,食は,人間の営みが集約される社会現象の影響を強く受けている.例えば,生活習慣病として増加している糖尿病,心臓病,また,腎不全による透析療法,高齢化に伴う脳疾患の問題,さらに社会現象としての子どもたちの「キレ」などである.食看護ではこれらのさまざまな問題を抱える人々に向き合い,その人らしい食が形成されるよう「その人」へ働きかけることである.
本書の第I章では,どのような社会現象が食卓に反映され“その人“の食となるのかに触れ,第II章では生活習慣としての食習慣のありようについて述べる.第III章は,看護の実際として,“食生活を支える看護”について事例をもとに展開する.第IV章では,看護者が支える「食」への援助とは何か,および「食看護学」としてのこだわりを原点として,今後の「食看護学」の方向・展望について述べる.
本書が,人々の「食」の営みを支え,さらに「ゆたかな生活」を可能にすることに役立つことを願い,また,人々を支える看護者に生かされるものであることを願っている.
さて,個人的なことで大変恐縮ですが,本書の出版を間近に控えた2007年8月8日に,「食」看護への道を誘って下さいました偉大なる恩師小林富美栄先生が急逝されました.感謝の念を持って先生に本書を捧げます.
最後に,本書の出版を見守り,ご尽力くださった,医歯薬出版編集担当者,関係各位に深く感謝致します.
2007年8月
編者代表 尾岸恵三子
序章 食看護学とは(尾岸恵三子)
I章 食卓に映る社会現象(尾岸恵三子)
食・健康・社会のバランス
1 食と心・身体の成長発達の関連
1)食と心・身体
2)食と成長発達
2 食事をともにする家族の重要性
3 高齢者の食べることへの安全とQOLの尊重
4 健康な食の課題
1)安全な食物とは
2)身体によい食物とは
5 食卓に掛ける時間の変化の影響(食卓・食事の準備)
6 食の自己コントロールとセルフケア
7 健やかな老いに向けての食生活への準備
8 虐待に象徴される食生活の問題
1)子どもの虐待と食の意味
2)高齢者の虐待と食の意味
3)心を豊かにする食卓へ向けた食看護
II章 生活習慣としての食習慣
生活と食べることの有り様
1 人間らしい食生活の起源(梅崎昌裕)
1)多様な食生活の形成
2)人類学からみた現代の食生活
3)「人間らしい」食生活とは
2 伝統食の変遷・食習慣と社会の変化(尾岸恵三子)
1)食習慣の成り立ち
(1)習慣化のプロセス (2)生活習慣を変えるには
2)伝統食の変遷と食文化
(1)伝統食・食文化と人の生活 (2)伝統食と健康 (3)伝統食の変化 (4)伝統的な食事摂取の仕方
3)食習慣に関係する社会の変化
(1)食習慣の変遷 (2)食材・食品の購入を作り出した経済・流通 (3)共食と絆 (4)生活習慣と健康状態
3 食べること・排泄すること・つかうことの発想からの生活習慣(谷本真理子)
1)日々の生活を創り出す 食べること・排泄すること・つかうこと
2)食べること・排泄すること・つかうことの生理的なつながり
3)食べること・排泄すること・つかうことに偏りのある生活習慣と健康障害
4 食べること・排泄することに関する身体機能
1)とり込まれる最初の入り口“口”(竹内千鶴子)
(1)「口」の機能を整えるとは (2)口から「からだ」を整えるとは
事例:食べることの不思議さ
事例:妻から学ぶ愛情という援助
2)排泄にみる生活習慣(伊東栄子)
(1)尿にみる「食べること・排泄すること・つかうこと」 (2)尿検査・食事調査結果から
III章 食生活を支える看護
1 活き活きと生きるための食を支える看護
1 成長・発達の観点から,食への援助(奥野順子)
1)小児の食の特徴
(1)哺乳期―生後0〜4か月のころ (2)離乳期―生後5か月から1歳を過ぎるころ (3)幼児期―1歳から就学前 (4)学童・思春期―小学生〜中学生のころ
2)子どもの食への看護の実際
事例:遊び食べをする子どもとその母親への看護
事例:輸液療法のため入院している食物アレルギーのある子どもと家族への看護
2 妊産婦・更年期の観点から,食への援助(久米美代子)
1)妊婦の食生活の特徴
(1)つわり (2)妊娠性貧血
2)授乳期の食生活の特徴
(1)食物の選択 (2)食生活の方法 (3)嗜好品と乳汁分泌抑制
3)更年期と食生活の特徴
(1)更年期症状と食生活 (2)循環器疾患とコレステロール (3)骨粗鬆症とカルシウム
事例:更年期症状の出現を機に食生活の見直しにつながった例
3 慢性病の観点から,糖尿病のある人への食への援助(太田美帆)
1)糖尿病における食事療法と患者教育の動向
2)糖尿病のある人の食生活の特徴
(1)「食事療法の指導」と「食への援助」の違い (2)治療としての食事療法 (3)「生活」の視点から「食への援助」を考える
事例:食生活としての見方を欠いた例
3)糖尿病看護実践としての食への援助
(1)その人の食の捉え方を尊重する
事例:折り合いがつかないことで苦痛が生じている例
(2)その人の主体性を尊重する
事例:主体性を尊重した関わり
(3)その人にとって現実的なゴールを共に考える
事例:食事療法は自分にはできないと思い込んでいる例
事例:成功体験を重ねていった例
事例:学ぶ過程に沿い,支えた例
4 慢性病の観点から,腎臓病のある人への食への援助(斉藤しのぶ)
1)腎疾患のある人の食生活の特徴
(1)腎臓病患者の特殊性 (2)腎機能低下を防ぐための生活調整
2)援助の実際
(1)事例提示
事例:食事療法への援助で活き活きとした生活を取り戻した血液透析患者の例
(2)各段階における食への援助と生活の変化
3)腎臓病看護実践としての食への援助
5 こころの病と食への援助
1)食とこころの関わり(田中美恵子)
(1)大脳生理学的観点からみた食とこころ (2)精神分析学的観点からみた食とこころ (3)食行動と社会文化的価値観―セルフケア行動としての食行動の観点から
2)こころの病と食行動
(1)うつ病患者への食の援助(小山達也)
事例:貧困妄想から拒食する患者への看護
(2)摂食障害と食行動(嵐 弘美)
事例:胃がんによる胃切除術後に嘔吐を繰り返し,精神症状のために低栄養状態の改善が困難であった患者(神経症無食欲症)
3)健康な力を引き出す食への援助
(1)精神障害者の健康な力を引き出すものとしての,食への援助
事例:地域で暮らす精神障害者への食事サービス-リハビリテーションの一貫としての食への援助(濱田由紀)
事例:慢性精神障害者の食の記憶-長期入院をしているPさんのカステラの思い出(田中美恵子)
4)地域で暮らす当事者の食の体験(十字路博史)
地域で暮らす精神障害・当事者の食の体験
5)まとめ
6 消化器の手術を受ける患者の食への援助(三浦美奈子)
1)胃切除術を受ける患者の特徴と看護援助
(1)術前の栄養障害:食事摂取量の低下 (2)術後食事が開始されるまでの絶食期間:ストレスへの対処 (3)食事開始後:食事方法変更への対処,家族への援助
2)援助の実際
(1)事例提示
事例:幽門側胃切除術を受ける患者への援助
2 拡がる看護の役割,人々の食生活に密着する看護
1 入院から外来通院中の患者に対する食への援助(柳井田恭子・正木治恵)
1)チームアプローチでの食への援助と看護の役割
(1)チームアプローチにおける看護の役割
事例:はじめて糖尿病と診断されたRさんへの食生活への支援
(2)糖尿病チームにおける看護師の役割
2)多職種チームで栄養をサポートするNST
(1)NSTでのかかわりの実際
事例:誤嚥性肺炎で入院したSさんに対して行われたチームアプローチ
(2)NSTチームメンバーの役割
(3)受け持ち看護師としての役割
3)チームでの看護の役割と食援助
2 中間施設の利用者に対する食への援助(田中靖代)
1)中間施設の利用者(ゲスト)の特徴と食への援助
(1)生活リハビリテーションを目的とする人
事例:仮性球麻痺で食道瘻を造設したNさんのケア
事例:誤嚥性肺炎を繰り返したUさんの家族介護をサポートする
(2)ADL自立の人(維持・予防とQOL向上を目的の人)
事例:基礎疾患に糖尿病をもつ85歳の男性Wさんとの関わり
(3)要観察・見守りを必要とする人
事例:アルツハイマー型認知症の後期にあるXさんの異食
2)看護の視点から捉えた栄養マネジメント
事例:「食べると死ぬぞ」-「もう我慢ができない」へのチャレンジ
3)家族への食支援・栄養士との連携効果
事例:不顕性誤嚥のあるZさんの「食支援」
4)まとめ
3 家庭や地域での食生活援助(田沼祥子)
1)介護のなかの食生活
(1)どんな病気だったか (2)生活と介護の状況
2)食生活の考え方
(1)食生活の安全と危険 (2)食事介助の難しさ (3)食材と調理法 (4)水分補給の困難と工夫 (5)デイサービスと宅配べんとう (6)パーティやレストランで
3)口腔ケアとスピーチセラピー
(1)口腔ケア (2)スピーチセラピー
4)在宅での食介助について専門家による研究と実践を望む
IV章 食看護学の今後の方向
1 病院と家庭の生活圏における人間の食の捉え方,3つの柱
1 生活圏と食(尾岸恵三子)
1)家庭を中心とした生活圏での食
2)病院を中心と生活圏での食
2 食事の準備
1)看護者の行う準備と工夫(尾岸恵三子)
2)食べることと姿勢(原 三紀子)
(1)食べるための一連の動作 (2)安全に食事をするための姿勢 (3)ゆっくりと心地よく食べることを支えること
3 おいしい食事(針谷順子)
1)おいしい食事とは
(1)おいしい食事と健康によい食事の関係 (2)健康を支える栄養素とおいしさを支える味の成分 (3)病気では,より強く二面性が求められる
2)おいしさを感じる人間について
(1)“おいしい”食事とはどんな食事なのか-おいしさは個人差があり,変化する (2)“おいしい”食事の基本は食歴 (3)健康に良い食事にも個人差がある
3)おいしさをもつ食事について
(1)料理・食事の組み合わせとおいしさ (2)おいしい食事をつくり,整える
4)おいしくする調理法と調味法
(1)食材の持ち味と調味 (2)食材の形態を変えることは味わいを変える (3)材料,調理法の複合と味 (4)食材料の質を変える加熱調味と味
5)おいしい食事をよりおいしく食べるために
4 こころの満足(尾岸恵三子)
1)食することと「こころの満足」
2)価値観を物質からこころへ
2 看護が支え・こだわり続けるQOLの向上をもたらす食看護の原点
1 変わりゆく食(尾岸恵三子)
1)食看護の原点
(1) 食物により生き・生かされている現実を患者と共に感じ,そして確認し,理解し合う (2)ナイチンゲールの食物と食事,ヒポクラテスの食物と食餌
2)食生活を健やかに,その人らしい食生活を支え続けることの意味と意義
(1)生きる喜びを引き出す (2)“自然界との折り合い” (3)自己表現としての食の意味
3)豊かな生活の創造を支える「食」看護
2 食看護学の今後の方向(尾岸恵三子)
1)「変わり行く食」の意味すること
(1)“豊かさ”の意味が問われる日本の食 (2)食の価値 (3)人々の健康観,幸福感と食生活の位置
2)国際的な視野に立ち,食生活を整える意味
3)食看護学における最近の研究方向
(1)「食看護学」に関連する研究の現状からの食看護学への提言
4)食看護学の今後の展望
参考資料
索引
I章 食卓に映る社会現象(尾岸恵三子)
食・健康・社会のバランス
1 食と心・身体の成長発達の関連
1)食と心・身体
2)食と成長発達
2 食事をともにする家族の重要性
3 高齢者の食べることへの安全とQOLの尊重
4 健康な食の課題
1)安全な食物とは
2)身体によい食物とは
5 食卓に掛ける時間の変化の影響(食卓・食事の準備)
6 食の自己コントロールとセルフケア
7 健やかな老いに向けての食生活への準備
8 虐待に象徴される食生活の問題
1)子どもの虐待と食の意味
2)高齢者の虐待と食の意味
3)心を豊かにする食卓へ向けた食看護
II章 生活習慣としての食習慣
生活と食べることの有り様
1 人間らしい食生活の起源(梅崎昌裕)
1)多様な食生活の形成
2)人類学からみた現代の食生活
3)「人間らしい」食生活とは
2 伝統食の変遷・食習慣と社会の変化(尾岸恵三子)
1)食習慣の成り立ち
(1)習慣化のプロセス (2)生活習慣を変えるには
2)伝統食の変遷と食文化
(1)伝統食・食文化と人の生活 (2)伝統食と健康 (3)伝統食の変化 (4)伝統的な食事摂取の仕方
3)食習慣に関係する社会の変化
(1)食習慣の変遷 (2)食材・食品の購入を作り出した経済・流通 (3)共食と絆 (4)生活習慣と健康状態
3 食べること・排泄すること・つかうことの発想からの生活習慣(谷本真理子)
1)日々の生活を創り出す 食べること・排泄すること・つかうこと
2)食べること・排泄すること・つかうことの生理的なつながり
3)食べること・排泄すること・つかうことに偏りのある生活習慣と健康障害
4 食べること・排泄することに関する身体機能
1)とり込まれる最初の入り口“口”(竹内千鶴子)
(1)「口」の機能を整えるとは (2)口から「からだ」を整えるとは
事例:食べることの不思議さ
事例:妻から学ぶ愛情という援助
2)排泄にみる生活習慣(伊東栄子)
(1)尿にみる「食べること・排泄すること・つかうこと」 (2)尿検査・食事調査結果から
III章 食生活を支える看護
1 活き活きと生きるための食を支える看護
1 成長・発達の観点から,食への援助(奥野順子)
1)小児の食の特徴
(1)哺乳期―生後0〜4か月のころ (2)離乳期―生後5か月から1歳を過ぎるころ (3)幼児期―1歳から就学前 (4)学童・思春期―小学生〜中学生のころ
2)子どもの食への看護の実際
事例:遊び食べをする子どもとその母親への看護
事例:輸液療法のため入院している食物アレルギーのある子どもと家族への看護
2 妊産婦・更年期の観点から,食への援助(久米美代子)
1)妊婦の食生活の特徴
(1)つわり (2)妊娠性貧血
2)授乳期の食生活の特徴
(1)食物の選択 (2)食生活の方法 (3)嗜好品と乳汁分泌抑制
3)更年期と食生活の特徴
(1)更年期症状と食生活 (2)循環器疾患とコレステロール (3)骨粗鬆症とカルシウム
事例:更年期症状の出現を機に食生活の見直しにつながった例
3 慢性病の観点から,糖尿病のある人への食への援助(太田美帆)
1)糖尿病における食事療法と患者教育の動向
2)糖尿病のある人の食生活の特徴
(1)「食事療法の指導」と「食への援助」の違い (2)治療としての食事療法 (3)「生活」の視点から「食への援助」を考える
事例:食生活としての見方を欠いた例
3)糖尿病看護実践としての食への援助
(1)その人の食の捉え方を尊重する
事例:折り合いがつかないことで苦痛が生じている例
(2)その人の主体性を尊重する
事例:主体性を尊重した関わり
(3)その人にとって現実的なゴールを共に考える
事例:食事療法は自分にはできないと思い込んでいる例
事例:成功体験を重ねていった例
事例:学ぶ過程に沿い,支えた例
4 慢性病の観点から,腎臓病のある人への食への援助(斉藤しのぶ)
1)腎疾患のある人の食生活の特徴
(1)腎臓病患者の特殊性 (2)腎機能低下を防ぐための生活調整
2)援助の実際
(1)事例提示
事例:食事療法への援助で活き活きとした生活を取り戻した血液透析患者の例
(2)各段階における食への援助と生活の変化
3)腎臓病看護実践としての食への援助
5 こころの病と食への援助
1)食とこころの関わり(田中美恵子)
(1)大脳生理学的観点からみた食とこころ (2)精神分析学的観点からみた食とこころ (3)食行動と社会文化的価値観―セルフケア行動としての食行動の観点から
2)こころの病と食行動
(1)うつ病患者への食の援助(小山達也)
事例:貧困妄想から拒食する患者への看護
(2)摂食障害と食行動(嵐 弘美)
事例:胃がんによる胃切除術後に嘔吐を繰り返し,精神症状のために低栄養状態の改善が困難であった患者(神経症無食欲症)
3)健康な力を引き出す食への援助
(1)精神障害者の健康な力を引き出すものとしての,食への援助
事例:地域で暮らす精神障害者への食事サービス-リハビリテーションの一貫としての食への援助(濱田由紀)
事例:慢性精神障害者の食の記憶-長期入院をしているPさんのカステラの思い出(田中美恵子)
4)地域で暮らす当事者の食の体験(十字路博史)
地域で暮らす精神障害・当事者の食の体験
5)まとめ
6 消化器の手術を受ける患者の食への援助(三浦美奈子)
1)胃切除術を受ける患者の特徴と看護援助
(1)術前の栄養障害:食事摂取量の低下 (2)術後食事が開始されるまでの絶食期間:ストレスへの対処 (3)食事開始後:食事方法変更への対処,家族への援助
2)援助の実際
(1)事例提示
事例:幽門側胃切除術を受ける患者への援助
2 拡がる看護の役割,人々の食生活に密着する看護
1 入院から外来通院中の患者に対する食への援助(柳井田恭子・正木治恵)
1)チームアプローチでの食への援助と看護の役割
(1)チームアプローチにおける看護の役割
事例:はじめて糖尿病と診断されたRさんへの食生活への支援
(2)糖尿病チームにおける看護師の役割
2)多職種チームで栄養をサポートするNST
(1)NSTでのかかわりの実際
事例:誤嚥性肺炎で入院したSさんに対して行われたチームアプローチ
(2)NSTチームメンバーの役割
(3)受け持ち看護師としての役割
3)チームでの看護の役割と食援助
2 中間施設の利用者に対する食への援助(田中靖代)
1)中間施設の利用者(ゲスト)の特徴と食への援助
(1)生活リハビリテーションを目的とする人
事例:仮性球麻痺で食道瘻を造設したNさんのケア
事例:誤嚥性肺炎を繰り返したUさんの家族介護をサポートする
(2)ADL自立の人(維持・予防とQOL向上を目的の人)
事例:基礎疾患に糖尿病をもつ85歳の男性Wさんとの関わり
(3)要観察・見守りを必要とする人
事例:アルツハイマー型認知症の後期にあるXさんの異食
2)看護の視点から捉えた栄養マネジメント
事例:「食べると死ぬぞ」-「もう我慢ができない」へのチャレンジ
3)家族への食支援・栄養士との連携効果
事例:不顕性誤嚥のあるZさんの「食支援」
4)まとめ
3 家庭や地域での食生活援助(田沼祥子)
1)介護のなかの食生活
(1)どんな病気だったか (2)生活と介護の状況
2)食生活の考え方
(1)食生活の安全と危険 (2)食事介助の難しさ (3)食材と調理法 (4)水分補給の困難と工夫 (5)デイサービスと宅配べんとう (6)パーティやレストランで
3)口腔ケアとスピーチセラピー
(1)口腔ケア (2)スピーチセラピー
4)在宅での食介助について専門家による研究と実践を望む
IV章 食看護学の今後の方向
1 病院と家庭の生活圏における人間の食の捉え方,3つの柱
1 生活圏と食(尾岸恵三子)
1)家庭を中心とした生活圏での食
2)病院を中心と生活圏での食
2 食事の準備
1)看護者の行う準備と工夫(尾岸恵三子)
2)食べることと姿勢(原 三紀子)
(1)食べるための一連の動作 (2)安全に食事をするための姿勢 (3)ゆっくりと心地よく食べることを支えること
3 おいしい食事(針谷順子)
1)おいしい食事とは
(1)おいしい食事と健康によい食事の関係 (2)健康を支える栄養素とおいしさを支える味の成分 (3)病気では,より強く二面性が求められる
2)おいしさを感じる人間について
(1)“おいしい”食事とはどんな食事なのか-おいしさは個人差があり,変化する (2)“おいしい”食事の基本は食歴 (3)健康に良い食事にも個人差がある
3)おいしさをもつ食事について
(1)料理・食事の組み合わせとおいしさ (2)おいしい食事をつくり,整える
4)おいしくする調理法と調味法
(1)食材の持ち味と調味 (2)食材の形態を変えることは味わいを変える (3)材料,調理法の複合と味 (4)食材料の質を変える加熱調味と味
5)おいしい食事をよりおいしく食べるために
4 こころの満足(尾岸恵三子)
1)食することと「こころの満足」
2)価値観を物質からこころへ
2 看護が支え・こだわり続けるQOLの向上をもたらす食看護の原点
1 変わりゆく食(尾岸恵三子)
1)食看護の原点
(1) 食物により生き・生かされている現実を患者と共に感じ,そして確認し,理解し合う (2)ナイチンゲールの食物と食事,ヒポクラテスの食物と食餌
2)食生活を健やかに,その人らしい食生活を支え続けることの意味と意義
(1)生きる喜びを引き出す (2)“自然界との折り合い” (3)自己表現としての食の意味
3)豊かな生活の創造を支える「食」看護
2 食看護学の今後の方向(尾岸恵三子)
1)「変わり行く食」の意味すること
(1)“豊かさ”の意味が問われる日本の食 (2)食の価値 (3)人々の健康観,幸福感と食生活の位置
2)国際的な視野に立ち,食生活を整える意味
3)食看護学における最近の研究方向
(1)「食看護学」に関連する研究の現状からの食看護学への提言
4)食看護学の今後の展望
参考資料
索引