第5版のはじめに
糖尿病とくに生活習慣病の代表的疾患である2型糖尿病は,近年,生活習慣の変化を背景に急増し,世界的にも“epidemic”と喩えられるほどになってきています.糖尿病の合併症に苦しむ患者さんも,残念ながら増加の一途を辿り,すでに10年以上前には後天的に視力を失う人の原因疾患の第1位に糖尿病網膜症が挙げられました.1998年には,糖尿病性腎症が新規透析導入患者の原腎疾患の第1位になり,その後もその比率は直線的に増加しつつあります.
一方では,この間,DCCT,Kumamoto StudyさらにUKPDSと糖尿病の治療と合併症に関する前向きな研究の成果が報告され,厳格な血糖コントロールが合併症の発症・進展の抑制に効果があることが実証されました.最近は,2型糖尿病の一次予防をめざした大規模研究の結果が報告され,生活習慣への強力な介入が明らかに発症を予防することが示されました.糖尿病の薬物治療についても,新しいインスリン抵抗性改善薬,速効型インスリン分泌促進薬,さらに第3世代のSU薬など新しい経口薬が次々に登場し,患者さんの病態に応じた使い分けが求められる時代を迎えています.インスリン製剤においてもヒトインスリンを修飾して,ヒトインスリン製剤では得られなかった利点をもつ製剤の開発が進み,すでに2種類の超速効型インスリン製剤が広く使われており,さらに超持続型というべき製剤も近く認可されるものと思われます.糖尿病患者に合併しやすい高血圧や高脂血症の治療薬も次々に新しい製剤が登場し,それらの有用性を示す多くのエビデンスも報告されています.
第4版を出版してすでに4年半経ち,これらの最近の進歩を盛り込んだ改訂を進め,このたび第5版として出版することとなりました.
本書が,糖尿病の診療にあたる先生方のみならず,新しく誕生しました多くの糖尿病療養指導士の方々の必携書としてお役に立つことを願っています.
2003年5月
東京女子医科大学糖尿病センター所長
岩本安彦
はじめに
21世紀へ向けての新しい時代の息吹きの中で,医療のパラダイムもまた変革のきざしをみせつつあります.糖尿病は,いまや時代の疾病構造を反映し,かつての結核に相当する国民病と呼ばれるほどにその発症頻度は高くなり,加えて網膜症や腎症に苦しむ痛ましい合併症をもった糖尿病の方々が急増しております.
糖尿病の治療は,Staged Diabetes Managementであるといったのは,アメリカ,ミネソタのInternational Diabetes CenterのDr.Mazzeでありました.わが国の糖尿病はNIDDMが多く,さまざまなStageの患者さんがいて,画一的な治療ができるものではありません.
このたび,『糖尿病治療マニュアル第3版』が発行されることになりました.これは1989年2月に当糖尿病センター編として出版されました『糖尿病治療マニュアル』をもとに新編としたものであります.装いも新たになった新編の大きな特徴は,最先端の医療情報が毎日の診療に反映され糖尿病治療に役立つよう,それぞれの項目ごとに簡潔・明瞭に記述されていることです.
新編にさいしては,私どもの糖尿病センタースタッフが長年の経験と叡知を出し合い,ディスカッションを重ねて編纂にあたりました.
当糖尿病センターは,1954年に設置された第2内科を前身として,1970年7月,平田幸正教授によって創設されました.第2内科を主宰された故中山光重教授も,小坂樹徳教授も,日本の糖尿病の指導的役割を果たしてこられた方であることは申すまでもありません.当センターは,歴代のそうした先達によって形作られ,教育され,つちかわれてきた教室であります.わが国に糖尿病センターはいくつかありますが,大学病院の診療科であるとともに講座名をもつ糖尿病センターは,東京女子医科大学糖尿病センターだけであります.
今回の新編は,日本の糖尿病学を開拓し,育成してこられたこれらの偉大な指導者の薫陶を受けた当センターの医師たちが,これまで学習させていただいたものを社会に還元すべきではないかという立場に立って,一生懸命執筆にあたりました.
アメリカのジョスリン糖尿病センターや,デンマークのステノ糖尿病センターを目指して日頃から研鑽をつまんでまいったその成果が本書に活かされ,さらに日常診療のお役に立てば,このうえない幸せでございます.
1995年5月新緑の季節に
東京女子医科大学糖尿病センター所長
大森安恵
糖尿病とくに生活習慣病の代表的疾患である2型糖尿病は,近年,生活習慣の変化を背景に急増し,世界的にも“epidemic”と喩えられるほどになってきています.糖尿病の合併症に苦しむ患者さんも,残念ながら増加の一途を辿り,すでに10年以上前には後天的に視力を失う人の原因疾患の第1位に糖尿病網膜症が挙げられました.1998年には,糖尿病性腎症が新規透析導入患者の原腎疾患の第1位になり,その後もその比率は直線的に増加しつつあります.
一方では,この間,DCCT,Kumamoto StudyさらにUKPDSと糖尿病の治療と合併症に関する前向きな研究の成果が報告され,厳格な血糖コントロールが合併症の発症・進展の抑制に効果があることが実証されました.最近は,2型糖尿病の一次予防をめざした大規模研究の結果が報告され,生活習慣への強力な介入が明らかに発症を予防することが示されました.糖尿病の薬物治療についても,新しいインスリン抵抗性改善薬,速効型インスリン分泌促進薬,さらに第3世代のSU薬など新しい経口薬が次々に登場し,患者さんの病態に応じた使い分けが求められる時代を迎えています.インスリン製剤においてもヒトインスリンを修飾して,ヒトインスリン製剤では得られなかった利点をもつ製剤の開発が進み,すでに2種類の超速効型インスリン製剤が広く使われており,さらに超持続型というべき製剤も近く認可されるものと思われます.糖尿病患者に合併しやすい高血圧や高脂血症の治療薬も次々に新しい製剤が登場し,それらの有用性を示す多くのエビデンスも報告されています.
第4版を出版してすでに4年半経ち,これらの最近の進歩を盛り込んだ改訂を進め,このたび第5版として出版することとなりました.
本書が,糖尿病の診療にあたる先生方のみならず,新しく誕生しました多くの糖尿病療養指導士の方々の必携書としてお役に立つことを願っています.
2003年5月
東京女子医科大学糖尿病センター所長
岩本安彦
はじめに
21世紀へ向けての新しい時代の息吹きの中で,医療のパラダイムもまた変革のきざしをみせつつあります.糖尿病は,いまや時代の疾病構造を反映し,かつての結核に相当する国民病と呼ばれるほどにその発症頻度は高くなり,加えて網膜症や腎症に苦しむ痛ましい合併症をもった糖尿病の方々が急増しております.
糖尿病の治療は,Staged Diabetes Managementであるといったのは,アメリカ,ミネソタのInternational Diabetes CenterのDr.Mazzeでありました.わが国の糖尿病はNIDDMが多く,さまざまなStageの患者さんがいて,画一的な治療ができるものではありません.
このたび,『糖尿病治療マニュアル第3版』が発行されることになりました.これは1989年2月に当糖尿病センター編として出版されました『糖尿病治療マニュアル』をもとに新編としたものであります.装いも新たになった新編の大きな特徴は,最先端の医療情報が毎日の診療に反映され糖尿病治療に役立つよう,それぞれの項目ごとに簡潔・明瞭に記述されていることです.
新編にさいしては,私どもの糖尿病センタースタッフが長年の経験と叡知を出し合い,ディスカッションを重ねて編纂にあたりました.
当糖尿病センターは,1954年に設置された第2内科を前身として,1970年7月,平田幸正教授によって創設されました.第2内科を主宰された故中山光重教授も,小坂樹徳教授も,日本の糖尿病の指導的役割を果たしてこられた方であることは申すまでもありません.当センターは,歴代のそうした先達によって形作られ,教育され,つちかわれてきた教室であります.わが国に糖尿病センターはいくつかありますが,大学病院の診療科であるとともに講座名をもつ糖尿病センターは,東京女子医科大学糖尿病センターだけであります.
今回の新編は,日本の糖尿病学を開拓し,育成してこられたこれらの偉大な指導者の薫陶を受けた当センターの医師たちが,これまで学習させていただいたものを社会に還元すべきではないかという立場に立って,一生懸命執筆にあたりました.
アメリカのジョスリン糖尿病センターや,デンマークのステノ糖尿病センターを目指して日頃から研鑽をつまんでまいったその成果が本書に活かされ,さらに日常診療のお役に立てば,このうえない幸せでございます.
1995年5月新緑の季節に
東京女子医科大学糖尿病センター所長
大森安恵
はじめに
I 糖尿病と検査
1 糖尿病の診断と治療に必要な検査
1.糖尿病の分類と診断基準
2.血糖
3.尿糖
4.ブドウ糖負荷試験(GTT)
5.インスリン(IRI)
6.C-ペプチド(CPR)
7.ケトン体
2 長期管理のための検査
1.HbA1C,HbA1
2.フルクトサミン(FRA)
3.グリコアルブミン(GA)
4.1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)
5.微量アルブミン尿・尿蛋白
3 成因に関する検査
1.膵島抗体
2.グルタミン酸脱炭酸酵素抗体(GAD抗体)
3.インスリン自己抗体(IAA)
4.インスリン受容体抗体
5.HLA
6.2型糖尿病の発症に関与する遺伝子
II 糖尿病治療・管理の実際
1 初診時の治療方針の立て方
1.初診時における治療方針
2 糖尿病の食事療法
1.食事療法の基本
2.食事療法の実際
3.食事療法にあたっての留意点
3 糖尿病の運動療法
1.運動療法の基本
2.運動療法の実際
3.運動療法にあたっての留意点
4 経口血糖降下薬
1.経口血糖降下薬
5 インスリン療法
1.インスリン療法
6 強化インスリン療法
1.強化インスリン療法とは
2.強化インスリン療法のすすめ方
3.強化インスリン療法の実際と問題点
7 血糖自己測定
1.血糖自己測定
III 糖尿病合併症の治療と管理
1 糖尿病の急性合併症―治療と管理
1.糖尿病性昏睡(DKA)
2.高浸透圧性(非ケトン性)糖尿病昏睡(HONK)
3.低血糖
4.糖尿病と感染症
5.手術時の血糖コントロール
2 糖尿病に特有な慢性合併症―治療と管理
1.糖尿病性神経障害
2.糖尿病足病変
3.糖尿病眼合併症
4.糖尿病性腎症
5.末期腎不全期の対策
3 糖尿病における動脈硬化症の治療と管理
1.糖尿病における心血管障害
2.糖尿病における脳血管障害
3.糖尿病における末梢血管障害
4 糖尿病における皮膚・骨粗鬆症の治療と管理
1.糖尿病における皮膚
2.糖尿病における骨
5 糖尿病における高血圧の治療と管理
1.糖尿病と高血圧
2.非薬物療法
3.薬物療法
6 糖尿病における高脂血症・肥満の治療と管理
1.糖尿病における高脂血症
2.糖尿病における肥満
IV 特別な配慮を必要とする糖尿病
1 小児・ヤング糖尿病
1.小児の糖尿病
2.ヤング糖尿病
2 糖尿病妊婦―計画妊娠から産褥まで
1.妊娠希望者に対する管理と教育指針
2.妊娠中の治療
3.産褥期の治療
V 糖尿病患者教育プログラム
1 糖尿病患者教育システム
1.患者教育の基本と具体例
2 ティーチングナースによる患者教育
1.ナースによる患者教育の実際
3 管理栄養士による栄養・食事指導
1.栄養・食事指導の実際
2.栄養・食事指導の評価
4 療養指導士制度について
1.療養指導士誕生までの経緯
2.療養指導士の役割と位置づけ
索引
I 糖尿病と検査
1 糖尿病の診断と治療に必要な検査
1.糖尿病の分類と診断基準
2.血糖
3.尿糖
4.ブドウ糖負荷試験(GTT)
5.インスリン(IRI)
6.C-ペプチド(CPR)
7.ケトン体
2 長期管理のための検査
1.HbA1C,HbA1
2.フルクトサミン(FRA)
3.グリコアルブミン(GA)
4.1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)
5.微量アルブミン尿・尿蛋白
3 成因に関する検査
1.膵島抗体
2.グルタミン酸脱炭酸酵素抗体(GAD抗体)
3.インスリン自己抗体(IAA)
4.インスリン受容体抗体
5.HLA
6.2型糖尿病の発症に関与する遺伝子
II 糖尿病治療・管理の実際
1 初診時の治療方針の立て方
1.初診時における治療方針
2 糖尿病の食事療法
1.食事療法の基本
2.食事療法の実際
3.食事療法にあたっての留意点
3 糖尿病の運動療法
1.運動療法の基本
2.運動療法の実際
3.運動療法にあたっての留意点
4 経口血糖降下薬
1.経口血糖降下薬
5 インスリン療法
1.インスリン療法
6 強化インスリン療法
1.強化インスリン療法とは
2.強化インスリン療法のすすめ方
3.強化インスリン療法の実際と問題点
7 血糖自己測定
1.血糖自己測定
III 糖尿病合併症の治療と管理
1 糖尿病の急性合併症―治療と管理
1.糖尿病性昏睡(DKA)
2.高浸透圧性(非ケトン性)糖尿病昏睡(HONK)
3.低血糖
4.糖尿病と感染症
5.手術時の血糖コントロール
2 糖尿病に特有な慢性合併症―治療と管理
1.糖尿病性神経障害
2.糖尿病足病変
3.糖尿病眼合併症
4.糖尿病性腎症
5.末期腎不全期の対策
3 糖尿病における動脈硬化症の治療と管理
1.糖尿病における心血管障害
2.糖尿病における脳血管障害
3.糖尿病における末梢血管障害
4 糖尿病における皮膚・骨粗鬆症の治療と管理
1.糖尿病における皮膚
2.糖尿病における骨
5 糖尿病における高血圧の治療と管理
1.糖尿病と高血圧
2.非薬物療法
3.薬物療法
6 糖尿病における高脂血症・肥満の治療と管理
1.糖尿病における高脂血症
2.糖尿病における肥満
IV 特別な配慮を必要とする糖尿病
1 小児・ヤング糖尿病
1.小児の糖尿病
2.ヤング糖尿病
2 糖尿病妊婦―計画妊娠から産褥まで
1.妊娠希望者に対する管理と教育指針
2.妊娠中の治療
3.産褥期の治療
V 糖尿病患者教育プログラム
1 糖尿病患者教育システム
1.患者教育の基本と具体例
2 ティーチングナースによる患者教育
1.ナースによる患者教育の実際
3 管理栄養士による栄養・食事指導
1.栄養・食事指導の実際
2.栄養・食事指導の評価
4 療養指導士制度について
1.療養指導士誕生までの経緯
2.療養指導士の役割と位置づけ
索引





