やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 昨年,血液培養に関するCumitechの翻訳本を出したところ,予想以上に好評であった.「よく参考にさせていただいております」という声に気を良くし,「是非,次も出してください」という声にその気になってしまい,本書を出版させていただくことにした.
 数あるCumitechのなかで下気道感染症を次の翻訳の対象とした理由は,臨床において呼吸器感染症が占める比率が高いことはもちろんであるが,この領域は微生物検査のなかでもいまだに様々な課題を抱えているためである.いかにして良質の検体を採取するか呼吸器専門の医師が苦労している一方で,一部の医師からは唾液に近い呼吸器検体が検査室に届けられているのが現実である.本書は,呼吸器検体を検査するうえで欠かせない検体の質という問題についても,過去の様々な検討結果をもとに一定の方向性を与えている.
 さらに呼吸器領域に限ったことではないが,我々は検査のコストを今まで以上に重要視せずにはおれない状況に立たされている.患者の診断や治療に役立つ検査を純粋に追い求めることは,残念ながら現在の健康保険の点数評価では経営的に困難である.そのような意味で,本書の冒頭にもあるように,「妥当なレベルの正確性を保ち,コストを最小限に抑えながら,臨床的に最大限有用な情報を迅速に提供する」ことができれば,微生物検査の価値をより高めることができると思われる.
 本書の翻訳にあたっては,文章のチェックだけでなく,追加資料の作成においても,西山宏幸氏,小野恵美氏,村上日奈子氏,千葉勝巳氏,金山明子氏の方々に臨床検査技師として多大なご協力をいただいた.また追加資料の画像の一部については,日本ベクトン・ディッキンソン株式会社,栄研化学株式会社にご協力いただいた.ここに深く感謝の意を表したい.また医歯薬出版株式会社には,遅れがちなスケジュールの中でうまく取り仕切っていただき,予定通りに出版にこぎ着けることができたことに感謝申し上げる.
 ご存知の通り,微生物検査の領域においては,検査を担当する技師の裁量が大きくその後の検査結果に影響する.本書が臨床検査技師をはじめとする多くの方々にとって,さらに上のレベルの業務を目指す一助となれば私どもにとってうれしいかぎりである.
 2007年12月
 松本哲哉・満田年宏・蛹エ克紀
 序
 本書で使用されている略語一覧
はじめに
臨床的特徴と病原体
検体採取法と輸送法
 検体の種類
 検査法による臨床的有用性
検体処理法
初代培養用培地
グラム染色の評価と報告
 グラム染色の有用性を支持するエビデンス
 グラム染色によるスクリーニングの基準
 直接塗抹標本の解釈と報告の仕方
 要約
下気道感染症における細菌培養結果の評価
 プロトコル1:Q-スコア・システム(Q-Score System)
 プロトコル2:Q234システム
 プロトコル3:白血球との関係
変更の実施
下気道感染症と病原体
 急性気管支炎
 細気管支炎
 急性肺炎
 慢性肺炎
 嚢胞性線維症患者からの呼吸器系の培養
公衆衛生上の重要な点
検査の頻度
支払いとコード化の問題点
 CPT-4コード
 ICD-9-CMコード
 DRGコード
 データ評価
文献

 訳者による追加資料
 索引