はじめに
リハビリテーション(以下リハ)栄養の4冊目の書籍を医歯薬出版株式会社から出版させていただくことになりました.今回はサルコペニアの摂食・嚥下障害に着目した書籍としました.サルコペニアはこの数年でマスコミに取り上げられる機会が増え,認知度が上昇しています.一方,サルコペニアの摂食・嚥下障害は,摂食・嚥下リハに取り組む医療人の中でもあまり知られていません.
サルコペニアの摂食・嚥下障害に関する臨床研究は,非常に少ないのが現状です.現時点で書籍を出版するのは時期尚早という意見も当然ありました.実際,エビデンスが少ない状況で執筆依頼をすることになり,多くの執筆者にご迷惑をお掛けしました.
それでも出版を決意した理由は,臨床現場でサルコペニアの摂食・嚥下障害と判断されずに,適切なリハ栄養管理が行われていないからです.サルコペニアの摂食・嚥下障害の一因は低栄養です.低栄養が原因で摂食・嚥下障害となっているため,摂食・嚥下機能の改善には栄養改善が大切です.しかし,栄養改善を考慮しないで摂食・嚥下リハを行っていることがよくあります.これでは最高の摂食・嚥下機能を引き出すことは困難です.
廃用性の摂食・嚥下障害という言葉があります.単に廃用だけで摂食・嚥下機能が低下しているのであれば,嚥下筋のレジスタンストレーニングや直接訓練で摂食・嚥下機能は改善するはずです.しかし実際には,摂食・嚥下機能が改善しないことがあります.これは摂食・嚥下障害の原因に,廃用だけでなく加齢,低栄養,疾患も含まれるからです.誤嚥性肺炎後にはこれらすべての原因を合併して,サルコペニアの摂食・嚥下障害が悪化することが多いです.
サルコペニアの摂食・嚥下障害は,現状ではエビデンスよりコンセプトの要素が強いです.エビデンスの点では物足りないかもしれません.しかし,コンセプトのないところに十分なエビデンスはつくれません.今後,エビデンスを創出するための書籍という位置づけです.
今回は各領域で第一人者の多職種に執筆を依頼しました.執筆しにくい状況にもかかわらず,引き受けてくださった執筆者の皆様に深謝いたします.摂食・嚥下障害に限らず,サルコペニア全般の学習にも有益な書籍となりました.
2011年に日本リハビリテーション栄養研究会を立ち上げました(研究会ホームページhttps://sites.google.com/site/rehabnutrition/).2012年10月時点での会員数は,約1,600人と1年前より急増しました.リハ栄養に関心のある多くの医療人に入会していただきたいと思います.入会方法は研究会のホームページを参照してください.
適切なリハ栄養管理を行えば経口摂取できる可能性があるのに,低栄養が放置されているために経口摂取できない摂食・嚥下障害患者がいます.早期経口摂取と早期離床を推進すれば,廃用によるサルコペニアの摂食・嚥下障害の予防は可能です.しかし,「とりあえず安静,とりあえず禁食」という根拠のない安静や禁食が今でも行われています.この書籍がサルコペニアの摂食・嚥下障害研究と臨床現場におけるリハ栄養の実践の推進となれば幸いです.
最後に医歯薬出版株式会社の小口真司さんには,今回も企画,執筆,編集などで大変お世話になりました.心よりお礼申し上げます.
2012年11月 若林秀隆
リハビリテーション(以下リハ)栄養の4冊目の書籍を医歯薬出版株式会社から出版させていただくことになりました.今回はサルコペニアの摂食・嚥下障害に着目した書籍としました.サルコペニアはこの数年でマスコミに取り上げられる機会が増え,認知度が上昇しています.一方,サルコペニアの摂食・嚥下障害は,摂食・嚥下リハに取り組む医療人の中でもあまり知られていません.
サルコペニアの摂食・嚥下障害に関する臨床研究は,非常に少ないのが現状です.現時点で書籍を出版するのは時期尚早という意見も当然ありました.実際,エビデンスが少ない状況で執筆依頼をすることになり,多くの執筆者にご迷惑をお掛けしました.
それでも出版を決意した理由は,臨床現場でサルコペニアの摂食・嚥下障害と判断されずに,適切なリハ栄養管理が行われていないからです.サルコペニアの摂食・嚥下障害の一因は低栄養です.低栄養が原因で摂食・嚥下障害となっているため,摂食・嚥下機能の改善には栄養改善が大切です.しかし,栄養改善を考慮しないで摂食・嚥下リハを行っていることがよくあります.これでは最高の摂食・嚥下機能を引き出すことは困難です.
廃用性の摂食・嚥下障害という言葉があります.単に廃用だけで摂食・嚥下機能が低下しているのであれば,嚥下筋のレジスタンストレーニングや直接訓練で摂食・嚥下機能は改善するはずです.しかし実際には,摂食・嚥下機能が改善しないことがあります.これは摂食・嚥下障害の原因に,廃用だけでなく加齢,低栄養,疾患も含まれるからです.誤嚥性肺炎後にはこれらすべての原因を合併して,サルコペニアの摂食・嚥下障害が悪化することが多いです.
サルコペニアの摂食・嚥下障害は,現状ではエビデンスよりコンセプトの要素が強いです.エビデンスの点では物足りないかもしれません.しかし,コンセプトのないところに十分なエビデンスはつくれません.今後,エビデンスを創出するための書籍という位置づけです.
今回は各領域で第一人者の多職種に執筆を依頼しました.執筆しにくい状況にもかかわらず,引き受けてくださった執筆者の皆様に深謝いたします.摂食・嚥下障害に限らず,サルコペニア全般の学習にも有益な書籍となりました.
2011年に日本リハビリテーション栄養研究会を立ち上げました(研究会ホームページhttps://sites.google.com/site/rehabnutrition/).2012年10月時点での会員数は,約1,600人と1年前より急増しました.リハ栄養に関心のある多くの医療人に入会していただきたいと思います.入会方法は研究会のホームページを参照してください.
適切なリハ栄養管理を行えば経口摂取できる可能性があるのに,低栄養が放置されているために経口摂取できない摂食・嚥下障害患者がいます.早期経口摂取と早期離床を推進すれば,廃用によるサルコペニアの摂食・嚥下障害の予防は可能です.しかし,「とりあえず安静,とりあえず禁食」という根拠のない安静や禁食が今でも行われています.この書籍がサルコペニアの摂食・嚥下障害研究と臨床現場におけるリハ栄養の実践の推進となれば幸いです.
最後に医歯薬出版株式会社の小口真司さんには,今回も企画,執筆,編集などで大変お世話になりました.心よりお礼申し上げます.
2012年11月 若林秀隆
第1章 サルコペニアの基本
1.サルコペニアとは(若林秀隆)
2.サルコペニアの診断(雨海照祥)
3.サルコペニアの原因
(1)加齢(葛谷雅文)
(2)活動(廃用)(稲川利光)
(3)栄養(飢餓)(熊谷直子)
(4)侵襲および炎症(東別府直紀)
(5)悪液質(荒金英樹)
(6)原疾患(神経疾患など)(巨島文子)
4.サルコペニアの対応
(1)リハビリテーション栄養(若林秀隆)
(2)運動療法(飯田有輝)
(3)栄養療法(吉田貞夫)
(4)薬物療法(林 宏行)
5.サルコペニアの予防(アンチエイジング)(百崎 良)
第2章 サルコペニアの摂食・嚥下障害
1.摂食・嚥下のメカニズム(戸原 玄 阿部仁子 中山渕利)
2.サルコペニアによる摂食・嚥下障害の評価と治療(園田明子)
3.口腔・舌筋のサルコペニア(藤本篤士)
4.咀嚼筋のサルコペニア(大野友久)
5.嚥下筋のサルコペニア(糸田昌隆)
6.呼吸筋のサルコペニア(粟井一哉)
第3章 主な疾患・病態の摂食・嚥下リハビリテーション栄養
1.誤嚥性肺炎(若林秀隆)
2.脳卒中(藤島一郎)
3.認知症(野原幹司)
4.大腿骨頸部骨折(御子神由紀子)
5.がん(大野 綾)
6.パーキンソン病(佐久川明美)
7.脊髄小脳変性症(横山絵里子)
8.強皮症・多発性筋炎(瀬田 拓)
9.筋萎縮性側索硬化症(森 隆志)
10.慢性閉塞性肺疾患(藤谷順子)
11.慢性心不全(諸冨伸夫)
12.慢性腎不全(透析)(國枝顕二郎 上月正博)
13.後期高齢者(栢下 淳 山縣誉志江)
14.口腔乾燥(岸本裕充)
15.口腔衛生不良(金久弥生 板木咲子)
16.義歯不適合(古屋純一)
索引
1.サルコペニアとは(若林秀隆)
2.サルコペニアの診断(雨海照祥)
3.サルコペニアの原因
(1)加齢(葛谷雅文)
(2)活動(廃用)(稲川利光)
(3)栄養(飢餓)(熊谷直子)
(4)侵襲および炎症(東別府直紀)
(5)悪液質(荒金英樹)
(6)原疾患(神経疾患など)(巨島文子)
4.サルコペニアの対応
(1)リハビリテーション栄養(若林秀隆)
(2)運動療法(飯田有輝)
(3)栄養療法(吉田貞夫)
(4)薬物療法(林 宏行)
5.サルコペニアの予防(アンチエイジング)(百崎 良)
第2章 サルコペニアの摂食・嚥下障害
1.摂食・嚥下のメカニズム(戸原 玄 阿部仁子 中山渕利)
2.サルコペニアによる摂食・嚥下障害の評価と治療(園田明子)
3.口腔・舌筋のサルコペニア(藤本篤士)
4.咀嚼筋のサルコペニア(大野友久)
5.嚥下筋のサルコペニア(糸田昌隆)
6.呼吸筋のサルコペニア(粟井一哉)
第3章 主な疾患・病態の摂食・嚥下リハビリテーション栄養
1.誤嚥性肺炎(若林秀隆)
2.脳卒中(藤島一郎)
3.認知症(野原幹司)
4.大腿骨頸部骨折(御子神由紀子)
5.がん(大野 綾)
6.パーキンソン病(佐久川明美)
7.脊髄小脳変性症(横山絵里子)
8.強皮症・多発性筋炎(瀬田 拓)
9.筋萎縮性側索硬化症(森 隆志)
10.慢性閉塞性肺疾患(藤谷順子)
11.慢性心不全(諸冨伸夫)
12.慢性腎不全(透析)(國枝顕二郎 上月正博)
13.後期高齢者(栢下 淳 山縣誉志江)
14.口腔乾燥(岸本裕充)
15.口腔衛生不良(金久弥生 板木咲子)
16.義歯不適合(古屋純一)
索引








