第2版の序文
5年前に『PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養』を医歯薬出版株式会社から出版させていただきました.その当時,リハビリテーションと栄養のつながりは,嚥下調整食を除くとごくわずかしかありませんでした.リハビリテーションの学会に行くと栄養の発表はほぼ皆無,栄養の学会に行くとリハビリテーションの発表はほぼ皆無という状況でした.ほとんどの医療人がリハビリテーションと栄養を完全に分けていました.そこでリハビリテーションにおける栄養の大切さを伝えたいという思いで,『PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養』を執筆しました.結果として多くの反響をいただき今回,第2版を出版させていただくことになりました.
主な変更点は,本文とコラムにリハビリテーション栄養の最新情報を含めたことと,4章構成であったものを3章構成にしたことです.地域連携は,地域一体型NSTからリハビリテーション栄養サマリーの紹介にしました.サルコペニアの定義が変わり,サルコペニアの摂食嚥下障害というコンセプトができました.
現在ではリハビリテーション栄養という言葉と考え方が,リハビリテーションと栄養にかかわる医療人にかなり浸透しました.リハビリテーションの学会に行くと栄養の発表が増え,栄養の学会に行くとリハビリテーションの発表が増えました.リハビリテーション栄養に関する書籍は約10冊になりました.2011年に設立した日本リハビリテーション栄養研究会(https://sites.google.com/site/rehabnutrition/)の会員数は,4,000人を超えました.リハビリテーションと栄養を同時に考えることの必要性が,認識されつつあります.
今後,リハビリテーション栄養をさらに発展させるためには,実践と研究の両立が必要です.リハビリテーション栄養というコンセプトは浸透しました.しかし,リハビリテーション栄養の実践の浸透は不十分です.回復期リハビリテーション病院や高度急性期病院だけでなく,地域包括ケア病棟,介護老人保健施設など高齢者・障害者施設,在宅での実践の普及が,次の5年の重要課題です.
リハビリテーション栄養のガイドライン作成も,次の5年の重要課題です.ガイドラインを作成するには,リハビリテーション栄養の研究を多くの医療人が行い,エビデンスを構築することが必要です.そのため日本リハビリテーション栄養研究会では,臨床研究を学習する機会としてリハビリテーション栄養研究デザイン学習会を企画しています.会員限定企画ですので,興味のある方はぜひ日本リハビリテーション栄養研究会にご入会ください.
リハビリテーション栄養に関する原点の書籍が,『PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養』です.私の人生を変えた書籍といっても過言ではありません.なぜリハビリテーション栄養が大切かを,より多くの医療人に知っていただく第2版になれば幸いです.
最後に医歯薬出版株式会社の小口真司さんには,第2版の出版というご提案をいただき,今回も大変お世話になりました.心よりお礼申し上げます.
2015年4月
若林秀隆
第1版の序文
以前の私は,PT・OT・STを行っている患者さんの栄養状態は良好で,臨床栄養管理は適切だと思い込んでいました.機能評価と予後予測の際にも,栄養のことは全く考えていませんでした.しかし,不適切な臨床栄養管理などのために餓死した患者さんを何人もみてきました.餓死寸前の患者さんに必要なものは,訓練ではなく栄養です.この経験からリハビリテーション(以下リハ)科医師とPT・OT・STは,栄養状態を含めて全人的に評価して,それに見合った訓練を実施しなければいけないと痛感しました.
私は前医で栄養サポートチーム(NST)を立ち上げました.NSTで回診する患者さんの多くはすでにPT・OT・STを行っていて,リハとNSTが協働して初めて,ADLやQOLが改善する患者さんを経験しました.自分が考えていた予後予測以上に改善していく患者さんをみて,栄養ケアなくしてリハなし,リハなくして栄養ケアなしと確信しています.
現在,NSTのメンバーにPT・OT・STがいることは少ないです.経口摂取にかかわる摂食・嚥下リハを除くと,リハとNSTの連携が良好ともいえません.低栄養状態で不適切な臨床栄養管理が行われている患者さんに,安易にレジスタンストレーニングを行うPT・OT・STがいます.そんな状況に思い悩んでいたときに,PT・OT・ST向けの栄養の本がないのでつくってくださいとSTに頼まれました.そこで医歯薬出版に相談したところ,制作していただけることになりました.
栄養ケアプランの立案は比較的難しいですが,栄養状態の基本的な評価は難しくありません.PT・OT・STなら誰でも習得できます.栄養評価を自分で行えるようになると,栄養障害の患者さんの多さを実感できます.栄養状態によって訓練内容を変更する必要があるため,栄養状態はバイタルサインの1つです.より多くのPT・OT・STが栄養状態を評価できるようになり,NSTに参画して成果を出してほしいと思います.本書がその一助になれば幸いです.
本書の主な対象はPT・OT・STですが,管理栄養士,薬剤師,看護師,臨床検査技師などリハ関連職種以外の方々は,リハ栄養の基本を学習できます.臨床栄養管理の目標の1つは,蛋白異化を少なくして蛋白同化を促すことです.筋蛋白の増加には,レジスタンストレーニングの併用が必要です.体重が増えても筋肉ではなく脂肪が増えてしまっては,ADLやQOLはあまり改善しません.NSTとリハの適切な連携で,ADLやQOLがより向上することを理解していただければ幸いです.
振り返ってみるとNSTを通じて多くの医療人と患者さんに出会い,多くのことを学ばせていただきました.皆様との出会いがなければ,私は今でも栄養を知らずに不適切な訓練を処方するリハ科医師だったはずです.本当にありがとうございました.今後もともに学び成長したいと考えています.
最後に医歯薬出版株式会社の担当の方には,執筆や編集で大変お世話になりました.心よりお礼申し上げます.
2010年1月
若林秀隆
5年前に『PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養』を医歯薬出版株式会社から出版させていただきました.その当時,リハビリテーションと栄養のつながりは,嚥下調整食を除くとごくわずかしかありませんでした.リハビリテーションの学会に行くと栄養の発表はほぼ皆無,栄養の学会に行くとリハビリテーションの発表はほぼ皆無という状況でした.ほとんどの医療人がリハビリテーションと栄養を完全に分けていました.そこでリハビリテーションにおける栄養の大切さを伝えたいという思いで,『PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養』を執筆しました.結果として多くの反響をいただき今回,第2版を出版させていただくことになりました.
主な変更点は,本文とコラムにリハビリテーション栄養の最新情報を含めたことと,4章構成であったものを3章構成にしたことです.地域連携は,地域一体型NSTからリハビリテーション栄養サマリーの紹介にしました.サルコペニアの定義が変わり,サルコペニアの摂食嚥下障害というコンセプトができました.
現在ではリハビリテーション栄養という言葉と考え方が,リハビリテーションと栄養にかかわる医療人にかなり浸透しました.リハビリテーションの学会に行くと栄養の発表が増え,栄養の学会に行くとリハビリテーションの発表が増えました.リハビリテーション栄養に関する書籍は約10冊になりました.2011年に設立した日本リハビリテーション栄養研究会(https://sites.google.com/site/rehabnutrition/)の会員数は,4,000人を超えました.リハビリテーションと栄養を同時に考えることの必要性が,認識されつつあります.
今後,リハビリテーション栄養をさらに発展させるためには,実践と研究の両立が必要です.リハビリテーション栄養というコンセプトは浸透しました.しかし,リハビリテーション栄養の実践の浸透は不十分です.回復期リハビリテーション病院や高度急性期病院だけでなく,地域包括ケア病棟,介護老人保健施設など高齢者・障害者施設,在宅での実践の普及が,次の5年の重要課題です.
リハビリテーション栄養のガイドライン作成も,次の5年の重要課題です.ガイドラインを作成するには,リハビリテーション栄養の研究を多くの医療人が行い,エビデンスを構築することが必要です.そのため日本リハビリテーション栄養研究会では,臨床研究を学習する機会としてリハビリテーション栄養研究デザイン学習会を企画しています.会員限定企画ですので,興味のある方はぜひ日本リハビリテーション栄養研究会にご入会ください.
リハビリテーション栄養に関する原点の書籍が,『PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養』です.私の人生を変えた書籍といっても過言ではありません.なぜリハビリテーション栄養が大切かを,より多くの医療人に知っていただく第2版になれば幸いです.
最後に医歯薬出版株式会社の小口真司さんには,第2版の出版というご提案をいただき,今回も大変お世話になりました.心よりお礼申し上げます.
2015年4月
若林秀隆
第1版の序文
以前の私は,PT・OT・STを行っている患者さんの栄養状態は良好で,臨床栄養管理は適切だと思い込んでいました.機能評価と予後予測の際にも,栄養のことは全く考えていませんでした.しかし,不適切な臨床栄養管理などのために餓死した患者さんを何人もみてきました.餓死寸前の患者さんに必要なものは,訓練ではなく栄養です.この経験からリハビリテーション(以下リハ)科医師とPT・OT・STは,栄養状態を含めて全人的に評価して,それに見合った訓練を実施しなければいけないと痛感しました.
私は前医で栄養サポートチーム(NST)を立ち上げました.NSTで回診する患者さんの多くはすでにPT・OT・STを行っていて,リハとNSTが協働して初めて,ADLやQOLが改善する患者さんを経験しました.自分が考えていた予後予測以上に改善していく患者さんをみて,栄養ケアなくしてリハなし,リハなくして栄養ケアなしと確信しています.
現在,NSTのメンバーにPT・OT・STがいることは少ないです.経口摂取にかかわる摂食・嚥下リハを除くと,リハとNSTの連携が良好ともいえません.低栄養状態で不適切な臨床栄養管理が行われている患者さんに,安易にレジスタンストレーニングを行うPT・OT・STがいます.そんな状況に思い悩んでいたときに,PT・OT・ST向けの栄養の本がないのでつくってくださいとSTに頼まれました.そこで医歯薬出版に相談したところ,制作していただけることになりました.
栄養ケアプランの立案は比較的難しいですが,栄養状態の基本的な評価は難しくありません.PT・OT・STなら誰でも習得できます.栄養評価を自分で行えるようになると,栄養障害の患者さんの多さを実感できます.栄養状態によって訓練内容を変更する必要があるため,栄養状態はバイタルサインの1つです.より多くのPT・OT・STが栄養状態を評価できるようになり,NSTに参画して成果を出してほしいと思います.本書がその一助になれば幸いです.
本書の主な対象はPT・OT・STですが,管理栄養士,薬剤師,看護師,臨床検査技師などリハ関連職種以外の方々は,リハ栄養の基本を学習できます.臨床栄養管理の目標の1つは,蛋白異化を少なくして蛋白同化を促すことです.筋蛋白の増加には,レジスタンストレーニングの併用が必要です.体重が増えても筋肉ではなく脂肪が増えてしまっては,ADLやQOLはあまり改善しません.NSTとリハの適切な連携で,ADLやQOLがより向上することを理解していただければ幸いです.
振り返ってみるとNSTを通じて多くの医療人と患者さんに出会い,多くのことを学ばせていただきました.皆様との出会いがなければ,私は今でも栄養を知らずに不適切な訓練を処方するリハ科医師だったはずです.本当にありがとうございました.今後もともに学び成長したいと考えています.
最後に医歯薬出版株式会社の担当の方には,執筆や編集で大変お世話になりました.心よりお礼申し上げます.
2010年1月
若林秀隆
Chapter 1 リハビリテーションと栄養
1 リハビリテーション栄養
なぜリハビリテーションに栄養が必要か
リハビリテーション栄養
ICFと栄養
訓練効果を高める栄養
フレイル
2 低栄養時の代謝
同化と異化
5大栄養素の基本
低栄養の分類
3 運動栄養学とリハビリテーション
サルコペニア
栄養と運動のタイミング
筋力を高める栄養
持久力を高める栄養
訓練効果を高めるスケジュール
4 栄養状態悪化時のリハビリテーション
機能改善か機能維持か
栄養指標の目安
栄養状態悪化時の訓練
COLUMN
サプリメントとリハビリテーション
プレハビリテーション
サルコペニア肥満
サルコペニアの研究会
Chapter 2 リハビリテーション栄養ケアマネジメント
1 リハビリテーション栄養ケアマネジメント
マネジメントとは
セルフマネジメント
リハビリテーション栄養ケアマネジメントとは
2 リハビリテーション栄養スクリーニング
SGA
MNA(R)−SF
EAT−10
身体計測
検査値
3 リハビリテーション栄養アセスメント
身体計測
検査値
サルコペニアの原因と程度
摂食嚥下機能評価
老嚥とサルコペニアの摂食嚥下障害
リハビリテーションの種類・内容・時間
エネルギー消費量
エネルギー摂取量
4 リハビリテーション栄養ケアプラン
リハビリテーション栄養のゴール設定
投与ルート
推定エネルギー必要量
リハビリテーションの種類・内容・時間
5 NSTにおけるPT・OT・STの役割
NSTとは
NSTとリハビリテーションの関連
チーム形態の種類
PT・OT・STの役割
リハビリテーション栄養の実践
COLUMN
リハビリテーション栄養とEBCP
リハビリテーション訓練室に栄養剤を
Refeeding症候群
リハビリテーション栄養のNST48プロジェクト
Chapter 3 主な疾患のリハビリテーション栄養
1 廃用症候群
2 脳卒中
3 パーキンソン病
4 がん
5 誤嚥性肺炎
6 褥瘡
7 大腿骨近位部骨折
8 関節リウマチ
9 慢性閉塞性肺疾患
10 慢性心不全
COLUMN
日本リハビリテーション栄養研究会と臨床研究
ERASとESSENSE
認知症のリハビリテーション栄養
脳性麻痺とリハビリテーション栄養
在宅リハビリテーション栄養
リハビリテーション栄養を海外に
神経性食思不振症とリハビリテーション栄養
リハビリテーション栄養ポケットガイド
あなたの栄養足りていますか
さらに自己学習したいPT・OT・STのための推奨サイトと推奨図書
索引
1 リハビリテーション栄養
なぜリハビリテーションに栄養が必要か
リハビリテーション栄養
ICFと栄養
訓練効果を高める栄養
フレイル
2 低栄養時の代謝
同化と異化
5大栄養素の基本
低栄養の分類
3 運動栄養学とリハビリテーション
サルコペニア
栄養と運動のタイミング
筋力を高める栄養
持久力を高める栄養
訓練効果を高めるスケジュール
4 栄養状態悪化時のリハビリテーション
機能改善か機能維持か
栄養指標の目安
栄養状態悪化時の訓練
COLUMN
サプリメントとリハビリテーション
プレハビリテーション
サルコペニア肥満
サルコペニアの研究会
Chapter 2 リハビリテーション栄養ケアマネジメント
1 リハビリテーション栄養ケアマネジメント
マネジメントとは
セルフマネジメント
リハビリテーション栄養ケアマネジメントとは
2 リハビリテーション栄養スクリーニング
SGA
MNA(R)−SF
EAT−10
身体計測
検査値
3 リハビリテーション栄養アセスメント
身体計測
検査値
サルコペニアの原因と程度
摂食嚥下機能評価
老嚥とサルコペニアの摂食嚥下障害
リハビリテーションの種類・内容・時間
エネルギー消費量
エネルギー摂取量
4 リハビリテーション栄養ケアプラン
リハビリテーション栄養のゴール設定
投与ルート
推定エネルギー必要量
リハビリテーションの種類・内容・時間
5 NSTにおけるPT・OT・STの役割
NSTとは
NSTとリハビリテーションの関連
チーム形態の種類
PT・OT・STの役割
リハビリテーション栄養の実践
COLUMN
リハビリテーション栄養とEBCP
リハビリテーション訓練室に栄養剤を
Refeeding症候群
リハビリテーション栄養のNST48プロジェクト
Chapter 3 主な疾患のリハビリテーション栄養
1 廃用症候群
2 脳卒中
3 パーキンソン病
4 がん
5 誤嚥性肺炎
6 褥瘡
7 大腿骨近位部骨折
8 関節リウマチ
9 慢性閉塞性肺疾患
10 慢性心不全
COLUMN
日本リハビリテーション栄養研究会と臨床研究
ERASとESSENSE
認知症のリハビリテーション栄養
脳性麻痺とリハビリテーション栄養
在宅リハビリテーション栄養
リハビリテーション栄養を海外に
神経性食思不振症とリハビリテーション栄養
リハビリテーション栄養ポケットガイド
あなたの栄養足りていますか
さらに自己学習したいPT・OT・STのための推奨サイトと推奨図書
索引








