やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 生活習慣病(life style-related disease)は,糖尿病や高血圧,脂質異常症(高脂血症),高尿酸血症などを引き起こす生活習慣の乱れが発症の原因に深く関わっていると考えられる疾患の総称である.1 つの疾患をいうのではなく,疾患概念である.また,わが国のみならず国際的にも非常に増えてきている重大な疾患群でもある.
 生活習慣病の診断と治療において,医師はともすれば臨床症状・症候を十分にみずに臨床検査値モニター上の異常値の表示に頼る傾向になりがちである.医師は,忙しい日常診療のなかで患者の訴えと症状・症候に基づいてオーダーしたそれぞれの検査値の意味するところを確認し,患者・家族に説得力のある説明をすることが大変重要である.私は,これまで学ばせていただいた多くの患者さんの症例を提示して,『症例から学ぶ尿検査の見方・考え方』(医歯薬出版),『症例から学ぶ腎疾患の診療プロセスどう判断し,次にどう考えるか』(文光堂),『ケースアプローチ 腎疾患診療のポイント』(中外医学社),『Case Studies on Kidney Diseases20Typical Cases』(学術図書,非売品)を上梓し,医学生・臨床研修医・大学院生の問題解決型の教育に取り入れてきた.これらの解説書は,それなりの役割を果たしてきたと自負している.
 今回は,臨床検査技師はもとより,それを目指し学んでいる臨床検査技師育成の大学・専門学校の学生諸君においても生活習慣病症例から各検査を行う意義について,また検査オーダーの向こう側にいる患者さんの病態を推察し理解することによって初めて医療チームの一員になれるとの想いから本書を刊行することにした.これまで刊行した解説書の集大成ともいうべき姉妹本である.臨床検査値と相関の高い生活習慣病を中心にそれぞれの疾患の理解を深め,病態解析学の教科書・参考書としてご活用いただきたい.
 本書の内容の不備な点や過不足について,忌憚のないご意見を頂ければ幸いである.最後に,本書の出版に際しご尽力いただきました医歯薬出版の遠山邦男氏ならびに関係各位に御礼申し上げます.
 2014年 中秋 神田川のほとりにて
 富野康日己
 はじめに

基本アプローチ編
 臨床検査に求められるものは何か
 生活習慣病とは何か
 生活習慣病の基本知識
症例アプローチ編
症例 1 口渇,多飲,多尿,全身倦怠感,体重減少を呈した例
 質問の解答
 症例解説
症例 2 会社の健診で糖尿病境界型を指摘された例
 質問の解答
 症例解説
症例 3 血尿,タンパク尿,高血圧,全身倦怠感を呈した例
 質問の解答
 症例解説
症例 4 全身倦怠感を呈し急速に悪化した例
 質問の解答
 症例解説
症例 5 タンパク尿・血尿を呈した例
 質問の解答
 症例解説
症例 6 蝶形紅斑を呈した例
 質問の解答
 症例解説
症例 7 高度な血尿を呈した例
 質問の解答
 症例解説
症例 8 糖尿病の経過中にタンパク尿が現れた例
 質問の解答
 症例解説
症例 9 タンパク尿,浮腫,体重増加,全身倦怠感を呈した例
 質問の解答
 症例解説
症例 10 会社の診療室で,タンパク尿・浮腫を指摘された例
 質問の解答
 症例解説
症例 11 筋肉痛,下痢,嘔吐を訴えた例
 質問の解答
 症例解説
症例 12 タンパク尿を指摘されたが,放置しているうちに腎機能が低下した例
 質問の解答
 症例解説
症例 13 腎生検時皮膚病変にて腎臓病が疑われた例
 質問の解答
 症例解説
症例 14 ぶどう膜炎を伴った腎臓病例
 質問の解答
 症例解説
症例 15 高血圧にて降圧薬の服用をしていてタンパク尿を呈した例
 質問の解答
 症例解説
症例 16 両下肢の冷感と痛みで発症した際,腎機能低下を呈していた例
 質問の解答
 症例解説
症例 17 高尿酸血症,関節痛,タンパク尿で来院した例
 質問の解答
 症例解説
症例 18 ビール瓶様黄褐色尿と全身倦怠感で来院した例
 質問の解答
 症例解説
症例 19 慢性肝炎といわれていたが,徐々にタンパク尿・血尿がみられた例
 質問の解答
 症例解説
症例 20 慢性維持血液透析療法を受けていたが,徐々に食欲低下を示し,低栄養がみられた例
 質問の解答
 症例解説

 COLUMN
  生活習慣病と関連深い臓器の構造と機能
   肝臓
   腎臓
   膵臓

 索引