特集にあたって
デジタル技術の急速な進展に伴い,多くのロボットや情報機器がリハビリテーションの現場で活用されるようになってきた.特に成人脳血管疾患等,リハビリテーションの現場では,2020年からロボティックリハビリテーション機器に対して診療報酬上も運動量増加機器加算が認められ,導入が拡がっている.難病等による重度重複障害者に対する支援機器の開発・活用も盛んに行われている.これらの機器には小児にそのまま適用可能なものもあるが,使用法の工夫やまったく別個の開発を要するものもある.
小児リハビリテーションの現場では,対象児の状態の多彩さとそれに起因する特定の状況にマッチする患児数の少なさという問題はあるものの,次第にさまざまな機器が,開発・活用されつつある.今回,小児の発達支援という視点から支援機器のあり方と可能性について考えるべく,本特集を企画した.
補装具を中心とした身体に直接装着する支援機器は,対象児の体格,精神運動発達の状況,障害状況の変化に柔軟に対応可能なものが求められる.本人と介助者双方の使い勝手のよさも重要な着眼点である.さらに,公費負担の可否を含めた支給制度についても一定の知識が求められる.なお,2024年4月から,18歳未満の障害児への補装具支給にあたって公費負担に関する世帯収入額の上限が撤廃されたことは,小児リハビリテーションに携わる者にとって朗報となった.
肢体不自由のある児にとって,移動機能の支援は,活動の幅を拡げるために大変重要である.本特集では重度移動機能障害を有する児に対して,低年齢からの電動移動機器を導入することにより,認知の発達を促し意思の表明と伝達の支援につなげている取り組みを紹介している.また,自力での移動能力を向上させる装着ロボットの小児への適用の取り組みは今後の応用拡大が期待されるところである.
日常生活動作や遊びの場面での,「ちょっとした困りごと」に対して,比較的安価な材料を組み合わせて問題解決に繋げる取り組みは,児の生活のあらゆる場面で適用可能である.障害状況によっては,先進的なデジタル製造技術を応用して,高度にカスタマイズされた部品を製作する取り組みもある.
また,小児リハビリテーションが育む「児の活動」の源泉となる「意思の表明と伝達」も重要な領域である.本特集では,重度重複障害児を対象とした取り組みを紹介するが,視覚障害,聴覚障害,音声言語障害の各領域においても重要な課題であり,最新技術に基づく開発研究が精力的に進められていることはいうまでもない.
一方で,一部の執筆者が指摘していることではあるが,児の発達を過剰に先回りすることにより「出来るようになるはずのことをさせない」事態に陥らないように支援機器の使用法を常に見直すことも必要であろう.
本特集が,さまざまな障害のある子ども達の可能性を拡げる活動に役立つことを願っている.
(編集委員会 企画担当:小ア慶介)
デジタル技術の急速な進展に伴い,多くのロボットや情報機器がリハビリテーションの現場で活用されるようになってきた.特に成人脳血管疾患等,リハビリテーションの現場では,2020年からロボティックリハビリテーション機器に対して診療報酬上も運動量増加機器加算が認められ,導入が拡がっている.難病等による重度重複障害者に対する支援機器の開発・活用も盛んに行われている.これらの機器には小児にそのまま適用可能なものもあるが,使用法の工夫やまったく別個の開発を要するものもある.
小児リハビリテーションの現場では,対象児の状態の多彩さとそれに起因する特定の状況にマッチする患児数の少なさという問題はあるものの,次第にさまざまな機器が,開発・活用されつつある.今回,小児の発達支援という視点から支援機器のあり方と可能性について考えるべく,本特集を企画した.
補装具を中心とした身体に直接装着する支援機器は,対象児の体格,精神運動発達の状況,障害状況の変化に柔軟に対応可能なものが求められる.本人と介助者双方の使い勝手のよさも重要な着眼点である.さらに,公費負担の可否を含めた支給制度についても一定の知識が求められる.なお,2024年4月から,18歳未満の障害児への補装具支給にあたって公費負担に関する世帯収入額の上限が撤廃されたことは,小児リハビリテーションに携わる者にとって朗報となった.
肢体不自由のある児にとって,移動機能の支援は,活動の幅を拡げるために大変重要である.本特集では重度移動機能障害を有する児に対して,低年齢からの電動移動機器を導入することにより,認知の発達を促し意思の表明と伝達の支援につなげている取り組みを紹介している.また,自力での移動能力を向上させる装着ロボットの小児への適用の取り組みは今後の応用拡大が期待されるところである.
日常生活動作や遊びの場面での,「ちょっとした困りごと」に対して,比較的安価な材料を組み合わせて問題解決に繋げる取り組みは,児の生活のあらゆる場面で適用可能である.障害状況によっては,先進的なデジタル製造技術を応用して,高度にカスタマイズされた部品を製作する取り組みもある.
また,小児リハビリテーションが育む「児の活動」の源泉となる「意思の表明と伝達」も重要な領域である.本特集では,重度重複障害児を対象とした取り組みを紹介するが,視覚障害,聴覚障害,音声言語障害の各領域においても重要な課題であり,最新技術に基づく開発研究が精力的に進められていることはいうまでもない.
一方で,一部の執筆者が指摘していることではあるが,児の発達を過剰に先回りすることにより「出来るようになるはずのことをさせない」事態に陥らないように支援機器の使用法を常に見直すことも必要であろう.
本特集が,さまざまな障害のある子ども達の可能性を拡げる活動に役立つことを願っている.
(編集委員会 企画担当:小ア慶介)
特集 各種障害を有する小児に対する支援機器のあり方と可能性
特集にあたって(小ア慶介)
小児療育における支援機器の特徴と今後の展望(繁成 剛)
動くことは学ぶこと―身体不自由がある子ども達にとっての電動移動機器とは(高塩純一)
脳性麻痺等の肢体不自由児に対する装着型移動支援機器の現状と未来(丸島愛樹)
身の回りのものを活用するシンプルテクノロジー(杉浦 徹)
デジタル製造技術の活用―当事者ニードを汲み取り問題解決につなぐ(渡邉圭介)
ICT機器を用いた重度重複障害児の意思伝達支援(引地晶久)
TOPICS 脳梗塞に対するMuse細胞治療
(新妻邦泰)
新連載 巻頭カラー リハビリテーション科医が知っておくべき最新の義肢構成パーツ
1.最新のソケット「NU-FlexSIVソケット」(佐々木 伸)
新連載 最新版! 摂食嚥下機能評価―スクリーニングから臨床研究まで
1.No evaluation,no therapy! 問診,診察,スクリーニング,検査の流れ(青柳陽一郎)
連載
リハなひと
国境なき医師団/理学療法士 山崎陽平さん
ニューカマー リハ科専門医
(金谷実華)
認知症の基礎知識とリハビリテーション
12.認知症治療病棟でのリハビリテーション(奥出 聡)
リハビリテーション科医師に必要な診察,評価手技
4.ADL,IADLの評価(向野雅彦)
知っていてほしい義肢装具とその実際
8.義足(訓練用仮義足から補装具まで)(陳 隆明)
地域リハビリテーションの現状と今後
9.市区町村支援センターにおける地域リハビリテーション(東京都世田谷区)(佐藤庸平)
各都道府県における自動車運転に関する公安委員会提出用診断書の書き方―脳卒中関係
5.福岡県(加藤徳明)
リハビリテーション関連職の現状と展望
3.公認心理師,臨床心理士(元永拓郎 花村温子)
notice board
開催案内
投稿規定
特集にあたって(小ア慶介)
小児療育における支援機器の特徴と今後の展望(繁成 剛)
動くことは学ぶこと―身体不自由がある子ども達にとっての電動移動機器とは(高塩純一)
脳性麻痺等の肢体不自由児に対する装着型移動支援機器の現状と未来(丸島愛樹)
身の回りのものを活用するシンプルテクノロジー(杉浦 徹)
デジタル製造技術の活用―当事者ニードを汲み取り問題解決につなぐ(渡邉圭介)
ICT機器を用いた重度重複障害児の意思伝達支援(引地晶久)
TOPICS 脳梗塞に対するMuse細胞治療
(新妻邦泰)
新連載 巻頭カラー リハビリテーション科医が知っておくべき最新の義肢構成パーツ
1.最新のソケット「NU-FlexSIVソケット」(佐々木 伸)
新連載 最新版! 摂食嚥下機能評価―スクリーニングから臨床研究まで
1.No evaluation,no therapy! 問診,診察,スクリーニング,検査の流れ(青柳陽一郎)
連載
リハなひと
国境なき医師団/理学療法士 山崎陽平さん
ニューカマー リハ科専門医
(金谷実華)
認知症の基礎知識とリハビリテーション
12.認知症治療病棟でのリハビリテーション(奥出 聡)
リハビリテーション科医師に必要な診察,評価手技
4.ADL,IADLの評価(向野雅彦)
知っていてほしい義肢装具とその実際
8.義足(訓練用仮義足から補装具まで)(陳 隆明)
地域リハビリテーションの現状と今後
9.市区町村支援センターにおける地域リハビリテーション(東京都世田谷区)(佐藤庸平)
各都道府県における自動車運転に関する公安委員会提出用診断書の書き方―脳卒中関係
5.福岡県(加藤徳明)
リハビリテーション関連職の現状と展望
3.公認心理師,臨床心理士(元永拓郎 花村温子)
notice board
開催案内
投稿規定














