特集にあたって
障害に対応するためにはさまざまなアプローチがある.医学的アプローチや社会的アプローチ,そして心理面へのアプローチが障害者の救いの一助になるものと考える.
今回の特集では神経難病の代表ともいえる筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis;ALS)を取り上げた.ALSに対応するためには,それこそさまざまな視点からのアプローチが重要であり,今回の特集ではそれを紹介している.まず,ALSに対する医療システム上のアプローチとしてALSクリニックを紹介した.わが国において,ALS患者の来院日にすべてのALS医療を集中させる多職種連携のALS外来であるALSクリニックが,東邦大学医療センター大森病院で開始され,それがALS患者の生命予後を改善することがわかってきた.また,最新のALSガイドライン(2023)にて,多職種連携やリハビリテーションの重要性が強調されており,このガイドラインにおいては,わが国の疾患別診療ガイドラインではおそらく初めて,執筆者に療法士を交えている.さらにALS診療においてはさまざまな国内外のネットワークが存在し,患者の側も医療者の側もそれを上手に利用することが重要と考え,それに関する総説を執筆いただいた.その他,ALSのロボットリハビリテーションの最新知見や,ALSの栄養と嚥下の問題,ALSのコミュニケーションツールの発達,ALSに対する最新の治療薬等の内容を取り入れた.
リハビリテーション医療というと機能回復訓練を思い浮かべる人が多いと思う.しかしながら,どんなに医学が進歩しても治らない病気があり,治らない機能障害も存在し続けるであろう.加齢による身体の衰えも,医学は先延ばしするだけでいつかはやってくる.そのような不治の病,不可逆の障害,不可避の老いに対して,少しでも改善する方法をなんとか探り続けるのがリハビリテーション医学である.そのためには手段を選ばず,また一人で抱え込むようなことはしないで,大勢の医療スタッフとともに多職種連携して目の前の患者に挑んでいく,そのような医療がリハビリテーション医療である.つまり,リハビリテーション医学・医療とは非常に柔軟性が高い医学の分野であり,そしてその本質は,患者に寄り添う医学・医療であると思われる.ALSの診療にもそれがよくあてはまる.
前任地の東邦大学に赴任したとき,当時の神経内科の岩崎泰雄教授が「ALS診療というのはAlways Laugh and Smileなんだよ」と教えてくれた.それが大事なのかもしれない.
(編集委員会 企画担当:海老原 覚)
障害に対応するためにはさまざまなアプローチがある.医学的アプローチや社会的アプローチ,そして心理面へのアプローチが障害者の救いの一助になるものと考える.
今回の特集では神経難病の代表ともいえる筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis;ALS)を取り上げた.ALSに対応するためには,それこそさまざまな視点からのアプローチが重要であり,今回の特集ではそれを紹介している.まず,ALSに対する医療システム上のアプローチとしてALSクリニックを紹介した.わが国において,ALS患者の来院日にすべてのALS医療を集中させる多職種連携のALS外来であるALSクリニックが,東邦大学医療センター大森病院で開始され,それがALS患者の生命予後を改善することがわかってきた.また,最新のALSガイドライン(2023)にて,多職種連携やリハビリテーションの重要性が強調されており,このガイドラインにおいては,わが国の疾患別診療ガイドラインではおそらく初めて,執筆者に療法士を交えている.さらにALS診療においてはさまざまな国内外のネットワークが存在し,患者の側も医療者の側もそれを上手に利用することが重要と考え,それに関する総説を執筆いただいた.その他,ALSのロボットリハビリテーションの最新知見や,ALSの栄養と嚥下の問題,ALSのコミュニケーションツールの発達,ALSに対する最新の治療薬等の内容を取り入れた.
リハビリテーション医療というと機能回復訓練を思い浮かべる人が多いと思う.しかしながら,どんなに医学が進歩しても治らない病気があり,治らない機能障害も存在し続けるであろう.加齢による身体の衰えも,医学は先延ばしするだけでいつかはやってくる.そのような不治の病,不可逆の障害,不可避の老いに対して,少しでも改善する方法をなんとか探り続けるのがリハビリテーション医学である.そのためには手段を選ばず,また一人で抱え込むようなことはしないで,大勢の医療スタッフとともに多職種連携して目の前の患者に挑んでいく,そのような医療がリハビリテーション医療である.つまり,リハビリテーション医学・医療とは非常に柔軟性が高い医学の分野であり,そしてその本質は,患者に寄り添う医学・医療であると思われる.ALSの診療にもそれがよくあてはまる.
前任地の東邦大学に赴任したとき,当時の神経内科の岩崎泰雄教授が「ALS診療というのはAlways Laugh and Smileなんだよ」と教えてくれた.それが大事なのかもしれない.
(編集委員会 企画担当:海老原 覚)
特集 筋萎縮性側索硬化症(ALS)への多彩な連携とリハビリテーション医療
特集にあたって(海老原 覚)
ALSクリニックの効果とリハビリテーション医療(海老原 覚 勝又泰紀・他)
ALSの国内ネットワーク,国際ネットワーク,患者ネットワーク(渋川茉莉 平山剛久・他)
ALSにおける手指の巧緻性障害に対するロボットリハビリテーション(山川 勇)
ALS患者における意思伝達装置(井村 保)
ALSにおける栄養と摂食嚥下リハビリテーション(早乙女貴子)
新規ALS治療薬とリハビリテーション医療(山ア 亮)
TOPICS 「省察」は全人的評価に基づくリハビリテーション医療の礎となる
(山中義崇)
新連載 各都道府県における自動車運転に関する公安委員会提出用診断書の書き方―脳卒中関係
1.東京都(武原 格)
連載
リハなひと
理学療法士/国内旅行業務取扱管理者 鈴木洋平さん
ニューカマー リハ科専門医
(鋳[章悟)
知っていてほしい義肢装具とその実際
4.下肢装具(治療用装具)(浅見豊子)
地域リハビリテーションの現状と今後
5.新しい地域リハビリテーション支援体制での地域リハビリテーション(佐藤吉沖)
知っておきたい神経科学のキィワード
24.Neuroprosthetics(西村幸男)
認知症の基礎知識とリハビリテーション
8.認知症と嚥下障害(野原幹司)
リハビリテーション医療における安全管理の一工夫
II.回復期リハビリテーション病院における安全管理:6.院内研修の実際(宇内 景 菅原英和)
リハビリテーション診療におけるEvidence-Based Practice
10.変形性膝関節症患者の理学療法におけるEvidence-Based Practice(瓜谷大輔)
臨床研究
回復期リハビリテーション病棟の損益管理状況と経営管理意識の要因分析―全国の回復期リハビリテーション病棟運営病院へのアンケート調査より―(磯山浩孝 荒井 耕・他)
CLOSE UP!!
開催案内
投稿規定
特集にあたって(海老原 覚)
ALSクリニックの効果とリハビリテーション医療(海老原 覚 勝又泰紀・他)
ALSの国内ネットワーク,国際ネットワーク,患者ネットワーク(渋川茉莉 平山剛久・他)
ALSにおける手指の巧緻性障害に対するロボットリハビリテーション(山川 勇)
ALS患者における意思伝達装置(井村 保)
ALSにおける栄養と摂食嚥下リハビリテーション(早乙女貴子)
新規ALS治療薬とリハビリテーション医療(山ア 亮)
TOPICS 「省察」は全人的評価に基づくリハビリテーション医療の礎となる
(山中義崇)
新連載 各都道府県における自動車運転に関する公安委員会提出用診断書の書き方―脳卒中関係
1.東京都(武原 格)
連載
リハなひと
理学療法士/国内旅行業務取扱管理者 鈴木洋平さん
ニューカマー リハ科専門医
(鋳[章悟)
知っていてほしい義肢装具とその実際
4.下肢装具(治療用装具)(浅見豊子)
地域リハビリテーションの現状と今後
5.新しい地域リハビリテーション支援体制での地域リハビリテーション(佐藤吉沖)
知っておきたい神経科学のキィワード
24.Neuroprosthetics(西村幸男)
認知症の基礎知識とリハビリテーション
8.認知症と嚥下障害(野原幹司)
リハビリテーション医療における安全管理の一工夫
II.回復期リハビリテーション病院における安全管理:6.院内研修の実際(宇内 景 菅原英和)
リハビリテーション診療におけるEvidence-Based Practice
10.変形性膝関節症患者の理学療法におけるEvidence-Based Practice(瓜谷大輔)
臨床研究
回復期リハビリテーション病棟の損益管理状況と経営管理意識の要因分析―全国の回復期リハビリテーション病棟運営病院へのアンケート調査より―(磯山浩孝 荒井 耕・他)
CLOSE UP!!
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