やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

特集にあたって
 回復期リハビリテーション(以下リハ)病棟が誕生して20年以上が経過し,当初の目標であった6万床を大きく超え9万床以上となり,さらに増加している.一方,回復期医療の一端を担う地域包括ケア病棟も9万床を超えた.以前とは異なり,急性期病院は回復期リハ病棟(病院)を選べる時代になった.回復期リハ病棟の患者割合は,以前は脳血管系が多かったが,現在では整形外科系が逆転している.2020年度診療報酬改訂で急性期の治療が長期化したことに伴い,回復期への入院ができない患者の救済のため,発症から入棟までの期間が撤廃された.2022年度の改訂では,入棟時重症度割合が入院料1, 2では3割から4割へ引き上げられた.現在まだコロナ禍にあるが,多くの回復期リハ病棟で,COVID感染後の患者(廃用症候群)のリハを施行してきた.
 回復期リハ病棟が過剰となる地域も出てきており,病院の質も大きな問題となっている.回復期リハ病棟にリハ医学会の会員がいない病院が3割以上存在し,100床当たりのリハ科専門医数は1人にも満たない.第三者評価として利用できるものは,公益財団法人日本医療機能評価機能による病院機能評価のみである.2022年度診療報酬改定で,入院料1,3ではこの評価を受けているのが望ましいと明記された.病院機能評価に,回復期リハに特化した高度・専門機能の付加項目が追加となり,これを取得した病院も存在する.
 一方,2016年に診療報酬にアウトカム評価である実績指数が導入されたが,改定のたびに制度は変化し,対応に追われている.また,入院時にFIMを不適切に評価している病院が散見される.今後のことはわからないが,経営に難渋する病院がおそらく出てくるであろう.痙縮治療に効果があるボツリヌス治療は,療養型や地域包括ケア病棟で使用が許可されたが,一番使用を望んでいる回復期リハ病棟では,医療費を請求することができない.回復期リハ病棟では転倒率が高く,その対策は重要な課題である.最近では重症患者の入院が多くなり,急変するケースがしばしば認められる.また入院患者の高齢化により,併存疾患の管理が大変になっている.このため,入院患者の急性期病院への転送が増加している.また,勤務する医師の業務内容に変化がみられ,回復期リハ病棟と急性期病院との連携システムの構築が必要になってきている.COVIDの院内感染(クラスター)が多くの回復期リハ病棟で発生していることもあり,ICT(Infection Control Team)を中心とした感染対策も極めて重要な課題である.
 今回の特集では,回復期リハ医療に精通している先生方に種々の課題や今後の展望等につき解説をお願いした.回復期リハ医療に従事している医師,メディカルスタッフだけでなく,リハ医療に携わるすべての人にとって有益な情報をもたらすと思われる.
 (編集委員会)
特集 今後の回復期リハビリテーション医療はどうあるべきか!
 特集にあたって
 回復期リハビリテーション医療の歴史と現状 三橋尚志
 回復期リハビリテーション医療の課題と展望 近藤国嗣
 回復期リハビリテーション病院の評価と診療報酬 宮井一郎
 回復期リハビリテーション病棟のリスク管理 大野重雄 梅津祐一
 回復期リハビリテーション病棟における医師の役割 岡本隆嗣

TOPICS 脊髄損傷者における排泄管理の退院支援
 渡邊友恵 田中宏太佳

新連載
慢性疼痛のリハビリテーション
 1.慢性疼痛の病態と機序 柴田政彦

回復期・生活期リハビリテーション医療に必要な内科的管理
 1.糖尿病(インスリン治療を含む) 森 俊子

リハビリテーション医学・医療と私
 第1回 雑誌の草創期を振り返って 米本恭三

連載
ニューカマー リハ科専門医
 徳永貴久

知っておきたい神経科学のキィワード
 2.LTP(長期増強)とLTD(長期抑圧) 川上途行

リハビリテーションと薬剤
 10.リハビリテーションでよく遭遇する症状・症候と薬剤:(7)意識障害・認知機能障害 堀 真輔 百崎 良

リハスタッフが知っておくべきプレゼン(学会発表・講演)のコツ
 11.魅せるスライド:1.「伝わる」スライドづくりの基本 前田圭介

リハビリテーションスタッフがかかわるチーム医療最前線
 14.高知大学医学部附属病院リハビリテーション部 永野靖典

臨床研究
 インコボツリヌストキシンA(ゼオマイン(R))を使用してA型ボツリヌス製剤を400単位を超えて上下肢に同時使用した脳卒中後四肢痙縮の1例 渡辺淳志 山口智弘
 ロジスティック回帰分析を用いて脳卒中患者の回復期リハビリテーション病棟における運動FIM改善を調査した報告のレビュー 徳永 誠

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