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29巻11号 2020年10月号
特集 後天性脳損傷者の自動車運転再開に向けた診断と指導
特集にあたって
 近年,高齢者,認知症者の運転による交通事故,さらに,脳卒中や脳外傷等の後天性脳損傷に起因する症候性てんかんによる自動車事故に関する多くの報道から,脳損傷者の運転能力の有無,運転免許所持の是非を問う社会的関心が極めて高くなった.しかし一方で,自動車運転は,社会参加,社会復帰のためには必須となる地域が数多く存在することから,運転能力評価にかかわる多職種間で,安全運転に必要とされる一定の基準を共有することが求められている.この傾向は,車社会先進国といわれる欧米において顕著にみられる.
 英国では,政府が運転免許庁(Driver and Vehicle Licensing Agency;DVLA)を設置し,医療専門職向けに140 ページにわたり,各種疾患に起因する障害者の運転の適否を示したガイドラインを作成している.また米国では,米国医師会が,300 ページ以上にわたって,“Clinician’s guide to Assessing and Counseling Older Drivers” と題する高齢ドライバーの運転基準を,運転リハビリテーション専門師協会が運転能力にかかわる各障害に関するチェックポイントを52 ページにわたりガイドラインとして公表している.また,カナダ医師会は医師に対し,「患者の運転能力を適切に判断するべきである」とし,判断材料の一助として,“Determining Medical Fitness to operating Motor Vehicles” と題する冊子を公表している.さらに,欧州連合(EU 運転免許制度)でも,一般運転手と職業運転手を分けて運転再開基準を提示している.このように欧米の先進諸国では,統一した運転再開基準が公表されている.
 しかし,わが国ではいまだこのようなガイドラインは作成されていない.そこで,本特集では,第一線で自動車運転支援に精力的に取り組んでおられる先生方に,わが国に即した運転再開の基準について,minimum requirement として,その要点をまとめていただいた.
 本特集は,まずはじめに,運転再開支援を行ううえで必要な各種制度について,森口真吾先生,一杉正仁先生に,わが国の道路交通法,運転再開の手順,事故時の医療者および事故当事者の法的責任等を解説していただいた.次いで,武原 格先生に,自動車運転に必須な身体機能を,四肢体幹,視覚,聴覚機能,高齢者に分けて解説いただき,あわせて身体障害を補うべく自動車改造についても触れていただいた.加藤徳明先生には,自動車運転に必須な高次脳機能について,その内容,検査方法のご説明をいただいた.さらに高齢者の運転についてのチェックポイントも示していただいた.そして,後天性脳損傷者に合併しやすい循環器疾患,糖尿病,睡眠時無呼吸,そして薬剤に関する考え方を,渡邉 修先生にまとめていただいた.最後に,地域における自動車運転支援の実際を,富山県の指導方法を例に,影近謙治先生にご提示いただいた.
 以上,5 項目の内容は,自動車運転を再開する後天性脳損傷者を指導する専門職にとって,minimum requirement の知識である.運転再開を支援する専門職の皆様にとって,少しでもお役に立てていただければ幸いである.(編集委員会)
目 次
制度の理解  森口真吾,一杉正仁
自動車運転にかかわる身体機能  武原格
自動車運転にかかわる高次脳機能  加藤徳明
合併症  渡邉修
地域における自動車運転支援の実際  影近謙治
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臨床経験 
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臨床研究 
急性期病院におけるゼリーを用いた兵藤スコアの有用性  喜久村かおり,奥村須江子・他

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後天性脳損傷者の自動車運転再開に向けた診断と指導
29巻11号 2020年10月15日
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