はじめに―日本におけるAMR対策の現状と実効性への課題
大曲貴夫
国立健康危機管理研究機構国立国際医療センター国際感染症センター
薬剤耐性(antimicrobial resistance:AMR)は,現代における感染症医療の根幹を揺るがす重大な課題であり,日本においてもその影響は決して小さくない.耐性菌の増加は日常診療のあらゆる場面で認識されるようになり,適切な抗菌薬治療の選択を難しくしている.とりわけ高齢化が進むわが国では,感染症の重症化リスクを有する集団が増加しており,AMRの問題はより深刻化しうる状況にある.
日本政府は2016年に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」を策定し,現在はその第二期に入っている.この取り組みは,抗菌薬の適正使用,サーベイランスの強化,感染予防の推進,人材育成など多岐にわたる領域を包含し,ワンヘルスの視点のもとで包括的に進められてきた.しかし,その成果を現場で実感できるかという点では,なお課題が残されている.
AMRの様相は一様ではなく,問題となる微生物やリスクを抱える集団は国ごとに異なる.これは人口構造や疾病負荷,医療提供体制,さらには抗菌薬使用の文化的背景などの違いに大きく影響されていると考えられる.したがって,海外の成功事例を単純に導入するのではなく,日本の実情に即した対策を検討することが不可欠である.
また,AMR対策の必要性を訴えること自体は容易である一方で,それを実際の診療現場において具体的な行動変容へと結びつけ,持続的な成果を生み出すことは決して容易ではない.制度や指針の整備のみならず,現場の負担や実情に配慮した実装戦略が求められる.
本特集では,日本における主要な耐性菌の動向,抗菌薬使用の現状,情報基盤の整備,さらには供給問題に至るまで,多角的な視点からAMR対策を俯瞰する.これらを丁寧に見つめ直し議論することにより,実効性のある対策を立案・実行し,そして結果を出していくことが期待される.AMR対策は不断の努力を要する取り組みであり,今こそ現場と政策の連携をいっそう深めるべきときである.
大曲貴夫
国立健康危機管理研究機構国立国際医療センター国際感染症センター
薬剤耐性(antimicrobial resistance:AMR)は,現代における感染症医療の根幹を揺るがす重大な課題であり,日本においてもその影響は決して小さくない.耐性菌の増加は日常診療のあらゆる場面で認識されるようになり,適切な抗菌薬治療の選択を難しくしている.とりわけ高齢化が進むわが国では,感染症の重症化リスクを有する集団が増加しており,AMRの問題はより深刻化しうる状況にある.
日本政府は2016年に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」を策定し,現在はその第二期に入っている.この取り組みは,抗菌薬の適正使用,サーベイランスの強化,感染予防の推進,人材育成など多岐にわたる領域を包含し,ワンヘルスの視点のもとで包括的に進められてきた.しかし,その成果を現場で実感できるかという点では,なお課題が残されている.
AMRの様相は一様ではなく,問題となる微生物やリスクを抱える集団は国ごとに異なる.これは人口構造や疾病負荷,医療提供体制,さらには抗菌薬使用の文化的背景などの違いに大きく影響されていると考えられる.したがって,海外の成功事例を単純に導入するのではなく,日本の実情に即した対策を検討することが不可欠である.
また,AMR対策の必要性を訴えること自体は容易である一方で,それを実際の診療現場において具体的な行動変容へと結びつけ,持続的な成果を生み出すことは決して容易ではない.制度や指針の整備のみならず,現場の負担や実情に配慮した実装戦略が求められる.
本特集では,日本における主要な耐性菌の動向,抗菌薬使用の現状,情報基盤の整備,さらには供給問題に至るまで,多角的な視点からAMR対策を俯瞰する.これらを丁寧に見つめ直し議論することにより,実効性のある対策を立案・実行し,そして結果を出していくことが期待される.AMR対策は不断の努力を要する取り組みであり,今こそ現場と政策の連携をいっそう深めるべきときである.
特集 薬剤耐性(AMR)の最新動向
はじめに─日本におけるAMR対策の現状と実効性への課題(大曲貴夫)
ワンヘルスの概念と薬剤耐性との関係(松永展明)
薬剤耐性に関する国民啓発の現状と展望(藤友結実子)
感染対策連携共通プラットフォームJ-SIPHEと診療所版J-SIPHE(遠藤美緒)
日本で分離されるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の現状(中南秀将)
わが国におけるバンコマイシン耐性腸球菌の現状とその対策(赤澤奈々・山岸拓也)
日本における抗菌薬の使用量の動向(小泉龍士)
WHOのAWaRe分類とその日本への適用上の課題(都築慎也)
「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 歯科編」について(松野智宣)
抗菌薬安定供給の課題と対策(具 芳明)
TOPICS
神経精神医学 父親の産後のメンタル不調─産後うつとボンディング障害(西郡秀和)
医用工学・医療情報学 非負値行列因子分解(NMF)の医学研究への応用:解釈しやすいパターンの発見(佐藤健一)
連載
医療にいかす行動経済学(24)
デジタルセラピューティクス(DTx)と行動変容(野村章洋)
知っておくと役に立つ!臨床医のための臨床検査医学講座(12)
腎機能・電解質検査:症例を考えながら理解する(下澤達雄)
ネオ免疫学 生命進化に学ぶ免疫学のパラダイムシフト
はじめに(新田 剛)
ネオ免疫学 生命進化に学ぶ免疫学のパラダイムシフト(1)
免疫系─その驚くべき多様性(新田 剛)
FORUM
分子生物学の臨床応用 “分子“から“疾患・患者”へ(11) リキッドバイオプシー最前線─マイクロRNAが拓く早期がん診断法の開発(加藤容崇・西原広史)
次号の特集予告
はじめに─日本におけるAMR対策の現状と実効性への課題(大曲貴夫)
ワンヘルスの概念と薬剤耐性との関係(松永展明)
薬剤耐性に関する国民啓発の現状と展望(藤友結実子)
感染対策連携共通プラットフォームJ-SIPHEと診療所版J-SIPHE(遠藤美緒)
日本で分離されるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の現状(中南秀将)
わが国におけるバンコマイシン耐性腸球菌の現状とその対策(赤澤奈々・山岸拓也)
日本における抗菌薬の使用量の動向(小泉龍士)
WHOのAWaRe分類とその日本への適用上の課題(都築慎也)
「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 歯科編」について(松野智宣)
抗菌薬安定供給の課題と対策(具 芳明)
TOPICS
神経精神医学 父親の産後のメンタル不調─産後うつとボンディング障害(西郡秀和)
医用工学・医療情報学 非負値行列因子分解(NMF)の医学研究への応用:解釈しやすいパターンの発見(佐藤健一)
連載
医療にいかす行動経済学(24)
デジタルセラピューティクス(DTx)と行動変容(野村章洋)
知っておくと役に立つ!臨床医のための臨床検査医学講座(12)
腎機能・電解質検査:症例を考えながら理解する(下澤達雄)
ネオ免疫学 生命進化に学ぶ免疫学のパラダイムシフト
はじめに(新田 剛)
ネオ免疫学 生命進化に学ぶ免疫学のパラダイムシフト(1)
免疫系─その驚くべき多様性(新田 剛)
FORUM
分子生物学の臨床応用 “分子“から“疾患・患者”へ(11) リキッドバイオプシー最前線─マイクロRNAが拓く早期がん診断法の開発(加藤容崇・西原広史)
次号の特集予告















