はじめに
西小森隆太
久留米大学医学部小児科学講座
アメリカ国立衛生研究所(NIH)のKastner博士らにより提唱された自己炎症性疾患は,その疾患概念が提唱されてから約25年が経過した.近年,遺伝学的検査手法の進歩により,疾患関連遺伝子は50を超え,現在もなお新規疾患の同定が続いている.特に,UBA1遺伝子の体細胞モザイクにより発症するVEXAS(Vacuoles,E1 enzyme,X-linked,Autoinflammatory,Somatic)症候群は成人発症であり,比較的患者数も多いことから,大きな注目を集めている.また,報告例はまだ限られているものの,成人発症NLRC4異常症において,がんドライバー遺伝子であるTET2によるクローン性造血が発症に関与することが報告され,自己炎症性疾患における体細胞モザイクの重要性があらためて注目されている.
病態の解明においても,STING(stimulator of interferon genes)を中心としたI型インターフェロン症の病態解明,インフラマソーム活性化機序の解明など,自己炎症性疾患の分子機構に関する理解は大きく進展している.また診療面では,保険診療による遺伝学的検査が充実し,さらに成人移行支援の手引きが作成されるなど,自己炎症性疾患における成人期診療体制の整備の重要性が指摘されている.これに伴い,小児科医のみならず成人診療科の医師にとっても,本疾患群の認知度は着実に向上してきている.行政面においても,自己炎症性疾患は指定難病および小児慢性特定疾病に指定されており,2026年には乳児発症STING関連血管炎が指定難病として新たに追加された.
一方で,原因遺伝子が同定されたにもかかわらず病態解明が十分でない疾患,疾患特異的な治療薬が存在しない疾患,さらには新規治療薬がすべての患者に有効とは限らない疾患もあり,依然として多くの未解決の課題が残されている.本特集では,自己炎症性疾患を取り巻く診断体制,病態解明,治療について,それぞれの課題とその解決に向けた試みを,わが国における自己炎症性疾患のエキスパートにご解説いただいた.本特集が,自己炎症性疾患の診療に役立つとともに,創薬および新規治療開発の進展につながり,患者QOLの向上に貢献することを祈念する.
西小森隆太
久留米大学医学部小児科学講座
アメリカ国立衛生研究所(NIH)のKastner博士らにより提唱された自己炎症性疾患は,その疾患概念が提唱されてから約25年が経過した.近年,遺伝学的検査手法の進歩により,疾患関連遺伝子は50を超え,現在もなお新規疾患の同定が続いている.特に,UBA1遺伝子の体細胞モザイクにより発症するVEXAS(Vacuoles,E1 enzyme,X-linked,Autoinflammatory,Somatic)症候群は成人発症であり,比較的患者数も多いことから,大きな注目を集めている.また,報告例はまだ限られているものの,成人発症NLRC4異常症において,がんドライバー遺伝子であるTET2によるクローン性造血が発症に関与することが報告され,自己炎症性疾患における体細胞モザイクの重要性があらためて注目されている.
病態の解明においても,STING(stimulator of interferon genes)を中心としたI型インターフェロン症の病態解明,インフラマソーム活性化機序の解明など,自己炎症性疾患の分子機構に関する理解は大きく進展している.また診療面では,保険診療による遺伝学的検査が充実し,さらに成人移行支援の手引きが作成されるなど,自己炎症性疾患における成人期診療体制の整備の重要性が指摘されている.これに伴い,小児科医のみならず成人診療科の医師にとっても,本疾患群の認知度は着実に向上してきている.行政面においても,自己炎症性疾患は指定難病および小児慢性特定疾病に指定されており,2026年には乳児発症STING関連血管炎が指定難病として新たに追加された.
一方で,原因遺伝子が同定されたにもかかわらず病態解明が十分でない疾患,疾患特異的な治療薬が存在しない疾患,さらには新規治療薬がすべての患者に有効とは限らない疾患もあり,依然として多くの未解決の課題が残されている.本特集では,自己炎症性疾患を取り巻く診断体制,病態解明,治療について,それぞれの課題とその解決に向けた試みを,わが国における自己炎症性疾患のエキスパートにご解説いただいた.本特集が,自己炎症性疾患の診療に役立つとともに,創薬および新規治療開発の進展につながり,患者QOLの向上に貢献することを祈念する.
特集 自己炎症性疾患アップデート
はじめに(西小森隆太)
自己炎症性疾患の遺伝学的検査の現状と今後の課題(小原 收)
自己炎症性疾患における体細胞モザイクアップデート(加藤健太郎・井澤和司)
自己炎症性疾患における創薬の現状と課題(仁平寛士)
アクチンダイナミクスとパイリンインフラマソーム(本田吉孝・八角高裕)
DigenicI型インターフェロノパチー(田口友彦)
ノンコーディングRNAとRLR関連自己免疫疾患(佐藤沙耶・加藤博己)
自己炎症性疾患と細胞死(小田紘嗣)
ブラウ症候群の炎症病態(松田智子・神戸直智)
成人発症自己炎症性疾患(桐野洋平)
TOPICS
消化器内科学 C型肝炎ウイルス抗原・抗体同時検出による診療支援(遠藤美月)
脳神経外科学 脳神経外科におけるデジタル化医療とAI(田村 学・川俣貴一)
連載
医療にいかす行動経済学(21)
遊びながら,自然と健康に─ゲーミフィケーションによる健康づくりと行動科学(坂本菜生・近藤尚己)
知っておくと役に立つ!臨床医のための臨床検査医学講座(9)
末梢血検査─測定原理を踏まえ病態を読み解く(岩田純奈・松下弘道)
FORUM
分子生物学の臨床応用 “分子“から“疾患・患者”へ(8) 1分子イメージング技術を活用した新たな薬剤スクリーニング法(上田昌宏・廣島通夫)
次号の特集予告
はじめに(西小森隆太)
自己炎症性疾患の遺伝学的検査の現状と今後の課題(小原 收)
自己炎症性疾患における体細胞モザイクアップデート(加藤健太郎・井澤和司)
自己炎症性疾患における創薬の現状と課題(仁平寛士)
アクチンダイナミクスとパイリンインフラマソーム(本田吉孝・八角高裕)
DigenicI型インターフェロノパチー(田口友彦)
ノンコーディングRNAとRLR関連自己免疫疾患(佐藤沙耶・加藤博己)
自己炎症性疾患と細胞死(小田紘嗣)
ブラウ症候群の炎症病態(松田智子・神戸直智)
成人発症自己炎症性疾患(桐野洋平)
TOPICS
消化器内科学 C型肝炎ウイルス抗原・抗体同時検出による診療支援(遠藤美月)
脳神経外科学 脳神経外科におけるデジタル化医療とAI(田村 学・川俣貴一)
連載
医療にいかす行動経済学(21)
遊びながら,自然と健康に─ゲーミフィケーションによる健康づくりと行動科学(坂本菜生・近藤尚己)
知っておくと役に立つ!臨床医のための臨床検査医学講座(9)
末梢血検査─測定原理を踏まえ病態を読み解く(岩田純奈・松下弘道)
FORUM
分子生物学の臨床応用 “分子“から“疾患・患者”へ(8) 1分子イメージング技術を活用した新たな薬剤スクリーニング法(上田昌宏・廣島通夫)
次号の特集予告















