やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 新藤隆行
 信州大学医学部循環病態学教室
 アドレノメデュリン(adrenomedullin:AM)は,1993年に日本で発見された強力な血管拡張作用を有する生理活性ペプチドである.発見から30年以上を経て,AM研究は今,新たなフェーズを迎えている.当初は循環調節因子として注目されたが,受容体活性調節タンパク質(receptor-activity-modifying protein:RAMP)システムの解明や遺伝子改変動物を用いた研究により,抗炎症,組織修復,血管新生,代謝調節といった極めて多彩な生理作用を有することが明らかとなった.現在では,循環器疾患にとどまらず,難治性炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD),脳血管障害,がん,代謝性疾患など多岐にわたる領域において,その病態生理学的意義が解明されつつある.
 本特集は,AMの発見から創薬に向けたトランスレーショナルリサーチの歩みを紐解き,基礎医学から臨床医学,そして実用化へと展開するAM研究の“現在“と“未来”を俯瞰する企画である.今回,各領域の第一線で研究・臨床を牽引されている8名の執筆陣に,それぞれの専門的視点から最新の知見をご執筆いただいた.
 まず,AM発見当時のエピソードとIBD治療薬への実用化に向けた医師主導治験の軌跡について北村和雄先生に,分子進化の視点から見えてきたAMファミリーの多様性について竹井祥郎先生と御輿真穂先生に解説をお願いした.続いて,AMの多彩な機能発現の鍵となる受容体システム(CLR/RAMP)の巧妙な制御機構と機能分担の分子基盤について,私から概説させていただく.さらに最新の基礎的知見として,腫瘍微小環境におけるAMRAMP系の役割とがん進展の制御機構を田中愛先生に,AMによるエネルギー代謝調節と抗肥満作用を神吉昭子先生にご執筆いただいた.また,各臨床領域への展開として,眼科疾患における網膜血管の恒常性維持と病的血管新生の制御について柿原伸次先生に,急性期脳梗塞に対する臨床試験(AMFIS研究)や遺伝性脳小血管病への応用について猪原匡史先生にご寄稿をお願いした.最後に,疫学研究から明らかになった“血管不全”の早期バイオマーカーとしてのMR-proADMの有用性について,小山晃英先生に展望をご提示いただいた.
 本特集が,日進月歩で進展するAM研究の最前線を読者の皆さまにお伝えし,領域を超えた新たな研究の発展や革新的な創薬への一助となれば幸いである.ご多忙の折,珠玉の原稿をお寄せいただいた執筆者の皆さまに深く感謝申し上げる.
特集 アドレノメデュリン研究の最前線─基礎から創薬・臨床応用へ
 はじめに(新藤隆行)
 アドレノメデュリンの発見から創薬研究へ(北村和雄)
 アドレノメデュリンファミリーの進化と多様性(竹井祥郎・御輿真穂)
 アドレノメデュリンの機能的多様性を生み出す分子基盤─RAMPシステムによる制御(新藤隆行)
 腫瘍微小環境におけるアドレノメデュリン-RAMP系の役割─血管-免疫クロストークを介したがん進展制御機構(田中 愛)
 アドレノメデュリンおよびアドレノメデュリン2によるエネルギー代謝調節と抗肥満作用(神吉昭子)
 眼科領域におけるアドレノメデュリンの役割─網膜血管の恒常性と病態制御(柿原伸次)
 アドレノメデュリンによる脳血管保護─基礎研究から臨床試験へ(猪原匡史)
 血管不全の早期バイオマーカーとしてのMR-proADM─疫学研究からのエビデンス(小山晃英)

TOPICS
 免疫学 ストレスがグルココルチコイドを介して惹起するTh17細胞による炎症(榛葉旭恒・生田宏一)
 再生医学 ヒトiPS細胞由来顎骨オルガノイドが拓く再生治療と病態モデリングの新展開(本池総太・池谷 真)

連載
医療にいかす行動経済学(20)
 ソーシャルマーケティングと医療行動経済学の併用─行動変容と習慣化のために(溝田友里・他)

知っておくと役に立つ!臨床医のための臨床検査医学講座(8)
 尿一般検査,便検査(菊池春人)

FORUM
 分子生物学の臨床応用 “分子“から“疾患・患者”へ(7) β2スペクトリンによるIgA腎症発症の分子機構とその治療応用(門多のぞみ・二瓶義人)

 次号の特集予告