やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 山本信之
 和歌山県立医科大学内科学第三講座(呼吸器内科・腫瘍内科)
 肺癌は,世界中で依然として最も重大な死因のひとつであり,わが国においても罹患率・死亡率ともに高い疾患です.近年,新規薬剤(分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬)の登場,手術手技や放射線治療装置・技術の進歩により,肺癌診療は飛躍的な進歩を遂げています.これに伴い,診断技術や治療戦略もめざましい発展をみせており,臨床現場では個々の患者に応じた最適な治療選択が求められる時代となりました.従来の細胞診や画像診断に加え,リキッドバイオプシーや次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析など,精度の高い診断技術の導入が進み,より個別化された治療が可能となっています.また,免疫チェックポイント阻害薬をはじめとする新規薬剤の登場により,これまで治療困難とされてきた症例にも新たな治療の選択肢が提供されるようになりました.
 ただし,これにより治療方法は複雑化され,日本肺癌学会が発刊している「肺癌診療ガイドライン」は,毎年改訂されているだけでなく,そのボリュームはこの20年間で2倍以上になっています.たとえば遠隔転移を有する肺癌においても,オリゴ転移という概念が一部導入され,局所治療の有効性の検討が進められています.さらに,患者のQOLを重視した包括的なケアや,多職種連携によるチーム医療の重要性も高まっています.
 本特集「肺癌診療のアップデート」では,最新のエビデンスに基づく診断・治療の進歩を体系的に解説するとともに,日常診療で直面する課題や今後の展望についても触れています.執筆陣には,肺癌診療の第一線で活躍する専門家を迎え,基礎から臨床応用,さらに最低線量CTによる検診,SDM(shared decision making),MDT(multidisciplinary team)まで,幅広い知見を集約しました.本特集が,肺癌診療に携わる医師,医療従事者の皆さまにとって,日々の診療に役立つ一助となることを心より願っております.最先端の知識を共有し,ともに肺癌克服への道を切り拓いていく一冊となれば幸いです.
 はじめに(山本信之)

肺癌診療ガイドライン2025年版の主な変更点
 (滝 貴大・二宮貴一朗)
最適な治療を届けるための遺伝子パネル検査の使い方
 (國政 啓)
肺癌の最新手術方法─標準手術と縮小手術,手術適応,ロボット支援手術
 (津谷康大)
肺癌放射線治療の現状と将来展望
 (土井啓至)
切除可能非小細胞肺癌に対する周術期治療─ALK融合遺伝子,EGFR遺伝子変異,その他のドライバー変異
 (池田 慧)
免疫チェックポイント阻害薬を含めた切除可能非小細胞肺癌に対する周術期治療の最前線
 (松原太一)
切除不能III期非小細胞肺癌に対する化学放射線療法
 (齋藤 伸・釼持広知)
ドライバー遺伝子変異・転座陽性─EGFR,ALK
 (大熊裕介)
ドライバー遺伝子変異・転座陽性例の薬物療法─ROS1融合遺伝子,BRAF遺伝子V600E変異,MET遺伝子変異,RET融合遺伝子,NTRK融合遺伝子,KRAS遺伝子G12C変異,HER2遺伝子変異
 (村田大樹・林 秀敏)
IV期非小細胞肺癌の薬物療法─ドライバー遺伝子変異・転座陰性に対する一次治療の最適化
 (赤松弘朗)
限局型小細胞肺癌の治療パラダイムシフト─化学放射線療法と免疫療法へ
 (田中 悠・善家義貴)
小細胞肺癌の今とこれから─免疫療法時代の課題と次世代戦略
 (大矢由子)
進展型小細胞肺癌の2nd line以降の最新治療と今後の展望
 (菅井万優・栁谷典子)
肺癌におけるオリゴ転移およびオリゴ増悪─その定義と治療開発
 (宮脇太一)
対策型検診としての低線量CT肺がん検診
 (芦澤和人)
肺癌の治療選択─患者-医療者の連携SDMと多職種連携
 (守田 亮)
早期および診断時からの緩和医療
 (井上 彰)
免疫チェックポイント阻害薬治療の副作用管理とガイドライン
 (三浦 理)
高齢者肺癌の治療におけるevidenceとbeyond evidence
 (遠渡純輝・津端由佳里)
間質性肺炎合併肺癌の病態と薬物療法
 (福泉 彩・清家正博)

 次号の特集予告