はじめに
岩田 淳
東京都健康長寿医療センター
認知症,特にアルツハイマー病の治療が大きく変革を遂げている.長らく対症薬であるコリンエステラーゼ阻害薬,NMDA受容体拮抗薬を用いた治療が続けられてきたが,2023年より抗アミロイドβ(amyloidβ:Aβ)抗体薬レカネマブ,2024年からはドナネマブが上市され,保険適用となった.全世界広しといえども,これらの薬剤が国民皆保険で投与されている国はわが国のみであり,壮大な社会実験が始まったといえる.
これらの薬剤については,健康保険を用いた場合の診断,検査結果に基づく投与対象が厳格に定められており,その条件がどのようなものかを理解することは極めて重要である.さらに,その条件を守るためには特定の理由で投与対象にならない(できない)患者も多数いるため,そのような場合の対処方法についてもよく考えなければならない.また,これらの薬剤には特有の副作用があり,今まで経験したことのない医療現場の変化が訪れている.
一方で,これらの抗Aβ抗体薬はアルツハイマー病を治癒に導くものではないため,従来の治療方法,介入方法との併用が前提となる.さらに,アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感,易刺激性,興奮に起因する,過活動または攻撃的言動(すなわちアジテーション)に対してブレクスピプラゾールが使用可能となった.投与対象となる患者は多いため,非専門医による処方も多いと聞く.このため「BPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」の改訂版が発出されたことは極めて重要である.
本特集ではこれらの新規治療方法を実施していくために必要な知識,そしてガイドラインの紹介,将来の展望などについて,その領域の第一人者の先生方にご執筆を依頼させていただいた.認知症,特にアルツハイマー病医療の現在地について理解を深めていただく一助になれば幸いである.
岩田 淳
東京都健康長寿医療センター
認知症,特にアルツハイマー病の治療が大きく変革を遂げている.長らく対症薬であるコリンエステラーゼ阻害薬,NMDA受容体拮抗薬を用いた治療が続けられてきたが,2023年より抗アミロイドβ(amyloidβ:Aβ)抗体薬レカネマブ,2024年からはドナネマブが上市され,保険適用となった.全世界広しといえども,これらの薬剤が国民皆保険で投与されている国はわが国のみであり,壮大な社会実験が始まったといえる.
これらの薬剤については,健康保険を用いた場合の診断,検査結果に基づく投与対象が厳格に定められており,その条件がどのようなものかを理解することは極めて重要である.さらに,その条件を守るためには特定の理由で投与対象にならない(できない)患者も多数いるため,そのような場合の対処方法についてもよく考えなければならない.また,これらの薬剤には特有の副作用があり,今まで経験したことのない医療現場の変化が訪れている.
一方で,これらの抗Aβ抗体薬はアルツハイマー病を治癒に導くものではないため,従来の治療方法,介入方法との併用が前提となる.さらに,アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感,易刺激性,興奮に起因する,過活動または攻撃的言動(すなわちアジテーション)に対してブレクスピプラゾールが使用可能となった.投与対象となる患者は多いため,非専門医による処方も多いと聞く.このため「BPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」の改訂版が発出されたことは極めて重要である.
本特集ではこれらの新規治療方法を実施していくために必要な知識,そしてガイドラインの紹介,将来の展望などについて,その領域の第一人者の先生方にご執筆を依頼させていただいた.認知症,特にアルツハイマー病医療の現在地について理解を深めていただく一助になれば幸いである.
特集 認知症治療の最前線と展望
はじめに(岩田 淳)
抗Aβ抗体薬のリアルワールドでの使用(稲川雄太)
抗体医薬時代の認知症医療における支援ニーズ─適応外と判断された患者・家族を含めて(井藤佳恵)
アミロイド関連画像異常(ARIA)─管理の実際とレジストリ研究(堀江将太朗・新堂晃大)
タウを標的とした治療薬開発の現状(栗原正典)
認知症診断のための画像検査の最前線(北﨑佑樹・島田 斉)
アルツハイマー病の体液バイオマーカー─最新の知見と展望(春日健作)
認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)/神経精神症状(NPS)に対する治療(東 晋二・新井哲明)
多因子介入による認知症予防(古和久朋)
TOPICS
遺伝・ゲノム学 ロングリードシークエンサーを用いたB細胞におけるアイソフォーム特異的eQTLの解析(藤本明洋)
免疫学/癌・腫瘍学 肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の治療効果と腸内・肺内細菌叢との関連(庄司文裕)
連載
医療における生成AIとDX(13)
医師の知的生産性を高めるAI活用術(飯塚浩也)
医療にいかす行動経済学(10)
行動経済学を駆使した肝がん死亡率ワースト1位汚名返上プロジェクト(江口有一郎・他)
FORUM
人間社会の未来─専門家が予見する人類の行方(17) 医学・医療におけるELSIの今後(中澤栄輔)
次号の特集予告
はじめに(岩田 淳)
抗Aβ抗体薬のリアルワールドでの使用(稲川雄太)
抗体医薬時代の認知症医療における支援ニーズ─適応外と判断された患者・家族を含めて(井藤佳恵)
アミロイド関連画像異常(ARIA)─管理の実際とレジストリ研究(堀江将太朗・新堂晃大)
タウを標的とした治療薬開発の現状(栗原正典)
認知症診断のための画像検査の最前線(北﨑佑樹・島田 斉)
アルツハイマー病の体液バイオマーカー─最新の知見と展望(春日健作)
認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)/神経精神症状(NPS)に対する治療(東 晋二・新井哲明)
多因子介入による認知症予防(古和久朋)
TOPICS
遺伝・ゲノム学 ロングリードシークエンサーを用いたB細胞におけるアイソフォーム特異的eQTLの解析(藤本明洋)
免疫学/癌・腫瘍学 肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の治療効果と腸内・肺内細菌叢との関連(庄司文裕)
連載
医療における生成AIとDX(13)
医師の知的生産性を高めるAI活用術(飯塚浩也)
医療にいかす行動経済学(10)
行動経済学を駆使した肝がん死亡率ワースト1位汚名返上プロジェクト(江口有一郎・他)
FORUM
人間社会の未来─専門家が予見する人類の行方(17) 医学・医療におけるELSIの今後(中澤栄輔)
次号の特集予告















