はじめに
竹内 崇
東京科学大学大学院医歯学総合研究科精神行動医科学分野
周産期メンタルヘルスの問題は,妊娠前から精神疾患に罹患している精神疾患合併妊娠への支援と,妊娠中あるいは出産後に新たに精神疾患を発症する,産後うつ病を代表とする産褥期精神障害の対応が中心になると考えられる.前者は,すでに精神科医が介入しており,妊娠前からの精神症状のコントロール,適正な薬物療法,さらに,妊娠・出産を契機に患者が母親としての役割を獲得し,家族全体の養育機能を高め,社会生活機能を発揮するために必要な支援を検討していくことが必要とされる.そのために,病院内外の多職種によるさまざまな立場からの介入が重要である.一方で後者は,最初に関わる産科スタッフは重症度評価を行い,ケースマネージしていくことが求められる.これらを適切に,そして円滑に実践していくために何が必要であろうか.
従来,周産期における精神科的な問題は,向精神薬の催奇形性や授乳への影響など薬物療法的な問題が中心であったが,近年,薬物療法にとどまらず,さまざまな角度からアプローチがなされてきた.
すべての妊娠可能年齢の女性が健康な生活習慣を身につけることや,精神疾患患者が将来の妊娠を考慮して薬剤の整理を行うことといったプレコンセプションケア,米国で産後うつ病に適応となった新規抗うつ薬brexanolone,認知行動療法や対人関係療法などの心理療法的アプローチ,治療選択の際の意思決定にまつわる倫理コンサルテーション,病院内にとどまらず病院外の地域におけるリエゾン活動など,非常に多岐にわたっている.これらは,冒頭で提示した問いに対する答えにつながるものと考えている.
本特集では,それぞれの領域において第一線で活躍しているエキスパートに,上記のテーマに関して執筆を依頼した.周産期メンタルヘルスについて,今後さらなる可能性を感じられる内容になったと考えている.
竹内 崇
東京科学大学大学院医歯学総合研究科精神行動医科学分野
周産期メンタルヘルスの問題は,妊娠前から精神疾患に罹患している精神疾患合併妊娠への支援と,妊娠中あるいは出産後に新たに精神疾患を発症する,産後うつ病を代表とする産褥期精神障害の対応が中心になると考えられる.前者は,すでに精神科医が介入しており,妊娠前からの精神症状のコントロール,適正な薬物療法,さらに,妊娠・出産を契機に患者が母親としての役割を獲得し,家族全体の養育機能を高め,社会生活機能を発揮するために必要な支援を検討していくことが必要とされる.そのために,病院内外の多職種によるさまざまな立場からの介入が重要である.一方で後者は,最初に関わる産科スタッフは重症度評価を行い,ケースマネージしていくことが求められる.これらを適切に,そして円滑に実践していくために何が必要であろうか.
従来,周産期における精神科的な問題は,向精神薬の催奇形性や授乳への影響など薬物療法的な問題が中心であったが,近年,薬物療法にとどまらず,さまざまな角度からアプローチがなされてきた.
すべての妊娠可能年齢の女性が健康な生活習慣を身につけることや,精神疾患患者が将来の妊娠を考慮して薬剤の整理を行うことといったプレコンセプションケア,米国で産後うつ病に適応となった新規抗うつ薬brexanolone,認知行動療法や対人関係療法などの心理療法的アプローチ,治療選択の際の意思決定にまつわる倫理コンサルテーション,病院内にとどまらず病院外の地域におけるリエゾン活動など,非常に多岐にわたっている.これらは,冒頭で提示した問いに対する答えにつながるものと考えている.
本特集では,それぞれの領域において第一線で活躍しているエキスパートに,上記のテーマに関して執筆を依頼した.周産期メンタルヘルスについて,今後さらなる可能性を感じられる内容になったと考えている.
特集 周産期メンタルヘルス─プレコンセプションケアから地域リエゾンまで
はじめに(竹内 崇)
プレコンセプションケアにおけるメンタルヘルスの重要性─プレコンセプションケア専門外来を通じて(佐藤美香・他)
妊娠・授乳を考慮した精神科薬物療法(福本健太郎)
産後うつ病に対する新規治療薬brexanoloneへの期待(伊藤賢伸)
“母であること”に揺れるこころに寄り添う─周産期支援における認知行動療法と社会的処方の活用(蟹江絢子・中嶋愛一郎)
妊産婦のための対人関係療法(利重裕子)
精神疾患合併妊娠における臨床倫理コンサルテーション(須田哲史)
大阪府における妊産婦メンタルヘルス支援(平山 哲)
地域リエゾン─地域の周産期医療・母子保健を精神科が支援する意義(安田貴昭・五十嵐友里)
TOPICS
再生医学 発生メカニズムに基づく造血幹細胞の誘導技術の確立(古賀沙緒里)
救急・集中治療医学 熱中症と低体温症における重症度分類の最新動向(神田 潤)
連載
ケースから学ぶ臨床倫理推論(22)
緩和医療におけるモルヒネによる呼吸抑制:緩和医療死(山﨑宏人)
イチから学び直す医療統計(14)
経時測定データの解析手法(十島玄汰・他)
医療分野におけるブロックチェーンとNFTの活用(4)
ICTおよび暗号技術を駆使した医療情報セキュア管理システムの構築(野上保之)
医師の働き方改革─取り組みの現状と課題(3)
時間管理の導入(桑鶴良平)
FORUM
司法精神医学への招待─精神医学と法律の接点(17) 犯罪被害者支援の現状と課題(賀古勇輝)
次号の特集予告
はじめに(竹内 崇)
プレコンセプションケアにおけるメンタルヘルスの重要性─プレコンセプションケア専門外来を通じて(佐藤美香・他)
妊娠・授乳を考慮した精神科薬物療法(福本健太郎)
産後うつ病に対する新規治療薬brexanoloneへの期待(伊藤賢伸)
“母であること”に揺れるこころに寄り添う─周産期支援における認知行動療法と社会的処方の活用(蟹江絢子・中嶋愛一郎)
妊産婦のための対人関係療法(利重裕子)
精神疾患合併妊娠における臨床倫理コンサルテーション(須田哲史)
大阪府における妊産婦メンタルヘルス支援(平山 哲)
地域リエゾン─地域の周産期医療・母子保健を精神科が支援する意義(安田貴昭・五十嵐友里)
TOPICS
再生医学 発生メカニズムに基づく造血幹細胞の誘導技術の確立(古賀沙緒里)
救急・集中治療医学 熱中症と低体温症における重症度分類の最新動向(神田 潤)
連載
ケースから学ぶ臨床倫理推論(22)
緩和医療におけるモルヒネによる呼吸抑制:緩和医療死(山﨑宏人)
イチから学び直す医療統計(14)
経時測定データの解析手法(十島玄汰・他)
医療分野におけるブロックチェーンとNFTの活用(4)
ICTおよび暗号技術を駆使した医療情報セキュア管理システムの構築(野上保之)
医師の働き方改革─取り組みの現状と課題(3)
時間管理の導入(桑鶴良平)
FORUM
司法精神医学への招待─精神医学と法律の接点(17) 犯罪被害者支援の現状と課題(賀古勇輝)
次号の特集予告















