やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 佐治重衡
 福島県立医科大学医学部腫瘍内科学講座
 まずは数多く出版されている医学雑誌のなかから本誌を手にとっていただき,誠にありがとうございます.筆者が医師になって30年が過ぎましたが,この間の医学情報の収集方法の変化には目をみはるものがあります.
 1990年代はまず図書館に行き,カードカタログから雑誌を探したり,CD-ROMのデータベースで文献検索を行い,雑誌を探し出し,時には他の大学の図書館に出向き,1枚10円でコピーをして,気づいたら数千円のコピー代になって慌てるような日々でした.2000年代になり,PubMedなどのオンラインデータベースが普及して,文献検索はとても手軽になりました.学術雑誌もオンラインで公開され,論文の入手も簡単になりました.2010年代からはスマートフォンの普及により,いつでもどこでも医療情報にアクセスできますし,2020年代はたくさんの情報サイトやSNSコミュニテイからの最新情報のまとめ配信が活発化し,誰でも容易に最新情報を受け取れる時代となりました.
 そんな時代に,紙媒体の週刊誌が果たす役割はなんでしょうか?
 ChatGPT 3.5に,週刊『医学のあゆみ』についてたずねると,“『医学のあゆみ』は,医療分野での最新情報を提供し,医療従事者や研究者にとって貴重なリソースとなる雑誌です.医学の進歩を共有し,知識の向上を図るための重要な媒体といえます”と教えてくれました.
 はい,その通りです.本誌は1冊まるごと“乳癌のすべて2024”として,現時点での乳癌診療に関する最新情報を提供し,進歩を共有し,医療者みなさんの知識の向上を図るために企画しました.いま知っておくべきこと,今後の数年間で解決すべき課題を各領域のトップランナーの先生方が執筆してくださっています.さらに,長年にわたり診療・研究活動でご一緒してきた5名の先生に,みなさんにお伝えしたい将来への提言を書いていただきました.情報が気軽にスマートに手に入る今ですが,あえてぜひ腰を据えて,じっくり本誌を読んでいただければと思います.
 はじめに(佐治重衡)
予防・診断の進歩
 乳癌の疫学(河合賢朗・他)
 乳癌のバイオロジー─ゲノム医療の視点から(上野貴之)
 乳癌のサブタイプ分類(山本 豊)
 cfDNAアッセイ(船坂知華子・内藤陽一)
 早期乳癌における治療最適化への挑戦─バイオマーカーの役割と未来展望(岩本高行)
 乳癌検診の現状と今後の展望(多田 寛・石田孝宣)
 ハイリスク乳癌と遺伝性乳癌の医学的管理(吉田玲子)
 乳癌の画像診断Update(片岡正子)
最新の治療
 乳癌に対する低侵襲手術のアプローチ(寺田かおり)
 乳腺ロボット支援手術─世界の現状とわが国での保険収載に向けての取り組み(島津研三)
 転移乳癌に対する局所治療(枝園忠彦)
 乳癌脳転移のマネジメント(新倉直樹)
 乳房再建(棚倉健太・他)
 早期乳癌に対する薬物療法─最新トピックスまとめ(尾崎由記範)
 HR陽性HER2陰性転移再発乳癌薬物療法における新たな羅針盤─クローンレベルでの戦いの幕開け(吉波哲大)
 乳癌に対する放射線療法のトレンドと展望(山内智香子)
 乳癌治療における支持医療(飯原大稔・他)
知っておきたい関連知識
 乳癌患者へのサバイバーシップ支援(渡邊知映)
 乳癌診療におけるQOL/PRO(平 成人)
 乳癌医療に携わる医療者のための医療経済(岩谷胤生)
 高齢者乳癌へのアプローチ(澤木正孝)
 乳癌と妊娠をめぐる話題(田村宜子・清水千佳子)
将来への提言
 若手医療者へのメッセージ─研究について(戸井雅和)
 乳癌診療を通じて全人的医療を学ぶ(中村清吾)
 本当の意味で患者さんに優しい医療とはなにか? 研究とはなにか?(大野真司)
 多施設共同臨床研究のリーダーシップにおいて必要なことは?(岩田広治)
 新しいエビデンスの創出を目指して─臨床研究責任者のすゝめ(増田慎三)

 次号の特集予告

 サイドメモ
  乳癌サブタイプ分類の臨床的意義
  オンコタイプDX乳がん再発スコア(R)の挑戦と今後
  TAS(tailored axillary surgery),TAD(targeted axillary dissection)の定義
  転移乳癌を取り巻く状況の変化
  シリコーン乳房インプラント(SBI)の表面加工
  深下腹壁動脈穿通枝(DIEP)皮弁でのひと手間
  琥珀の輝き,AMBER試験(JBCRG M08)
  寡分割照射
  がんサバイバーシップの歴史
  医療技術評価(HTA)
  高齢者機能評価(GA)
  将来,妊娠・出産を望むのか,望まないのか