やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに―PHRとウェアラブルデバイスの連携による医療の未来への期待
 水島 洋
 国立保健医療科学院研究情報支援研究センター
 長年,日本における医療情報はリアルワールドデータ(real world data:RWD)としてレセプト情報と特定健診情報を組み合わせたデータベース(National Data Base:NDB)やがん登録,指定難病データベースおよび小児慢性特定疾病児童等データベース,MID-NETR(medical information database network)をはじめ,さまざまな医療のデータベースが構築され,また利用・活用されてきている.これに加え,個人の生涯にわたる健康医療情報(personal health record:PHR)の活用が期待されるようになってきている.
 日本における健康診断は出生前の妊婦健診にはじまり,学校健診や特定健診,自治体検診など,さまざまなものが存在する.しかし,これらの健診情報は標準化されておらず,データはそれぞれ別々に保管され,その後,所在不明になっていることが多い.そのため,企業健診と自治体検診の連携が取れていなかったことが長年課題であった.医師は医療を受ける際には通常時の体の状態や,いつごろからどのような異変があったかを知ることは重要であるが,それらは患者の記憶に頼っている状況である.そのため,PHRとしての健診情報の集約が期待されている.
 一方,FitbitやApple Watchなどといったウェアラブルデバイスによる健康管理も可能になってきており,歩数や心拍,活動量,睡眠検知,表面体温に限らず,深部体温や心電図,発汗量,昇降高度,血中飽和酸素分圧(SpO2)なども可能になっている.加えて血糖値の連続測定が可能な機器もあり,食後のスパイク血糖値がはかれるばかりではなく,食事指導や栄養指導との連携も期待されている.これらを常時身に着けておくことによって熱中症や低血糖,低酸素などのモニターが可能となり,運動中や就労中の熱中症などの発症検知にも応用されている.また,多くの人が常に持ち歩いているスマートフォン(センサーと情報端末の塊)も多彩な健康関連のアプリが増えており,これを活用しない手はない.お薬手帳や健康の記録は簡便であり,近年のマイナポータルとの連携による健康管理にも期待がよせられており,創薬のための情報や治験の管理にもスマートフォンの活用による在宅治験が注目されている.
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行対策として,現状の医療情報化の課題が多く指摘されてきたなかで,このような新しい動きが進みつつある.
 本特集ではそれぞれの第一線の専門家から執筆をいただくことができた.ご協力いただいた先生方,および「医学のあゆみ」編集部の皆様には大変感謝いたします.
特集 ウェアラブルデバイスと未来の医療
 はじめに―PHRとウェアラブルデバイスの連携による医療の未来への期待 水島 洋
 わが国におけるPHRの現況と課題・展望─PHRを活用した健康社会の実現に向けて 石見 拓
 ウェアラブルデバイスの生活に対する密着性と利便性および将来 近藤克彦
 オンライン医療の現状と医療DXの展望 稲生優海・豊田剛一郎
 ウェアラブルデバイスとそのデータによるPHRの実現 岸 暁子・池浦富久
 薬局の対人業務におけるスマートフォンの活用 遠藤 馨
 デジタル投資によるヘルスケア創薬の発展 堂田丈明
 ウェアラブルデバイスから得られるデジタルバイオマーカーの医薬品開発への活用 杉谷康雄・山本英晴

連載
人工臓器の最前線(7)
 リードレスペースメーカの最前線 近藤祐介

医療AI技術の現在と未来─できること・できそうなこと・できないこと(2)
 画像認識技術の近年の動向 片岡裕雄

TOPICS
 救急・集中治療医学 新しいAED─オートショックAEDへの期待 丸川征四郎
 糖尿病・内分泌代謝学 インスリンによるタンパク質・脂質代謝制御経路の解明 矢作直也

FORUM
 グローバルヘルスの現場力(4) 障がい児の療育─誰もが大切にされる社会を目指して 公文和子

 次号の特集予告