やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 東 尚弘
 川井 章
 国立がん研究センター希少がんセンター
 希少がんは,2012年に閣議決定した第2期のがん対策推進基本計画において,対策が講じられるべき課題としてあげられた.それを受け,2015年,厚生労働省の「希少がん医療・支援のあり方に関する検討会」報告書において,希少がんの定義が「人口10万人当たり年間発生6例未満,また,数が少ないために診療・受療上の課題が他のがんに比べて大きいもの」と2つの要素で定義された.この検討会では希少がん全般に共通する課題について検討がなされたが,その後,国立がん研究センターが希少がん中央機関として指定され,ホームページや電話相談の充実がはかられるとともに,“希少がん対策ワーキンググループ(WG)”が設置され,個別のがん種ごとに必要な対策が検討された.これまでに,四肢の軟部肉腫,眼腫瘍,神経内分泌腫瘍の検討が行われてきた.WGでは,希少がん診療における大きな問題は,希少がん患者が安心して受診できる専門施設が不明であるという観点から,特定の希少がんに関して専門施設が満たすべき施設特性が定められ,必要な特性を満たす施設を全国から募集して,国立がん研究センターがん情報サービスにおいて情報公開が行われた.また,並行して国の希少がん対策として,厚生労働科学研究費や委託事業の枠組みにより,診療ガイドラインの推進や病理医の育成を目指した活動への助成が行われている.
 また,実地医療においては地域ごとの個別性を重視することが重要であることから,地域ごとに希少がん診療提供体制の情報を集め,それらの拠点をネットワーク化していく試みが,厚生労働科学研究費によって国内数カ所でパイロット研究として開始されている.地域の実情を検討するには,院内がん登録などから集計した客観的データと,担当する医師の経験や施設の希少がん受け入れ方針などといったソフトな情報を総合して考えることが重要と考え,工夫を凝らしている.
 本特集ではこれらの各活動をご紹介する.希少がん対策推進の一助となれば幸いである.
特集 希少がんに対する診療提供体制の現状と展望
 はじめに-国の希少がん対策のこれまでと現在
  東 尚弘・川井 章
 地域における希少がん診療提供体制-大阪・近畿圏の場合
  松浦成昭・他
 地域における希少がん診療提供体制-九州の場合
  土橋賢司・馬場英司
 神経内分泌腫瘍の診療提供体制
  青木 琢
 肉腫の診療提供体制
  岩田慎太郎・川井 章
 眼腫瘍の診療提供体制
  鈴木茂伸
 希少がんの診療ガイドライン
  小寺泰弘
 希少がん診断のための病理医育成事業-日本病理学会の取り組み
  佐々木 毅
 希少がんとしての副腎皮質がん-その病理診断の均てん化と集約化に向けての試み
  笹野公伸・山崎有人

連載
COVID-19診療の最前線から-現場の医師による報告(17)
 妊婦のCOVID-19感染
  高橋宏典・薄井里英

バイオインフォマティクスの世界(6)
 グライコインフォマティクス(糖鎖インフォマティクス)
  細田正恵・他

TOPICS
 腎臓内科学 交感神経-免疫連関による急性腎障害の病態制御メカニズム解明
  長谷川 頌
 脳神経外科学 精神神経疾患に対する外科治療の国際的動向
  森下登史・他

FORUM
 中毒にご用心-身近にある危険植物・動物(10) ハブクラゲ-沖縄の海で刺されると…
  堀江勝博・一二三 亨
 日本型セルフケアへのあゆみ(15) 摂食・嚥下機能が低下した人の在宅ケア
  児玉龍彦

 次号の特集予告