やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第4版改訂にあたって
 周術期における看護(perioperative nursing)は,患者の生命とQOL(quality of life)を左右するきわめて重要な専門的実践です.医療技術の進展と多様化する医療ニーズに対応するためには,科学的根拠に基づいた判断と,個別性に配慮したケアの統合が必要不可欠となります.本書は,こうした複雑化する周術期医療において,看護職が果たすべき役割を実践的かつ理論的に整理し,理解と応用を促進することを目的としています.
 第4版改訂では,腹腔鏡・胸腔鏡を用いた鏡視下手術に加え,今後さらに普及が予測されるロボット支援手術に対応した看護のあり方についても最新の知見に基づいて加筆しました.従来の開腹・開胸手術と比較しながら,それぞれの術式における看護の共通点と相違点を明示し,多様な臨床状況に対応できる知識と判断力の強化を目指しています.
 また,本書は周術期における患者の経時的な変化に着目し,時間軸に沿って必要となる看護支援を体系的に提示しています.外来受診時から始まる周術期管理チームにおける看護を「術前編(旧第1巻)」,術中・術後の生体反応に着目した術後急性期の看護を「術中・術後編(旧第2巻)」として示し,連続するプロセスのなかで看護師がどのように関与し,どのような臨床推論を行うべきかについても,多角的に解説を加えました.加えて,「消化器編(旧3巻)」,「脳神経編(4巻)」,「運動器編(5巻)」などの主要疾患別の巻では,各疾患に特有のリスクや支援のポイントにも焦点を当て,より実践的な判断ができる構成となっています.
 本書の執筆にあたっては,手術室,集中治療室,一般病棟など多様な臨床現場で活躍する熟練看護師,ならびに看護学教育に携わる大学教員が連携し,現場の実際と教育的視点の両立を図りました.写真やビデオ映像を導入した解説や,事例による看護過程の展開,図表の提示など,分かりやすさに留意しつつ,根拠に基づく看護(evidence-based nursing;EBN)の観点から,各種ガイドラインや最新文献の情報を反映させて,内容の妥当性と信頼性を高めています.
 看護師や臨床実習中の看護学生は,患者の生理的・心理的変化を鋭く観察し,刻々と変化する状態に即応する高度な臨床判断力を求められます.加えて,患者の価値観や意思を尊重しつつ,専門職としての責任をまっとうする姿勢も不可欠です.本書が,そのような専門職としての看護実践を支える基盤となり,読者一人ひとりの思考と判断を深める一助となれば幸いです.
 竹内登美子


はじめに 初版の序
 本書は主に,看護学生や新人ナースを対象としてまとめたものです.読者の方々が,講義や演習などで得た既存の知識を復習・整理することを助け,看護実践(看護学実習)に活かすことができる実践的テキストとして企画しました.
 従来の成人看護学「外科系」や「急性期」,臨床外科看護学などの類書といえますが,周手術期看護 perioperative nursing,すなわち患者が手術療法を選択するか否かに関する看護から,「手術前・中・後の看護」に焦点をあて,退院するまでの一連のプロセスに関わる看護までを整理しました.
 シリーズ1は外来/病棟における術前看護,シリーズ2は術中/術後の生体反応と急性期看護,シリーズ3は開腹術/腹腔鏡下手術を受ける患者の看護です.これらに共通していることは,頻度の高い幽門側胃亜全摘出術を受ける患者の看護を中心に記述しながら,噴門側手術の場合や,食道あるいは大腸手術,腹腔鏡下手術,開胸手術の場合などと比較検討して知識を広げていけるように構成した点です.麻酔に関する知識についても同様で,全身麻酔と硬膜外麻酔下で手術を受ける患者の看護を中心に学びながら,脊椎麻酔の場合との違いが理解できるように構成されています.
 特に,「手術を受ける患者と家族の心理を理解するための看護の要点」,「手術療法の理解と看護実践に必要な解剖・生理学の知識」,「術後合併症予防のための看護技術と指導」に力点をおいています.これらは,周手術期看護の基礎ともいえる必須概念と技術だからです.そしてその際,現在の医療・看護に応じた最新の知見を盛り込んで記述するように努めました.
 その他の特徴としては,章の内容を適切に理解する助けとして学習目標objectivesを明示したこと,図表やイラストを多くしてビジュアルな紙面としたこと,知識の整理を促進するために看護過程の展開例を入れたこと,各章に適宜Q & AやPLUS ONEとしてコラムを入れ,追加情報や知識の補足をしたことなどがあげられます.
 学生や新人ナースの多くは,手術を受けた患者を適切にイメージすることができず,看護援助が患者の回復の後追いになってしまったり,既存の知識を統合することができず,観察したことを看護に結びつけてアセスメントすることができなかったりするものです.しかし,幾つかのヒントを与えたり,幾つかの参考書を提示すれば,自ら答えを導き出してくることが多いのも事実です.臨床で実習指導や新人ナースの指導を担当しているナースの方々と,看護教員養成課程および看護大学の教員で執筆された本書が,そのような折に有用な手引きとしてお役に立てば幸いです.
 竹内登美子
第1章 手術を受ける胃癌患者の看護
 1 基礎知識(竹内登美子・青栁寿弥・山下暢子)
  (1)胃の解剖・機能の理解
   (1)胃の位置と形状
   (2)胃の構造
    A 粘膜
     a.胃底腺(固有胃腺)
     b.噴門腺
     c.幽門腺
    B 粘膜下層
    C 固有筋層
    D 漿膜
   PLUS ONE 胃の「手前(食道)」と「後ろ(十二指腸)」はどうなっているの?
   (3)胃の機能
  (2)胃周辺各種臓器や循環系・神経系の理解
   (1)胃周辺各種臓器
   (2)胃の循環系
    A 動脈
    B 静脈
    C リンパ管
   (3)胃の神経系
    A 交感神経
    B 副交感神経
  (3)胃癌の進行度分類と浸潤・転移・症状
   (1)胃癌の進行度分類と浸潤
   (2)胃癌の転移
   (3)胃癌の症状
  (4)術式の理解
   (1)定型手術
   (2)非定型手術
   (3)胃癌の手術の種類
    A 胃全摘術(total gastrectomy)
    B 幽門側胃切除術(distal gastrectomy)
    C 幽門保存胃切除術(pylorus preserving gastrectomy;PPG)
    D 噴門側胃切除術(proximal gastrectomy;PG)
   PLUS ONE 胃内容物の逆流防止とHis角
  (5)胃癌の補助化学療法
  (6)胃癌の腹腔鏡下手術とロボット支援手術
   (1)胃癌の腹腔鏡下手術(laparoscopic surgery)
      メリット
      デメリット
   (2)胃癌のロボット支援手術(robot assisted surgery)
 2 術前の患者理解と看護(竹内登美子・髙橋由起子)
  (1)ロボット支援胃切除術(Robot assisted gastrectomy;RAG)を受ける患者の術前心理
  (2)ロボット支援胃切除術を受ける患者への術前オリエンテーション
   (1)ロボット支援胃切除術の目的と手術手順
   (2)事前準備
   (3)手術当日の流れ
   (4)術後のケア
   (5)退院の時期と退院後の生活
   (6)入院費
  (3)ロボット支援胃切除術を受ける高齢患者と家族への術前看護
 3 術後の患者理解と合併症に対する看護(髙橋由起子・青栁寿弥・山下暢子・竹内登美子)
  (1)術後合併症および患者の苦痛の理解と看護
    A 術後出血と膵液漏
      原因
      症状と治療
      看護の留意点
    B 縫合不全
      原因
      症状と治療
      看護の留意点
   PLUS ONE 「縫合」と「吻合」って,どこが違うの?
    C 術後のイレウスと腸閉塞症
      原因
      症状と治療
      看護の留意点
    D ダンピング症候群
     a.早期ダンピング症候群
      原因
      症状と治療
     b.後期ダンピング症候群
      原因
      症状と治療
     c.看護の留意点
    E 逆流性食道炎
      原因
      症状と治療
      看護の留意点
    F 術後貧血
      原因
      症状と治療
      看護の留意点
  (2)生活状況を整えるための看護
   (1)ドレーン管理
    A ドレーンの管理技術
     a.ドレーンの逸脱・埋没を予防する
     b.ドレナージ効果を上げる
   PLUS ONE 似ている用語:“ドレーン“と“ドレナージ”はどう違うの?
     c.排液の観察から腹腔内の状況をアセスメントする
     d.ドレーンからの感染や排液による皮膚のトラブルを予防する
     e.ドレーン挿入による苦痛を軽減する
   (2)肺音の聴取
    A 胃切除後の肺音の聴取
    B 肺葉の位置の確認
    C 肺音の聴取法
    D 肺音の分類
     a.呼吸音
     b.副雑音
   (3)離床への援助
    A 長期安静臥床にて生じやすい障害と離床
     a.呼吸器系
     b.循環器系
     c.消化器系
     d.筋肉・骨格系
     e.精神活動
    B 離床の援助の技術
     a.患者の全身状態が離床できる状態であるかを確かめる
     b.ドレーン類を整理する
     c.患者と目標を共有する
   (4)指導技術
    A 胃切除後における指導技術
    B 指導技術の4つの段階
     a.学習ニーズのアセスメント
     b.指導計画
     c.指導
     d.評価
  (3)退院へ向けての看護─食事指導を中心に─
   (1)胃切除後の退院に向けての看護
   (2)食事指導の計画立案に収集しておく情報
   (3)指導内容
    A 合併症予防のための指導
     a.ダンピング症候群予防の注意点
     b.逆流性食道炎予防の注意点
    B 栄養素およびカロリーの不足予防のための指導
     a.術後貧血予防のための注意点
     b.摂取カロリー不足予防のための注意点
   (4)指導の注意点
第2章 ロボット支援胃切除術後の看護過程の展開
 (髙橋由起子・青栁寿弥・山下暢子)
 1 術後の看護過程
  (1)事例紹介:Part 1(術前から術後4日目まで)
   (1)患者の概要
   (2)患者の経過
    A 入院までの経過
     a.現病歴
     b.外来での検査結果
     c.外来での病状説明
    B 入院から手術までの経過
    C 手術後の概要
    D 術後の経過(術直後~術後4日まで)
  (2)術後4日までのアセスメントと看護診断
  (3)長期/短期目標・具体策
  (4)事例紹介:Part 2(術後5日目以降)
    A 術後の経過
  (5)退院前のアセスメントと看護診断
  (6)退院に向けた解決目標・具体策および結果と評価
   PLUS ONE 介護保険申請のすすめ
第3章 腹腔鏡下結腸切除術を受ける患者の看護
 (道券夕紀子・牧本奈津子・斉藤伊都子)
 1 基礎知識
  (1)大腸の解剖・機能の理解
   (1)大腸の解剖
   (2)大腸の機能
    A 大腸における消化・吸収
    B 大腸の運動機能
  (2)大腸周辺の各種臓器と循環系・神経系の理解
   (1)大腸の循環系
   (2)大腸の神経系
   (3)大腸周辺の各種臓器
   PLUS ONE 硬膜外鎮痛薬注入法と大腸の運動促進
  (3)術式の理解
     a.腹腔鏡下手術とロボット支援手術の導入
     b.腹腔鏡下結腸切除術の概要
   (1)気腹法
   (2)腹腔鏡下結腸切除術の必要物品
   (3)手術体位と器械類の配置
   (4)腹腔鏡下結腸切除術の麻酔
   (5)腹腔鏡下結腸切除術の利点と欠点
    A 腹腔鏡下結腸切除術の利点
    B 腹腔鏡下結腸切除術の欠点
    C 腹腔鏡下結腸切除術の問題点
     a.port site recurrence(トロカール刺入部位の局所再発)の可能性
     b.炭酸ガスの気腹による問題
 2 術前の患者理解と看護
  (1)術前の患者心理と看護の留意点
      医師が行うインフォームド・コンセント
      看護の留意点
  (2)術前オリエンテーション
      目標
      方法
  (3)術前の身体的準備
   (1)外来で実施された検査データ項目と看護への活用
    A 血液一般検査,血液凝固検査,血液生化学検査
    B 血液型,感染症(B型・C型肝炎,梅毒,HIV)
    C 胸部X線,呼吸機能,心電図
   (2)手術に向けての準備
    A 輸液・輸血の準備
    B 呼吸トレーニング
   (3)手術前日の準備
    A コロンクリーニング(腸管内洗浄)
      目的
      方法
    B 除毛
      目的
      方法
    C 臍処置
      目的
      方法
    D 睡眠剤の投与
      目的
   (4)手術当日の準備
 3 術後の患者理解と看護
  (1)術後合併症および患者の苦痛の理解と看護
   (1)術後合併症
    A 無気肺・肺炎
      原因
      症状と予防・治療
      看護の留意点
   PLUS ONE 呼吸理学療法とは?
    B 不整脈
      原因
      治療
      看護の留意点
    C 創感染
      原因
      症状と治療
      看護の留意点
    D 術後出血
      原因
      治療
      看護の留意点
    E 縫合不全
    F イレウス,腸閉塞症
    G 肩痛,皮下気腫
      原因
      症状と治療
      看護の留意点
    H 腕神経叢麻痺
  (2)排便コントロールのための看護
    A 腸蠕動音の聴取
      目的
      異常音
    B 温罨法
      目的
      方法
     a.腰背部温罨法
     b.腹部温罨法
      留意点
    C 排泄習慣の指導
      目的
      内容
    D 運動と休息
      目的
      方法
      留意点
    E 食事療法
      目的
      内容
      留意点
    F 薬物療法
      留意点
   PLUS ONE 便秘のために指圧を行っていますか?
  (3)退院に向けての看護
   (1)退院に向けて患者・家族が抱える不安・疑問と一般的な指導内容
    A 再発に対する不安
    B 退院後の食生活
    C 喫煙可能な時期,アルコール摂取の可能時期
    D 創部の消毒や保護の仕方
    E 入浴開始時期
    F 性生活の開始時期
    G 市販薬の内服
    H 社会復帰の時期
    I 旅行やスポーツの開始可能な時期
    J 受診が必要な異常症状
第4章 人工肛門造設術を受ける患者の看護
 (安田智美・比嘉肖江)
 1 基礎知識
  (1)直腸の解剖・機能の理解
   (1)大腸の定義
   (2)大腸の区分と直腸の区分
   (3)直腸周囲の血管系
   (4)直腸周囲のリンパ管系
   (5)直腸周囲の神経系
   (6)大腸の機能
  (2)大腸癌の病態
   (1)組織学的分類
   (2)病期分類
   (3)大腸癌の臨床症状
   (4)大腸癌の検査・確定診断
    A 検診法
    B 診断法
    C 治療方針を決めるための検査
   (5)大腸癌の治療方法
   PLUS ONE CEA(癌胎児性抗原 carcinoembryonic antigen)とは?
  (3)術式の理解
   (1)内視鏡切除術
   (2)外科的切除術
   PLUS ONE ストーマに関する語句の説明
 2 術前の患者理解と看護
  (1)術前アセスメント
   (1)健康認知-健康管理パターン
   (2)栄養-代謝パターン
   (3)排泄パターン
   (4)活動-運動パターン
   (5)認知-知覚パターン
   (6)自己認識-自己概念パターン
   (7)役割-関係パターン
   (8)性行動-生殖パターン
   (9)コーピング-ストレス耐性パターン
   (10)価値-信念パターン
  (2)術前の患者心理
   PLUS ONE 皮膚・排泄ケア認定看護師とは?
   PLUS ONE ストーマに関するパッチテストとは?
  (3)術前の身体的準備
   (1)ストーマに関するオリエンテーション
   (2)ストーマサイトマーキング(ストーマの位置決め)
      ストーマサイトマーキングの意義
      ストーマ位置としての条件
   (3)一般的な術前の準備
   (4)大腸の術前処置
 3 術後の患者理解と看護
  (1)術後合併症および患者の苦痛の理解と看護
    A 術後出血
      術後出血のアセスメントポイント
    B 創痛
      創痛のアセスメントポイント
    C イレウスと腸閉塞症
      イレウス,腸閉塞症のアセスメントポイント
    D 排尿障害
      排尿障害のアセスメントポイント
    E 縫合不全
    F 感染
      骨盤内死腔炎・創感染のアセスメントポイント
    G ボディイメージの変化
    H 性機能障害
    I ストーマ合併症
  (2)ストーマのセルフケア
   PLUS ONE 人工肛門をつくったことによる心身の変化と生活への影響
   (1)自然排便法
    A セルフケア確立のためのアセスメント
    B セルフケアのゴールの設定
    C セルフケア開始の時期
    D セルフケア指導の進め方
    E セルフケア指導を行ううえでの注意
    F 基本的なストーマケア
     a.ストーマの観察
     b.必要物品
     c.装具交換の手順
     d.その他
   (2)灌注排便法
  (3)退院に向けての看護
   (1)退院後の生活上の注意
      食事
      排泄
      入浴
      運動やスポーツ
      衣服
      通学または通勤
      旅行
      性生活
   (2)ストーマ用品の管理方法
      入手方法
      管理方法
      廃棄方法
   (3)災害時の対応
      災害への備え
      支援体制
      緊急時ストーマ用品無料提供
   (4)患者会
   (5)社会保障制度の活用
   (6)定期受診とストーマ外来
  (4)社会資源の活用
   (1)身体障害者手帳の交付
      身体障害者手帳の申請・交付
   (2)ストーマ装具(日常生活用具)給付
      ストーマ装具(日常生活用具)給付の申請手順
   (3)医療費控除
   (4)その他
第5章 Miles術を受けた患者の看護過程の展開
 (安田智美)
 1 術後の看護過程
  (1)事例
  (2)アセスメント
   (1)生理的様式
   (2)自己概念様式
   (3)役割機能様式
   (4)相互依存様式
  (3)術後の看護診断
  (4)目標・具体策・評価

 ストーマの関連動画QRコード

 索引