やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


これから医学の道に進むあなたへ
 本書を手に取ったあなたは,これから医療の道を歩みはじめます.その出発点となるのが,本書で扱う「基礎医学」です.
 基礎医学は,単なる専門科目の一つではありません.人体の構造や機能,病因を理解するための基盤であり,その後に学ぶ臨床医学を支える前提となる知識です.また,医師,看護師,薬剤師,理学療法士など,異なる専門職が共通の理解のもとで連携するための土台にもなります.チーム医療において,この土台をいかに深く理解しているかが,あなたの実践力を大きく左右します.
 学習を進める中で,膨大な専門用語や,体の仕組みの複雑さに壁を感じることもあるでしょう.「なぜ,こんなに覚えることが多いのだろう?」と途方に暮れる時に,思い出してほしい言葉があります.
 『基礎医学を制するものは,臨床医学を制する』
 将来あなたが学ぶ臨床医学は,すべてこの基礎の上に成り立っています.土台が固まるほど,その上に積み上げられる知識も確かなものになります.
 私はこれまで約25年間,基礎医学教育に携わり,延べ1万人以上の学生を指導してきました.その経験から言えることは,「基礎医学が弱いと,臨床医学の修得は難しい」ということです.根が深く張っていない木が大きく育たないように,基礎医学なしに臨床医学を深く学ぶことには限界があります.
 本書は,こうしたつまずきを整理し,「なぜそうなるのか」を理解するための道筋を示すことを目的としています.基礎医学を単なる暗記ではなく,理解の体系としてとらえられるようになることを目指しています.
 本書が,皆さんの学びの見通しを与え,その後の専門教育へとつながる基盤づくりの一助となれば幸いです.
 2026年5月
 川畑龍史
 序―これから医学の道に進むあなたへ
 医療者として成長し続けるための心構え
 本書の読み進め方
 職種別活用ガイド
第1部 医学の世界の「共通言語」をマスターする―体のつくりを語るための基本的なルール
 Chapter 1 体の「住所」と「言葉」のルール
  法則01 体の向きと方向には世界共通の「基準姿勢」がある~解剖学的正位~
  法則02 体の断面には「3つの基本の切り方」がある~矢状面・前頭面・水平面~
  法則03 医学用語は「パーツの組み合わせ」でできている~接頭辞・語根・接尾辞~
  理解度チェック
 Chapter 2 すべての生命の基本単位「細胞」の正体
  法則04 私たちの体は小さな「部屋(細胞)」の集合体である~細胞~
  法則05 細胞には「核」という設計図保管庫がある~DNAと遺伝子~
  法則06 細胞の中には機能の違う「専門部署」がたくさんある~細胞小器官~
  法則07 細胞は「自然な流れ」と「逆流」を使い分けて物質をやり取りする~受動輸送と能動輸送~
  法則08 細胞の「エネルギー工場」が生命活動を支えている~ミトコンドリアとATP~
  法則09 細胞は「分裂」することで増え,体は成長・再生する~体細胞分裂と減数分裂~
  法則10 細胞には寿命があり,計画的に消える仕組みがある~アポトーシス~
  理解度チェック
 Chapter 3 体を組み立てる4つの「組織」
  法則11 体の表面や管の内側は「上皮組織」が守っている~上皮組織~
  法則12 体のすき間を埋め,支えるのが「結合組織」である~結合組織~
  法則13 体を動かす原動力は「筋組織」が生み出す~筋組織~
  法則14 情報のやり取りは「神経組織」が担っている~神経組織~
  理解度チェック
第2部 体の仕組みを支配する「科学」の法則―目に見えないけれど,体の中で絶えず働いている力
 Chapter 4 体の中の化学反応―物質の成り立ちと変化
  法則15 すべての物質は「原子」という小さな粒からできている~原子~
  法則16 原子同士が手をつなぐと「分子」や「化合物」ができる~化学結合~
  法則17 電気を帯びた原子「イオン」が体の機能のカギを握る~イオン~
  法則18 体の中は「水」という最高の溶媒で満たされている~水~
  法則19 体の材料とエネルギー源は3つの「有機物」からなる~糖質・脂質・タンパク質~
  法則20 化学反応をスムーズに進める「触媒(酵素)」がいる~酵素~
  法則21 体液の「pH」は絶妙なバランスで保たれている~酸と塩基,緩衝作用~
  理解度チェック
 Chapter 5 体の中の物理現象―モノの移動と力の働き
  法則22 物質は濃いほうから薄いほうへ自然に広がる~拡散と濃度勾配~
  法則23 水は「膜」を隔てて濃度差を埋めようとする~浸透圧と尿の濃縮~
  Column こんなところにも浸透圧―人体を制御する“水の力”
  法則24 血液は「圧力差」に従って流れる~圧力勾配~
  法則25 体の熱はさまざまな方法で移動し,体温を保っている~伝導・対流・放射・蒸発~
  理解度チェック
 Chapter 6 体の情報を伝える仕組み―電気と化学物質
  法則26 神経の情報は「イオン」の移動による電気信号として伝わる~活動電位~
  法則27 細胞から細胞へは「化学物質」が情報をリレーする~神経伝達物質~
  法則28 遠くの細胞には「ホルモン」が情報を届ける~内分泌~
  法則29 体の状態を一定に保つ「フィードバック」機構がある~ホメオスタシス~
  理解度チェック
 Chapter 7 データを読み解く数学の視点
  法則30 「割合(%)」と「単位」を理解すれば,体の状態が数字で見えてくる~割合と単位~
  法則31 「グラフ」を読めば,たくさんの数字から変化や関係性が見えてくる~グラフの読解~
  理解度チェック
第3部 科学の法則で読み解く人体のシステム―体の各部署(器官系)は,どんな法則で動いているのか?
 Chapter 8 栄養と酸素を運ぶシステム―循環器と呼吸器
  法則32 心臓は「圧較差」を生み出す最強のポンプである~循環器~
  法則33 酸素は赤血球の「ヘモグロビン」と結合して運ばれる~酸素運搬~
  法則34 呼吸とは「分圧の差」を利用したガスの交換である~ガス交換~
  法則35 肺がしぼまないのは「表面張力」と戦う物質があるから~肺サーファクタント~
  理解度チェック
 Chapter 9 消化・吸収と排泄のシステム―消化器と泌尿器
  法則36 消化とは,巨大な栄養素を「加水分解」で小さくすること~消化と吸収~
  法則37 肝臓は体に入った「毒」を分解する化学工場である~肝臓の解毒作用~
  法則38 腎臓は「ろ過」と「再吸収」で体液をきれいに保っている~尿の生成~
  法則39 体液のpHバランスは呼吸と腎臓が巧みに調節している~酸塩基平衡~
  理解度チェック
 Chapter 10 体を動かし,支えるシステム―筋骨格系
  法則40 骨は「力の分散」と「衝撃吸収」に最適な構造をしている~骨の構造と機能~
  法則41 筋肉はフィラメントの「滑り込み」で縮む~筋収縮の滑り説~
  法則42 関節の動きは,「てこの原理」でより大きな力を生み出す~てこの原理と関節運動~
  理解度チェック
 Chapter 11 全身をコントロールするシステム―神経系と内分泌系
  法則43 神経の興奮は「全か無かの法則」に従うデジタル信号である~神経の興奮伝導~
  法則44 ホルモンは「鍵と鍵穴」のように特定の細胞にだけ作用する~ホルモンの特異性~
  法則45 血糖値は,複数のホルモンによる絶妙な「綱引き」で保たれる~血糖調節~
  理解度チェック
 Chapter 12 体を守り,生命をつなぐシステム―感染・免疫・生殖
  法則46 感染症の主役「細菌」と「ウイルス」は,構造も増え方もまったく違う~病原体の基礎~
  法則47 免疫は「自己」と「非自己」を認識することからはじまる~免疫の基本~
  Column 免疫の「ブレーキ」を外す! ノーベル賞につながった新しいがん治療薬
  法則48 抗体は,異物に特異的に結合する「精密誘導ミサイル」である~抗体の働き~
  法則49 多様な遺伝子を持つ子が生まれるのは「減数分裂」のおかげである~遺伝の多様性~
  法則50 胎盤は,母と子の間で物質交換を行う「関所」である~胎盤の機能~
  理解度チェック

 巻末資料(医学用語の「部品」リスト,知っておくと便利な単位換算表,その他の単位,数値を表す接頭語,科学で使われるギリシャ文字,参考文献)
 索引
 あとがき