助産学共用試験テキストの刊行にあたって
助産は自律した特殊専門領域であり,社会のニーズに対応できる専門職業人としての助産師の育成は,保健師助産師看護師学校養成所指定規則(以下,指定規則)に則り,それぞれの特色を持つ様々な課程で教育が展開されています.助産師教育を取り巻く環境は,出生数の減少や分娩を取り扱う医療機関の減少,ハイリスク妊産婦の増加等により年々厳しくなっており,卒業時の到達目標到を達成するためには,さらに多くの時間と工夫が求められています.
国際助産師連盟(International Confederation of Midwives:ICM)が示す助産師教育の世界基準(2021)では,理論40%以上,臨床現場での実習50%以上と示され,我が国の指定規則では総単位数31単位以上中,理論20単位以上(64.5%)実習11単位以上(35.5%)となっています.助産師教育において実習は,助産実践能力習得の核となるものです.養成校では,ケアを受ける対象者の安全と安心を担保/保証するために,実習開始前の学生の能力を独自に評価している現状にあります.一方,医歯薬学では,共用試験実施評価機構等により実習前の学生の能力保証を全国統一試験で評価し,公的化しています.
全国助産師教育協議会(以下,全助協)では,将来ビジョン2021に『助産師学生の実習前/卒業前の能力を担保する』ことを掲げ,2020年から取り組まれた科学研究(JSPS基盤研究(B),2020~23,代表者:村上明美)の成果を基盤に,2023年より,助産学共用試験実装推進委員会(アドホック)を立ち上げ,科研グループ(新たな科学研究,JSPS基盤研究(B),2024~27,代表者:村上明美)と並走/協働して助産学共用試験の全国的な実装に向けて取り組んできました.
助産学共用試験の全国展開にあたっては,共通したテキストが必要です.この度,これまでに積み重ねてきたトライアルやディスカッションの内容を集約し,助産学共用試験に関するテキストを発刊することとなりました.助産学共用試験のトライアルにおいて,知識を問う助産学CBT(Computer-based testing)と技能・態度を評価する助産学OSCE(Objective Structured Clinical Examination)では,全助協会員校の先生方,学生の皆さん,臨床の助産師の方々にご協力いただきましたことを心より感謝申し上げます.
今後,助産学共用試験が広く展開されることにより,周産期医療の現状や時代の趨勢に飲まれ流されることなく学生の能力を保証し,常に助産師教育のあるべき姿を目指して,前進していくことを心より願います.
助産師になりたい学生さんへ
【助産学共用試験】は,助産学実習開始前に知識を評価するCBT(Computer-based testing)と,技能と専門職としての態度を評価するOSCE(Objective Structured Clinical Examination)により,実習生の質が一定水準(以上)にあることを示し,ケア対象者の安全と安心,そしてご家族を含めた満足につながる支援を展開するための第一関門(または,最初の通過点)です.周囲の医療系の学生(医歯薬獣医学)は,すでにこの試験を受けて実習に出ています.助産師への役割期待は益々高まり,質の高い助産師が求められているため,助産師を目指すすべての学生が助産学共用試験を受験して,自信と誇りを持って実習に臨み,ケア対象者の皆さんと共に明るい未来に向かって歩んでいきましょう.
※【共用試験】という名称が商標登録されていることから,医療系大学間共用試験実施評価機構と商標使用許諾契約を締結し,【助産学共用試験】の名称を用いている.
2025年6月吉日
公益社団法人全国助産師教育協議会会長 葉久真理
助産は自律した特殊専門領域であり,社会のニーズに対応できる専門職業人としての助産師の育成は,保健師助産師看護師学校養成所指定規則(以下,指定規則)に則り,それぞれの特色を持つ様々な課程で教育が展開されています.助産師教育を取り巻く環境は,出生数の減少や分娩を取り扱う医療機関の減少,ハイリスク妊産婦の増加等により年々厳しくなっており,卒業時の到達目標到を達成するためには,さらに多くの時間と工夫が求められています.
国際助産師連盟(International Confederation of Midwives:ICM)が示す助産師教育の世界基準(2021)では,理論40%以上,臨床現場での実習50%以上と示され,我が国の指定規則では総単位数31単位以上中,理論20単位以上(64.5%)実習11単位以上(35.5%)となっています.助産師教育において実習は,助産実践能力習得の核となるものです.養成校では,ケアを受ける対象者の安全と安心を担保/保証するために,実習開始前の学生の能力を独自に評価している現状にあります.一方,医歯薬学では,共用試験実施評価機構等により実習前の学生の能力保証を全国統一試験で評価し,公的化しています.
全国助産師教育協議会(以下,全助協)では,将来ビジョン2021に『助産師学生の実習前/卒業前の能力を担保する』ことを掲げ,2020年から取り組まれた科学研究(JSPS基盤研究(B),2020~23,代表者:村上明美)の成果を基盤に,2023年より,助産学共用試験実装推進委員会(アドホック)を立ち上げ,科研グループ(新たな科学研究,JSPS基盤研究(B),2024~27,代表者:村上明美)と並走/協働して助産学共用試験の全国的な実装に向けて取り組んできました.
助産学共用試験の全国展開にあたっては,共通したテキストが必要です.この度,これまでに積み重ねてきたトライアルやディスカッションの内容を集約し,助産学共用試験に関するテキストを発刊することとなりました.助産学共用試験のトライアルにおいて,知識を問う助産学CBT(Computer-based testing)と技能・態度を評価する助産学OSCE(Objective Structured Clinical Examination)では,全助協会員校の先生方,学生の皆さん,臨床の助産師の方々にご協力いただきましたことを心より感謝申し上げます.
今後,助産学共用試験が広く展開されることにより,周産期医療の現状や時代の趨勢に飲まれ流されることなく学生の能力を保証し,常に助産師教育のあるべき姿を目指して,前進していくことを心より願います.
助産師になりたい学生さんへ
【助産学共用試験】は,助産学実習開始前に知識を評価するCBT(Computer-based testing)と,技能と専門職としての態度を評価するOSCE(Objective Structured Clinical Examination)により,実習生の質が一定水準(以上)にあることを示し,ケア対象者の安全と安心,そしてご家族を含めた満足につながる支援を展開するための第一関門(または,最初の通過点)です.周囲の医療系の学生(医歯薬獣医学)は,すでにこの試験を受けて実習に出ています.助産師への役割期待は益々高まり,質の高い助産師が求められているため,助産師を目指すすべての学生が助産学共用試験を受験して,自信と誇りを持って実習に臨み,ケア対象者の皆さんと共に明るい未来に向かって歩んでいきましょう.
※【共用試験】という名称が商標登録されていることから,医療系大学間共用試験実施評価機構と商標使用許諾契約を締結し,【助産学共用試験】の名称を用いている.
2025年6月吉日
公益社団法人全国助産師教育協議会会長 葉久真理
Chapter 1 助産学共用試験の概要
1 助産学共用試験とは
助産学生の実習前質保証に向けて
助産学共用試験の必要性
助産学共用試験導入に向けた取り組み
海外におけるCBT・OSCEの活用
助産学共用試験の今後に向けて(将来構想)
2 助産学共用試験の内容構成
助産学CBTの概要
助産学OSCEの概要
Chapter 2 助産学OSCEの実施体制
1 助産学OSCEの実施内容
課題(分娩期):陣痛の観察
2 助産学OSCEの評価者と標準模擬患者
助産学OSCEの評価者
助産学OSCEの標準模擬患者
Chapter 3 助産学OSCEのために身につけておくべき事項
1 助産学OSCEに臨むうえで注意する点
2 助産学OSCEの受験ガイドと評価の観点について
助産学OSCE受験ガイド
助産学OSCEの評価の観点
3 助産学OSCEの標準的技術
問診および観察,手技に関する共通の学修項目
マタニティケア学修項目
妊娠期
1 レオポルド触診法
2 子宮底長の計測と腹囲の計測
3 内診
4 腟鏡診
5 分娩監視装置による陣痛および胎児心拍数モニタリング:NSTモニター・CTGモニターの装着
分娩期
6 陣痛の観察
7 破水の観察
8 外陰部洗浄
9 清潔野の作成
10 分娩期の導尿
11 人工破膜
12 肛門保護~会陰保護
13 児頭娩出~臍帯巻絡確認
14 肩甲娩出~児娩出
15 肺呼吸の確立~臍帯切断
16 胎盤娩出
17 軟産道損傷の確認
18 胎児付属物の観察と計測
19 分娩後2時間の観察とケア
産褥期
20 産褥早期の退行性変化の観察
21 授乳前の乳房の観察
22 授乳時のポジショニング指導
23 吸着(ラッチオン)の介助
新生児期
24 バイタルサイン測定
25 出生直後の身体計測
26 出生直後の全身観察
27 泡で洗う沐浴
資料 望ましい助産師教育におけるコア・カリキュラム 2020年版
1 助産学共用試験とは
助産学生の実習前質保証に向けて
助産学共用試験の必要性
助産学共用試験導入に向けた取り組み
海外におけるCBT・OSCEの活用
助産学共用試験の今後に向けて(将来構想)
2 助産学共用試験の内容構成
助産学CBTの概要
助産学OSCEの概要
Chapter 2 助産学OSCEの実施体制
1 助産学OSCEの実施内容
課題(分娩期):陣痛の観察
2 助産学OSCEの評価者と標準模擬患者
助産学OSCEの評価者
助産学OSCEの標準模擬患者
Chapter 3 助産学OSCEのために身につけておくべき事項
1 助産学OSCEに臨むうえで注意する点
2 助産学OSCEの受験ガイドと評価の観点について
助産学OSCE受験ガイド
助産学OSCEの評価の観点
3 助産学OSCEの標準的技術
問診および観察,手技に関する共通の学修項目
マタニティケア学修項目
妊娠期
1 レオポルド触診法
2 子宮底長の計測と腹囲の計測
3 内診
4 腟鏡診
5 分娩監視装置による陣痛および胎児心拍数モニタリング:NSTモニター・CTGモニターの装着
分娩期
6 陣痛の観察
7 破水の観察
8 外陰部洗浄
9 清潔野の作成
10 分娩期の導尿
11 人工破膜
12 肛門保護~会陰保護
13 児頭娩出~臍帯巻絡確認
14 肩甲娩出~児娩出
15 肺呼吸の確立~臍帯切断
16 胎盤娩出
17 軟産道損傷の確認
18 胎児付属物の観察と計測
19 分娩後2時間の観察とケア
産褥期
20 産褥早期の退行性変化の観察
21 授乳前の乳房の観察
22 授乳時のポジショニング指導
23 吸着(ラッチオン)の介助
新生児期
24 バイタルサイン測定
25 出生直後の身体計測
26 出生直後の全身観察
27 泡で洗う沐浴
資料 望ましい助産師教育におけるコア・カリキュラム 2020年版














