序
今日,インプラント治療は欠損補綴領域において確固たる役割を担うに至っている.その背景には,Goteborg UniversityのProf. Per-Ingvar Branemark,University of BernのProf. Andre Schroederをはじめとする開発者の功績,さらには臨床応用の術式を提示したProf. Ulf Lekholm,Prof. Daniel Buser,Dr.Paulo Maloらの先人の努力が大きく寄与している.他方,インプラント治療は日本発祥の学問体系ではないため,我々は長らく欧米から学びを得てきたことも事実である.加えて,インプラント治療は口腔外科,歯周治療,補綴治療をはじめとする多岐にわたる学問と技術を包含する集学的治療を必要とし,さらに解剖学,理工学,生理学,病理学との整合性を不可欠とする学際的領域でもある.このような学びの過程において,我々デンタルコンセプト21(DC21)のメンバーはProf. Ulf Lekholm,Prof. Bjorn Friberg,Dr.Frank Renouard,Prof. Christer Hammerle,Dr.Jean-Pierre Galdera,Prof. Ingvar Ericsson,さらにはProf. Jan Lindhe,Prof. Sture Nyman,Prof. Niklaus P.Lang,Dr.William Beckerらから直接的あるいは間接的に薫陶を受けるとともに,会員相互の切磋琢磨を通じて,知識と技術の研鑽を長年にわたり積み重ねてきた.
本書の刊行にあたり,2025年がDC21発足30周年にあたることから,木津 康博会長と共に記念事業の一環として,これまで培ってきたクリニカルガイドを集約することとした.学会等が公表するガイドラインに加えて,我々臨床家集団としてのDC21が「今,歯科界にクリニカルガイドを提案する意義は何か」と問われるならば,EBM(Evidence-Based Medicine:根拠に基づく医療)の体系を整理しつつ,我々の豊富な臨床経験および長期経過症例に基づき,インプラント治療を成功に導くための臨床的指針として提示することこそが,本書刊行の目的であり,上述の問いへの答えに重なる.
本書は三部構成シリーズの一冊目であり,前歯部インプラント治療のクリニカルガイドとして,総論,システマティックレビューに基づくトリートメントアルゴリズム,骨造成,軟組織増生に至るまでをカバーしている.監著は中村 社綱・木津 康博,編著は白鳥 清人・下尾 嘉昭が担当し,さらに会員諸氏によって執筆が行われた.また,本編を補足するコラムにおいては,解剖学的見地から松尾 雅斗 元教授,材料学的見地から吉成 正雄 元教授,生物学的見地から鮎川 保則 教授,技工的見地から歯科技工士の川内 大輔 氏にご参画いただき,読者にとって理解しやすい構成となるよう心がけた.
本書に続く二冊目では,少数歯欠損から多数歯欠損に至る症例に対応する上下顎臼歯部インプラント治療のクリニカルガイドを提示したいと考えている.編著はDC21前会長の三好 敬三と現・副会長の北所 弘行が担当し,重厚な内容となる予定である.そして,最終巻になる三冊目では,多数歯欠損から全顎的インプラント治療に至る包括的なクリニカルガイドを提示すべく準備を進めている.ぜひ本書を手に取って熟読され,日常臨床の一助としていただきたい.
最後に,常日頃より議論を重ねてきたDC21の学友諸氏と,さまざまな形で我々のインプラント治療をサポートしていただいている歯科企業の皆様に感謝の意を捧げる次第である.
中村社綱
今日,インプラント治療は欠損補綴領域において確固たる役割を担うに至っている.その背景には,Goteborg UniversityのProf. Per-Ingvar Branemark,University of BernのProf. Andre Schroederをはじめとする開発者の功績,さらには臨床応用の術式を提示したProf. Ulf Lekholm,Prof. Daniel Buser,Dr.Paulo Maloらの先人の努力が大きく寄与している.他方,インプラント治療は日本発祥の学問体系ではないため,我々は長らく欧米から学びを得てきたことも事実である.加えて,インプラント治療は口腔外科,歯周治療,補綴治療をはじめとする多岐にわたる学問と技術を包含する集学的治療を必要とし,さらに解剖学,理工学,生理学,病理学との整合性を不可欠とする学際的領域でもある.このような学びの過程において,我々デンタルコンセプト21(DC21)のメンバーはProf. Ulf Lekholm,Prof. Bjorn Friberg,Dr.Frank Renouard,Prof. Christer Hammerle,Dr.Jean-Pierre Galdera,Prof. Ingvar Ericsson,さらにはProf. Jan Lindhe,Prof. Sture Nyman,Prof. Niklaus P.Lang,Dr.William Beckerらから直接的あるいは間接的に薫陶を受けるとともに,会員相互の切磋琢磨を通じて,知識と技術の研鑽を長年にわたり積み重ねてきた.
本書の刊行にあたり,2025年がDC21発足30周年にあたることから,木津 康博会長と共に記念事業の一環として,これまで培ってきたクリニカルガイドを集約することとした.学会等が公表するガイドラインに加えて,我々臨床家集団としてのDC21が「今,歯科界にクリニカルガイドを提案する意義は何か」と問われるならば,EBM(Evidence-Based Medicine:根拠に基づく医療)の体系を整理しつつ,我々の豊富な臨床経験および長期経過症例に基づき,インプラント治療を成功に導くための臨床的指針として提示することこそが,本書刊行の目的であり,上述の問いへの答えに重なる.
本書は三部構成シリーズの一冊目であり,前歯部インプラント治療のクリニカルガイドとして,総論,システマティックレビューに基づくトリートメントアルゴリズム,骨造成,軟組織増生に至るまでをカバーしている.監著は中村 社綱・木津 康博,編著は白鳥 清人・下尾 嘉昭が担当し,さらに会員諸氏によって執筆が行われた.また,本編を補足するコラムにおいては,解剖学的見地から松尾 雅斗 元教授,材料学的見地から吉成 正雄 元教授,生物学的見地から鮎川 保則 教授,技工的見地から歯科技工士の川内 大輔 氏にご参画いただき,読者にとって理解しやすい構成となるよう心がけた.
本書に続く二冊目では,少数歯欠損から多数歯欠損に至る症例に対応する上下顎臼歯部インプラント治療のクリニカルガイドを提示したいと考えている.編著はDC21前会長の三好 敬三と現・副会長の北所 弘行が担当し,重厚な内容となる予定である.そして,最終巻になる三冊目では,多数歯欠損から全顎的インプラント治療に至る包括的なクリニカルガイドを提示すべく準備を進めている.ぜひ本書を手に取って熟読され,日常臨床の一助としていただきたい.
最後に,常日頃より議論を重ねてきたDC21の学友諸氏と,さまざまな形で我々のインプラント治療をサポートしていただいている歯科企業の皆様に感謝の意を捧げる次第である.
中村社綱
第1章 前歯部インプラントの基本臨床
安心・安全な治療で長期予後を得るために
(中村社綱)
I 治療計画立案のための基礎知識
II 骨および軟組織の評価とリスクファクター
III 骨欠損の形態的分類に基づく治療の選択肢
IV デジタルソリューションによるインプラント治療
V 補綴装置製作の実際
VI 審美領域への抜歯即時インプラント埋入症例と術後評
第2章 トリートメントアルゴリズムによる臨床
Hammerle & Jungの分類 Class 1~3への対応
(木津康博)
I システマティックレビューに基づくトリートメントアルゴリズム
II 抜歯即時インプラント埋入の術式
III 抜歯早期インプラント埋入の術式
IV 抜歯窩保存療法(ソケットプリザベーション)の術式
第3章 骨造成
Hammerle & Jungの分類 Class 4~5への対応
(白鳥清人)
I 骨組織の評価・形態分類と治療計画のディシジョンメイキング
II 骨造成創傷治癒のメカニズムとリスクファクターの分析
III 臨床解剖と基本外科術式の理解
IV 骨移植材および遮断膜の選択基準と評価
V 合併症の予測とその対応
VI GBRとBoneGraftの術式
第4章 軟組織増生・移植
臨床術式および治療プロトコールの提案
(下尾嘉昭 渡邉多恵)
I 軟組織移植の生物学的意義
II 結合組織採取の臨床術式
III 軟組織移植のタイミング
第5章 症例報告集
エキスパートによる審美修復の実例
不揃いな歯頸ラインの修正を行った抜歯即時インプラント埋入症例(稲留裕士)
歯冠破折を生じた上顎左側中切歯への抜歯即時インプラント埋入症例(北所弘行)
根尖側ブロック骨移植を併用したGBR症例(山田陽子)
上顎前歯部欠損におけるGBR Stagedアプローチのインプラント埋入症例(中山雪詩)
ティッシュレベルインプラントのカラー露出に対して結合組織移植を行った症例(沼澤秀之)
Column
審美領域で知っておくべき口腔解剖学(松尾雅斗)
審美領域における歯科技工の基礎知識(川内大輔)
軟組織移植のための基本知見 (1)材料学的知見(吉成正雄)
軟組織移植のための基本知見 (2)生物学的知見(鮎川保則)
安心・安全な治療で長期予後を得るために
(中村社綱)
I 治療計画立案のための基礎知識
II 骨および軟組織の評価とリスクファクター
III 骨欠損の形態的分類に基づく治療の選択肢
IV デジタルソリューションによるインプラント治療
V 補綴装置製作の実際
VI 審美領域への抜歯即時インプラント埋入症例と術後評
第2章 トリートメントアルゴリズムによる臨床
Hammerle & Jungの分類 Class 1~3への対応
(木津康博)
I システマティックレビューに基づくトリートメントアルゴリズム
II 抜歯即時インプラント埋入の術式
III 抜歯早期インプラント埋入の術式
IV 抜歯窩保存療法(ソケットプリザベーション)の術式
第3章 骨造成
Hammerle & Jungの分類 Class 4~5への対応
(白鳥清人)
I 骨組織の評価・形態分類と治療計画のディシジョンメイキング
II 骨造成創傷治癒のメカニズムとリスクファクターの分析
III 臨床解剖と基本外科術式の理解
IV 骨移植材および遮断膜の選択基準と評価
V 合併症の予測とその対応
VI GBRとBoneGraftの術式
第4章 軟組織増生・移植
臨床術式および治療プロトコールの提案
(下尾嘉昭 渡邉多恵)
I 軟組織移植の生物学的意義
II 結合組織採取の臨床術式
III 軟組織移植のタイミング
第5章 症例報告集
エキスパートによる審美修復の実例
不揃いな歯頸ラインの修正を行った抜歯即時インプラント埋入症例(稲留裕士)
歯冠破折を生じた上顎左側中切歯への抜歯即時インプラント埋入症例(北所弘行)
根尖側ブロック骨移植を併用したGBR症例(山田陽子)
上顎前歯部欠損におけるGBR Stagedアプローチのインプラント埋入症例(中山雪詩)
ティッシュレベルインプラントのカラー露出に対して結合組織移植を行った症例(沼澤秀之)
Column
審美領域で知っておくべき口腔解剖学(松尾雅斗)
審美領域における歯科技工の基礎知識(川内大輔)
軟組織移植のための基本知見 (1)材料学的知見(吉成正雄)
軟組織移植のための基本知見 (2)生物学的知見(鮎川保則)















