1.1 歯科におけるセラミックサクセスストーリー
●読者の方へ
本書は,2006 年にドイツ語版が出版された.歯科医師や歯科技工士のためにセラミック修復の治療法や装着の手順を簡潔に解説したこの本は,またたく間に初版が品切れになるほどの大きな支持を得ることができた.
そして,ドイツ語圏以外の国々の歯科医師や歯科技工士も本書に関心を寄せてくれたため,2007 年には英語版も出版することになった.
私たち SDC(Society for Dental Ceramics)は,治療が必要な歯に対して,最小限の侵襲で高い効果をあげ,かつ審美的な治療を行いたいと考えている.そのためには,臨床的に認められた技術をもとに,推奨できる明確な治療計画と治療法を示すことが必要である.
その際に,私たちの長期にわたる臨床データは,治療の成功を予測するための重要な基準となる.
臨床的によい結果が証明され,そしてエビデンスに基づいた手順によって治療が行われることで,患者さんは長期に維持され信頼に足る修復治療を受けることができる.
オールセラミックによる修復が,治療のオプションとして短期のうちに確立されたという事実は,歯科医師にも患者にも,オールセラミック修復のコンセプトが受け入れられた一つの証左であると考えている.
それでも,さらに治療法の改善や発展は続いている.
適応症を広げること,新しいセラミック材料,治療手順,接着のテクニックなどを手中にするためには,歯科医師,歯科技工士ともども,知識と実践の両面においてサポートができる,慎重で有能なアドバイザーが求められる.
SDCは,各種プロジェクトの立ち上げ,またシンポジウムの開催,刊行物の発行,そして交流の場を設けることによって,各人の知識や理解,また技術的な面での向上につながる機会を設けていきたいと考え,実践している.
ヨーロッパの発起人と,英語版の共著者代表はともに,この分野の専門家である読者の皆さんが,私たちの研究に加わり,オールセラミック修復治療の知識を広めてくださるよう心から願っている.
臨床医の方々には,SDCのコンピュータによるプログラムである,CSA(Ceramic Success Analysis:セラミック成功分析)を用いて,その質をより確実にするための協力を是非お願いしたい.
また,皆さんの地域で,品質保証を行っているグループに関する詳細な情報も喜んで提供したいと考えている.
謝辞
Prof.Frankenberger,Kern,Kunzelmann,Mehl,Pospiech,Tinschert先生に感謝の言葉を贈ります.
そして,本書の製作に関して,最新の情報に基づいての原稿や,イラスト,写真,図を提供してくださった,すべての方々―マテリアルサイエンスとデンタルセラミックスの臨床面に関する見解を補足してくださった方々―に心からお礼申し上げます.
2007年7月
すべての著者を代表して
Dr.Bernd Reiss,Malsch,Germany
Ariel J.Raigrodski DMD,MS,Seattle WA,USA
Howard E.Strassler DMD,Baltimore MD,USA
1.2 日本語版発刊によせて
オールセラミックの登場は,その高い審美性,生体親和性によりメタルセラミックに替わるマテリアルとなったが,セラミック自体にはさまざまな問題点があるため,理論に裏づけされた支台歯形成や接着システムの理解,材料の特性を把握したうえでの鑑別診断が求められる.しかし,セラミックを理論的に,そして臨床的に記し,システム全体を網羅した書籍は少ないのが現状である.
そうしたなか,筆者は『All-Ceramics at a Glance』に出会った.本書では,オールセラミックのシステムとマテリアル,支台歯形成,セメンテーションまで詳細に説明されており,歯科医師,歯科技工士双方に有用性の高いものである.これからオールセラミックを臨床に導入したいと考えている方々はもちろんのこと,すでに臨床での多くの経験を積んだ先生にとっても,有益な書であると確信している.
日本語版の発行に際し,筆者の症例を追加することを原著者に快諾していただいた.これは,たいへん名誉なことであり責任の重いものである.この場をお借りして,Society for Dental Ceramicsをはじめとする関係者の方々に感謝申し上げたい.
筆者の担当する症例の選定にあたっては,原著を補完する意味も考え,日本で認可されていて,かつマーケットで多く支持されている製品を中心に呈示した.筆者が呈示した製品以外にもすばらしいシステムは多数あるので,それらについては本文を参照されたい.
●セラミックシステム
オールセラミックは,接着により歯質と一体化させることで強度,ならびに高い辺縁封鎖性を獲得するが,セラミックシステムによって修復物の前処理をはじめ接着の手順が異なる.
そのため,まずはじめにセラミックの分類を理解しておくことが肝要である(27 ページ参照).本書の翻訳に際しては,シリカを多く含有しているケイ素酸化物系のセラミックは「シリカベースセラミック」,アルミナ,ジルコニアを主成分とするノンシリカベースセラミックを「酸化物系セラミック」とした.
修復物の接着システムは,含有される主成分により異なるため,それぞれの分類に応じた表面処理を行う必要がある.
●CAD/CAM
CAD,CAM双方の精度が向上し,臨床的に満足のいく適合性を得られるようになった.また,ソフトウェアの利便性が高まり,コンピュータ上で対合歯との接触関係を調整したり,隣在歯とのプロキシマルコンタクトを調整したり,また反対側同名歯の歯冠形態をコピーして利用できるようになり,歯科医師,歯科技工士の仕事の省力化につながった.修復物製作の省力化は,より高い審美修復物の製作が可能になることを意味する.
また,切削加工技術および焼成収縮を見越す CADの発展により,高強度ジルコニアが使用可能となったことで,ロングスパンブリッジもメタルフリーで製作できるようになった.ジルコニアは,メタルセラミックで行ってきた修復治療のデザインの多くをカバーしている.しかし,ジルコニアの生存率に関する研究は進行中であり,今後は,長期にわたる経年的なリサーチの蓄積が望まれる.
96 ページより,日本国内で使用できる代表的な CAD/CAMシステムの適応症を掲載している.表を参照していただき,症例に適したシステムを選択していただきたい.
本書が先生方の臨床の充実の一助となれば幸いである.
2008年6月
山﨑長郎
●読者の方へ
本書は,2006 年にドイツ語版が出版された.歯科医師や歯科技工士のためにセラミック修復の治療法や装着の手順を簡潔に解説したこの本は,またたく間に初版が品切れになるほどの大きな支持を得ることができた.
そして,ドイツ語圏以外の国々の歯科医師や歯科技工士も本書に関心を寄せてくれたため,2007 年には英語版も出版することになった.
私たち SDC(Society for Dental Ceramics)は,治療が必要な歯に対して,最小限の侵襲で高い効果をあげ,かつ審美的な治療を行いたいと考えている.そのためには,臨床的に認められた技術をもとに,推奨できる明確な治療計画と治療法を示すことが必要である.
その際に,私たちの長期にわたる臨床データは,治療の成功を予測するための重要な基準となる.
臨床的によい結果が証明され,そしてエビデンスに基づいた手順によって治療が行われることで,患者さんは長期に維持され信頼に足る修復治療を受けることができる.
オールセラミックによる修復が,治療のオプションとして短期のうちに確立されたという事実は,歯科医師にも患者にも,オールセラミック修復のコンセプトが受け入れられた一つの証左であると考えている.
それでも,さらに治療法の改善や発展は続いている.
適応症を広げること,新しいセラミック材料,治療手順,接着のテクニックなどを手中にするためには,歯科医師,歯科技工士ともども,知識と実践の両面においてサポートができる,慎重で有能なアドバイザーが求められる.
SDCは,各種プロジェクトの立ち上げ,またシンポジウムの開催,刊行物の発行,そして交流の場を設けることによって,各人の知識や理解,また技術的な面での向上につながる機会を設けていきたいと考え,実践している.
ヨーロッパの発起人と,英語版の共著者代表はともに,この分野の専門家である読者の皆さんが,私たちの研究に加わり,オールセラミック修復治療の知識を広めてくださるよう心から願っている.
臨床医の方々には,SDCのコンピュータによるプログラムである,CSA(Ceramic Success Analysis:セラミック成功分析)を用いて,その質をより確実にするための協力を是非お願いしたい.
また,皆さんの地域で,品質保証を行っているグループに関する詳細な情報も喜んで提供したいと考えている.
謝辞
Prof.Frankenberger,Kern,Kunzelmann,Mehl,Pospiech,Tinschert先生に感謝の言葉を贈ります.
そして,本書の製作に関して,最新の情報に基づいての原稿や,イラスト,写真,図を提供してくださった,すべての方々―マテリアルサイエンスとデンタルセラミックスの臨床面に関する見解を補足してくださった方々―に心からお礼申し上げます.
2007年7月
すべての著者を代表して
Dr.Bernd Reiss,Malsch,Germany
Ariel J.Raigrodski DMD,MS,Seattle WA,USA
Howard E.Strassler DMD,Baltimore MD,USA
1.2 日本語版発刊によせて
オールセラミックの登場は,その高い審美性,生体親和性によりメタルセラミックに替わるマテリアルとなったが,セラミック自体にはさまざまな問題点があるため,理論に裏づけされた支台歯形成や接着システムの理解,材料の特性を把握したうえでの鑑別診断が求められる.しかし,セラミックを理論的に,そして臨床的に記し,システム全体を網羅した書籍は少ないのが現状である.
そうしたなか,筆者は『All-Ceramics at a Glance』に出会った.本書では,オールセラミックのシステムとマテリアル,支台歯形成,セメンテーションまで詳細に説明されており,歯科医師,歯科技工士双方に有用性の高いものである.これからオールセラミックを臨床に導入したいと考えている方々はもちろんのこと,すでに臨床での多くの経験を積んだ先生にとっても,有益な書であると確信している.
日本語版の発行に際し,筆者の症例を追加することを原著者に快諾していただいた.これは,たいへん名誉なことであり責任の重いものである.この場をお借りして,Society for Dental Ceramicsをはじめとする関係者の方々に感謝申し上げたい.
筆者の担当する症例の選定にあたっては,原著を補完する意味も考え,日本で認可されていて,かつマーケットで多く支持されている製品を中心に呈示した.筆者が呈示した製品以外にもすばらしいシステムは多数あるので,それらについては本文を参照されたい.
●セラミックシステム
オールセラミックは,接着により歯質と一体化させることで強度,ならびに高い辺縁封鎖性を獲得するが,セラミックシステムによって修復物の前処理をはじめ接着の手順が異なる.
そのため,まずはじめにセラミックの分類を理解しておくことが肝要である(27 ページ参照).本書の翻訳に際しては,シリカを多く含有しているケイ素酸化物系のセラミックは「シリカベースセラミック」,アルミナ,ジルコニアを主成分とするノンシリカベースセラミックを「酸化物系セラミック」とした.
修復物の接着システムは,含有される主成分により異なるため,それぞれの分類に応じた表面処理を行う必要がある.
●CAD/CAM
CAD,CAM双方の精度が向上し,臨床的に満足のいく適合性を得られるようになった.また,ソフトウェアの利便性が高まり,コンピュータ上で対合歯との接触関係を調整したり,隣在歯とのプロキシマルコンタクトを調整したり,また反対側同名歯の歯冠形態をコピーして利用できるようになり,歯科医師,歯科技工士の仕事の省力化につながった.修復物製作の省力化は,より高い審美修復物の製作が可能になることを意味する.
また,切削加工技術および焼成収縮を見越す CADの発展により,高強度ジルコニアが使用可能となったことで,ロングスパンブリッジもメタルフリーで製作できるようになった.ジルコニアは,メタルセラミックで行ってきた修復治療のデザインの多くをカバーしている.しかし,ジルコニアの生存率に関する研究は進行中であり,今後は,長期にわたる経年的なリサーチの蓄積が望まれる.
96 ページより,日本国内で使用できる代表的な CAD/CAMシステムの適応症を掲載している.表を参照していただき,症例に適したシステムを選択していただきたい.
本書が先生方の臨床の充実の一助となれば幸いである.
2008年6月
山﨑長郎
1.1 歯科におけるセラミックサクセスストーリー
1.2 日本語版発刊によせて
2. オールセラミック―カスタマイズされ,審美的でメタルフリー
3. 臨床的に認められている適応症
4. 臨床応用の前に
5. オールセラミックインレー,アンレー,臼歯部部分被覆冠
6. ポーセレンラミネートベニア,前歯部部分被覆冠
7. クラウン,ブリッジ,テレスコープクラウン,インプラント修復
7.1 前歯部クラウン
7.2 臼歯部クラウン
7.3 前歯部ブリッジ
7.4 臼歯部ブリッジ
7.5 テレスコープクラウンに用いるオールセラミック
7.6 インプラントアバットメントとインプラント支持のクラウン・ブリッジ
8. セラミック材料の適応
9. シェードテイキング
10. 接着システム
10.1 長石系ポーセレンの接着
10.2 精密な適合のためのステップ
10.3 従来型合着の手順
11. 試適,調整,研磨
12. オールセラミック修復物の除去
13. 口腔内でのセラミック修理
14. オールセラミック修復の理論的根拠
15. 臨床結果
16. セラミックと CAD/CAMシステム
17. 参考文献
18. Society for Dental Ceramicsの目的と意図
19. フィールドスタディへの参加がもたらすもの
20. 日本における CAD/CAMシステムの現状
21. セラミックシステムのオーバービュー
1.2 日本語版発刊によせて
2. オールセラミック―カスタマイズされ,審美的でメタルフリー
3. 臨床的に認められている適応症
4. 臨床応用の前に
5. オールセラミックインレー,アンレー,臼歯部部分被覆冠
6. ポーセレンラミネートベニア,前歯部部分被覆冠
7. クラウン,ブリッジ,テレスコープクラウン,インプラント修復
7.1 前歯部クラウン
7.2 臼歯部クラウン
7.3 前歯部ブリッジ
7.4 臼歯部ブリッジ
7.5 テレスコープクラウンに用いるオールセラミック
7.6 インプラントアバットメントとインプラント支持のクラウン・ブリッジ
8. セラミック材料の適応
9. シェードテイキング
10. 接着システム
10.1 長石系ポーセレンの接着
10.2 精密な適合のためのステップ
10.3 従来型合着の手順
11. 試適,調整,研磨
12. オールセラミック修復物の除去
13. 口腔内でのセラミック修理
14. オールセラミック修復の理論的根拠
15. 臨床結果
16. セラミックと CAD/CAMシステム
17. 参考文献
18. Society for Dental Ceramicsの目的と意図
19. フィールドスタディへの参加がもたらすもの
20. 日本における CAD/CAMシステムの現状
21. セラミックシステムのオーバービュー








