やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 表紙に烏を,裏表紙に鷺を配した.
 烏鷺(うろ)は囲碁の別称であり,黒白を表す.
 たしかにカラスの黒は見事かつ不気味であり,シラサギの白は天地において美しく,それぞれの特徴を表している.
 しかし,それぞれの写真において,カラスの黒い部分を真っ黒,サギの白い部分を真っ白で塗りつぶしたとしたら,生きた姿には見えず,イラストを貼ったようにしか見えないだろう.
 グレースケールの微妙な濃淡が,立体感を生み,生命を表現しているのである.
 エックス線画像もグレースケール256階調で表現され,その濃淡から生体の状態を捉えようとするものである.なかでもデンタルエックス線写真は解像度が高く,小さい範囲ながら最も生き生きとした世界を見せてくれる.そこにはミクロコスモスがあり,奥深い.
 私たちはデンタルエックス線写真を通じて生体の内部を覗く.
 エックス線画像であるがゆえの限界があるとはいえ,情報量は豊富であり,その微妙な濃淡から正常/異常を認識して診断の一助になるだけでなく,継時的な組織変化の観察からドラマを見るように生体の営みを知ることができる.
 学生時代にデンタルエックス線写真上の組織変化に魅せられて以降,撮影から読影まで大切に行ってきた.そこから学んだことは数知れない.
 今回,読影についてまとめる機会をいただいた.一人の経験からであるので,教科書にはならず,私見も含まれるが,これまでの臨床40年の記録としたい.
 皆様の臨床に少しでも役立てば幸いである.
 白黒をつける,という言葉がある.
 検診以外でデンタルエックス線写真を撮影するときは診断のための情報がほしいときが多い.
 グレースケールで表現されたその写真の読影から,診断という白黒をつけることに繋げる,臨床におけるその知的な過程を楽しみたい.
 千葉英史
 序
第1章 デンタルの有用性
 生体を覗く窓
 大きな情報量
 定点観測記録
 高解像度画像
 研鑽の手札
 個を表す10枚
 公正な審判員
 患者説明効果
 真理探査ツール
第2章 デンタル読影の基本
 立体を平面で見る
 エックス線照射角とデンタル像
 デンタルの限界1 写らない
 デンタルの限界2 隠される
 CTの限界
 正常像と異常像
第3章 歯内療法とデンタル
 根尖性歯周炎のデンタル像と治癒経過
 外部吸収1 根尖性歯周炎による吸収とその対応
 外部吸収2 根尖性歯周炎以外の吸収とその対応
 歯髄の状態とデンタル像
第4章 歯周治療とデンタル
 歯槽頂部歯槽硬線
 垂直性骨欠損とデンタル
 歯根膜腔,歯根近遠心部歯槽硬線,骨梁像1 力と歯周組織
 歯根膜腔,歯根近遠心部歯槽硬線,骨梁像2 歯の動揺とデンタル像
 歯根膜腔,歯根近遠心部歯槽硬線,骨梁像3 骨梁像について
 急性炎症・慢性炎症
 根分岐部病変
 まとめの一症例
第5章 その他の疾患とデンタル
 エンドペリオ病変
 歯根破折
 齲蝕
 さまざまな疾患や異常を診る
第6章 1症例にみるデンタル読影の大切さと楽しさ

 あとがき