やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 本書の出発点は,数年前に『Saving Dental Implants』 1)において,「Periodontal Maintenance」のブックチャプターを,Mark A.Reynold,Caitlin Darcey両先生との共著で担当した経験にあります.当時このテーマを任された際,正直なところ戸惑いました.なぜならそれまで,筆者は全然,インプラントのメインテナンスを意識したことがなかったのです.
 (断りたくても断れなかった以上)執筆を通して文献と臨床を整理するなかで,このメインテナンスがインプラント治療の長期的成功を支える重要な基盤であるにもかかわらず,「天然歯と同様に扱ってよいのか」,「そもそもインプラントが口腔内に存在すること自体がリスクファクターとなりうるのか」,といった基本的な問いが,必ずしも明確に整理されないままメインテナンスが行われてきたと感じ,それを自分自身でも理解するために執筆したように思います.
 2024年から2025年にかけて,その内容をもとに,月刊『歯界展望』誌上において,関連テーマをトピックごとに分解し,アップデートを加えながら連載として発信する機会を得ました.本書は,その内容を再構成し,加筆・さらなるアップデートを行い,一冊の書籍としてまとめたものです.
 本書の目的は,完成された結論を示すことではなく,筆者なりに整理したインプラントにおけるメインテナンスを,どのような前提と視点で理解し,臨床に応用していくかということについて,読者の皆様と共有することにあります.本書の読者は歯科医師が多いと思いますが,実際のメインテナンスを主に行うであろう歯科衛生士との情報共有に役立つよう意識しました.
 本書を手にとってくださる皆様のお役に立つことができれば幸いです.

 文献
 1)Romanos GE(Editor).Saving Dental Implants.Weily,2024.

 2026年吉日
 齋藤花重


推薦序
 歯科インプラントにおける最も重要な生物学的合併症の1つとなっているインプラント周囲炎の治療について,その予防および管理を含む歯周メインテナンスの観点から包括的な概説をまとめ上げられた齋藤花重先生に,心より祝意を表する.
 インプラントの埋入本数が年々増加するにつれて,その有病率も上昇しており,インプラント周囲炎は臨床家・患者双方にとって大きな問題となっている.
 本書では,インプラント周囲炎の生物学的背景を詳しく解説するとともに,世界各地で用いられてきた管理および治療法についても取り上げている.それらのなかには,科学的根拠が十分に確立されていないものも含まれており,本書では推測の域を出ない治療と,臨床的に確立された治療とを明確に区別して解説している.これには,機械的および化学的デブライドメント,さらにはレーザーの使用も含まれる.
 また,リコール(メインテナンス)プロトコルの適切なタイミングが症例ごとに異なるという点を強調している点は,非常によく整理されており,臨床家および患者双方が理解すべき,きわめて重要な内容である.
 さらに,科学的エビデンスを日常臨床で実践可能なワークフローへと落とし込むことに特に力が注がれている.これは,インプラント周囲炎の管理において,最適な治療手順について明確なコンセンサスが得られていない現状において,特に意義深い点である.
 本書は,患者にとって最良の治療とは何かという観点から,現時点における最新の知見(state of the art)を的確にまとめ上げることに成功している.改めて,世界中の歯科インプラント治療における予知性・透明性・治療成績の向上に貢献された齋藤花重先生ならびに執筆協力者の先生方に,心からの祝意を表したい.
 敬具

 Dennis P.Tarnow DDS
 コロンビア大学歯学部 臨床教授/インプラント教育ディレクター
 (編集部訳)
 序
 Preface for Textbook/推薦序
Chapter 1 インプラントのメインテナンスをどう再定義するか?
Chapter 2 インプラントメインテナンスの対象を再定義する
Chapter 3 メインテナンスにおける 天然歯との違いを再定義する
Chapter 4 インプラント周囲炎のリスクファクターの再定義 (1)
 バクテリアと関連要因,インプラントスクリューチャネル
Chapter 5 インプラント周囲炎のリスクファクターの再定義 (2)
 インプラント表面性状と補綴物のデザイン
Chapter 6 インプラント周囲炎のリスクファクターの再定義 (3)
 全身疾患関連要因:全身疾患のある患者のインプラント治療
Chapter 7 インプラント周囲炎のリスクファクターの再定義 (4)
 全身疾患関連要因:使用中の薬剤の影響
Chapter 8 メインテナンスを最大限に活かすために
 歯科衛生士との連携と情報共有を再定義する

 後序