序
本書の源泉は,2013年1月号より月刊『デンタルハイジーン』で始まった「THE X線写真クイズ」という連載です.かつて筆者の講演で,「X線クイズ」と銘打って“1枚のX線写真から何が読み取れるか?”という受講者参加型のコーナーを設けていました.たまたま講演を聴きに来ていた医歯薬出版の編集者から,「ぜひ誌面化を相談したい」との申し入れがあったのですが,当初は講演だからこそできるもの,と疑心暗鬼でした.
連載では,1ページ目に「クイズ」として,1枚のX線写真を大きく掲載し,ここからどんな情報が読み取れるかを読者によく考えてもらったうえで,2~3ページ目に見開きで,「X線写真の読み方のポイント」と,クイズの解答として「治療経過,術後経過,月ごとの着眼点」を解説するという,これまであまり見られなかった手法を試みました.
クイズ形式ということで,読みやすさ・見やすさを心掛けるとともに,自らの素性を伏せ,「覆面ライターR.T」と称して執筆,さらなる読者の興味を引きつける作戦に打ってでました.知人には“素性バレバレ”との批判を浴びましたが,今までにないスタイルである物珍しさからか,コラムのような文章への親近感からか,読者からの評判は上々だという噂と編集者との心地よいやりとりもあり,連載は実に2年間,24回に及びました.
「慢性疾患である歯科疾患」への対応では,術者はまず,患者さんがどんな人でどんな治療を望んでいるのかを把握し(=人をみる),口腔内全体をよくみて,「難しい症例」なのか「やさしい症例」なのかを判断します(=口をみる).ここまでくれば,あとは「一歯単位」のカリエスやエンド,骨欠損や根分岐部病変などをみて,「治せる病態」なのかどうかを判断し(=歯をみる),これら3つの要素を統合して,患者さんへ治療計画を提示することになります.一方で,本連載は“1枚のX線写真”からの展開を試みており,局所的な視点に傾きすぎてはいないか,とたびたび不安に駆られました.しかし,1枚の臨床記録がもつ豊富な情報量,さらにそれが経時的に積み重ねられたときに実感する臨床観察の意味を多くの読者に知っていただきたいと思い,書籍としてまとめるにあたり「覆面ライター」の肩書きを返上し,素顔を晒して責任の所在を明らかにすべきと決断しました.
本書の上梓にあたり,卒直後から現在まで,医療者としての見識をご教授いただいている宮地建夫先生,X線写真へのこだわりから診断・基本技術に至るまで,歯科医師としての礎を築いていただいた千葉英史先生,子どもの予防から在宅診療まで,患者さんとの関わり方を身をもって教えてくださる須貝昭弘先生,細やかな心遣いで日々の臨床記録の整備・管理から診療のサポートまでしてくれている当院スタッフに,心より感謝の意を表します.
2019年初夏 鷹岡竜一
本書の源泉は,2013年1月号より月刊『デンタルハイジーン』で始まった「THE X線写真クイズ」という連載です.かつて筆者の講演で,「X線クイズ」と銘打って“1枚のX線写真から何が読み取れるか?”という受講者参加型のコーナーを設けていました.たまたま講演を聴きに来ていた医歯薬出版の編集者から,「ぜひ誌面化を相談したい」との申し入れがあったのですが,当初は講演だからこそできるもの,と疑心暗鬼でした.
連載では,1ページ目に「クイズ」として,1枚のX線写真を大きく掲載し,ここからどんな情報が読み取れるかを読者によく考えてもらったうえで,2~3ページ目に見開きで,「X線写真の読み方のポイント」と,クイズの解答として「治療経過,術後経過,月ごとの着眼点」を解説するという,これまであまり見られなかった手法を試みました.
クイズ形式ということで,読みやすさ・見やすさを心掛けるとともに,自らの素性を伏せ,「覆面ライターR.T」と称して執筆,さらなる読者の興味を引きつける作戦に打ってでました.知人には“素性バレバレ”との批判を浴びましたが,今までにないスタイルである物珍しさからか,コラムのような文章への親近感からか,読者からの評判は上々だという噂と編集者との心地よいやりとりもあり,連載は実に2年間,24回に及びました.
「慢性疾患である歯科疾患」への対応では,術者はまず,患者さんがどんな人でどんな治療を望んでいるのかを把握し(=人をみる),口腔内全体をよくみて,「難しい症例」なのか「やさしい症例」なのかを判断します(=口をみる).ここまでくれば,あとは「一歯単位」のカリエスやエンド,骨欠損や根分岐部病変などをみて,「治せる病態」なのかどうかを判断し(=歯をみる),これら3つの要素を統合して,患者さんへ治療計画を提示することになります.一方で,本連載は“1枚のX線写真”からの展開を試みており,局所的な視点に傾きすぎてはいないか,とたびたび不安に駆られました.しかし,1枚の臨床記録がもつ豊富な情報量,さらにそれが経時的に積み重ねられたときに実感する臨床観察の意味を多くの読者に知っていただきたいと思い,書籍としてまとめるにあたり「覆面ライター」の肩書きを返上し,素顔を晒して責任の所在を明らかにすべきと決断しました.
本書の上梓にあたり,卒直後から現在まで,医療者としての見識をご教授いただいている宮地建夫先生,X線写真へのこだわりから診断・基本技術に至るまで,歯科医師としての礎を築いていただいた千葉英史先生,子どもの予防から在宅診療まで,患者さんとの関わり方を身をもって教えてくださる須貝昭弘先生,細やかな心遣いで日々の臨床記録の整備・管理から診療のサポートまでしてくれている当院スタッフに,心より感謝の意を表します.
2019年初夏 鷹岡竜一
序
クイズ編
はじめに“質の高い”X線写真とは
Q1 モノクロームワールドへの招待
Q2 力んじゃダメ!
Q3 ポケットの秘密
Q4 続・ポケットの秘密
Q5 合併の裏側・1
Q6 合併の裏側・2
Q7 もう1つのポケットの秘密
Q8 Wall Story~Chapter 1
Q9 Wall Story~Chapter 2
Q10 Wall Story~Chapter 3
Q11 Wall Story~Chapter 4
Q12 Wall Story~Chapter 4.2
Q13 Wall Story~Chapter 5(上級編)
Q14 段差につまずかないで!
Q15 分かれの予感 第1章~II度と進まない?
Q16 分かれの予感 第2章~分かれぬ理由1
Q17 分かれの予感 第3章~分かれぬ理由2
Q18 分かれの予感 第4章~分かれのとき1
Q19 分かれの予感 第4章~分かれのとき2
Q20 分かれの予感 第4章~分かれのとき3
Q21 分かれの予感 第5章~分かれ話は最後に
Q22 分かれの予感 第6章~もう1つの分かれぬ理由
Q23 七か八か(しちかばちか)~その1
Q24 七か八か(しちかばちか)~その2
Q25 罪と罰~その1
Q26 罪と罰~その2
Q27 遠い夜明け
概論編
1 クオリティの高いX線写真の必要性
2 時は語る
3 骨のリスクを読む
COLUMN
1 正常と異常
2 “アナログ派”のつ・ぶ・や・き
3 規格性のハードル
4 変化するX線画像
Tips!
1 慢性疾患の特徴
2-(1) 慢性疾患への対応
2-(2) 患者の個別性~「個体差」と「個人差」~
2-(3) 力の問題とは
3 セメント質異形成症
4 エンド-ペリオ病変の分類
5 エンド-ペリオ病変III型(複合型)の様相
6 その人にとって磨きやすい形態とは?
7 エンド? ペリオ? 歯根破折?
8 垂直性骨欠損の分類
9 垂直性骨欠損の実態
10 垂直性骨欠損への対応
11 歯が動かないときは
12 自然移動の治療手順
14 喫煙者の歯周組織
15 根分岐部病変の分類~水平的評価~
16 根分岐部病変の分類~垂直的評価~
17 樋状根への補綴
18 下顎根分岐部病変のパターン
19 分割歯の補綴処置
20 歯根分割・分割抜根のパターン
21 分割する前に補綴精度を!
22 歯根分割後の様相~谷型は分割?非分割?~
23 MTMは創意工夫
24 下顎第二大臼歯の遠心骨欠損は治りやすい
25 一次固定と二次固定
26 二次固定が最適な症例とは~少数歯残存症例と二次固定~
27 炎症のコントロールと歯の移動
索引
あとがき
クイズ編
はじめに“質の高い”X線写真とは
Q1 モノクロームワールドへの招待
Q2 力んじゃダメ!
Q3 ポケットの秘密
Q4 続・ポケットの秘密
Q5 合併の裏側・1
Q6 合併の裏側・2
Q7 もう1つのポケットの秘密
Q8 Wall Story~Chapter 1
Q9 Wall Story~Chapter 2
Q10 Wall Story~Chapter 3
Q11 Wall Story~Chapter 4
Q12 Wall Story~Chapter 4.2
Q13 Wall Story~Chapter 5(上級編)
Q14 段差につまずかないで!
Q15 分かれの予感 第1章~II度と進まない?
Q16 分かれの予感 第2章~分かれぬ理由1
Q17 分かれの予感 第3章~分かれぬ理由2
Q18 分かれの予感 第4章~分かれのとき1
Q19 分かれの予感 第4章~分かれのとき2
Q20 分かれの予感 第4章~分かれのとき3
Q21 分かれの予感 第5章~分かれ話は最後に
Q22 分かれの予感 第6章~もう1つの分かれぬ理由
Q23 七か八か(しちかばちか)~その1
Q24 七か八か(しちかばちか)~その2
Q25 罪と罰~その1
Q26 罪と罰~その2
Q27 遠い夜明け
概論編
1 クオリティの高いX線写真の必要性
2 時は語る
3 骨のリスクを読む
COLUMN
1 正常と異常
2 “アナログ派”のつ・ぶ・や・き
3 規格性のハードル
4 変化するX線画像
Tips!
1 慢性疾患の特徴
2-(1) 慢性疾患への対応
2-(2) 患者の個別性~「個体差」と「個人差」~
2-(3) 力の問題とは
3 セメント質異形成症
4 エンド-ペリオ病変の分類
5 エンド-ペリオ病変III型(複合型)の様相
6 その人にとって磨きやすい形態とは?
7 エンド? ペリオ? 歯根破折?
8 垂直性骨欠損の分類
9 垂直性骨欠損の実態
10 垂直性骨欠損への対応
11 歯が動かないときは
12 自然移動の治療手順
14 喫煙者の歯周組織
15 根分岐部病変の分類~水平的評価~
16 根分岐部病変の分類~垂直的評価~
17 樋状根への補綴
18 下顎根分岐部病変のパターン
19 分割歯の補綴処置
20 歯根分割・分割抜根のパターン
21 分割する前に補綴精度を!
22 歯根分割後の様相~谷型は分割?非分割?~
23 MTMは創意工夫
24 下顎第二大臼歯の遠心骨欠損は治りやすい
25 一次固定と二次固定
26 二次固定が最適な症例とは~少数歯残存症例と二次固定~
27 炎症のコントロールと歯の移動
索引
あとがき














