『歯科矯正学専門用語集 第2版』発刊に寄せて
日本矯正歯科学会編『歯科矯正学専門用語集』は,初版が刊行されてから,すでに18年近い歳月が経過した.この間,歯科矯正学を取り巻く環境は少しずつ変化し,使用される専門用語は多様化してきた.とりわけ,デジタル技術の進歩,三次元画像解析の普及,アライナー型矯正装置に代表される新たな治療技術の発展,さらには国際的学術交流の活発化に伴い,医学情報が飛躍的に増大した現代において,専門用語の整理と共有は一層その重要性を増している.
本用語集は,歯科矯正学の研究,教育,臨床の場において用いられる専門用語を整理し,その和英対応を示すことを目的としている.専門用語とは,特定の学術領域において,特定の概念を指示するために用いられる語であり,理想的には明確な根拠に基づくことが望ましいが,実際には各専門領域での慣用によって定着してきたものも多い.また一般に,欧米では,個々の論文や教科書の中で必要な概念や定義を明示したうえで用語を選択する傾向が強く,必ずしも学会や国家的規模での統一が図られるとは限らない.しかし我が国においては,伝統的に,教育,資格制度,学術交流などの基盤とするために,一定の共通用語体系を整備することが期待されている.一方,用語の統一は新たな学術概念の形成や学問の進歩を阻害するものであってはならない.専門用語は固定不変のものではなく,新たな知見や技術の登場や進歩に応じて,継続的に改訂されていくことが望まれる.
この第2版は,日本矯正歯科学会創立100周年記念事業の一環として企画されたものである.振り返れば,明治以来,歯科医学の学術用語は主として米国で使われていた用語を翻訳することによって整理されていた.1926年10月に歯科医学領域における最初の専門学会として発足した本学会は,ただちに術語調査委員会を常設して検討を進め,その最初の成果として,1933年5月に334語からなる「矯正歯科学術語」を発表している(『日本矯正歯科学会雑誌』第3巻:39-48,1934年).2008年に刊行された初版は,花田晃治前学会長による用語整理事業の提唱を契機として,相馬邦道理事長のもと,山本照子学術委員長をはじめとする当時の学術委員会委員各位の長年にわたる尽力によって編纂されたものであり,本用語集の基盤となる重要な学術的成果となっている.ここにあらためてそのご功績に対し,深い敬意と感謝を記す.
今回の改訂にあたっては,学術委員会(西井 康委員長)のもとにワーキンググループを設置し,用語の整理と再検討を進めた.編集方針としては,時代の変化に対応した新規用語の追加,使用頻度が低下した用語の整理,一般用語や基本解剖学用語の見直し,人名のカタカナ表記の整理,和英対応の精査,ならびに電子的利用環境における検索性への配慮などを基本方針とした.また,英語表記については,単なる英文法上の規則性のみではなく,矯正歯科領域における歴史的慣用,国際的使用実態,専門用語としての自然さとの調和を重視した.さらに,診断名と形態表現の区別や,歴史的に定着した用語と国際標準との整合性についても慎重に検討した.本学会100年間の歴史と伝統を受け継いだ遺産ともいえる本書が,次代への学術的継承の一助となれば幸いである.
最後に,本用語集第2版の編纂にあたり,多大なるご尽力を賜りました学術委員会委員各位,ワーキンググループ委員各位,ならびに校正段階において貴重なご助言を賜りました諸先生方に,心より深甚なる謝意を表したい.
2026年7月
公益社団法人 日本矯正歯科学会
理事長 新井一仁
第2版序文
『歯科矯正学専門用語集』初版が刊行されたのは2008年であり,本第2版はそれから約18年ぶりの改訂となる.この間,歯科矯正学を取り巻く教育・研究・臨床環境は大きく変化し,新たな診断技術,治療技術および研究手法の導入に伴い,多くの新しい専門用語が生み出されてきた.一方で,歴史的には重要であっても現在ではほとんど使用されなくなった用語も存在する.また,国際的な学術交流の進展に伴い,英語表記についても多様な表現が併存する状況となっている.
本第2版は,日本矯正歯科学会創立100周年記念事業の一環として企画された.学術委員会では,初版編纂時の理念と成果を尊重しながら,現在の歯科矯正学における教育,研究および臨床の実情に即した専門用語集を目指して改訂作業を進めた.
改訂にあたっては,学術委員会のもとにワーキンググループを設置し,初版収載用語の全面的な見直しを行った.新たな学術的概念や技術に関する用語については追加を検討し,使用頻度が低下した用語については削除または整理を行った.また,本用語集は歯科矯正学の専門用語集であることから,一般用語や基本的な解剖学用語については原則として収載対象から除外した.さらに,歴史的意義を有すると判断された用語については【旧】として収載することとした.
英語表記については,国際的な学術文献や教科書等における用例を参考とし,和英対応の再検討を行った.同一概念に複数の表記が存在する場合には,歴史的慣用,国際的使用状況,専門用語としての自然さ,関連用語との整合性などを考慮して選定した.特に近年の学術文献では,複合語におけるハイフンの使用や一語化の傾向が必ずしも統一されていないことから,本用語集では英文法上の規則のみならず,実際の学術文献における使用実態を重視した.
専門用語は学術的概念を共有するための重要な基盤である.しかしながら,専門用語の統一そのものが目的ではなく,教育,研究および臨床における円滑な意思疎通を支援することが本来の目的である.本用語集が,歯科矯正学に携わる学生,研修医,研究者および臨床家に広く活用され,今後の歯科矯正学の発展に寄与することを願っている.
最後に,本改訂作業にご尽力いただいた学術委員会委員,ワーキンググループ委員ならびにご協力いただいた諸先生方に深く感謝申し上げる.
2026年7月
公益社団法人 日本矯正歯科学会 学術委員会
(令和6年度~令和7年度委員)
委員長
西井 康
委員
飯嶋雅弘
小川卓也
上岡 寛
川元龍夫
菅崎弘幸
北井則行
田中栄二
田渕雅子
芳賀秀郷
春山直人
幹事
有泉 大
歯科矯正学専門用語集改訂ワーキンググループ
委員
新井一仁
有泉 大
栃木啓佑
西井 康
芳賀秀郷
水野周平
協力
五十嵐 薫
石川博之
齋藤 功
溝口 到
歯科矯正学専門用語集の発刊に寄せて
漸くにして,日本矯正歯科学会編『歯科矯正学専門用語集』が,発刊の運びとなった.想えば本企画は,花田晃治前学会長が歯科矯正学の用語整理を当時の学術委員会に委任したことに端緒を開くので,今日までに10年近くの時間を要したことになる.この間,それぞれの用語を巡り意見の統一が必ずしも円滑でなかったことなど,さまざまな紆余曲折の労苦が容易に偲ばれる.
ちなみに,「用語」に相当する“term“を辞書で引いてみると,「原義『限界』から,時間的,条件的,表現上の限界の意が派生」とある.「限界」から派生した「用語」という単語には,もともと「はっきりした境とか,区切り」といった語意が付帯していたように思われる.また,「言葉」という単語の語源を遡ってみると,ギリシャ語の“logos”に行きつく.興味深いことに,そのlogosには,「言葉」のほかに「理性」の意味も持ち合わせている.
「専門用語」とは,それぞれの特定の分野に特化して通用し,公的に使用される言葉・用語群である.さらに「学術用語」には,その言葉の定義にあたって一般の領域に比して,よりはっきりした論理に裏付けられていることが必要である.議論を進めるうえで,人々の間で認識のディスクレパンシーがあっては結論が導けないためである.したがって,成熟した専門学術分野に求められるものは,少なくとも,公正なる議論にとって必要不可欠とされる用語が,理性や論理に基づいて選別されているべきことと思量される.
周知のように,日本矯正歯科学会は設立以来80余年の星霜を経て発展してきた.しかしその一方では,その間に,国内外のさまざまな関連領域から到来した用語,さらには学会の内部で独自に生まれ出た用語がおびただしい数となって,それぞれがさまざまな機関や地域で別々に分化し,そのエントロピーは増大の一途を辿ってきている.
このような背景から学会としては,用語に関して,全国的に統一された見解を一日も早く得ておく必要性を感じ,まずは用語の整理から手掛けて,ついで機会をとらえて,学会の学術専門用語を明確な形で纏めあげていこうとの方針にあった.
折りしも,本学会も学術委員会を介して編集協力をしてきた日本歯科医学会編『日本歯科医学会学術用語集』の出版作業が,医歯薬出版に依頼された.この機に日本矯正歯科学会もそれに同調し,それまで滞りがちであった用語整理を,用語集編纂として格上げし,あらためて学術委員会を中心に学会員の人智を注ぎ込み,同出版社のご協力のもとで日本矯正歯科学会編『歯科矯正学専門用語集』を出版することにした.
初版本のため,用語の整理や統一が不徹底であったり,用語の和英対応が不十分であったりと,手に取られるとさまざまな不備にお気づきになるかもしれないが,これまで未整理の状態にあった数多の歯科矯正学の表現に対して,はじめて学会が理性と論理のフィルターを通して纏めあげた用語の小冊である.これからも学会には用語委員会を常設して,修正と改訂に対応し続けていくこととし本書をご利用の皆様には,この点をご賢察いただき,ご意見とご支援をお願いしたい.
最後に,編集の要にあった山本照子学術委員長はもとより,委員会からの数々の問い合わせにご協力いただいた多くの学会員の方々,とりわけ,繰り返される編集実務に,忍耐強く携わってくれた石川博之先生,小野卓史先生,清水典佳先生,溝口 到先生,渡辺和也先生の学術委員各位と,医歯薬出版編集部に深甚なる謝意を表します.
2008年2月
有限責任中間法人 日本矯正歯科学会
理事長 相馬邦道
序文
有限責任中間法人日本矯正歯科学会は,1926(大正15)年に発足して以来,本年で82年目を迎えるが,このたび相馬邦道会長(理事長)のもとで,本学会による初めての専門用語集である『歯科矯正学専門用語集』を発刊する運びとなった.
正しく理解されるべき専門用語を簡明に整理し,的確に教授することは,他の歯科領域と同じく,歯科矯正学分野においても重要な課題である.近年では,「歯学教育モデル・コア・カリキュラム」,CBT(computer based test),OSCE(objective structured clinical examination)が全国の歯科大学・歯学部で実施されるようになり,さらに,平成20年度歯科医学教授要綱が策定されるにおよび,教育現場や国家試験において高度な学術情報を誤解なく伝達できる専門用語を規定する必要性が高まっている.このような状況の変化に対応するため,日本矯正歯科学会では歯科矯正学分野で用いられる専門用語の標準化を行うことを目標に掲げて,前学術委員会(中島昭彦委員長)のころより検討が開始され,現学術委員会でも用語の選定作業に5年以上の歳月を要して,ようやくこの度の出版に漕ぎ着けることができた.本用語集は,専門学会としての責任のもとに編纂され,会員諸氏の全面的なご支援・ご助力を得て,具体的な形を提示できた.以下に選定作業内容の概略を示す.
1.専門用語の収集と用語の選定
用語の選定にあたり,『学術用語集 歯学編』,『平成18年度歯科医師国家試験出題基準』,各種歯科矯正学教科書,米国の歯科矯正学教科書,米国歯科矯正学用語集を参考に,数千語におよぶ歯科矯正学用語から約4,000語を抽出し,歯科矯正学の教育・臨床・研究に必要と判断された約2,300語を厳選した.なお,一般的な解剖学用語は基本的には含めず,歯科矯正学に特に関連の深いもののみにとどめた.
2.日本矯正歯科学会会員からの推薦用語の追加・削除
全国の歯科大学・歯学部に2度のアンケートを行い,用語の追加と削除を繰り返し,指摘を受けた数多くの意見に対して慎重に検討を重ねた.当学会においてはいまだ専門用語の整理期であることを考慮して,基本的に選択頻度の高いものを優先して追加した.また,表記がいくつかある用語については,アンケートで基本的に選択頻度の高いものを優先させるとともに,他分野における専門用語との整合性や歯科矯正学分野内で関連する用語間の整合性を考慮して選択した.歯科矯正学の専門用語は外国語から日本語に訳されているものも数多く,海外の歯科矯正学関連学術論文を読む際にも役立つことを考慮したため,取り上げた用語数は多くなった.
3.英語表記の確認
英語表記の確認,修正,追加については,米国の歯科矯正学教科書,米国歯科矯正学用語集を参考にし,さらに,日本矯正歯科学会会員の協力を仰ぎ,一語一語確認作業を進め,幾多の表現の中から,適切と思われるものを選出した.
言葉は時代とともに移り変わっていく.本用語集も現在のものが完成ではなく,今後も学会内では継続的に議論を深めていかねばならない.また今後,本用語集を基盤に,さらに専門用語を厳選して,専門学会として責任ある簡明な解説も加えられた実用性の高い用語集の編纂を期待したい.
本用語集が今後も機会あるごとに修正・充実され,歯学生,若い歯学研究者,臨床歯科医師にとって有用なものとして,日々ご活用頂けることを心から願っている.
最後に委員一同,今回の編集作業に関してご協力をいただいた関係各位に,心から感謝申し上げます.
2008年2月
日本矯正歯科学会学術委員会
(平成16年度~平成19年度委員2期)
委員長
山本照子
委員
石川博之
小野卓史
清水典佳
溝口 到
渡辺和也
幹事
出口 徹
日本矯正歯科学会編『歯科矯正学専門用語集』は,初版が刊行されてから,すでに18年近い歳月が経過した.この間,歯科矯正学を取り巻く環境は少しずつ変化し,使用される専門用語は多様化してきた.とりわけ,デジタル技術の進歩,三次元画像解析の普及,アライナー型矯正装置に代表される新たな治療技術の発展,さらには国際的学術交流の活発化に伴い,医学情報が飛躍的に増大した現代において,専門用語の整理と共有は一層その重要性を増している.
本用語集は,歯科矯正学の研究,教育,臨床の場において用いられる専門用語を整理し,その和英対応を示すことを目的としている.専門用語とは,特定の学術領域において,特定の概念を指示するために用いられる語であり,理想的には明確な根拠に基づくことが望ましいが,実際には各専門領域での慣用によって定着してきたものも多い.また一般に,欧米では,個々の論文や教科書の中で必要な概念や定義を明示したうえで用語を選択する傾向が強く,必ずしも学会や国家的規模での統一が図られるとは限らない.しかし我が国においては,伝統的に,教育,資格制度,学術交流などの基盤とするために,一定の共通用語体系を整備することが期待されている.一方,用語の統一は新たな学術概念の形成や学問の進歩を阻害するものであってはならない.専門用語は固定不変のものではなく,新たな知見や技術の登場や進歩に応じて,継続的に改訂されていくことが望まれる.
この第2版は,日本矯正歯科学会創立100周年記念事業の一環として企画されたものである.振り返れば,明治以来,歯科医学の学術用語は主として米国で使われていた用語を翻訳することによって整理されていた.1926年10月に歯科医学領域における最初の専門学会として発足した本学会は,ただちに術語調査委員会を常設して検討を進め,その最初の成果として,1933年5月に334語からなる「矯正歯科学術語」を発表している(『日本矯正歯科学会雑誌』第3巻:39-48,1934年).2008年に刊行された初版は,花田晃治前学会長による用語整理事業の提唱を契機として,相馬邦道理事長のもと,山本照子学術委員長をはじめとする当時の学術委員会委員各位の長年にわたる尽力によって編纂されたものであり,本用語集の基盤となる重要な学術的成果となっている.ここにあらためてそのご功績に対し,深い敬意と感謝を記す.
今回の改訂にあたっては,学術委員会(西井 康委員長)のもとにワーキンググループを設置し,用語の整理と再検討を進めた.編集方針としては,時代の変化に対応した新規用語の追加,使用頻度が低下した用語の整理,一般用語や基本解剖学用語の見直し,人名のカタカナ表記の整理,和英対応の精査,ならびに電子的利用環境における検索性への配慮などを基本方針とした.また,英語表記については,単なる英文法上の規則性のみではなく,矯正歯科領域における歴史的慣用,国際的使用実態,専門用語としての自然さとの調和を重視した.さらに,診断名と形態表現の区別や,歴史的に定着した用語と国際標準との整合性についても慎重に検討した.本学会100年間の歴史と伝統を受け継いだ遺産ともいえる本書が,次代への学術的継承の一助となれば幸いである.
最後に,本用語集第2版の編纂にあたり,多大なるご尽力を賜りました学術委員会委員各位,ワーキンググループ委員各位,ならびに校正段階において貴重なご助言を賜りました諸先生方に,心より深甚なる謝意を表したい.
2026年7月
公益社団法人 日本矯正歯科学会
理事長 新井一仁
第2版序文
『歯科矯正学専門用語集』初版が刊行されたのは2008年であり,本第2版はそれから約18年ぶりの改訂となる.この間,歯科矯正学を取り巻く教育・研究・臨床環境は大きく変化し,新たな診断技術,治療技術および研究手法の導入に伴い,多くの新しい専門用語が生み出されてきた.一方で,歴史的には重要であっても現在ではほとんど使用されなくなった用語も存在する.また,国際的な学術交流の進展に伴い,英語表記についても多様な表現が併存する状況となっている.
本第2版は,日本矯正歯科学会創立100周年記念事業の一環として企画された.学術委員会では,初版編纂時の理念と成果を尊重しながら,現在の歯科矯正学における教育,研究および臨床の実情に即した専門用語集を目指して改訂作業を進めた.
改訂にあたっては,学術委員会のもとにワーキンググループを設置し,初版収載用語の全面的な見直しを行った.新たな学術的概念や技術に関する用語については追加を検討し,使用頻度が低下した用語については削除または整理を行った.また,本用語集は歯科矯正学の専門用語集であることから,一般用語や基本的な解剖学用語については原則として収載対象から除外した.さらに,歴史的意義を有すると判断された用語については【旧】として収載することとした.
英語表記については,国際的な学術文献や教科書等における用例を参考とし,和英対応の再検討を行った.同一概念に複数の表記が存在する場合には,歴史的慣用,国際的使用状況,専門用語としての自然さ,関連用語との整合性などを考慮して選定した.特に近年の学術文献では,複合語におけるハイフンの使用や一語化の傾向が必ずしも統一されていないことから,本用語集では英文法上の規則のみならず,実際の学術文献における使用実態を重視した.
専門用語は学術的概念を共有するための重要な基盤である.しかしながら,専門用語の統一そのものが目的ではなく,教育,研究および臨床における円滑な意思疎通を支援することが本来の目的である.本用語集が,歯科矯正学に携わる学生,研修医,研究者および臨床家に広く活用され,今後の歯科矯正学の発展に寄与することを願っている.
最後に,本改訂作業にご尽力いただいた学術委員会委員,ワーキンググループ委員ならびにご協力いただいた諸先生方に深く感謝申し上げる.
2026年7月
公益社団法人 日本矯正歯科学会 学術委員会
(令和6年度~令和7年度委員)
委員長
西井 康
委員
飯嶋雅弘
小川卓也
上岡 寛
川元龍夫
菅崎弘幸
北井則行
田中栄二
田渕雅子
芳賀秀郷
春山直人
幹事
有泉 大
歯科矯正学専門用語集改訂ワーキンググループ
委員
新井一仁
有泉 大
栃木啓佑
西井 康
芳賀秀郷
水野周平
協力
五十嵐 薫
石川博之
齋藤 功
溝口 到
歯科矯正学専門用語集の発刊に寄せて
漸くにして,日本矯正歯科学会編『歯科矯正学専門用語集』が,発刊の運びとなった.想えば本企画は,花田晃治前学会長が歯科矯正学の用語整理を当時の学術委員会に委任したことに端緒を開くので,今日までに10年近くの時間を要したことになる.この間,それぞれの用語を巡り意見の統一が必ずしも円滑でなかったことなど,さまざまな紆余曲折の労苦が容易に偲ばれる.
ちなみに,「用語」に相当する“term“を辞書で引いてみると,「原義『限界』から,時間的,条件的,表現上の限界の意が派生」とある.「限界」から派生した「用語」という単語には,もともと「はっきりした境とか,区切り」といった語意が付帯していたように思われる.また,「言葉」という単語の語源を遡ってみると,ギリシャ語の“logos”に行きつく.興味深いことに,そのlogosには,「言葉」のほかに「理性」の意味も持ち合わせている.
「専門用語」とは,それぞれの特定の分野に特化して通用し,公的に使用される言葉・用語群である.さらに「学術用語」には,その言葉の定義にあたって一般の領域に比して,よりはっきりした論理に裏付けられていることが必要である.議論を進めるうえで,人々の間で認識のディスクレパンシーがあっては結論が導けないためである.したがって,成熟した専門学術分野に求められるものは,少なくとも,公正なる議論にとって必要不可欠とされる用語が,理性や論理に基づいて選別されているべきことと思量される.
周知のように,日本矯正歯科学会は設立以来80余年の星霜を経て発展してきた.しかしその一方では,その間に,国内外のさまざまな関連領域から到来した用語,さらには学会の内部で独自に生まれ出た用語がおびただしい数となって,それぞれがさまざまな機関や地域で別々に分化し,そのエントロピーは増大の一途を辿ってきている.
このような背景から学会としては,用語に関して,全国的に統一された見解を一日も早く得ておく必要性を感じ,まずは用語の整理から手掛けて,ついで機会をとらえて,学会の学術専門用語を明確な形で纏めあげていこうとの方針にあった.
折りしも,本学会も学術委員会を介して編集協力をしてきた日本歯科医学会編『日本歯科医学会学術用語集』の出版作業が,医歯薬出版に依頼された.この機に日本矯正歯科学会もそれに同調し,それまで滞りがちであった用語整理を,用語集編纂として格上げし,あらためて学術委員会を中心に学会員の人智を注ぎ込み,同出版社のご協力のもとで日本矯正歯科学会編『歯科矯正学専門用語集』を出版することにした.
初版本のため,用語の整理や統一が不徹底であったり,用語の和英対応が不十分であったりと,手に取られるとさまざまな不備にお気づきになるかもしれないが,これまで未整理の状態にあった数多の歯科矯正学の表現に対して,はじめて学会が理性と論理のフィルターを通して纏めあげた用語の小冊である.これからも学会には用語委員会を常設して,修正と改訂に対応し続けていくこととし本書をご利用の皆様には,この点をご賢察いただき,ご意見とご支援をお願いしたい.
最後に,編集の要にあった山本照子学術委員長はもとより,委員会からの数々の問い合わせにご協力いただいた多くの学会員の方々,とりわけ,繰り返される編集実務に,忍耐強く携わってくれた石川博之先生,小野卓史先生,清水典佳先生,溝口 到先生,渡辺和也先生の学術委員各位と,医歯薬出版編集部に深甚なる謝意を表します.
2008年2月
有限責任中間法人 日本矯正歯科学会
理事長 相馬邦道
序文
有限責任中間法人日本矯正歯科学会は,1926(大正15)年に発足して以来,本年で82年目を迎えるが,このたび相馬邦道会長(理事長)のもとで,本学会による初めての専門用語集である『歯科矯正学専門用語集』を発刊する運びとなった.
正しく理解されるべき専門用語を簡明に整理し,的確に教授することは,他の歯科領域と同じく,歯科矯正学分野においても重要な課題である.近年では,「歯学教育モデル・コア・カリキュラム」,CBT(computer based test),OSCE(objective structured clinical examination)が全国の歯科大学・歯学部で実施されるようになり,さらに,平成20年度歯科医学教授要綱が策定されるにおよび,教育現場や国家試験において高度な学術情報を誤解なく伝達できる専門用語を規定する必要性が高まっている.このような状況の変化に対応するため,日本矯正歯科学会では歯科矯正学分野で用いられる専門用語の標準化を行うことを目標に掲げて,前学術委員会(中島昭彦委員長)のころより検討が開始され,現学術委員会でも用語の選定作業に5年以上の歳月を要して,ようやくこの度の出版に漕ぎ着けることができた.本用語集は,専門学会としての責任のもとに編纂され,会員諸氏の全面的なご支援・ご助力を得て,具体的な形を提示できた.以下に選定作業内容の概略を示す.
1.専門用語の収集と用語の選定
用語の選定にあたり,『学術用語集 歯学編』,『平成18年度歯科医師国家試験出題基準』,各種歯科矯正学教科書,米国の歯科矯正学教科書,米国歯科矯正学用語集を参考に,数千語におよぶ歯科矯正学用語から約4,000語を抽出し,歯科矯正学の教育・臨床・研究に必要と判断された約2,300語を厳選した.なお,一般的な解剖学用語は基本的には含めず,歯科矯正学に特に関連の深いもののみにとどめた.
2.日本矯正歯科学会会員からの推薦用語の追加・削除
全国の歯科大学・歯学部に2度のアンケートを行い,用語の追加と削除を繰り返し,指摘を受けた数多くの意見に対して慎重に検討を重ねた.当学会においてはいまだ専門用語の整理期であることを考慮して,基本的に選択頻度の高いものを優先して追加した.また,表記がいくつかある用語については,アンケートで基本的に選択頻度の高いものを優先させるとともに,他分野における専門用語との整合性や歯科矯正学分野内で関連する用語間の整合性を考慮して選択した.歯科矯正学の専門用語は外国語から日本語に訳されているものも数多く,海外の歯科矯正学関連学術論文を読む際にも役立つことを考慮したため,取り上げた用語数は多くなった.
3.英語表記の確認
英語表記の確認,修正,追加については,米国の歯科矯正学教科書,米国歯科矯正学用語集を参考にし,さらに,日本矯正歯科学会会員の協力を仰ぎ,一語一語確認作業を進め,幾多の表現の中から,適切と思われるものを選出した.
言葉は時代とともに移り変わっていく.本用語集も現在のものが完成ではなく,今後も学会内では継続的に議論を深めていかねばならない.また今後,本用語集を基盤に,さらに専門用語を厳選して,専門学会として責任ある簡明な解説も加えられた実用性の高い用語集の編纂を期待したい.
本用語集が今後も機会あるごとに修正・充実され,歯学生,若い歯学研究者,臨床歯科医師にとって有用なものとして,日々ご活用頂けることを心から願っている.
最後に委員一同,今回の編集作業に関してご協力をいただいた関係各位に,心から感謝申し上げます.
2008年2月
日本矯正歯科学会学術委員会
(平成16年度~平成19年度委員2期)
委員長
山本照子
委員
石川博之
小野卓史
清水典佳
溝口 到
渡辺和也
幹事
出口 徹















