やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
保健・医療・福祉に関わる基礎統計を学ぼう
 社会は日々変化していますが,その変化には質的変化や量的変化があります.医療に関わる職種では,臨床家であれ,研究者であれ,地域保健・公衆衛生の関係者であれ,福祉領域の人であれ,自らの職責を全うするためには「第六感」だけを頼りにはできません.それは,私たちが対応する人々や社会に対して説明責任があるからです.
 統計と聞くと,「ああ,苦手の数学か」と暗くなる学生諸子を見てきましたし,何かを人前で発表するときに「統計が苦手で」という医療や福祉の関係者も見てきました.
 本書は,そのような方々が苦手意識を克服できるよう,あるいはこれから学ぶ皆さんが苦手意識を抱かずに済むよう,読者の立場に立って段階的に説明をし,そして発表する人のニーズにも合うように,可能な限りビジュアルにこだわりました.
 現代社会は,AI(Artificial Intelligence:人工知能)の時代,DX(デジタル・トランスフォーメーション:Digital Transformation)の時代と言われています.医療関係でも医療DXが言われています.厚生労働省は「医療DXは,医療分野でのデジタル・トランスフォーメーションを通じたサービスの効率化や質の向上により,(1)国民の更なる健康増進,(2)切れ目なくより質の高い医療等の効率的な提供,(3)医療機関等の業務効率化,(4)システム人材等の有効活用,(5)医療情報の二次利用の環境整備の5点の実現を目指すものであり,我が国の医療の将来を大きく切り拓いていくものです.」と説明しています.その背景には,皆さんの統計が生きています.統計が集まって,傾向が認められ,傾向が信頼されるようになると,分析されて対応が示されるようになります.
 本書は,入門書ではありますが,まずはビジュアルを理解するグラフ化から入り,データの解析,そして歯科の指標などの表現の仕方,さらにアドバンスとして基礎統計学から疫学,そして医療情報と必要なすべての領域を,それぞれのエキスパートに執筆してもらいました.
 本書は,「見てよし,読んでよし」の内容にしてあります.今回は特に,導入・復習に役立つマンガのページを追加しました.また,領域的に重要と思われる練習問題も付けました.是非,お使いください.
 最後に,本書の出版にあたりご尽力いただいた医歯薬出版株式会社の川村幸裕氏に感謝いたします.
 2026年1月
 監修 安井利一
VISUAL MANUAL
 第1章 グラフを読む
  集団全体の特徴をとらえるにはグラフを読む
   (1)変化を読む―時系列の比較
    折れ線グラフ1
    折れ線グラフ2
   (2)比べて読む―数値の比較
    単純比較棒グラフ
    積み上げ棒グラフ
   (3)占める割合を読む―構成比率の比較
    円グラフ
    帯グラフ(横内訳棒グラフ)
   (4)変化と比較を読む
    レーダーチャート(クモの巣グラフ)
 第2章 グラフをつくる
  集団の特徴をもっともよく表現できるグラフをつくる
   (1)変化をみたい場合
    折れ線グラフ
    (例)
     Step 1 データをそろえる
     Step 2 グラフをつくる
   (2)比較をしたい場合
    棒グラフ(単純比較棒グラフ)
    (例)
     Step 1 データをそろえる
     Step 2 グラフをつくる
    積み上げ棒グラフ
    (例)
     Step 1 データをそろえる
     Step 2 グラフをつくる
   (3)占める割合をみたい場合
    円グラフ(パイグラフ)
    (例)
     Step 1 データをそろえる
     Step 2 グラフをつくる
    帯グラフ
    (例)
     Step 1 データをそろえる
     Step 2 グラフをつくる
   (4)変化をみて比較したい場合
    レーダーチャート
    (例)
     Step 1 データをそろえる
     Step 2 グラフをつくる
   (5)データのばらつきを知りたい場合
    散布図
    (例)
     Step 1 データをそろえる
     Step 2 グラフをつくる
 第3章 データを解析する
  I 集団の特性を統計的につかむ
   度数分布表・ヒストグラム
    (例)
     Step 1 データをそろえる
     Step 2 グラフをつくる
     Step 3 データを解析する
  II 集団の違いを統計的に示す方法を知る
   (1)相関
    (例)
     Step 1 データをそろえる
     Step 2 相関図(散布図)をつくる
     Step 3 データを解析する
   (2)割合の差の検定
    (例)
     Step 1 データをそろえる
     Step 2 データを解析する
   (3)χ2(カイ二乗)検定
    (例)
     Step 1 データをそろえる
     Step 2 データを解析する
   (4)平均値の差の検定(t検定)
    (例)
     Step 1 データをそろえる
     Step 2 グラフをつくる
     Step 3 データを解析する
   (5)リスク分析―相対危険度
    (例)
     Step 1 データをそろえる
     Step 2 データを解析する
   (6)リスク分析―オッズ比
    (例)
     Step 1 データをそろえる
     Step 2 データを解析する
   付(1)探索的データ解析―箱ひげ図
    (例)
     Step 1 グラフをつくる
     Step 2 データを解析する
   付(2)探索的データ解析―パーセンタイル曲線
    (例)
     Step 1 平均値曲線で表現してみる
     Step 2 パーセンタイル曲線でみてみる
     Step 3 データを解析する
 第4章 歯科の指標をマスターする
  I 疾患数量化の基本概念
   (1)数量化
   (2)指数
   (3)指標
  II う蝕に関する指標
   (1)DMFとは
   (2)う蝕に関する表現法
    1.永久歯列
    2.乳歯列
   (3)relative increment of decay index(RID index)
   (4)根面う蝕に関する指標
  III 歯周疾患に関する指標
   (1)歯肉炎に関する指標
    1.PMA index
    2.gingival index(GI)
   (2)歯周炎に関する指標
    1.periodontal index(PI)
    2.periodontal disease index(PDI)
    3.gingival bone count(GB count)
    community periodontal index(CPI)について
  IV 口腔清掃状況の指標
    1.oral hygiene index(OHI)
    2.oral hygiene index-simplified(OHI-S)
    3.patient hygiene performance(PHP)
    4.plaque index(PlI)
    5.plaque control record(PCR)
    6.Ainamoの口腔清掃状況の指標
  V 歯のフッ素症の指標
   (1)Deanの分類
  VI その他の口腔疾患の指標
   (1)不正咬合
 第5章 疫学とは
ADVANCE MANUAL
 マンガ 私たちは名歯科医? 名歯科衛生士?
 第1章 集団を知る
  I 集団の調べ方を学ぶ
  II 集団から対象を選ぶ(標本抽出)
   (1)母集団と標本
   (2)標本抽出法の種類
    1.有意抽出
    2.無作為抽出
  III データの特性を知る
   (1)データの区分
    1.質的データ(カテゴリーデータ)
    2.量的データ
   (2)データの種類と代表値
  IV 集団の形をみきわめる(性格を知る:分布と偏り)
   (1)分布の形のつかみかた
   (2)分布の中心を表すもの(代表値)
    1.代表値の種類
    2.代表値の選択と利用
   (3)分布の広がりを表すもの(散布度)
   (4)データの分布(理論分布)
    1.正規分布
    2.正規分布の利用
    3.t分布
    4.χ2(カイ二乗)分布
  V 集団を表す(グラフ)
   (1)図表の作成方法と留意点
   (2)データの種類とグラフの作成
    1.数値の比較─棒グラフ─
    2.時系列の比較─折れ線グラフ─
    3.構成比率の比較─円グラフ・帯グラフ─
    4.相対比較の比率─レーダーチャート(クモの巣グラフ)─
 第2章 集団の違いをみる
  I 推定
  II 検定(仮説検定)
   (1)仮説検定の手順
    1.帰無仮説,対立仮説の設定
    2.有意水準(危険率)の設定と検定法の選択
    3.検定統計量の計算と有意点の算出
    4.帰無仮説の棄却・採択の判定
   (2)仮説検定の判定
  III 平均値の差の検定
   (1)統計量の計算
   (2)自由度
   (3)F検定(等分散の検定)
   (4)スチューデントのt検定
   (5)ウェルチのt検定
   (6)対応のあるt検定
  IV 割合の差の検定
   (1)適合度の検定
   (2)独立性の検定
  V 相関分析
   (1)ピアソンの積率相関係数
   (2)スピアマンの順位相関係数
   (3)回帰式
  VI パラメトリック検定,ノンパラメトリック検定
 第3章 疫学を知る
  I 疫学と倫理
   (1)疫学の倫理的ポイント
   (2)倫理
   (3)疫学研究における倫理
  II 疫学の研究方法
   (1)疫学研究の目的
   (2)研究法の違い
    1.観察研究
    2.介入研究
   (3)研究法のエビデンスレベル
  III スクリーニング
   (1)スクリーニング検査法
    1.スクリーニング実施の要件
    2.スクリーニングレベルの決定
    3.スクリーニング検査の評価
  IV EBM
   (1)EBMとは
   (2)エビデンスとは
   (3)EBMを実践する5つのステップ
    1.ステップ1 問題の定式化
    2.ステップ2 情報の収集と選択
    3.ステップ3 情報の批判的吟味
   (4)バイアスとは何か
   (5)交絡とは何か
 第4章 歯科保健医療情報
  I 歯科保健医療情報とは
   (1)医療情報,診療情報,患者情報の違い
   (2)医療情報の一次利用と二次利用
   (3)守秘義務と情報共有
    1.同意について
    2.医療情報の匿名化と仮名化
  II 大規模医療データ
   (1)医療情報の発生とデータの特徴
   (2)大規模医療データの活用
   (3)大規模医療データの具体例
    1.NDB(National Database)
    2.その他
  III 医療情報の標準化と活用
   (1)厚生労働省標準規格
   (2)地域医療ネットワークに必要な項目
   (3)口腔状態のスナップショット
  IV 電子カルテ
   (1)電子カルテの3基準
   (2)電子カルテと医療安全
   (3)電子カルテとセキュリティの考え方

 練習問題

 付表1 正規分布面積表
 付表2 χ2(カイ二乗)分布表
 付表3 t分布表
 付表4 F分布表
 付表5 関連国家統計一覧
 参考文献
 索引