改訂(第9版)の序
このたび,前版から7年ぶりの改訂を経て,歯科麻酔学第9版を上梓することとなった.初版の出版は1971年であり,55年の歳月を経て本書の船出を迎えた.1979年,当時の学部3年生(現5年生)の時に第2版の本書で歯科麻酔学を学んだ筆者が,47年の時を経て,歴代の著者の方々からご教授いただいた知識と経験をもとに本書の編集に携わることができ,感慨深いものがある.
日本の歯科医学における麻酔学は,他の多くの国と同様に,歯科治療のための局所麻酔に加えて,口腔外科手術のための全身麻酔を実施する知識と技能を修得することを目的とした学問として発展してきた.その後,1960年代以降,各大学に歯科麻酔学教育のため部署が設置されると同時に,精神鎮静法が広く実施されるようになり,歯科麻酔学は「歯科患者の全身管理」のための学問として発展してきた.今日では,歯科麻酔学の知識と技能は一般的な歯科治療や口腔外科手術に応用されるだけでなく,歯科治療恐怖症患者や障害者,医科疾患合併患者などに幅広く応用されることになってきている.特に日本は,「歯科医師が歯科医業の一部として歯科医行為を行うのに必要な麻酔を行うこと」が法的に認められている世界的には珍しい国であり,全身麻酔の臨床や研究の成果が歯科患者の全身管理学としての歯科麻酔学の発展に大きく貢献してきた.
このような時代と社会の背景を踏まえて,本書は歯科医師に必須の歯科患者の全身管理学に関する知識について,その内容を基礎的レベルから応用・発展レベルまで具体的に記述しており,基礎的レベルの知識は歯学部学生と一般歯科医師に有用な,また応用・発展レベルの知識は日本歯科麻酔学会認定医や歯科麻酔専門医の参考となる内容となっている.この編集方針は初版から変わることなく今日まで受け継がれている.
第9版の編集にあたっては,4名の編集委員が数回にわたって議論を重ねた結果,構成そのものについては第8版から大きな変更は行わないものの,最新の知識をコンパクトにまとめるという方針を決定した.担当していただく著者は,その領域に深い見識のある方々にお願いすることとした.これらの結果,本書は現代の歯科麻酔学における最新かつ必須の知識を整理することができたものと考えている.読者諸氏におかれては,「患者さんのために」,本書に記述された内容をしっかりと修得していただければと願っている.加えて,特に全国の若い歯科麻酔学の担当教員の方々におかれては,数年後に行われるかもしれない第10版改訂への参画に備えて,常日頃から歯科麻酔学に関連した最新の知識をブラッシュアップし,よりよい歯科麻酔学の教科書を後世につなぐべく,日々の教育・研究・診療の場において本書を活用していただければと考えている.
最後に,本改訂にあたり,終始あたたかいご支援をいただいた医歯薬出版株式会社の矢吹陽子氏やその他の諸氏に深甚なる感謝を申し上げます.
2025年12月
一戸達也
宮脇卓也
水田健太郎
讃岐拓郎
補遺
『歯科麻酔学』初版~第9版:発刊,改訂にかかわる編集方針などの概略
本書の初版は1971年6月に発刊された.当時,わが国の歯科大学・歯学部で歯科麻酔学に関する講座が設置されていたのは3校のみで,多くの歯科医育施設においては口腔外科学の一部として歯科局所麻酔法を主に講義,実習が行われていた.しかし,実際の歯科臨床では,口腔外科学の進歩・発展に伴う手術内容の高度化・複雑化,また局所麻酔法のみでは対応が困難な重度心身障害者や全身的合併症を有する高齢者への対応などから,全身麻酔法を含む全身管理にかかわる知識・手技の重要性が増してきていた.
したがって,歯学生さらに臨床歯科医には,全身麻酔法を含めた周術期管理法,また全身的偶発症への対処法・救急蘇生法などの知識・技術をより広く深く学習することが必須となっていた.優れた多くの麻酔科学書が出版されているものの,歯科臨床に直結しているとはいいがたく,歯学生および臨床歯科医に適した歯科麻酔学教科書の刊行が強く要望された.そこで久保田康耶(当時,東京医科歯科大学教授),中久喜 喬(当時,東京歯科大学教授),野口政宏(当時,神奈川歯科大学教授)ら3教授が編集の労をとられ,各歯科大学・歯学部で麻酔学の教育を直接されている先生方が執筆を分担された.
第2版は,初版発刊わずか3年後,1974年に,初版と同じく久保田,中久喜,野口ら3教授が編集の任にあたられて発刊された.歯科麻酔学の急速な進歩と臨床応用の進展がみられたためで,「笑気吸入鎮静法」,「外来全身麻酔」,「ハリ治療」などの項目が新たに加えられた.現在では,歯科外来での全身管理手段の核の1つといえる「精神鎮静法」の概念が第2版で登場し,障害児などの歯科治療への全身麻酔対応,また歯科麻酔の疼痛治療領域へのかかわりなど,短期間での大きな変化がみてとれる.
第3版は,1980年に発刊された.初版,第2版と同じく久保田,中久喜,野口ら3教授が編集された.第2版以降に記述すべき麻酔科学の新知見が増え,また新たに数校の歯科大学・歯学部に歯科麻酔学講座が設置されて教授が増えたことも相まって,執筆者が増加している.
第4版は,第3版の改訂から9年あまり経て,1989年に発刊された.この間,わが国の歯科大学・歯学部のほぼすべてに歯科麻酔学にかかわる講座あるいは診療科が設置された.80年代には,麻酔科学,これを受けて歯科麻酔学領域の進歩,発展は目覚ましく,基礎的研究の進展はもとより,麻酔薬や筋弛緩薬,そしてモニタ関連などに大きな変化がみられた.これらのことを受けて,編集の任には初版からの久保田,中久喜,野口の3教授に,上田 裕(当時,大阪歯科大学教授),古屋英毅(当時,日本歯科大学教授),松浦英夫(当時,大阪大学教授)ら3教授が加わった.執筆は各大学の新進気鋭の歯科麻酔指導者に依頼されている.
第5版は,1997年に発刊された.初版から第4版まで編集に携われた久保田,中久喜,野口ら3教授は退かれ,第4版の古屋,上田,松浦の3教授に新たに金子 譲(当時,東京歯科大学教授),雨宮義弘(当時,鶴見大学教授),海野雅浩(当時,東京医科歯科大学教授)ら3教授が加わり,改訂された.1994年改訂の歯科医学教授要綱(歯科大学学長会議)を参考にした目次設定が行われ,歯学生が効果的で有効な学習ができるように,また日本歯科麻酔学会認定医資格の取得を目指す研修医の専門医的知識の整理に有用な教科書になるよう編集された.ハロタンからセボフルラン,バルビツレートからプロポフォールへの変遷が記述され,全静脈麻酔法についても触れられている.また法的問題の章が設けられ,インフォームド・コンセントや麻酔記録の項目が追加された.
第6版は,2003年に,第5版編者の古屋,金子,海野の3教授に池本清海(当時,九州大学教授),福島和昭(当時,北海道大学教授),城 茂治(当時,岩手医科大学教授)ら3教授が加わって編集された.歯科麻酔学が歯科医学教育の「診療基本」として,歯科診療における「コア」の1つに位置づけられていることを念頭に,患者の全身管理に関する項目の多い,特徴ある歯科麻酔学の教科書となっている.すなわち,生体の生理学や疾患の病態・評価,さらに歯科診療の侵襲と生体反応,モニタリングを加えて,歯科患者管理の基本を記述した章を設けた.また新たに「訪問歯科診療における患者管理」と「歯科治療における全身的偶発症」の章を起こしている.
第7版は,2011年に,第6版の編集にあたった金子教授が新たに設けた「監修」という立場で総括をし,同じく福島教授に加え,原田 純(当時,愛知学院大学教授),嶋田昌彦(東京医科歯科大学教授),一戸達也(東京歯科大学教授),丹羽 均(大阪大学教授)といった新進気鋭の4教授を加えた計6人の編者が企画・立案にあたった.この版では編集会議に際して,各歯科大学・歯学部に依頼していたアンケート調査の結果をもとに議論を重ね,1)内容は学部教育から歯科麻酔認定医試験の水準とする,2)各種試験対策用に特化した手軽なhow to本とは一線を画し,通読の中で考え,理解,習熟につながる内容にする,3)図表のみの羅列は避ける,などの基本的な方針を決定し編集にあたっている.内容的には,歯学教育モデル・コア・カリキュラム,歯科医学教授要綱に準拠し,さらに心肺蘇生法に関しては2010年改訂の日本救急医療財団ガイドラインに沿っているものとし,歯学生,研修医,さらに日本歯科麻酔学会認定医・歯科麻酔専門医にとっても欠かせないものとしている.
第8版は,第7版の改訂に携わった福島(監修),一戸,嶋田,丹羽の4教授と,新たに加わった北畑 洋(徳島大学教授),宮脇卓也(岡山大学教授)の2教授が編集に携わった.第8版の改訂は第7版の骨格を大きく変更せずに踏襲し,この8年間で発展,進展した事項の追加と修正,また各歯科大学・歯学部の歯科麻酔指導者変更に伴う新たな執筆依頼を念頭に置いた編集方針を論議,立案した.したがって,歯科麻酔の直接的な関与があまりない在宅診療の章を削除し,一方で,より重要性が増すと考えられる地域医療と歯科麻酔との連関についての内容を取り上げることになったが,新たな章を起こすなどの変更はない.その他,一部で項目の整理をし,また編集会議の論議を経て第7版の記述を挿入した部分もあるが,多くの章および項目で主に歯科麻酔指導者の退職などによる執筆者の変更があった.
第9版は,第8版の改訂に携わった一戸,宮脇の2教授と,新たに加わった水田健太郎(東北大学教授)と讃岐拓郎(長崎大学教授)の2教授が編集を担当した.第9版の改訂では,第8版と同様に,前版の骨格を大きく変更することなく,最新の知識をコンパクトにまとめることを編集方針とした.章によっては若干の追加項目があったが,それらは現在の歯科麻酔学に関する知識として重要であると考え,編集委員で協議の結果,追加することとした.
このたび,前版から7年ぶりの改訂を経て,歯科麻酔学第9版を上梓することとなった.初版の出版は1971年であり,55年の歳月を経て本書の船出を迎えた.1979年,当時の学部3年生(現5年生)の時に第2版の本書で歯科麻酔学を学んだ筆者が,47年の時を経て,歴代の著者の方々からご教授いただいた知識と経験をもとに本書の編集に携わることができ,感慨深いものがある.
日本の歯科医学における麻酔学は,他の多くの国と同様に,歯科治療のための局所麻酔に加えて,口腔外科手術のための全身麻酔を実施する知識と技能を修得することを目的とした学問として発展してきた.その後,1960年代以降,各大学に歯科麻酔学教育のため部署が設置されると同時に,精神鎮静法が広く実施されるようになり,歯科麻酔学は「歯科患者の全身管理」のための学問として発展してきた.今日では,歯科麻酔学の知識と技能は一般的な歯科治療や口腔外科手術に応用されるだけでなく,歯科治療恐怖症患者や障害者,医科疾患合併患者などに幅広く応用されることになってきている.特に日本は,「歯科医師が歯科医業の一部として歯科医行為を行うのに必要な麻酔を行うこと」が法的に認められている世界的には珍しい国であり,全身麻酔の臨床や研究の成果が歯科患者の全身管理学としての歯科麻酔学の発展に大きく貢献してきた.
このような時代と社会の背景を踏まえて,本書は歯科医師に必須の歯科患者の全身管理学に関する知識について,その内容を基礎的レベルから応用・発展レベルまで具体的に記述しており,基礎的レベルの知識は歯学部学生と一般歯科医師に有用な,また応用・発展レベルの知識は日本歯科麻酔学会認定医や歯科麻酔専門医の参考となる内容となっている.この編集方針は初版から変わることなく今日まで受け継がれている.
第9版の編集にあたっては,4名の編集委員が数回にわたって議論を重ねた結果,構成そのものについては第8版から大きな変更は行わないものの,最新の知識をコンパクトにまとめるという方針を決定した.担当していただく著者は,その領域に深い見識のある方々にお願いすることとした.これらの結果,本書は現代の歯科麻酔学における最新かつ必須の知識を整理することができたものと考えている.読者諸氏におかれては,「患者さんのために」,本書に記述された内容をしっかりと修得していただければと願っている.加えて,特に全国の若い歯科麻酔学の担当教員の方々におかれては,数年後に行われるかもしれない第10版改訂への参画に備えて,常日頃から歯科麻酔学に関連した最新の知識をブラッシュアップし,よりよい歯科麻酔学の教科書を後世につなぐべく,日々の教育・研究・診療の場において本書を活用していただければと考えている.
最後に,本改訂にあたり,終始あたたかいご支援をいただいた医歯薬出版株式会社の矢吹陽子氏やその他の諸氏に深甚なる感謝を申し上げます.
2025年12月
一戸達也
宮脇卓也
水田健太郎
讃岐拓郎
補遺
『歯科麻酔学』初版~第9版:発刊,改訂にかかわる編集方針などの概略
本書の初版は1971年6月に発刊された.当時,わが国の歯科大学・歯学部で歯科麻酔学に関する講座が設置されていたのは3校のみで,多くの歯科医育施設においては口腔外科学の一部として歯科局所麻酔法を主に講義,実習が行われていた.しかし,実際の歯科臨床では,口腔外科学の進歩・発展に伴う手術内容の高度化・複雑化,また局所麻酔法のみでは対応が困難な重度心身障害者や全身的合併症を有する高齢者への対応などから,全身麻酔法を含む全身管理にかかわる知識・手技の重要性が増してきていた.
したがって,歯学生さらに臨床歯科医には,全身麻酔法を含めた周術期管理法,また全身的偶発症への対処法・救急蘇生法などの知識・技術をより広く深く学習することが必須となっていた.優れた多くの麻酔科学書が出版されているものの,歯科臨床に直結しているとはいいがたく,歯学生および臨床歯科医に適した歯科麻酔学教科書の刊行が強く要望された.そこで久保田康耶(当時,東京医科歯科大学教授),中久喜 喬(当時,東京歯科大学教授),野口政宏(当時,神奈川歯科大学教授)ら3教授が編集の労をとられ,各歯科大学・歯学部で麻酔学の教育を直接されている先生方が執筆を分担された.
第2版は,初版発刊わずか3年後,1974年に,初版と同じく久保田,中久喜,野口ら3教授が編集の任にあたられて発刊された.歯科麻酔学の急速な進歩と臨床応用の進展がみられたためで,「笑気吸入鎮静法」,「外来全身麻酔」,「ハリ治療」などの項目が新たに加えられた.現在では,歯科外来での全身管理手段の核の1つといえる「精神鎮静法」の概念が第2版で登場し,障害児などの歯科治療への全身麻酔対応,また歯科麻酔の疼痛治療領域へのかかわりなど,短期間での大きな変化がみてとれる.
第3版は,1980年に発刊された.初版,第2版と同じく久保田,中久喜,野口ら3教授が編集された.第2版以降に記述すべき麻酔科学の新知見が増え,また新たに数校の歯科大学・歯学部に歯科麻酔学講座が設置されて教授が増えたことも相まって,執筆者が増加している.
第4版は,第3版の改訂から9年あまり経て,1989年に発刊された.この間,わが国の歯科大学・歯学部のほぼすべてに歯科麻酔学にかかわる講座あるいは診療科が設置された.80年代には,麻酔科学,これを受けて歯科麻酔学領域の進歩,発展は目覚ましく,基礎的研究の進展はもとより,麻酔薬や筋弛緩薬,そしてモニタ関連などに大きな変化がみられた.これらのことを受けて,編集の任には初版からの久保田,中久喜,野口の3教授に,上田 裕(当時,大阪歯科大学教授),古屋英毅(当時,日本歯科大学教授),松浦英夫(当時,大阪大学教授)ら3教授が加わった.執筆は各大学の新進気鋭の歯科麻酔指導者に依頼されている.
第5版は,1997年に発刊された.初版から第4版まで編集に携われた久保田,中久喜,野口ら3教授は退かれ,第4版の古屋,上田,松浦の3教授に新たに金子 譲(当時,東京歯科大学教授),雨宮義弘(当時,鶴見大学教授),海野雅浩(当時,東京医科歯科大学教授)ら3教授が加わり,改訂された.1994年改訂の歯科医学教授要綱(歯科大学学長会議)を参考にした目次設定が行われ,歯学生が効果的で有効な学習ができるように,また日本歯科麻酔学会認定医資格の取得を目指す研修医の専門医的知識の整理に有用な教科書になるよう編集された.ハロタンからセボフルラン,バルビツレートからプロポフォールへの変遷が記述され,全静脈麻酔法についても触れられている.また法的問題の章が設けられ,インフォームド・コンセントや麻酔記録の項目が追加された.
第6版は,2003年に,第5版編者の古屋,金子,海野の3教授に池本清海(当時,九州大学教授),福島和昭(当時,北海道大学教授),城 茂治(当時,岩手医科大学教授)ら3教授が加わって編集された.歯科麻酔学が歯科医学教育の「診療基本」として,歯科診療における「コア」の1つに位置づけられていることを念頭に,患者の全身管理に関する項目の多い,特徴ある歯科麻酔学の教科書となっている.すなわち,生体の生理学や疾患の病態・評価,さらに歯科診療の侵襲と生体反応,モニタリングを加えて,歯科患者管理の基本を記述した章を設けた.また新たに「訪問歯科診療における患者管理」と「歯科治療における全身的偶発症」の章を起こしている.
第7版は,2011年に,第6版の編集にあたった金子教授が新たに設けた「監修」という立場で総括をし,同じく福島教授に加え,原田 純(当時,愛知学院大学教授),嶋田昌彦(東京医科歯科大学教授),一戸達也(東京歯科大学教授),丹羽 均(大阪大学教授)といった新進気鋭の4教授を加えた計6人の編者が企画・立案にあたった.この版では編集会議に際して,各歯科大学・歯学部に依頼していたアンケート調査の結果をもとに議論を重ね,1)内容は学部教育から歯科麻酔認定医試験の水準とする,2)各種試験対策用に特化した手軽なhow to本とは一線を画し,通読の中で考え,理解,習熟につながる内容にする,3)図表のみの羅列は避ける,などの基本的な方針を決定し編集にあたっている.内容的には,歯学教育モデル・コア・カリキュラム,歯科医学教授要綱に準拠し,さらに心肺蘇生法に関しては2010年改訂の日本救急医療財団ガイドラインに沿っているものとし,歯学生,研修医,さらに日本歯科麻酔学会認定医・歯科麻酔専門医にとっても欠かせないものとしている.
第8版は,第7版の改訂に携わった福島(監修),一戸,嶋田,丹羽の4教授と,新たに加わった北畑 洋(徳島大学教授),宮脇卓也(岡山大学教授)の2教授が編集に携わった.第8版の改訂は第7版の骨格を大きく変更せずに踏襲し,この8年間で発展,進展した事項の追加と修正,また各歯科大学・歯学部の歯科麻酔指導者変更に伴う新たな執筆依頼を念頭に置いた編集方針を論議,立案した.したがって,歯科麻酔の直接的な関与があまりない在宅診療の章を削除し,一方で,より重要性が増すと考えられる地域医療と歯科麻酔との連関についての内容を取り上げることになったが,新たな章を起こすなどの変更はない.その他,一部で項目の整理をし,また編集会議の論議を経て第7版の記述を挿入した部分もあるが,多くの章および項目で主に歯科麻酔指導者の退職などによる執筆者の変更があった.
第9版は,第8版の改訂に携わった一戸,宮脇の2教授と,新たに加わった水田健太郎(東北大学教授)と讃岐拓郎(長崎大学教授)の2教授が編集を担当した.第9版の改訂では,第8版と同様に,前版の骨格を大きく変更することなく,最新の知識をコンパクトにまとめることを編集方針とした.章によっては若干の追加項目があったが,それらは現在の歯科麻酔学に関する知識として重要であると考え,編集委員で協議の結果,追加することとした.
第1章 歯科麻酔学総論
I 歯科医学における麻酔学(一戸達也)
1.歯科臨床における麻酔学の役割
2.歯科麻酔学の教育と研究
3.世界における歯科麻酔の立場
4.地域歯科医療における歯科麻酔科医の役割
II 麻酔・歯科麻酔の歴史(金子 譲)
1.麻酔史
2.日本歯科麻酔学会小史
III 麻酔の法と倫理(佐久間泰司)
1.歯科における麻酔業務と法
2.医科麻酔科研修
3.インフォームド・コンセント
4.医療過誤における歯科医師の法的責任
第2章 全身管理に必要な基本的知識
I 全身管理に必要な生理学
1.神経の生理(瀬尾憲司)
2.呼吸の生理(讃岐拓郎)
3.循環の生理(川合宏仁)
4.腎臓の生理(城戸幹太)
5.酸塩基平衡
6.内分泌系の機能
II 歯科診療の侵襲と生体反応(松浦信幸)
1.侵襲の内容と伝達経路
2.侵襲に対する神経系の反応
3.侵襲に対する内分泌系の反応
4.侵襲に対する免疫系の反応
III 診察と検査
1.バイタルサイン(櫻井 学)
2.診察
3.臨床検査(佐藤健一)
IV モニタリング
1.モニタリングの意義(飯島毅彦)
2.呼吸系モニタ
3.循環系モニタ
4.体温の測定(讃岐拓郎・月本翔太)
5.脳波モニタリング
6.筋弛緩作用のモニタリング
第3章 局所麻酔
I 局所麻酔薬の作用機序(瀬尾憲司)
1.局所麻酔薬の結合部位
2.局所麻酔薬の神経生理学的性質
II 神経線維の種類による局所麻酔効果の違い(瀬尾憲司)
III 局所麻酔薬
1.局所麻酔薬の化学構造(小鹿恭太郎・一戸達也)
2.局所麻酔薬の麻酔効果に影響する因子
3.薬物動態
4.毒性
5.各種麻酔薬の特徴(宮脇卓也)
6.歯科用局所麻酔製剤
IV 血管収縮薬(小鹿恭太郎・一戸達也)
1.血管収縮薬を併用する目的
2.使用薬物
3.薬物相互作用
V 局所麻酔に必要な解剖(深山治久)
1.伝達麻酔のための解剖
2.浸潤麻酔のための解剖
3.小児の局所麻酔のための解剖
4.高齢者の局所麻酔のための解剖
VI 局所麻酔法(深山治久)
1.表面麻酔法
2.伝達麻酔法
3.浸潤麻酔法
VII 局所合併症とその対応(百田義弘)
第4章 精神鎮静法
I 精神鎮静法の概念(宮脇卓也)
1.背景
2.精神鎮静法の位置づけと分類
3.歯科臨床における精神鎮静法
4.精神鎮静法の種類と使用薬物
II 吸入鎮静法(藤澤俊明)
1.亜酸化窒素の性質
2.亜酸化窒素吸入鎮静法の利点と欠点
3.亜酸化窒素吸入鎮静法の適応,非適応
4.亜酸化窒素吸入鎮静法の禁忌症
5.亜酸化窒素吸入鎮静法に使用する器械,器具
6.至適鎮静レベル
7.術前管理
8.術中管理
9.術後管理(帰宅許可条件)
10.小児や障害者に対する亜酸化窒素吸入鎮静法
III 静脈内鎮静法
1.静脈内鎮静法で使用される薬物(樋口 仁・宮脇卓也)
2.鎮静レベルの評価とモニタリング
3.静脈内鎮静法と生体反応
4.静脈内鎮静法の実際(花本 博)
第5章 全身麻酔
I 全身麻酔の概念と方法(吉田充広・入舩正浩)
1.全身麻酔の概念
2.理想的な全身麻酔とは
3.周術期管理
4.歯科医療における全身麻酔の適応
II 全身麻酔薬の作用機序(小柳裕子)
1.全身麻酔薬の作用ターゲット:膜脂質説から膜タンパク質説への変遷
2.意識を形成する脳神経ネットワークと全身麻酔薬の作用
III 術前の全身状態評価と管理(櫻井 学)
1.全身状態の評価
2.術前管理
IV 吸入麻酔(一杉 岳・横山武志)
1.吸入麻酔薬の概要
2.吸入麻酔薬の摂取と分布
3.麻酔薬の導入に影響する因子
4.生体機能への影響
5.麻酔薬の排泄と覚醒
6.麻酔深度
7.吸入麻酔薬
V 静脈麻酔(飯島毅彦)
1.静脈麻酔薬の薬物動態
2.静脈麻酔薬の種類
3.オピオイド
4.静脈麻酔法の実際
VI 筋弛緩薬(水田健太郎)
1.意義
2.適応
3.作用機序
4.臨床で使用される筋弛緩薬
5.筋弛緩薬の作用に影響する因子
6.非脱分極性筋弛緩薬の拮抗薬
VII 麻酔器と麻酔回路(百田義弘)
1.ガス供給装置
2.麻酔器
3.麻酔呼吸回路
VIII 気道管理
1.気道管理の意義・必然性(鮎瀬卓郎)
2.上気道の解剖と機能
3.上気道閉塞の病態生理
4.気道確保
5.difficult airway management:DAM(気道確保困難管理)(讃岐拓郎・黒田英孝)
IX 術中管理(砂田勝久)
1.麻酔記録
2.麻酔導入
3.麻酔の維持
4.麻酔の覚醒
5.術中合併症の予防・対処
X 術後管理(杉村光隆・山下 薫)
1.術後管理の目的と意義
2.術後合併症の予防・対処とモニタリング
3.術後疼痛管理
XI 輸液・輸血
1.輸液(山崎信也)
2.輸血(脇田 亮)
第6章 全身管理上問題となる疾患の病態と患者管理
I 呼吸器系の疾患(小長谷 光)
1.慢性閉塞性肺疾患(COPD)
2.気管支喘息
3.咳喘息,アトピー性咳嗽
4.急性上気道感染症
5.院内肺炎/医療介護関連肺炎
6.睡眠時無呼吸症候群
II 循環器系の疾患(北畑 洋・川人伸次)
1.高血圧
2.虚血性心疾患
3.先天性心疾患
4.心臓弁膜疾患
5.心筋症
6.感染性心内膜炎
III 脳血管障害(渡邉誠之)
1.概略
2.脳血管の走行と灌流領域
3.脳循環の生理と薬理
4.病的状態での脳循環・脳代謝
5.体循環および脳血管障害のある患者の管理目標
IV 代謝・内分泌疾患
1.糖尿病(増田陸雄)
2.甲状腺機能亢進症
3.甲状腺機能低下症
4.副腎疾患(川口 潤)
5.副甲状腺疾患
6.下垂体疾患(下垂体性巨人症)
V 肝・胆道系疾患(佐藤曾士・奥田真弘)
1.肝臓の機能
2.肝機能の評価と周術期管理
VI 泌尿器系疾患(亀倉更人)
1.腎障害を有する患者(血液透析を受けていない患者)の管理
2.血液透析中の患者の管理
VII 神経・筋疾患(照光 真)
1.神経筋接合部疾
2.筋原性筋萎縮
3.運動ニューロン障害
4.進行性変性疾患
5.脱髄性疾患
6.脊椎・脊髄損傷
VIII 血液疾患(森本佳成)
1.赤血球異常─貧血
2.白血球異常
3.出血性素因
4.抗血栓療法
IX 精神疾患(後藤倶子)
1.精神疾患の分類
2.精神疾患の治療
3.統合失調症
4.うつ病
X その他の病態
1.肥満患者(岡 俊一)
2.関節リウマチ
3.臓器移植後の患者
4.輸血拒否患者(有坂博史)
5.アルコール依存症・薬物依存症の患者
6.指定難病(特定疾患)
7.妊産婦(讃岐拓郎・倉田眞治)
第7章 口腔外科手術と全身麻酔
I 特徴(一戸達也)
1.気道管理に関連した注意点
2.その他の注意点
II 主な口腔外科手術と麻酔管理
1.膿瘍切開術の麻酔(半田俊之)
2.顎顔面外傷手術の麻酔
3.顎矯正手術の麻酔(小鹿恭太郎)
4.腫瘍切除術および再建術の麻酔
5.口唇裂・口蓋裂手術の麻酔
第8章 歯科患者の日帰り全身麻酔
(山口秀紀)
I 歯科患者に対する日帰り麻酔
II 日帰り全身麻酔の適応と禁忌
III 日帰り全身麻酔の実際
1.術前管理
2.術中管理
3.術後管理
第9章 小児の麻酔管理
(水田健太郎)
I 小児の特徴
1.解剖・生理学的特徴
2.薬理学的特徴
II 小児麻酔の実際
1.術前管理
2.術中管理
第10章 高齢者の全身麻酔
(河原 博)
I 高齢者の特徴
1.麻酔管理上の特徴
2.解剖・生理学的特徴
3.薬理学的特徴
II 高齢者麻酔の実際
1.術前管理
2.術中管理
3.術後管理
第11章 障害を有する歯科患者の麻酔管理
(前田 茂)
I 歯科治療のために麻酔管理が必要となりやすい障害
1.発達障害(神経発達症)
2.Down症候群
3.脳性麻痺
4.てんかん
5.重症心身障害者・医療的ケア児
II 麻酔管理について
1.病歴聴取と説明
2.周術期管理について
第12章 ペインクリニック
概説(嶋田昌彦)
I 痛みの分類と病態(岡田明子・今村佳樹)
1.痛みの定義と分類
2.疼痛性疾患
II 口腔顔面痛の評価と診断(嶋田昌彦)
1.病歴聴取
2.診察
3.検査
III 感覚障害および麻痺性疾患の用語(福田謙一)
IV 三叉神経感覚障害(福田謙一)
1.中枢性三叉神経感覚障害
2.末梢性三叉神経感覚障害(外傷性三叉神経ニューロパチー)
V 口腔顔面領域の運動性疾患(椎葉俊司)
1.麻痺性疾患
2.口腔顔面領域の不随意運動
VI 心身医学的療法(嶋田昌彦)
1.心身医学的療法の適応
2.歯科医師が行う心身医学的療法
3.心理療法
4.薬物療法
VII 東洋医学的療法(嶋田昌彦)
1.東洋医学における基礎概念
2.診察および診断法
3.漢方治療
4.鍼灸治療
VIII 緩和医療(小板橋俊哉)
1.緩和ケア概念の変化
2.緩和ケアにおける歯科麻酔科医の役割
3.がん性疼痛の種類
4.WHO方式のがん性疼痛治療法の原則
5.オピオイド製剤
6.オピオイド(医療用麻薬)の副作用とその対処
7.鎮痛補助薬
8.オピオイドスイッチング
9.口腔がん患者の特徴と最近の話題
10.歯科麻酔科医と緩和ケア
第13章 歯科治療における全身的偶発症
(丹羽 均)
I 総論
1.全身的偶発症とは
2.全身的偶発症の原因(ストレッサー)と種類
3.全身的偶発症の発生頻度
4.全身的偶発症の種類
5.死亡症例
II 各論
1.基礎疾患が増悪して発症する全身的偶発症
2.基礎疾患とは無関係に発症する全身的偶発症
3.徴候・症状からみた歯科治療時の偶発症への対応
第14章 ショック
(水田健太郎)
I ショックの定義と病態
II 血液分布異常性ショック
1.敗血症と敗血症性ショック
2.アナフィラキシーとアナフィラキシーショック
3.神経原性ショック
III 循環血液量減少性ショック
IV 心原性ショック
V 心外閉塞・拘束性ショック
第15章 心肺蘇生法
(佐久間泰司)
I 生命を脅かす状況の患者への対応
1.心肺蘇生法の歴史
2.救命の連鎖
II 急変時のアプローチ
III 一次救命処置
1.成人の一次救命処置
2.小児・乳児の一次救命処置
IV 二次救命処置
1.心肺蘇生におけるBLSの位置づけ
2.気道確保
3.電気治療
4.成人の心停止に対するALSの実際
5.蘇生の継続
第16章 歯科医療におけるリスクマネジメント
(大橋 誠・藤井一維)
I 現在の医療安全につながる流れ
1.医療事故と医療過誤
2.ヒヤリ・ハットとアクシデント
3.インシデントレポート
4.医療事故調査制度
II 歯科医療事故の特殊性
1.歯科医療の特殊性
2.医療事故の観点からみた歯科麻酔の特殊性
III 事故原因の究明と事故防止対策
1.根本原因分析(RCA)
2.P-mSHELLモデル
3.4M-4E分析
4.5S活動
5.危険予知トレーニング(KYT)
6.PDCAサイクル
付録
(笠原正貴)
I 物理・化学
1.単位
2.溶液の物理化学
3.気体の物理化学
II 救急医薬品
1.酸素
2.心停止の治療に使用される薬物
3.アナフィラキシーの治療に使用される薬物
4.急性冠症候群の初期治療に使用される薬物
5.目的別救急医薬品
文献
索引
I 歯科医学における麻酔学(一戸達也)
1.歯科臨床における麻酔学の役割
2.歯科麻酔学の教育と研究
3.世界における歯科麻酔の立場
4.地域歯科医療における歯科麻酔科医の役割
II 麻酔・歯科麻酔の歴史(金子 譲)
1.麻酔史
2.日本歯科麻酔学会小史
III 麻酔の法と倫理(佐久間泰司)
1.歯科における麻酔業務と法
2.医科麻酔科研修
3.インフォームド・コンセント
4.医療過誤における歯科医師の法的責任
第2章 全身管理に必要な基本的知識
I 全身管理に必要な生理学
1.神経の生理(瀬尾憲司)
2.呼吸の生理(讃岐拓郎)
3.循環の生理(川合宏仁)
4.腎臓の生理(城戸幹太)
5.酸塩基平衡
6.内分泌系の機能
II 歯科診療の侵襲と生体反応(松浦信幸)
1.侵襲の内容と伝達経路
2.侵襲に対する神経系の反応
3.侵襲に対する内分泌系の反応
4.侵襲に対する免疫系の反応
III 診察と検査
1.バイタルサイン(櫻井 学)
2.診察
3.臨床検査(佐藤健一)
IV モニタリング
1.モニタリングの意義(飯島毅彦)
2.呼吸系モニタ
3.循環系モニタ
4.体温の測定(讃岐拓郎・月本翔太)
5.脳波モニタリング
6.筋弛緩作用のモニタリング
第3章 局所麻酔
I 局所麻酔薬の作用機序(瀬尾憲司)
1.局所麻酔薬の結合部位
2.局所麻酔薬の神経生理学的性質
II 神経線維の種類による局所麻酔効果の違い(瀬尾憲司)
III 局所麻酔薬
1.局所麻酔薬の化学構造(小鹿恭太郎・一戸達也)
2.局所麻酔薬の麻酔効果に影響する因子
3.薬物動態
4.毒性
5.各種麻酔薬の特徴(宮脇卓也)
6.歯科用局所麻酔製剤
IV 血管収縮薬(小鹿恭太郎・一戸達也)
1.血管収縮薬を併用する目的
2.使用薬物
3.薬物相互作用
V 局所麻酔に必要な解剖(深山治久)
1.伝達麻酔のための解剖
2.浸潤麻酔のための解剖
3.小児の局所麻酔のための解剖
4.高齢者の局所麻酔のための解剖
VI 局所麻酔法(深山治久)
1.表面麻酔法
2.伝達麻酔法
3.浸潤麻酔法
VII 局所合併症とその対応(百田義弘)
第4章 精神鎮静法
I 精神鎮静法の概念(宮脇卓也)
1.背景
2.精神鎮静法の位置づけと分類
3.歯科臨床における精神鎮静法
4.精神鎮静法の種類と使用薬物
II 吸入鎮静法(藤澤俊明)
1.亜酸化窒素の性質
2.亜酸化窒素吸入鎮静法の利点と欠点
3.亜酸化窒素吸入鎮静法の適応,非適応
4.亜酸化窒素吸入鎮静法の禁忌症
5.亜酸化窒素吸入鎮静法に使用する器械,器具
6.至適鎮静レベル
7.術前管理
8.術中管理
9.術後管理(帰宅許可条件)
10.小児や障害者に対する亜酸化窒素吸入鎮静法
III 静脈内鎮静法
1.静脈内鎮静法で使用される薬物(樋口 仁・宮脇卓也)
2.鎮静レベルの評価とモニタリング
3.静脈内鎮静法と生体反応
4.静脈内鎮静法の実際(花本 博)
第5章 全身麻酔
I 全身麻酔の概念と方法(吉田充広・入舩正浩)
1.全身麻酔の概念
2.理想的な全身麻酔とは
3.周術期管理
4.歯科医療における全身麻酔の適応
II 全身麻酔薬の作用機序(小柳裕子)
1.全身麻酔薬の作用ターゲット:膜脂質説から膜タンパク質説への変遷
2.意識を形成する脳神経ネットワークと全身麻酔薬の作用
III 術前の全身状態評価と管理(櫻井 学)
1.全身状態の評価
2.術前管理
IV 吸入麻酔(一杉 岳・横山武志)
1.吸入麻酔薬の概要
2.吸入麻酔薬の摂取と分布
3.麻酔薬の導入に影響する因子
4.生体機能への影響
5.麻酔薬の排泄と覚醒
6.麻酔深度
7.吸入麻酔薬
V 静脈麻酔(飯島毅彦)
1.静脈麻酔薬の薬物動態
2.静脈麻酔薬の種類
3.オピオイド
4.静脈麻酔法の実際
VI 筋弛緩薬(水田健太郎)
1.意義
2.適応
3.作用機序
4.臨床で使用される筋弛緩薬
5.筋弛緩薬の作用に影響する因子
6.非脱分極性筋弛緩薬の拮抗薬
VII 麻酔器と麻酔回路(百田義弘)
1.ガス供給装置
2.麻酔器
3.麻酔呼吸回路
VIII 気道管理
1.気道管理の意義・必然性(鮎瀬卓郎)
2.上気道の解剖と機能
3.上気道閉塞の病態生理
4.気道確保
5.difficult airway management:DAM(気道確保困難管理)(讃岐拓郎・黒田英孝)
IX 術中管理(砂田勝久)
1.麻酔記録
2.麻酔導入
3.麻酔の維持
4.麻酔の覚醒
5.術中合併症の予防・対処
X 術後管理(杉村光隆・山下 薫)
1.術後管理の目的と意義
2.術後合併症の予防・対処とモニタリング
3.術後疼痛管理
XI 輸液・輸血
1.輸液(山崎信也)
2.輸血(脇田 亮)
第6章 全身管理上問題となる疾患の病態と患者管理
I 呼吸器系の疾患(小長谷 光)
1.慢性閉塞性肺疾患(COPD)
2.気管支喘息
3.咳喘息,アトピー性咳嗽
4.急性上気道感染症
5.院内肺炎/医療介護関連肺炎
6.睡眠時無呼吸症候群
II 循環器系の疾患(北畑 洋・川人伸次)
1.高血圧
2.虚血性心疾患
3.先天性心疾患
4.心臓弁膜疾患
5.心筋症
6.感染性心内膜炎
III 脳血管障害(渡邉誠之)
1.概略
2.脳血管の走行と灌流領域
3.脳循環の生理と薬理
4.病的状態での脳循環・脳代謝
5.体循環および脳血管障害のある患者の管理目標
IV 代謝・内分泌疾患
1.糖尿病(増田陸雄)
2.甲状腺機能亢進症
3.甲状腺機能低下症
4.副腎疾患(川口 潤)
5.副甲状腺疾患
6.下垂体疾患(下垂体性巨人症)
V 肝・胆道系疾患(佐藤曾士・奥田真弘)
1.肝臓の機能
2.肝機能の評価と周術期管理
VI 泌尿器系疾患(亀倉更人)
1.腎障害を有する患者(血液透析を受けていない患者)の管理
2.血液透析中の患者の管理
VII 神経・筋疾患(照光 真)
1.神経筋接合部疾
2.筋原性筋萎縮
3.運動ニューロン障害
4.進行性変性疾患
5.脱髄性疾患
6.脊椎・脊髄損傷
VIII 血液疾患(森本佳成)
1.赤血球異常─貧血
2.白血球異常
3.出血性素因
4.抗血栓療法
IX 精神疾患(後藤倶子)
1.精神疾患の分類
2.精神疾患の治療
3.統合失調症
4.うつ病
X その他の病態
1.肥満患者(岡 俊一)
2.関節リウマチ
3.臓器移植後の患者
4.輸血拒否患者(有坂博史)
5.アルコール依存症・薬物依存症の患者
6.指定難病(特定疾患)
7.妊産婦(讃岐拓郎・倉田眞治)
第7章 口腔外科手術と全身麻酔
I 特徴(一戸達也)
1.気道管理に関連した注意点
2.その他の注意点
II 主な口腔外科手術と麻酔管理
1.膿瘍切開術の麻酔(半田俊之)
2.顎顔面外傷手術の麻酔
3.顎矯正手術の麻酔(小鹿恭太郎)
4.腫瘍切除術および再建術の麻酔
5.口唇裂・口蓋裂手術の麻酔
第8章 歯科患者の日帰り全身麻酔
(山口秀紀)
I 歯科患者に対する日帰り麻酔
II 日帰り全身麻酔の適応と禁忌
III 日帰り全身麻酔の実際
1.術前管理
2.術中管理
3.術後管理
第9章 小児の麻酔管理
(水田健太郎)
I 小児の特徴
1.解剖・生理学的特徴
2.薬理学的特徴
II 小児麻酔の実際
1.術前管理
2.術中管理
第10章 高齢者の全身麻酔
(河原 博)
I 高齢者の特徴
1.麻酔管理上の特徴
2.解剖・生理学的特徴
3.薬理学的特徴
II 高齢者麻酔の実際
1.術前管理
2.術中管理
3.術後管理
第11章 障害を有する歯科患者の麻酔管理
(前田 茂)
I 歯科治療のために麻酔管理が必要となりやすい障害
1.発達障害(神経発達症)
2.Down症候群
3.脳性麻痺
4.てんかん
5.重症心身障害者・医療的ケア児
II 麻酔管理について
1.病歴聴取と説明
2.周術期管理について
第12章 ペインクリニック
概説(嶋田昌彦)
I 痛みの分類と病態(岡田明子・今村佳樹)
1.痛みの定義と分類
2.疼痛性疾患
II 口腔顔面痛の評価と診断(嶋田昌彦)
1.病歴聴取
2.診察
3.検査
III 感覚障害および麻痺性疾患の用語(福田謙一)
IV 三叉神経感覚障害(福田謙一)
1.中枢性三叉神経感覚障害
2.末梢性三叉神経感覚障害(外傷性三叉神経ニューロパチー)
V 口腔顔面領域の運動性疾患(椎葉俊司)
1.麻痺性疾患
2.口腔顔面領域の不随意運動
VI 心身医学的療法(嶋田昌彦)
1.心身医学的療法の適応
2.歯科医師が行う心身医学的療法
3.心理療法
4.薬物療法
VII 東洋医学的療法(嶋田昌彦)
1.東洋医学における基礎概念
2.診察および診断法
3.漢方治療
4.鍼灸治療
VIII 緩和医療(小板橋俊哉)
1.緩和ケア概念の変化
2.緩和ケアにおける歯科麻酔科医の役割
3.がん性疼痛の種類
4.WHO方式のがん性疼痛治療法の原則
5.オピオイド製剤
6.オピオイド(医療用麻薬)の副作用とその対処
7.鎮痛補助薬
8.オピオイドスイッチング
9.口腔がん患者の特徴と最近の話題
10.歯科麻酔科医と緩和ケア
第13章 歯科治療における全身的偶発症
(丹羽 均)
I 総論
1.全身的偶発症とは
2.全身的偶発症の原因(ストレッサー)と種類
3.全身的偶発症の発生頻度
4.全身的偶発症の種類
5.死亡症例
II 各論
1.基礎疾患が増悪して発症する全身的偶発症
2.基礎疾患とは無関係に発症する全身的偶発症
3.徴候・症状からみた歯科治療時の偶発症への対応
第14章 ショック
(水田健太郎)
I ショックの定義と病態
II 血液分布異常性ショック
1.敗血症と敗血症性ショック
2.アナフィラキシーとアナフィラキシーショック
3.神経原性ショック
III 循環血液量減少性ショック
IV 心原性ショック
V 心外閉塞・拘束性ショック
第15章 心肺蘇生法
(佐久間泰司)
I 生命を脅かす状況の患者への対応
1.心肺蘇生法の歴史
2.救命の連鎖
II 急変時のアプローチ
III 一次救命処置
1.成人の一次救命処置
2.小児・乳児の一次救命処置
IV 二次救命処置
1.心肺蘇生におけるBLSの位置づけ
2.気道確保
3.電気治療
4.成人の心停止に対するALSの実際
5.蘇生の継続
第16章 歯科医療におけるリスクマネジメント
(大橋 誠・藤井一維)
I 現在の医療安全につながる流れ
1.医療事故と医療過誤
2.ヒヤリ・ハットとアクシデント
3.インシデントレポート
4.医療事故調査制度
II 歯科医療事故の特殊性
1.歯科医療の特殊性
2.医療事故の観点からみた歯科麻酔の特殊性
III 事故原因の究明と事故防止対策
1.根本原因分析(RCA)
2.P-mSHELLモデル
3.4M-4E分析
4.5S活動
5.危険予知トレーニング(KYT)
6.PDCAサイクル
付録
(笠原正貴)
I 物理・化学
1.単位
2.溶液の物理化学
3.気体の物理化学
II 救急医薬品
1.酸素
2.心停止の治療に使用される薬物
3.アナフィラキシーの治療に使用される薬物
4.急性冠症候群の初期治療に使用される薬物
5.目的別救急医薬品
文献
索引















