やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社



 近年,医学領域の診断および治療法の進歩はめざましい.もちろん歯科医学においても例外ではない.このような環境のなかで口腔疾患と全身症状,あるいは全身疾患と口腔病変の関連についての関心が高まってきている.歯科臨床教育でも,歯科医師国家試験制度,卒後臨床研修医制度の改革,高度先進歯科医療の充実,あるいはプライマリ・ケアの重要性など多くの課題が提供されている.
 先年“歯科医のための耳鼻咽喉科学“など歯科の隣接医学領域の書籍が数点出版されてから,皮膚科学についても必要かつ最小限の知識(minimum essential)を記載した教科書の必要性を感じていた.同時に最近の“性行為感染症(STD,sexual transmitted disease)”の新しい概念・疾患の見直しは,口腔病変との関連で必須のものとなってきている.このため本書では,とくにこの項目を各論2として独立させて掲載した.またここ数年間の講義ノートを再点検して,歯科・口腔疾患と皮膚病変とのかかわりあいの重要性を再認識した.さらに性行為感染症,とくにエイズなどの世界的蔓延の事実など,最新の正確な知識・情報を得ることは,歯学生ばかりではなく歯科医師の方々にとっても重要だと思う.
 以上の主旨から歯学生,さらには歯科医師の日常臨床にも参考となるように“歯科医のための皮膚科学”の出版が実現の運びとなった.
 本書の執筆では,歯学部で皮膚科学・外科学の講義を担当しておられる諸先生のご協力が得られた.深く感謝の意を表したい.
 本書の全般的な内容についての助言は,獨協医科大学皮膚科学,山﨑雙次教授に,また病理組織所見,歯科医学との関連などについては,日本大学松戸歯学部病理学,山本浩嗣教授にご尽力をいただいた.
 なお,学生諸君のために本書では,難読文字や一部欧文にふりがなをふったり,国家試験対策のための項目や,幅広い知識が得られるように,トピックス,サイドメモ,ポイントのコラムを設けた.
 歯科臨床の実際面との関係などでは,さらに追加を要する分野があるかと思われるが,その点については今後少しずつ改訂し,内容を充実したものにしてゆきたいと考えている.
 最後に本書の刊行にあたり種々ご協力いただいた医歯薬出版の方々に厚く御礼申し上げる.
 1993年6月 編者を代表して 鈴木邦夫
総論
1章 皮膚の構造と機能……1
   1.皮膚の構造……1
   2.皮膚の機能と構築……2
2章 皮膚科診断学ならびに治療学……10
   1.皮膚科診断学……10
   2.皮膚科検査法……11
   3.皮膚科治療学……12

各論1
1章 湿疹……15
   1.接触性皮膚炎……15
   2.アトピー性皮膚炎……17
   3.その他……19
    尋常性湿疹……19
    脂漏性湿疹……19
    貨幣状湿疹……20
    乾皮性湿疹……21
2章 蕁麻疹……22
   1.蕁麻疹……22
   2.クインケ浮腫……22
   3.痒疹……23
   4.皮膚痒症……24
3章 紅斑症……25
   1.多型滲出性紅斑……25
   2.ベーチェット病……25
4章 紫斑病……28
   1.アナフィラクトイド紫斑……28
   2.血管炎……29
   3.血小板減少性紫斑……30
    特発性血小板減少性紫斑……30
    症候性血小板減少性紫斑……30
5章 血行障害・物理的化学的障害……32
   1.壊疽……32
   2.褥瘡……32
   3.熱傷……33
   4.化学物質による皮膚障害……35
6章 薬疹・中毒疹……36
   1.固定薬疹……36
   2.紅斑丘疹型薬疹……37
   3.Stevens-Johnson症候群型薬疹……37
   4.ライエル型薬疹……38
   5.薬物性歯肉増殖症……39
   6.ニコチン性角化症……40
   7.重金属による障害(沈着症)41
   8.MCLS……41
   9.薬剤による障害……42
7章 水疱症・膿疱症……43
   1.尋常性天疱瘡……43
   2.その他の水疱症……44
    ジューリング疱疹状皮膚炎……44
    類天疱瘡……44
    先天性表皮水疱症……45
    剥離性歯肉口内炎……46
   3.掌蹠膿疱症……46
8章 角化症・炎症性角化症……48
   1.魚鱗癬……48
   2.乾癬……49
   3.扁平苔癬……50
9章 膠原病……52
   1.シェーグレン症候群……52
   2.全身性エリテマトーデス……53
   3.進行性全身性強皮症……55
   4.皮膚筋炎……56
10章 代謝異常症……58
   1.亜鉛欠乏症……58
   2.アジソン病……59
11章 色素異常症……61
   1.尋常性白斑……61
12章 母斑……62
   1.表皮母斑……62
   2.脂腺母斑……62
   3.色素細胞母斑……63
   4.太田母斑……64
   5.青色母斑……65
   6.蒙古斑……65
   7.扁平母斑……65
13章 母斑症……66
   1.レックリングハウゼン病……66
   2.プリングル病……67
   3.色素失調症……67
   4.ポイツ・ジェガース症候群……67
   5.スタージ・ウェーバー症候群……67
14章 皮膚腫瘍……68
   1.癌前駆症……68
    白板症……68
    老人性角化腫……68
    ヒ素角化症……69
    疣贅様表皮発育異常症……69
    慢性放射線皮膚炎……69
   2.Oral florid papillomatosis……69
   3.有棘細胞癌……70
   4.基底細胞腫……71
    基底細胞母斑症候群……73
   5.悪性黒色腫……73
   6.非上皮性腫瘍……74
    線維腫……75
    脂肪腫……78
    血管腫……78
    リンパ管腫……79
    神経鞘腫……80
   7.唾液腺腫瘍……81
    多形性腺腫……81
    ワルチン腫瘍……82
    粘表皮癌……82
    腺様嚢胞癌……83
   8.成人T細胞白血病……84
15章 毛包脂腺系疾患……85
   1.尋常性瘡……85
16章 毛髪性疾患……86
   1.円形脱毛症……86
   2.トリコチロマニー87
17章 細菌ォ皮膚疾患……88
   1.化膿性疾患……88
    毛嚢性疾患……88
    汗腺性疾患……88
    伝染性膿痂疹……89
    ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群……89
    蜂巣炎(蜂窩織炎)90
    丹毒……90
   2.抗酸菌症……91
    真性皮膚結核……91
    結核疹……92
    癩……92
18章 ウイルス性疾患……94
   1.単純性疱疹……94
   2.カポジー水痘様発疹症……95
   3.帯状疱疹……95
   4.水痘……96
   5.手足口病……97
   6.尋常性疣贅……97
   7.青年性扁平疣贅……98
   8.伝染性軟属腫……98
   9.風疹……98
   10.麻疹……99
19章 皮膚真菌症……101
   1.白癬……102
   2.カンジダ症……104
   3.放線菌症……104
20章 動物性皮膚疾患……106
   1.疥癬……106
   2.ツツガムシ(恙虫)病……106
   3 ライム病(ライム・ボレリア症)107
   4.シラミ症……107
21章 歯科金属による粘膜病変……108
   1.アマルガムによる着色……108
   2.歯科金属によるアレルギー反応……108
   3.亜ヒ酸による口内炎……109
   4.ガルバニー電流による口腔粘膜病変……110
22章 肉芽腫……111
   1.サルコイドーシス……111
   2.肉芽腫性口唇炎……112
   3.環状肉芽腫……112
23章 その他……113
   1.フォアダイス状態……113
   2.正中菱形舌炎……113
   3.地図状舌……114
   4.状舌……115
   5.舌苔……116
   6.舌毛……116
   7.剥脱性口唇炎……117
   8.光線口唇炎……117
   9.歯瘻(外歯瘻・内歯瘻)117

各論2
1章 性行為感染症(広義)119
   1.淋疾……119
   2.梅毒……121
   3.ウイルス肝炎……129
    A型肝炎……129
    B型肝炎……130
    C型肝炎……132
   4.後天性免疫不全症候群(エイズ)134
   5.非淋菌性尿道炎……135
   6.その他……136
    尖圭コンジローム……136
    伝染性軟属腫……137
    伝染性単核症……138
    外陰部カンジダ症……138
    股部白癬……139
    膣トリコモナス症……140
    アメーバ赤痢……140
    疥癬……140
    ケジラミ……142
    陰部疱疹……143

文献……145
和文索引……147
欧文索引……152
著者略歴……154