発刊のことば
愛知県大府市にある国立長寿医療研究センター総長である大島伸一氏は,日本学術会議発行の「学術の動向」誌に以下のような記述をされている.
「高齢者では進行性で不可逆的な老化という身体が虚弱化してゆく過程で病気が進行し,病気は慢性化し,生活習慣病の疾患が増大し,全身に影響を与える」
この大島氏の言葉は,対象としている患者の多くが40歳以上であり,歯科では唯一の生活習慣病であり,ペリオドンタルメディシンにより全身疾患との関連性が指摘されている歯周病の本質や治療指針などに多大な示唆を与えるものである.
すなわち,40歳以上の患者にみられる歯周炎は進行性で不可逆的であり,多くの症例が慢性化し,他の全身疾患や生活習慣の影響を受けることになる.
本書ではこのような概念を念頭に入れ,多くの歯科医師が慢性炎症性疾患である歯周病の治療スタイルを従来の短期で終了する対症療法的治療から,生涯を通して患者1人1人の口腔をサポートする治療スタイルへと変更し,国民のQOLに貢献することを目的としている.
そして,QOLに関しては前述の大島氏が次のように述べている.「高齢者では完全治癒を目指すというよりは,時には病気と共存してでもQOLを落とさないことを目標とする」
このことは長期にわたる歯周病治療におけるSPT(supportive periodontal therapy)の重要性を支持しているものであり,再発しやすい歯周ポケットの定期的チェックにより楽しい食事や会話の維持を目指すことになる.
本書の特徴としては,読者とともに考えるをモットーに,まず序章で「歯周病は治るのか」という疑問を症例の初診時のデータを呈示しながら読者に問いかける.続いて「歯周病はなぜ慢化性するのか」について最新の基礎的情報を読者とともに学び,さらに「慢性炎症の本質とは何か」を追求する.
次いで上述の基礎的知識を基に,「病因診断に基づく治療計画の立案」,「病因除去を中心に歯周病を治す方法論」,「病因除去療法の限界を超えた歯周組織の問題へどのように対応するのか?」,さらに日常治療でも悩むことの多い「抜歯か保存か」の問題を取り上げる.
そして最後に「生涯の主治医として」をテーマに治療スタンスのシフトの必要性を述べ,20年前後にわたる長期症例を呈示する.
世界の最先端に位置するわが国の超高齢社会では口腔のケアがいかに大切であるかが認知されはじめており,そのためには国民の約70%が何らかのタイプに罹患している歯周病を治療し,自分自身の歯を可及的に多く残存させることによって全身の健康にも寄与することが肝要である.
本書では,上述のように慢性炎症性疾患としての歯周病の本質を最新の情報をもとに見極めるとともに,多くの長期症例について患者の声を取り入れながら歯周病を治す方法論についてもビジュアルストーリーやコラムトピックスを交えてわかりやすく述べたつもりである.
本書が真剣に歯周病治療に取り組む多くの歯科医師にとって一筋の光明となれば幸いである.
なお,本書では,愛知学院大学歯学部内科学講座の松原達昭教授,成瀬桂子准教授に医科の立場から慢性炎症性疾患について,国立長寿医療研究センター口腔疾患研究部部長の松下健二先生に慢性炎症の本質について,九州大学大学院の西村英紀教授に歯周炎とペリオドンタルメディシンについて,松本歯科大学の吉成伸夫教授に組織再生誘導法について,同じく松本歯科大学の小出雅則講師に歯槽骨への炎症の波及について,三重県開業の大杉和司先生に生物学的幅径の問題への歯周外科的対応について,またコラムトピックスでは鶴見大学歯学部の花田信弘教授,愛知学院大学歯学部の加藤一夫准教授,福岡県開業の船越栄次先生,札幌市開業の池田雅彦先生,東京都開業の若林健史先生,米国コネチカット大学の祖父江尊範先生に大変なご多忙中にもかかわらずご執筆をいただいた.衷心より感謝申し上げたい.
また,本書の企画の段階から度重なる打合せをし,資料,文献の収集,ビジュアル画像の調整など積極的に参加してくれた多くの教室員,特に林潤一郎,菊池毅,亀井英彦,菱川敏光講師に心からの謝意を表したい.
さらに,本書の企画から完成まで詳細なアドバイスをいただいた医歯薬出版の鈴木トキ子氏に深く御礼申し上げる次第である.
平成26年1月
愛知学院大学歯学部 歯周病学講座 教授
野口俊英
愛知県大府市にある国立長寿医療研究センター総長である大島伸一氏は,日本学術会議発行の「学術の動向」誌に以下のような記述をされている.
「高齢者では進行性で不可逆的な老化という身体が虚弱化してゆく過程で病気が進行し,病気は慢性化し,生活習慣病の疾患が増大し,全身に影響を与える」
この大島氏の言葉は,対象としている患者の多くが40歳以上であり,歯科では唯一の生活習慣病であり,ペリオドンタルメディシンにより全身疾患との関連性が指摘されている歯周病の本質や治療指針などに多大な示唆を与えるものである.
すなわち,40歳以上の患者にみられる歯周炎は進行性で不可逆的であり,多くの症例が慢性化し,他の全身疾患や生活習慣の影響を受けることになる.
本書ではこのような概念を念頭に入れ,多くの歯科医師が慢性炎症性疾患である歯周病の治療スタイルを従来の短期で終了する対症療法的治療から,生涯を通して患者1人1人の口腔をサポートする治療スタイルへと変更し,国民のQOLに貢献することを目的としている.
そして,QOLに関しては前述の大島氏が次のように述べている.「高齢者では完全治癒を目指すというよりは,時には病気と共存してでもQOLを落とさないことを目標とする」
このことは長期にわたる歯周病治療におけるSPT(supportive periodontal therapy)の重要性を支持しているものであり,再発しやすい歯周ポケットの定期的チェックにより楽しい食事や会話の維持を目指すことになる.
本書の特徴としては,読者とともに考えるをモットーに,まず序章で「歯周病は治るのか」という疑問を症例の初診時のデータを呈示しながら読者に問いかける.続いて「歯周病はなぜ慢化性するのか」について最新の基礎的情報を読者とともに学び,さらに「慢性炎症の本質とは何か」を追求する.
次いで上述の基礎的知識を基に,「病因診断に基づく治療計画の立案」,「病因除去を中心に歯周病を治す方法論」,「病因除去療法の限界を超えた歯周組織の問題へどのように対応するのか?」,さらに日常治療でも悩むことの多い「抜歯か保存か」の問題を取り上げる.
そして最後に「生涯の主治医として」をテーマに治療スタンスのシフトの必要性を述べ,20年前後にわたる長期症例を呈示する.
世界の最先端に位置するわが国の超高齢社会では口腔のケアがいかに大切であるかが認知されはじめており,そのためには国民の約70%が何らかのタイプに罹患している歯周病を治療し,自分自身の歯を可及的に多く残存させることによって全身の健康にも寄与することが肝要である.
本書では,上述のように慢性炎症性疾患としての歯周病の本質を最新の情報をもとに見極めるとともに,多くの長期症例について患者の声を取り入れながら歯周病を治す方法論についてもビジュアルストーリーやコラムトピックスを交えてわかりやすく述べたつもりである.
本書が真剣に歯周病治療に取り組む多くの歯科医師にとって一筋の光明となれば幸いである.
なお,本書では,愛知学院大学歯学部内科学講座の松原達昭教授,成瀬桂子准教授に医科の立場から慢性炎症性疾患について,国立長寿医療研究センター口腔疾患研究部部長の松下健二先生に慢性炎症の本質について,九州大学大学院の西村英紀教授に歯周炎とペリオドンタルメディシンについて,松本歯科大学の吉成伸夫教授に組織再生誘導法について,同じく松本歯科大学の小出雅則講師に歯槽骨への炎症の波及について,三重県開業の大杉和司先生に生物学的幅径の問題への歯周外科的対応について,またコラムトピックスでは鶴見大学歯学部の花田信弘教授,愛知学院大学歯学部の加藤一夫准教授,福岡県開業の船越栄次先生,札幌市開業の池田雅彦先生,東京都開業の若林健史先生,米国コネチカット大学の祖父江尊範先生に大変なご多忙中にもかかわらずご執筆をいただいた.衷心より感謝申し上げたい.
また,本書の企画の段階から度重なる打合せをし,資料,文献の収集,ビジュアル画像の調整など積極的に参加してくれた多くの教室員,特に林潤一郎,菊池毅,亀井英彦,菱川敏光講師に心からの謝意を表したい.
さらに,本書の企画から完成まで詳細なアドバイスをいただいた医歯薬出版の鈴木トキ子氏に深く御礼申し上げる次第である.
平成26年1月
愛知学院大学歯学部 歯周病学講座 教授
野口俊英
序章:歯周病は治るのか
(1)歯周病は治るのか(野口俊英)
(2)治癒(治る)の定義(福田光男)
(3)まだまだ少ない歯周治療の受診者数と今後の歯科医師数(石原裕一)
(4)歯周病患者の症例―初診時の臨床データから
CASE 1 軽度限局型慢性歯周炎患者に早期の歯周治療介入を行った症例【初診時】(亀井英彦)
CASE 2 歯周基本治療後にフラップ手術を行った症例【初診時】(亀井英彦,坂野雅洋)
CASE 3 歯周基本治療後に歯周組織再生療法を行った症例【初診時】(菊池 毅,杉村 達)
CASE 4 補綴処置前の処置として,歯周基本治療後,歯周形成手術を行い補綴処置を行った症例【初診時】(稲垣幸司)
CASE 5 著しい根分岐部病変を伴い保存不可能と思われた歯に徹底した病因除去療法を行い長期に残存した症例【初診時】(野口俊英)
CASE 6 抜歯の時期を考慮して矯正・補綴治療を行った重度侵襲性歯周炎患者の症例【初診時】(石原裕一)
第1章 歯周病はなぜ慢性化するのか
(1)ビジュアルストーリー
(2)歯周組織破壊のメカニズム
1)歯周病関連細菌とその病原因子(林潤一郎)
2)歯肉における攻防(菊池 毅)
3)生体防御機構が組織破壊を導く(菊池 毅)
4)歯槽骨への炎症の波及(小出雅則)
(3)多因子性疾患としての歯周病
1)歯周病に影響を与える因子(相野 誠)
2)糖尿病がもたらす歯周病リスク(惣卜響子)
3)喫煙は歯周病の進行にどう悪影響を与えるのか(稲垣幸司)
4)遺伝的因子が急速な破壊の進行を司る(亀井英彦)
(4)慢性化を導くバイオロジー
1)バイオフィルムのエコロジーと慢性化への関与(林潤一郎)
2)歯周組織は免疫機構がよく働く場所?~慢性化をもたらす防御機構(三谷章雄)
3)歯周病の急性化を考える(菊池 毅)
第2章 慢性疾患の構図からみた歯周病の再発見
(1)ビジュアルストーリー
(2)慢性疾患とは何か
1)慢性疾患と炎症(松原達昭,成瀬桂子)
2)メタボリックシンドローム~代表的慢性疾患における治療スタンス(松原達昭,成瀬桂子)
(3)慢性炎症―慢性疾患の分子的共通基盤
1)生活習慣病における慢性炎症(松下健二)
2)慢性炎症における組織リモデリング(松下健二)
(4)自然炎症としての歯周病
1)自然炎症と内因性リガンド(松下健二)
2)内因性リガンドが歯周炎に及ぼす影響(松下健二)
(5)血管の炎症からみる歯周病
1)歯周病における血管の炎症(松下健二)
2)歯周病関連細菌が血管内皮細胞に及ぼす影響(松下健二)
(6)ペリオドンタルメディシン再考
1)微細慢性炎症が結ぶペリオドンタルメディシンの可能性(山下明子,西村英紀)
2)ペリオドンタルメディシンの到達点(稲垣幸司)
(7)サイトカインを制御する
関節リウマチの治療法から得るヒント(石原裕一)
第3章 病因診断に基づく治療計画の立案
(1)ビジュアルストーリー
(2)病因論の変遷と病因の診断戦略(野口俊英)
(3)病因除去に向かうディレクション
1)主訴への対応~いかにしてラポール形成を促し,本当の歯周治療に導くか(福田光男)
2)歯周基本治療の組み立て方~病因の診断と処置の選択(病因の診断と対応の手順―エンドポイントの設定)(石原裕一)
コラムトピックス:歯肉炎の病態で来院させることの重要性 歯肉炎の放置は歯周炎へと進行していく(野口俊英)
コラムトピックス:治療計画の立案について,私はこう考える(船越栄次)
第4章 病因が除去されなければ治らない─歯周病を治す方法論─
(1)ビジュアルストーリー
(2)患者自身が行う主体的病因コントロール
1)行動変容を促す治療参加への動機づけ(菱川敏光)
2)歯肉縁上のプラークコントロール ブラッシング習慣と技術の確立(相野 誠)
3)習癖の認知,対策への方向づけ(亀井英彦)
4)全身の状態が歯周病に及ぼす影響の認知(林潤一郎)
コラムトピックス:8020運動の活用(加藤一夫)
(3)プロフェッショナルによる病因除去
1)歯周ポケットの機械的デブライドメント(山本弦太)
2)化学的プラークコントロールの可能性(山本弦太)
3)プラークリテンションファクターの除去 医原性歯周病をつくらない?すべての処置に不可欠な歯肉に対する配慮(山本弦太)
4)外傷性因子のコントロール もう一つの局所性因子(林潤一郎)
CASE 1 軽度限局型慢性歯周炎患者に早期の歯周治療介入を行った症例(亀井英彦)
コラムトピックス:ブラキシズムへの対応(池田雅彦)
5)医師による病因管理~医科歯科連携の重要性(松原達昭,成瀬桂子)
第5章 基本治療の限界を超えた歯周組織の問題に,どのように対応するか?
(1)ビジュアルストーリー
コラムトピックス:歯周治療において対処すべき歯周組織の問題とは何か?(三谷章雄)
(2)歯周基本治療後に残存した歯周ポケットへの対応
1)フラップ手術(石原裕一)
CASE 2 歯周基本治療後にフラップ手術を行った症例(亀井英彦,坂野雅洋)
2)組織再生誘導法(GTR法)(吉成伸夫)
3)エナメルマトリックスタンパク質による歯周組織再生療法(三谷章雄)
CASE 3 歯周基本治療後に歯周組織再生療法を行った症例(菊池 毅,杉村 達)
コラムトピックス:炎症性歯周ポケット上皮の取り扱い~歯周ポケット掻爬術を再考する(野口俊英)
(3)歯周組織の形態的問題への対応
1)歯周形成手術(Periodontal Plastic Surgery,Oral Plastic Surgery)(稲垣幸司,菊池 毅)
CASE 4 補綴処置前の処置として,歯周基本治療後,歯周形成手術を行い補綴処置を行った症例(稲垣幸司)
2)生物学的幅径の問題への歯周外科的対応(亀井英彦,大杉和司)
第6章 その歯は抜くべきか?
(1)ビジュアルストーリー
(2)抜歯基準としての一提案(亀井英彦)
コラムトピックス:初診時での抜歯判断~本質的には「抜くべき歯」はない(野口俊英)
CASE 5 著しい根分岐部病変を伴い保存不可能と思われた歯に徹底した病因除去療法を行い長期に残存した症例(野口俊英)
コラムトピックス:オーラルリハビリテーションの限界~歯の価値の多面的評価(菱川敏光)
CASE 6 抜歯の時期を考慮して矯正・補綴治療を行った重度侵襲性歯周炎患者の症例(石原裕一)
コラムトピックス:歯周治療~抜歯の基準 抜歯基準について私はこう考える(1)(若林健史)
コラムトピックス:米国における抜歯判断 抜歯基準について私はこう考える(2)(祖父江尊範)
第7章 治療?手入れ?健康維持のためのプロブレム・コントロール
(1)ビジュアルストーリー
(2)「健康管理」としてのメインテナンス,「治療行為」としてのSPT~長期的な身体の変化に対応する継続的加療(福田光男)
(3)リコール間隔はどう決める?~evidenceに基づくリコール間隔の決定方法(西田英作)
コラムトピックス:再考,「治癒」4mm以上の歯周ポケットの有無で判定される病状安定,治癒とは(菱川敏光)
最終章 生涯の主治医として
(1)治療スタンスのシフト(野口俊英)
(2)長期症例を振り返る―治療結果と患者の声
CASE 7 炎症性因子と外傷性因子の徹底した除去により垂直性骨吸収(5遠心)の改善と全顎にわたる付着の喪失を防いだ長期症例(野口俊英)
CASE 8 歯列不正の存在する症例に矯正処置を施さず徹底した歯周基本治療で付着の喪失が防がれた長期症例(野口俊英)
CASE 9 広汎型侵襲性歯周炎で,歯周矯正および歯周補綴まで行い4歯のみの抜歯で咬合を回復させた長期症例(野口俊英)
CASE 10 SPT期間中10年ほど家族の介護で不十分な口腔管理に対しPMTCで対応した長期経過症例(福田光男)
CASE 11 歯周基本治療後に下顎前歯部に口腔前庭拡張術(Edlan-Mejchar法)を行った長期経過症例(稲垣幸司)
CASE 12 歯の病的移動を伴う慢性歯周炎に対して,歯周基本治療で対応した長期経過症例(稲垣幸司)
(3)国民は口腔の保健を守るための行動を起こす必要がある(野口俊英)
コラムトピックス:口腔の健康とQOL~ニーズとディマンドの違い(花田信弘)
(4)おわりに~生涯の主治医として(野口俊英)
参考文献
索引
(1)歯周病は治るのか(野口俊英)
(2)治癒(治る)の定義(福田光男)
(3)まだまだ少ない歯周治療の受診者数と今後の歯科医師数(石原裕一)
(4)歯周病患者の症例―初診時の臨床データから
CASE 1 軽度限局型慢性歯周炎患者に早期の歯周治療介入を行った症例【初診時】(亀井英彦)
CASE 2 歯周基本治療後にフラップ手術を行った症例【初診時】(亀井英彦,坂野雅洋)
CASE 3 歯周基本治療後に歯周組織再生療法を行った症例【初診時】(菊池 毅,杉村 達)
CASE 4 補綴処置前の処置として,歯周基本治療後,歯周形成手術を行い補綴処置を行った症例【初診時】(稲垣幸司)
CASE 5 著しい根分岐部病変を伴い保存不可能と思われた歯に徹底した病因除去療法を行い長期に残存した症例【初診時】(野口俊英)
CASE 6 抜歯の時期を考慮して矯正・補綴治療を行った重度侵襲性歯周炎患者の症例【初診時】(石原裕一)
第1章 歯周病はなぜ慢性化するのか
(1)ビジュアルストーリー
(2)歯周組織破壊のメカニズム
1)歯周病関連細菌とその病原因子(林潤一郎)
2)歯肉における攻防(菊池 毅)
3)生体防御機構が組織破壊を導く(菊池 毅)
4)歯槽骨への炎症の波及(小出雅則)
(3)多因子性疾患としての歯周病
1)歯周病に影響を与える因子(相野 誠)
2)糖尿病がもたらす歯周病リスク(惣卜響子)
3)喫煙は歯周病の進行にどう悪影響を与えるのか(稲垣幸司)
4)遺伝的因子が急速な破壊の進行を司る(亀井英彦)
(4)慢性化を導くバイオロジー
1)バイオフィルムのエコロジーと慢性化への関与(林潤一郎)
2)歯周組織は免疫機構がよく働く場所?~慢性化をもたらす防御機構(三谷章雄)
3)歯周病の急性化を考える(菊池 毅)
第2章 慢性疾患の構図からみた歯周病の再発見
(1)ビジュアルストーリー
(2)慢性疾患とは何か
1)慢性疾患と炎症(松原達昭,成瀬桂子)
2)メタボリックシンドローム~代表的慢性疾患における治療スタンス(松原達昭,成瀬桂子)
(3)慢性炎症―慢性疾患の分子的共通基盤
1)生活習慣病における慢性炎症(松下健二)
2)慢性炎症における組織リモデリング(松下健二)
(4)自然炎症としての歯周病
1)自然炎症と内因性リガンド(松下健二)
2)内因性リガンドが歯周炎に及ぼす影響(松下健二)
(5)血管の炎症からみる歯周病
1)歯周病における血管の炎症(松下健二)
2)歯周病関連細菌が血管内皮細胞に及ぼす影響(松下健二)
(6)ペリオドンタルメディシン再考
1)微細慢性炎症が結ぶペリオドンタルメディシンの可能性(山下明子,西村英紀)
2)ペリオドンタルメディシンの到達点(稲垣幸司)
(7)サイトカインを制御する
関節リウマチの治療法から得るヒント(石原裕一)
第3章 病因診断に基づく治療計画の立案
(1)ビジュアルストーリー
(2)病因論の変遷と病因の診断戦略(野口俊英)
(3)病因除去に向かうディレクション
1)主訴への対応~いかにしてラポール形成を促し,本当の歯周治療に導くか(福田光男)
2)歯周基本治療の組み立て方~病因の診断と処置の選択(病因の診断と対応の手順―エンドポイントの設定)(石原裕一)
コラムトピックス:歯肉炎の病態で来院させることの重要性 歯肉炎の放置は歯周炎へと進行していく(野口俊英)
コラムトピックス:治療計画の立案について,私はこう考える(船越栄次)
第4章 病因が除去されなければ治らない─歯周病を治す方法論─
(1)ビジュアルストーリー
(2)患者自身が行う主体的病因コントロール
1)行動変容を促す治療参加への動機づけ(菱川敏光)
2)歯肉縁上のプラークコントロール ブラッシング習慣と技術の確立(相野 誠)
3)習癖の認知,対策への方向づけ(亀井英彦)
4)全身の状態が歯周病に及ぼす影響の認知(林潤一郎)
コラムトピックス:8020運動の活用(加藤一夫)
(3)プロフェッショナルによる病因除去
1)歯周ポケットの機械的デブライドメント(山本弦太)
2)化学的プラークコントロールの可能性(山本弦太)
3)プラークリテンションファクターの除去 医原性歯周病をつくらない?すべての処置に不可欠な歯肉に対する配慮(山本弦太)
4)外傷性因子のコントロール もう一つの局所性因子(林潤一郎)
CASE 1 軽度限局型慢性歯周炎患者に早期の歯周治療介入を行った症例(亀井英彦)
コラムトピックス:ブラキシズムへの対応(池田雅彦)
5)医師による病因管理~医科歯科連携の重要性(松原達昭,成瀬桂子)
第5章 基本治療の限界を超えた歯周組織の問題に,どのように対応するか?
(1)ビジュアルストーリー
コラムトピックス:歯周治療において対処すべき歯周組織の問題とは何か?(三谷章雄)
(2)歯周基本治療後に残存した歯周ポケットへの対応
1)フラップ手術(石原裕一)
CASE 2 歯周基本治療後にフラップ手術を行った症例(亀井英彦,坂野雅洋)
2)組織再生誘導法(GTR法)(吉成伸夫)
3)エナメルマトリックスタンパク質による歯周組織再生療法(三谷章雄)
CASE 3 歯周基本治療後に歯周組織再生療法を行った症例(菊池 毅,杉村 達)
コラムトピックス:炎症性歯周ポケット上皮の取り扱い~歯周ポケット掻爬術を再考する(野口俊英)
(3)歯周組織の形態的問題への対応
1)歯周形成手術(Periodontal Plastic Surgery,Oral Plastic Surgery)(稲垣幸司,菊池 毅)
CASE 4 補綴処置前の処置として,歯周基本治療後,歯周形成手術を行い補綴処置を行った症例(稲垣幸司)
2)生物学的幅径の問題への歯周外科的対応(亀井英彦,大杉和司)
第6章 その歯は抜くべきか?
(1)ビジュアルストーリー
(2)抜歯基準としての一提案(亀井英彦)
コラムトピックス:初診時での抜歯判断~本質的には「抜くべき歯」はない(野口俊英)
CASE 5 著しい根分岐部病変を伴い保存不可能と思われた歯に徹底した病因除去療法を行い長期に残存した症例(野口俊英)
コラムトピックス:オーラルリハビリテーションの限界~歯の価値の多面的評価(菱川敏光)
CASE 6 抜歯の時期を考慮して矯正・補綴治療を行った重度侵襲性歯周炎患者の症例(石原裕一)
コラムトピックス:歯周治療~抜歯の基準 抜歯基準について私はこう考える(1)(若林健史)
コラムトピックス:米国における抜歯判断 抜歯基準について私はこう考える(2)(祖父江尊範)
第7章 治療?手入れ?健康維持のためのプロブレム・コントロール
(1)ビジュアルストーリー
(2)「健康管理」としてのメインテナンス,「治療行為」としてのSPT~長期的な身体の変化に対応する継続的加療(福田光男)
(3)リコール間隔はどう決める?~evidenceに基づくリコール間隔の決定方法(西田英作)
コラムトピックス:再考,「治癒」4mm以上の歯周ポケットの有無で判定される病状安定,治癒とは(菱川敏光)
最終章 生涯の主治医として
(1)治療スタンスのシフト(野口俊英)
(2)長期症例を振り返る―治療結果と患者の声
CASE 7 炎症性因子と外傷性因子の徹底した除去により垂直性骨吸収(5遠心)の改善と全顎にわたる付着の喪失を防いだ長期症例(野口俊英)
CASE 8 歯列不正の存在する症例に矯正処置を施さず徹底した歯周基本治療で付着の喪失が防がれた長期症例(野口俊英)
CASE 9 広汎型侵襲性歯周炎で,歯周矯正および歯周補綴まで行い4歯のみの抜歯で咬合を回復させた長期症例(野口俊英)
CASE 10 SPT期間中10年ほど家族の介護で不十分な口腔管理に対しPMTCで対応した長期経過症例(福田光男)
CASE 11 歯周基本治療後に下顎前歯部に口腔前庭拡張術(Edlan-Mejchar法)を行った長期経過症例(稲垣幸司)
CASE 12 歯の病的移動を伴う慢性歯周炎に対して,歯周基本治療で対応した長期経過症例(稲垣幸司)
(3)国民は口腔の保健を守るための行動を起こす必要がある(野口俊英)
コラムトピックス:口腔の健康とQOL~ニーズとディマンドの違い(花田信弘)
(4)おわりに~生涯の主治医として(野口俊英)
参考文献
索引








