監修の序
わが国では,人生100年時代を迎え,高齢者が住み慣れた地域で自分らしく,できる限り長く健康に暮らし続けることのできる社会の実現が求められています.そのためには,疾病の予防や重症化予防に加え,フレイルを早期に把握し,生活機能の維持・向上を支援していくことが重要です.
こうした背景のもと,2020年4月の法改正により,「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」が制度として開始されました.この制度は,高齢者のフレイル(虚弱)予防や健康寿命の延伸を目指し,医療と介護の連携を強化することを目的に,これまで別々に行われてきた医療保険者による保健事業と,市町村の介護予防事業を一体的に行うこととされており,全国の自治体や広域連合で事業展開されています.本事業では,さまざまな情報を活用しながら,高齢者一人ひとりの健康状態や生活機能を総合的に捉え,必要な支援へとつなげていくことが求められています.そのためには,保健・医療・介護に携わる多職種が,それぞれの専門性を発揮しながら連携することが不可欠です.
高齢期における口腔の健康は,単に歯や口の問題にとどまりません.食べること,話すこと,人と交流すること,そして低栄養やフレイルの予防など,日々の暮らしや全身の健康と深く関わっています.だからこそ歯科衛生士には,口腔を入口として,その人の栄養状態や身体機能,社会参加,さらには生活背景にも目を向け,必要な支援につなぐ役割が期待されています.
一方で,支援を必要とする高齢者が,自らその必要性を認識し,歯科医療機関や地域の保健事業に足を運ぶとは限りません.「特に困っていない」「今は何ともない」と感じながら生活している方の中にも,口腔機能や生活機能の低下が少しずつ進んでいる場合があります.こうした小さな変化に気づき,地域の中で対象者を見つけ,適切な支援へつなげていくアウトリーチの視点は,一体的実施に携わる歯科衛生士にとって重要なものです.
本書は,「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」に携わる歯科衛生士が,その基本的な考え方と役割を理解し,対象者のアセスメントからアウトリーチ,それらをもとに適切な支援へとつなげていくための実践的なハンドブックとして作成しました.具体的な事例も取り入れ,日々の活動の中で手に取り,活用していただける内容としています.
歯科衛生士の専門性は,口腔の中だけで完結するものではありません.口腔の変化から,その人の生活や健康状態の変化に気づき,多職種と情報を共有しながら,必要な支援へとつなげていくことも,地域で活動する歯科衛生士に求められる大切な役割です.そして,その関わりの先にあるのは,疾病やフレイルを予防することだけではなく,一人ひとりの高齢者が,その人らしく日々の生活を営み続けることではないでしょうか.
本書が,一体的な実施事業に初めて携わる歯科衛生士にとっては実践への第一歩となり,すでに地域で活動している歯科衛生士にとっては,日々の実践を振り返り,さらに活動を広げるための一助となることを願っています.そして,歯科衛生士の専門性を活かした支援が地域の中に広がり,一人でも多くの高齢者が,住み慣れた地域で健やかに,その人らしい暮らしを続けられることにつながれば幸いです.
2026年8月
公益社団法人 日本歯科衛生士会
会長 武藤智美
わが国では,人生100年時代を迎え,高齢者が住み慣れた地域で自分らしく,できる限り長く健康に暮らし続けることのできる社会の実現が求められています.そのためには,疾病の予防や重症化予防に加え,フレイルを早期に把握し,生活機能の維持・向上を支援していくことが重要です.
こうした背景のもと,2020年4月の法改正により,「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」が制度として開始されました.この制度は,高齢者のフレイル(虚弱)予防や健康寿命の延伸を目指し,医療と介護の連携を強化することを目的に,これまで別々に行われてきた医療保険者による保健事業と,市町村の介護予防事業を一体的に行うこととされており,全国の自治体や広域連合で事業展開されています.本事業では,さまざまな情報を活用しながら,高齢者一人ひとりの健康状態や生活機能を総合的に捉え,必要な支援へとつなげていくことが求められています.そのためには,保健・医療・介護に携わる多職種が,それぞれの専門性を発揮しながら連携することが不可欠です.
高齢期における口腔の健康は,単に歯や口の問題にとどまりません.食べること,話すこと,人と交流すること,そして低栄養やフレイルの予防など,日々の暮らしや全身の健康と深く関わっています.だからこそ歯科衛生士には,口腔を入口として,その人の栄養状態や身体機能,社会参加,さらには生活背景にも目を向け,必要な支援につなぐ役割が期待されています.
一方で,支援を必要とする高齢者が,自らその必要性を認識し,歯科医療機関や地域の保健事業に足を運ぶとは限りません.「特に困っていない」「今は何ともない」と感じながら生活している方の中にも,口腔機能や生活機能の低下が少しずつ進んでいる場合があります.こうした小さな変化に気づき,地域の中で対象者を見つけ,適切な支援へつなげていくアウトリーチの視点は,一体的実施に携わる歯科衛生士にとって重要なものです.
本書は,「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」に携わる歯科衛生士が,その基本的な考え方と役割を理解し,対象者のアセスメントからアウトリーチ,それらをもとに適切な支援へとつなげていくための実践的なハンドブックとして作成しました.具体的な事例も取り入れ,日々の活動の中で手に取り,活用していただける内容としています.
歯科衛生士の専門性は,口腔の中だけで完結するものではありません.口腔の変化から,その人の生活や健康状態の変化に気づき,多職種と情報を共有しながら,必要な支援へとつなげていくことも,地域で活動する歯科衛生士に求められる大切な役割です.そして,その関わりの先にあるのは,疾病やフレイルを予防することだけではなく,一人ひとりの高齢者が,その人らしく日々の生活を営み続けることではないでしょうか.
本書が,一体的な実施事業に初めて携わる歯科衛生士にとっては実践への第一歩となり,すでに地域で活動している歯科衛生士にとっては,日々の実践を振り返り,さらに活動を広げるための一助となることを願っています.そして,歯科衛生士の専門性を活かした支援が地域の中に広がり,一人でも多くの高齢者が,住み慣れた地域で健やかに,その人らしい暮らしを続けられることにつながれば幸いです.
2026年8月
公益社団法人 日本歯科衛生士会
会長 武藤智美
はじめに ハンドブックの使い方
はじめに(本ハンドブックの使い方)
用語の説明
SECTION 01 「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」事業
1 高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施事業とは
2 国保データベース(KDB)の積極的な活用
3 ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチ
1.ハイリスク者の抽出と歯科衛生士によるアウトリーチ
2.歯科衛生士等の医療専門職の配置
SECTION 02 高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施事業における歯科衛生士の役割
1 歯科衛生士が行うことの例
1.ポピュレーションアプローチとして
2.ポピュレーションアプローチの事例
3.ハイリスクアプローチとして
SECTION 03 個別指導のためのアセスメント
1 オーラルフレイルとは
2 オーラルフレイルの評価法
3 口腔衛生・口腔機能のアセスメント
4 口腔機能の検査
SECTION 04 アウトリーチ事例
CASE 1 夫の介護で自身の健康管理や歯科受診が後回しになっていた事例
CASE 2 咀嚼機能低下から低栄養となり多職種と協働した事例
CASE 3 本人の歯科受診および認知症の妻も受診につながった事例
CASE 4 諦めずに義歯を装着するようになり咀嚼が可能になった事例
CASE 5 ご家族から認知面の相談があり関係機関と情報共有を行った事例
CASE 6 閉じこもり傾向で本人が認知症の不安を抱えていた事例
CASE 7 糖尿病の重症化予防のために訪問指導した事例
CASE 8 食後のむせで困っていたが改善した事例
CASE 9 膝痛から外出困難,食欲低下がみられたが歯科受診につなげ改善した事例
CASE 10 シェーグレン病(症候群)から義歯不具合・食欲不振となっていた事例
はじめに(本ハンドブックの使い方)
用語の説明
SECTION 01 「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」事業
1 高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施事業とは
2 国保データベース(KDB)の積極的な活用
3 ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチ
1.ハイリスク者の抽出と歯科衛生士によるアウトリーチ
2.歯科衛生士等の医療専門職の配置
SECTION 02 高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施事業における歯科衛生士の役割
1 歯科衛生士が行うことの例
1.ポピュレーションアプローチとして
2.ポピュレーションアプローチの事例
3.ハイリスクアプローチとして
SECTION 03 個別指導のためのアセスメント
1 オーラルフレイルとは
2 オーラルフレイルの評価法
3 口腔衛生・口腔機能のアセスメント
4 口腔機能の検査
SECTION 04 アウトリーチ事例
CASE 1 夫の介護で自身の健康管理や歯科受診が後回しになっていた事例
CASE 2 咀嚼機能低下から低栄養となり多職種と協働した事例
CASE 3 本人の歯科受診および認知症の妻も受診につながった事例
CASE 4 諦めずに義歯を装着するようになり咀嚼が可能になった事例
CASE 5 ご家族から認知面の相談があり関係機関と情報共有を行った事例
CASE 6 閉じこもり傾向で本人が認知症の不安を抱えていた事例
CASE 7 糖尿病の重症化予防のために訪問指導した事例
CASE 8 食後のむせで困っていたが改善した事例
CASE 9 膝痛から外出困難,食欲低下がみられたが歯科受診につなげ改善した事例
CASE 10 シェーグレン病(症候群)から義歯不具合・食欲不振となっていた事例
