やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

発刊にあたって
 CAD/CAM冠が保険収載されてから,12年が経過しました.この間,2年ごとの歯科診療報酬改定や不定期の期中改定を通じて,適用範囲の拡大,PEEK冠やエンドクラウンの導入など,CAD/CAM冠は着実に発展を遂げてきました.
 そして,2026年6月の診療報酬改定は,その歩みにおける大きな節目となりました.ハイブリッドレジンブロックを用いた大臼歯CAD/CAM冠の咬合条件が撤廃され,歯科医師の適切な診断と判断のもと,幅広い症例に適用できるようになりました.小臼歯単冠においては,すでにCAD/CAM冠の装着件数が鋳造金属冠を上回っており,今後は症例数の多い大臼歯でも,さらなる普及が進むと予想されます.
 また,これまでCAD/CAMインレーのみに認められていた口腔内スキャナーの保険適用がCAD/CAM冠にも拡大されました.これにより,診療室で取得したデジタルデータを歯科技工へ直接移行するという,合理的かつ円滑なワークフローが実現しています.従来の印象採得や模型製作を介してデジタル加工を行う段階から,デジタルデータを中心に製作工程が完結する「フルデジタルワークフロー」への移行は,今後さらに加速していくと考えられます.さらに,CAD/CAMブリッジが新たに保険収載されたことで,保険診療におけるCAD/CAM補綴装置は,単冠修復から欠損補綴へと新たな段階を迎えました.これまでCAD/CAM冠で培われてきた支台歯形成,材料選択,接着操作,設計・加工技術などの知識と経験は,今後のCAD/CAMブリッジの臨床と製作を支える重要な基盤となります.
 本別冊では,各分野で豊富な経験をお持ちの歯科医師・歯科技工士の方々に,CAD/CAM冠の臨床および製作を通じて得られた知見,実践における勘所,そしてトラブルを回避するための要点をご執筆いただきました.デジタル技術がいかに進歩しても,その成否を左右するのは,基本に忠実な支台歯形成,歯冠形態や咬合に関する深い理解,そして材料特性を踏まえた適切な操作にほかなりません.
 本別冊が,CAD/CAM冠への理解をさらに深め,日常臨床と歯科技工作業の質を一段と高める一助となれば幸いです.そして,CAD/CAMブリッジをはじめとする次世代のデジタル補綴の発展に寄与できることを心より願っております.
 最後に,ご多忙のなか貴重な知見をご執筆いただいた執筆者の皆様に,心より感謝申し上げます.
 2026年7月
 北海道医療大学 口腔機能修復・再建学系デジタル歯科医学分野
 疋田一洋
Part 1 CAD/CAM冠の現状
 日本の保険診療におけるCAD/CAM冠の意義(疋田一洋)
 CAD/CAM冠用材料の保険適用の変遷と材料学的展望(髙橋英和)
Part 2 質の高いCAD/CAM冠の製作に必要な知識
 支台歯形成の原則と実践(星 憲幸)
 スキャン工程における誤差の要因と対処法(松尾洋祐,秦 康次郎)
 CADデザインの勘所(村上泰敏)
 加工機の選択基準と設定(武田 航)
 適合調整と研磨(阿部亜加理,滝沢琢也,陸 誠)
Part 3 臨床におけるCAD/CAM冠製作のポイント
 前歯ハイブリッドレジン冠(仮屋隼一)
 小臼歯ハイブリッドレジン冠(中村修啓)
 大臼歯ハイブリッドレジン冠(原 利明,久保田進也)
 大臼歯PEEK冠(菅原克彦)
 エンドクラウン(渡辺崇文,一志恒太,谷口祐介,駒形裕也,大楠弘通,正木千尋)
 光学印象によるCAD/CAMインレー(湯原諒真)
 光学印象によるCAD/CAM冠(井上舞人,菅 龍一)