やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

発刊にあたって
 超音波検査は,非侵襲的に臓器の観察が可能で,短時間で多くの情報が得られることから,日常診療に欠くことのできない検査法として,人間ドックや集団検診などにも幅広く利用されています.また,超音波診断装置の進歩に伴い,現在では心臓や腹部領域以外にも,消化管領域,胎児,乳房や甲状腺などの体表臓器領域,頸動脈や下肢動・静脈などの血管領域,さらには筋や腱損傷などの整形領域や関節リウマチなど幅広い分野で活用されています.近年では,造影超音波検査や4D 画像,CT やMRI 画像とのフュージョン画像表示,エラストグラフィなどの半定量的評価などの新技術の開発も目覚ましく,スクリーニングのみならず診断・治療においても超音波検査は大きな役割を果たしています.
 その一方で,超音波検査の精度は,検査者の技量に大きく左右されます.高価な装置を備えていても,それを使う検査者が十分な知識と経験を有していなければ,良質な検査を行うことはできません.しかし,豊富な知識と経験を有する専門医がいる施設は限られており,超音波検査の多くは,臨床検査技師と診療放射線技師が担っています.大規模施設では先輩技師も多く,操作法の指導や検査・レポートのダブルチェック体制など教育制度も確立していると思われますが,多くの施設では指導者が不足し,教育や精度管理に悩んでいる方も多いのではないでしょうか.
 このような現状を受け,月刊『Medical Technology』では,「腹部超音波検査-精度向上のためのファースト・ステップ-」(2013 年1 月号),「下肢静脈エコー入門-解剖から診断まで-」(2013年8 月号)などの特集記事を定期的に企画し,超音波検査の実践的な技術をお伝えしてきました.
 そして,本臨時増刊号では,先輩技師がいない環境で試行錯誤しながら超音波検査に取り組んでいる技師や超音波検査の経験の浅い技師の方々にご活用いただける1 冊を,との思いから,日々の検査における疑問や理解が曖昧なところ,今日から役立つ検査のコツなど全100 項目について,先輩技師からアドバイスをお伝えいただきました.「超音波の基礎」「腹部」「骨盤腔」「心臓」「頸動脈」「四肢血管」「乳房」「甲状腺」「その他表在」の9 章構成で全領域を網羅し,各項目の要点を理解しやすいよう1 項目あたり2~3 ページで簡潔にまとめています.
 本書は,多くの先輩達がさまざまな経験の中で培ってきた技術や知恵を凝縮した,ほかに類をみない貴重な1 冊です.若手技師の実践的な実用書として,また中堅技師の知識の確認書として,さらには先輩技師が若手技師を指導する際の参考書として,幅広くご活用いただければ幸いです.
 最後に,ご多忙の中,本書の執筆に快くご協力くださり,多大なるご尽力をいただいたご執筆者の先生方に,深く感謝の意を表します.
 2013 年12 月
 月刊『Medical Technology』編集委員会
 東海大学医学部付属病院 臨床検査技術科 高梨 昇
 高知医療センター 医療技術局 谷内亮水
 発刊にあたって(高梨 昇・谷内亮水)

第1章 超音波の基礎
 01.分解能とは(川江宗太郎)
 02.探触子(プローブ)の構造と機能(臼井洋史)
 03.アーチファクトの種類と画像への影響(小山健二)
 04.音波の反射と屈折はどのような時に起きるのか(小山健二)
 05.フォーカシングはどのように行うか(武藤和彦)
 06.ドプラフィルタでは何が変わるのか(武藤和彦)
 07.ドプラにもアーチファクトは起きるのか(武藤和彦)
第2章 腹部
 08.多彩な肝血管腫の超音波像を見抜くポイントは何か(西田 睦)
 09.原発性肝癌と転移性肝癌を鑑別するポイントは何か(西田 睦・畑中佳奈子)
 10.分化度の異なる肝細胞癌の超音波像の違いは何か(山本幸治)
 11.肝腫大はどのように判定するか(上牧 隆)
 12.びまん性脂肪肝はどのように評価するか(上牧 隆)
 13.門脈が見えない時は何を考えるか(竹内浩司)
 14.門脈内にガス像がある時は何を考えるか(綿貫 裕)
 15.胆嚢壁が肥厚している時は何を考えるか(関根智紀)
 16.胆嚢腫大がみられた時は何を考えるか(関根智紀)
 17.胆嚢内にガス像がある時は何を考えるか(刑部恵介)
 18.膵尾部腫瘍を見落とさないためのアプローチとは(南里和秀)
 19.膵嚢胞性腫瘍がみられた時は何をチェックするか(川地俊明)
 20.膵癌疑いの検査依頼では何をみたらよいのか(南里和秀)
 21.脾腫はどのように判定するか(高須賀康宣)
 22.水腎症では何をみるか(界外忠之)
 23.急性腎障害の時は何をみるべきか(中村元哉)
 24.透析腎の時は何をみるべきか(尾上篤志)
 25.腎動脈狭窄をどのように判定するか(三木未佳)
 26.腹部大動脈瘤や大動脈解離では何をみるべきか(山本真一)
 27.腹水をどのように評価するか(高須賀康宣)
 28.急性虫垂炎の検査はどのように進めるか(山本真一)
 29.腸管壁が肥厚していたら何をみるべきか(浅野幸宏・長谷川雄一)
 30.腸閉塞と腸管拡張を鑑別するポイントは何か(浅野幸宏・長谷川雄一)
 31.腹腔内に遊離ガス像がある時は何を考えるか(綿貫 裕)
 32.鼠径ヘルニアと大腿ヘルニアを鑑別するポイントは何か(秋山敏一)
 第2章 文献一覧
第3章 骨盤腔
 33.膀胱超音波で見落としをしないためのポイントは何か(藤原由貴乃・山口秀樹)
 34.前立腺腫大と腫瘍はどのように評価するか(藤原由貴乃・山口秀樹)
 35.女性の下腹部痛の時には何をみるべきか(秋山敏一)
 36.子宮筋腫と肉腫を鑑別するポイントは何か(宇治橋善勝・棟方伸一)
 37.子宮内膜・内腔の異常はどのように評価するか(丸山憲一)
 第3章 文献一覧
第4章 心臓
 38.左室壁運動異常をどうみるか(高橋秀一)
 39.左室駆出率の測定精度を上げるためのテクニックとは(高橋秀一)
 40.左室拡張能をどのように評価するか(西尾 進)
 41.左室壁の肥厚をみたら何を考えるか(西尾 進)
 42.左室壁厚減少から何を疑うか(岡庭裕貴)
 43.左室拡大から何を考えるか(岡庭裕貴)
 44.大動脈弁の石灰化を認めたらどのように検査を進めるか(泉 礼司)
 45.大動脈弁逆流をどのように判定するか(泉 礼司)
 46.僧帽弁逸脱部位をどのようにみるか(原田 修)
 47.三尖弁逆流はどのように判定するか(水上尚子)
 48.右心機能をどのように評価するか(水上尚子)
 49.感染性心内膜炎疑いでの検査依頼では何をみたらよいのか(住田善之)
 50.左房内腫瘤から何を疑うか(住田善之)
 51.人工弁をどのように評価するか(種村 正)
 52.シャント率をどのように求めるか(種村 正)
 53.心膜液貯留はどのように判定するか(大橋真由美)
 54.塞栓源の検索目的で検査を依頼されたら何をみたらよいのか(大橋真由美)
 55.冠動脈はどのように描出するか(原田 修)
 56.傍胸骨左縁アプローチでまったく見えない.さてどうする?(谷内亮水)
 57.胸部大動脈の異常をどのようにみればよいか(水上尚子)
 第4章 文献一覧
第5章 頸動脈
 58.内頸動脈と外頸動脈を鑑別するポイントは何か(久保田義則)
 59.内中膜複合体はどのように計測するか(久保田義則)
 60.プラークがみられたら,どのように評価するか(久保田義則)
 61.狭窄はどのように計測するか(森田勇一)
 62.パルスドプラ波形から何がわかるのか(森田勇一)
 63.椎骨動脈に逆流波形がみられたら,どのように検査を進めるか(寺西ふみ子・浅岡伸光)
 64.内頸動脈高位の狭窄をどのようにとらえたらよいのか(寺西ふみ子・浅岡伸光)
 65.大動脈炎症候群では何をみたらよいのか(三上晴克)
 66.ステント治療後には何をチェックするか(三上晴克)
 第5章 文献一覧
第6章 四肢血管
 67.骨盤内の静脈血栓がよく見えない.どうしたらよいか(山本哲也)
 68.ヒラメ静脈内血栓をとらえるためのポイントは何か(山本哲也)
 69.リンパ浮腫の鑑別のポイントは何か(八鍬恒芳)
 70.腫瘤性病変をみたら何を考え,どう鑑別するか(八鍬恒芳)
 71.レーザー治療後の評価はどのように行うのか(林 裕美子)
 72.カテーテル治療後の合併症をどうみるか(小谷敦志)
 73.胸郭出口症候群疑いでの検査依頼では,何をみたらよいのか(小谷敦志)
 74.下肢動脈に狭窄が疑われたら,どのように検査を進めればよいのか(渡邊亮司)
 75.人工透析患者の内シャントはどのように評価するか(渡邊亮司)
 第6章 文献一覧
第7章 乳房
 76.乳腺腫瘤の境界部高エコー像(halo)について(尾羽根範員)
 77.乳腺石灰化病変へのアプローチ(尾羽根範員)
 78.多発小嚢胞像がみられた時には何を考えるか(富樫保行)
 79.構築の乱れをとらえるにはどうすればよいか(富樫保行)
 80.乳房超音波カラードプラ法の手順と知っておくべきポイント(加奥節子)
 81.乳癌術前化学療法後の観察すべきポイント(加奥節子)
 82.乳腺エラストグラフィはどのような時に行うか(工藤悠輔・西田 睦)
 83.乳房造影超音波検査はどのような時に行うか(三塚幸夫)
 第7章 文献一覧
第8章 甲状腺
 84.甲状腺乳頭癌を疑うポイントは何か(古田真理子)
 85.どのような所見で濾胞癌を疑うか(佐々木栄司)
 86.甲状腺中毒症状がみられる時のチェックポイントは何か(来住野 修)
 87.痛みを伴う甲状腺疾患検査時のチェックポイントは何か(高梨 昇)
 88.橋本病の検査時には何に注意すべきか(太田 寿)
 89.びまん性甲状腺病変におけるドプラ法の評価法と注意点は?(太田 寿)
 90.副甲状腺を見落とさないためのアプローチとは(河村知史)
 91.副甲状腺結節と周囲臓器の鑑別ポイントは何か(来住野 修)
 第8章 文献一覧
第9章 その他表在
 92.唾液腺腫瘍で悪性を疑うポイントは何か(小柳紀子)
 93.頸部に嚢胞性腫瘤がみられたら何を考えるか(小柳紀子)
 94.転移性リンパ節腫脹を疑うポイントは何か(河本敦夫)
 95.悪性リンパ腫とリンパ節炎を鑑別するポイントは何か(河本敦夫)
 96.表在性腫瘤の検査時の注意点は何か(小柳紀子)
 97.神経原性腫瘍を疑うポイントは何か(高梨 昇)
 98.関節リウマチ患者の関節エコーのコツと注意する点は何か(西森美佐子)
 99.筋・腱損傷や骨折の検査依頼では何をみたらよいのか(山口睦弘)
 100.急性陰嚢症では何をみるか(高梨 昇)
 第9章 文献一覧