はじめに―次世代のがん医療の開発に向けて
松浦成昭
大阪国際がんセンター
がんは,かつて“不治の病“といわれていたが,わが国の最新の全がん患者5年生存率(2014~2015年症例)は66.2%と,治療成績の改善がめざましい.全体の2/3が5年生存を達成していることになり,もはやがんは不治の病ではなく,治りうる病気に変わった.予後の向上はがん予防・検診,がん診療,さらにがん医療体制の整備など,種々のがん対策が着実に進んでいることを示しており,長年にわたる各分野のさまざまな研究から得られた成果である.がん予防につながるたばこ対策,生活習慣見直しなどは進められているし,がん検診で早期発見されるがんは増加している.がんの診断・治療はいずれの分野も顕著な進歩を遂げており,生存期間の延長,生存率の改善に最も大きな貢献をしていると考えられる.また,2008年から進められてきたがん診療連携拠点病院の整備はがん診療のみならず,緩和ケア,がん相談支援など,がん患者のサポートが進み,“がん医療の均てん化”に寄与してきた.
しかし,がんの治療成績は向上したというものの,1/3の症例が5年以内に死亡しており,まだまだ不十分と考えられる.臓器別では前立腺がん,乳がんのように良好な生存率のものと,膵・胆道がんのように5年生存率が13~27%と不良なものの差が大きい.さらに,1993~2011年地域がん登録データで進行度別の生存率改善の年次推移をみると,原発巣限局症例,リンパ節転移・他臓器浸潤症例に比べて,遠隔転移症例の改善率は低い.また,原発巣限局症例の5年生存率92%に対して,リンパ節転移・他臓器浸潤症例は改善したとはいえ,生存率58%であり,まだ道半ばの感が強く,さらなる研究の進展が望まれる.また,治療成績改善が目的の時代から,今はがん患者のQOL向上や元の生活に戻るためのサポート・サバイバー支援が重要であり,その取り組みも必要である.
本特集では次世代のがん医療に向けて,がん研究と医療現場が共創して開発していくという観点から,各分野のオピニオンリーダーの方々に概説いただいた.がん医療と研究の共創により,次世代のがん医療がさらに向上することを期待したい.
松浦成昭
大阪国際がんセンター
がんは,かつて“不治の病“といわれていたが,わが国の最新の全がん患者5年生存率(2014~2015年症例)は66.2%と,治療成績の改善がめざましい.全体の2/3が5年生存を達成していることになり,もはやがんは不治の病ではなく,治りうる病気に変わった.予後の向上はがん予防・検診,がん診療,さらにがん医療体制の整備など,種々のがん対策が着実に進んでいることを示しており,長年にわたる各分野のさまざまな研究から得られた成果である.がん予防につながるたばこ対策,生活習慣見直しなどは進められているし,がん検診で早期発見されるがんは増加している.がんの診断・治療はいずれの分野も顕著な進歩を遂げており,生存期間の延長,生存率の改善に最も大きな貢献をしていると考えられる.また,2008年から進められてきたがん診療連携拠点病院の整備はがん診療のみならず,緩和ケア,がん相談支援など,がん患者のサポートが進み,“がん医療の均てん化”に寄与してきた.
しかし,がんの治療成績は向上したというものの,1/3の症例が5年以内に死亡しており,まだまだ不十分と考えられる.臓器別では前立腺がん,乳がんのように良好な生存率のものと,膵・胆道がんのように5年生存率が13~27%と不良なものの差が大きい.さらに,1993~2011年地域がん登録データで進行度別の生存率改善の年次推移をみると,原発巣限局症例,リンパ節転移・他臓器浸潤症例に比べて,遠隔転移症例の改善率は低い.また,原発巣限局症例の5年生存率92%に対して,リンパ節転移・他臓器浸潤症例は改善したとはいえ,生存率58%であり,まだ道半ばの感が強く,さらなる研究の進展が望まれる.また,治療成績改善が目的の時代から,今はがん患者のQOL向上や元の生活に戻るためのサポート・サバイバー支援が重要であり,その取り組みも必要である.
本特集では次世代のがん医療に向けて,がん研究と医療現場が共創して開発していくという観点から,各分野のオピニオンリーダーの方々に概説いただいた.がん医療と研究の共創により,次世代のがん医療がさらに向上することを期待したい.
はじめに─次世代のがん医療の開発に向けて(松浦成昭)
予防・検診
がん予防(石川秀樹)
バイオマーカーを用いた膵がん検診の可能性(本田一文)
遺伝性腫瘍におけるがん予防(岡 知美・中島 健)
がんの診断
がんゲノム医療を支える形態診断─形態と遺伝子をつなぐ(大江知里・他)
ゲノム病理診断(金井弥栄)
AIを用いた病理診断(坂下信悟・石川俊平)
画像診断─PET分子イメージングの進歩と新たな方向性(久下裕司)
消化管がんの内視鏡診断AI(石原 立)
遺伝子診断OSNA法(松浦成昭)
がんゲノム医療(角南久仁子)
エピゲノム研究の臨床応用(山田晴美・他)
リキッドバイオプシーの進歩(中村能章)
がんの治療
手術─ロボット手術(大森 健・他)
核医学セラノスティクス─現状と今後の展開(渡部直史)
重粒子線治療の臨床的意義と現状─高LET放射線治療としての位置づけ(鈴木 修・鎌田 正)
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)(小野公二)
オルガノイド研究の薬物治療への応用(三吉範克)
肺がん分子標的治療の進歩─EGFR,HER2,KRAS(林 秀敏)
乳癌薬物療法の進化と個別化の最前線─分子標的治療によるパラダイムシフト(石井 慧・増田慎三)
大腸がんの分子標的治療(三島沙織)
前立腺がんに対する分子標的療法(免疫療法を含む)の現状と展望(木村高弘)
血管新生阻害治療の歴史と展望(田中俊英)
がん免疫治療総論─がんを制御する持続型T細胞免疫システム(各務 博)
PD-1は“何に”対する免疫応答を抑制しているのか(柿本義也・石田靖雅)
CAR-T細胞療法(坂本謙一・中沢洋三)
ネオアンチゲンを標的としたがん免疫療法─個別化ワクチンを中心とした臨床開発の現状と展望(清谷一馬・中村祐輔)
がんに対するテロメラーゼ特異的腫瘍溶解ウイルス療法(藤原俊義)
悪性神経膠腫に対する新たな治療モダリティ─G47Δを用いたウイルス療法(岩井美和子・藤堂具紀)
乳がんラジオ波焼灼療法─低侵襲治療の現在地と未来(柏木伸一郎)
腸内細菌研究のがん医療への応用(神谷知憲・大谷直子)
がんとの共生
がん緩和ケア─研究を通して患者ケアを改善する(森 雅紀)
がん相談支援の現状とこれから─課題の特定と研究・臨床への還元(髙山智子)
がんのリハビリテーション診療(辻 哲也)
がん医療を支える栄養管理の現状と課題─栄養治療としての体系的支援の必要性(飯島正平・松岡美緒)
がんの医療体制
日本のがん登録(宮代 勲)
2040年を見据えたがん医療提供体制の均てん化・集約化(北國大樹)
医療の場での人工知能─効率の向上,公平性の確保,そして共感の回復(中村祐輔)
次号の特集予告
予防・検診
がん予防(石川秀樹)
バイオマーカーを用いた膵がん検診の可能性(本田一文)
遺伝性腫瘍におけるがん予防(岡 知美・中島 健)
がんの診断
がんゲノム医療を支える形態診断─形態と遺伝子をつなぐ(大江知里・他)
ゲノム病理診断(金井弥栄)
AIを用いた病理診断(坂下信悟・石川俊平)
画像診断─PET分子イメージングの進歩と新たな方向性(久下裕司)
消化管がんの内視鏡診断AI(石原 立)
遺伝子診断OSNA法(松浦成昭)
がんゲノム医療(角南久仁子)
エピゲノム研究の臨床応用(山田晴美・他)
リキッドバイオプシーの進歩(中村能章)
がんの治療
手術─ロボット手術(大森 健・他)
核医学セラノスティクス─現状と今後の展開(渡部直史)
重粒子線治療の臨床的意義と現状─高LET放射線治療としての位置づけ(鈴木 修・鎌田 正)
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)(小野公二)
オルガノイド研究の薬物治療への応用(三吉範克)
肺がん分子標的治療の進歩─EGFR,HER2,KRAS(林 秀敏)
乳癌薬物療法の進化と個別化の最前線─分子標的治療によるパラダイムシフト(石井 慧・増田慎三)
大腸がんの分子標的治療(三島沙織)
前立腺がんに対する分子標的療法(免疫療法を含む)の現状と展望(木村高弘)
血管新生阻害治療の歴史と展望(田中俊英)
がん免疫治療総論─がんを制御する持続型T細胞免疫システム(各務 博)
PD-1は“何に”対する免疫応答を抑制しているのか(柿本義也・石田靖雅)
CAR-T細胞療法(坂本謙一・中沢洋三)
ネオアンチゲンを標的としたがん免疫療法─個別化ワクチンを中心とした臨床開発の現状と展望(清谷一馬・中村祐輔)
がんに対するテロメラーゼ特異的腫瘍溶解ウイルス療法(藤原俊義)
悪性神経膠腫に対する新たな治療モダリティ─G47Δを用いたウイルス療法(岩井美和子・藤堂具紀)
乳がんラジオ波焼灼療法─低侵襲治療の現在地と未来(柏木伸一郎)
腸内細菌研究のがん医療への応用(神谷知憲・大谷直子)
がんとの共生
がん緩和ケア─研究を通して患者ケアを改善する(森 雅紀)
がん相談支援の現状とこれから─課題の特定と研究・臨床への還元(髙山智子)
がんのリハビリテーション診療(辻 哲也)
がん医療を支える栄養管理の現状と課題─栄養治療としての体系的支援の必要性(飯島正平・松岡美緒)
がんの医療体制
日本のがん登録(宮代 勲)
2040年を見据えたがん医療提供体制の均てん化・集約化(北國大樹)
医療の場での人工知能─効率の向上,公平性の確保,そして共感の回復(中村祐輔)
次号の特集予告















