はじめに
竹島多賀夫
富永病院脳神経内科・頭痛センター
頭痛をまったく経験したことがない人はほとんどおられないと思う.さまざまな身体的あるいは精神的ストレスや,環境要因などにより頭痛を感じた経験がある人は多い.頭痛はあまりにもありふれた症状であるため,片頭痛,緊張型頭痛に代表される一次性頭痛は医学的にはあまり重視されない傾向があったことも否定できない.しかし,わが国の頭痛研究の歴史は案外古く,1973年に頭痛懇話会が発足し,頭痛研究会を経て日本頭痛学会は現在3,400名余りの会員と1,151名の専門医を擁するまでになっている.また,日本神経学会ではコモンな神経疾患として,脳卒中,てんかん,認知症とともに頭痛を重要な領域として取り上げている.日本脳神経外科学会でも二次性頭痛ばかりでなく,一次性頭痛も学会のトピックスとして取り上げるようになってきている.
1990年代後半から2000年代初頭に,わが国ではトリプタンが次々と上市され,頭痛診療が大きく変化した.さらに,2021年からはカルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)関連抗体薬やラスミジタンが上市され,さらには2025年末以降,経口CGRP拮抗薬(ゲパント)が2種類使用できるようになっている.
また,2025年には国際頭痛学会から片頭痛治療のaspirational goal(高い目標)としてmigraine freedom(片頭痛からの解放)が提唱され,実際的には片頭痛日数が月に3日以内となることをめざす最適コントロールが設定されている.近年の片頭痛治療の進展をふまえた提唱で広く注目されている.
このような状況のなか,「頭痛診療の新潮流―神経科学の進歩がもたらす治療戦略」のテーマで2025年の夏に頭痛の特集を組ませていただいた.おかげさまでご好評いただき,このたび別冊として保存版が書籍化されることになり喜ばしく思っている.頭痛の疫学,片頭痛の病態・診断・治療,緊張型頭痛,三叉神経・自律神経性頭痛の他,二次性頭痛といった定番のテーマに加え,頭痛医療のトピックスとして痛覚変調性疼痛をはじめ,最近の話題を取り上げた.
執筆陣には頭痛領域で活躍されている若手から中堅を中心に,各トピックスのトップエキスパート,オピニオンリーダーの先生方にお願いした.いずれの論文も読み応えのある内容に仕上げていただいており,頭痛診療の初学者から頭痛専門医まで幅広く頭痛に関わる先生方の知識のupdateにお役に立つものと確信している.
竹島多賀夫
富永病院脳神経内科・頭痛センター
頭痛をまったく経験したことがない人はほとんどおられないと思う.さまざまな身体的あるいは精神的ストレスや,環境要因などにより頭痛を感じた経験がある人は多い.頭痛はあまりにもありふれた症状であるため,片頭痛,緊張型頭痛に代表される一次性頭痛は医学的にはあまり重視されない傾向があったことも否定できない.しかし,わが国の頭痛研究の歴史は案外古く,1973年に頭痛懇話会が発足し,頭痛研究会を経て日本頭痛学会は現在3,400名余りの会員と1,151名の専門医を擁するまでになっている.また,日本神経学会ではコモンな神経疾患として,脳卒中,てんかん,認知症とともに頭痛を重要な領域として取り上げている.日本脳神経外科学会でも二次性頭痛ばかりでなく,一次性頭痛も学会のトピックスとして取り上げるようになってきている.
1990年代後半から2000年代初頭に,わが国ではトリプタンが次々と上市され,頭痛診療が大きく変化した.さらに,2021年からはカルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)関連抗体薬やラスミジタンが上市され,さらには2025年末以降,経口CGRP拮抗薬(ゲパント)が2種類使用できるようになっている.
また,2025年には国際頭痛学会から片頭痛治療のaspirational goal(高い目標)としてmigraine freedom(片頭痛からの解放)が提唱され,実際的には片頭痛日数が月に3日以内となることをめざす最適コントロールが設定されている.近年の片頭痛治療の進展をふまえた提唱で広く注目されている.
このような状況のなか,「頭痛診療の新潮流―神経科学の進歩がもたらす治療戦略」のテーマで2025年の夏に頭痛の特集を組ませていただいた.おかげさまでご好評いただき,このたび別冊として保存版が書籍化されることになり喜ばしく思っている.頭痛の疫学,片頭痛の病態・診断・治療,緊張型頭痛,三叉神経・自律神経性頭痛の他,二次性頭痛といった定番のテーマに加え,頭痛医療のトピックスとして痛覚変調性疼痛をはじめ,最近の話題を取り上げた.
執筆陣には頭痛領域で活躍されている若手から中堅を中心に,各トピックスのトップエキスパート,オピニオンリーダーの先生方にお願いした.いずれの論文も読み応えのある内容に仕上げていただいており,頭痛診療の初学者から頭痛専門医まで幅広く頭痛に関わる先生方の知識のupdateにお役に立つものと確信している.
はじめに(竹島多賀夫)
1.頭痛の疫学,疾病負担および労働生産性への影響(清水利彦)
KeyWords 片頭痛,疾病負担,プレゼンティーイズム,unmet needs
片頭痛の病態・診断・治療
2.片頭痛の病態生理(小林聡朗・辰元宗人)
KeyWords 血管説,神経説,三叉神経血管説,CSD(皮質拡延性抑制/皮質拡延性脱分極),fMRI(機能的磁気共鳴画像法)
3.片頭痛の分類と診断基準(中野俊也)
KeyWords 国際頭痛分類(ICHD),前兆のない片頭痛,前兆のある片頭痛,慢性片頭痛
4.片頭痛の急性期治療戦略(松森保彦)
KeyWords 片頭痛,トリプタン,ジタン,ゲパント,ニューロモデュレーション
5.片頭痛の予防療法(工藤雅子)
KeyWords 予防薬,頭痛ダイアリー,日常生活支障度
6.片頭痛の新規治療薬─CGRP関連抗体薬,CGRP受容体拮抗薬(gepant),PACAP関連薬剤(滝沢 翼・井原慶子)
KeyWords カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP),下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP),gepant
緊張型頭痛,三叉神経・自律神経性頭痛,その他の一次性頭痛疾患
7.緊張型頭痛の診断と治療(秋山久尚)
KeyWords 緊張型頭痛,診断,治療,薬物療法,非薬物療法
8.反復性群発頭痛,慢性群発頭痛の病態・診断・治療(北村英二)
KeyWords 群発頭痛,在宅酸素療法,トリプタン,ベラパミル,ステロイド
9.群発頭痛以外の三叉神経・自律神経性頭痛(菊井祥二)
KeyWords 三叉神経・自律神経性頭痛(TACs),発作性片側頭痛(PH),短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNHA),持続性片側頭痛(HC),国際頭痛分類第3版(ICHD-3)
10.その他の一次性頭痛疾患─睡眠時頭痛を中心に(須佐葉子)
KeyWords その他の一次性頭痛疾患,睡眠時頭痛,診断基準
二次性頭痛
11.危険な二次性頭痛の誤診を避け適切な治療へつなげるために─レッドフラッグとグリーンフラッグを用いた頭痛患者の初期評価(貞本泰孝)
KeyWords 二次性頭痛,レッドフラッグ,グリーンフラッグ
12.頭部外傷および開頭術による頭痛の最新知見(石川栄一)
KeyWords 外傷後頭痛,開頭術後頭痛,持続性頭痛,カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)関連製剤
13.可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)と脳静脈洞血栓症(CVT)の診断・治療戦略(加納裕也・山田健太郎)
KeyWords 雷鳴頭痛(TCH),二次性頭痛,可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS),脳静脈洞血栓症(CVT),画像検査
頭痛医療のトピックス
14.神経調節療法(neuromodulation)の現状と展望(今井 昇)
KeyWords 神経調節療法(neuromodulation),非侵襲的,片頭痛,群発頭痛
15.片頭痛と痛覚変調性疼痛(加藤総夫)
KeyWords 痛みの3つの機序,カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP),腕傍核,扁桃体中心核,広汎性痛覚過敏
16.片頭痛等価症と不思議の国のアリス症候群(島 淳)
KeyWords 周期性嘔吐症候群(CVS),腹部片頭痛,良性発作性めまい(BPV),良性発作性斜頸(BPT),小児反復性めまい症(RVC)
17.頭痛医療におけるDX,ICTとAI活用(伊藤康男)
KeyWords 片頭痛,DX(デジタルトランスフォーメーション),AI(人工知能),ICT(情報通信技術)
18.日本頭痛学会の歴史と役割─日本頭痛協会,JPAC,GPACHおよび国際学会の動向(團野大介)
KeyWords 日本頭痛学会(JHS),日本頭痛協会(JHA),JPAC(頭痛医療を促進する患者と医療従事者の会),GPAC(世界の頭痛患者を支援する会),GPACH(頭痛のための世界患者支援連携)
19.「頭痛専門医への道」プロジェクト─専門医資格の意義とキャリアパス(稲垣美恵子)
KeyWords 頭痛専門医,キャリアパス,専門医資格,頭痛診療,多診療科連携
20.小児の頭痛─基礎知識と最近のトピックス(山中 岳)
KeyWords 小児,片頭痛,神経発達症,起立性調節性障害(OD)
21.高齢者頭痛─健康寿命・幸福寿命の延伸に向けて(織田雅也・他)
KeyWords 高齢者頭痛,二次性頭痛,ポリファーマシー
1.頭痛の疫学,疾病負担および労働生産性への影響(清水利彦)
KeyWords 片頭痛,疾病負担,プレゼンティーイズム,unmet needs
片頭痛の病態・診断・治療
2.片頭痛の病態生理(小林聡朗・辰元宗人)
KeyWords 血管説,神経説,三叉神経血管説,CSD(皮質拡延性抑制/皮質拡延性脱分極),fMRI(機能的磁気共鳴画像法)
3.片頭痛の分類と診断基準(中野俊也)
KeyWords 国際頭痛分類(ICHD),前兆のない片頭痛,前兆のある片頭痛,慢性片頭痛
4.片頭痛の急性期治療戦略(松森保彦)
KeyWords 片頭痛,トリプタン,ジタン,ゲパント,ニューロモデュレーション
5.片頭痛の予防療法(工藤雅子)
KeyWords 予防薬,頭痛ダイアリー,日常生活支障度
6.片頭痛の新規治療薬─CGRP関連抗体薬,CGRP受容体拮抗薬(gepant),PACAP関連薬剤(滝沢 翼・井原慶子)
KeyWords カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP),下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP),gepant
緊張型頭痛,三叉神経・自律神経性頭痛,その他の一次性頭痛疾患
7.緊張型頭痛の診断と治療(秋山久尚)
KeyWords 緊張型頭痛,診断,治療,薬物療法,非薬物療法
8.反復性群発頭痛,慢性群発頭痛の病態・診断・治療(北村英二)
KeyWords 群発頭痛,在宅酸素療法,トリプタン,ベラパミル,ステロイド
9.群発頭痛以外の三叉神経・自律神経性頭痛(菊井祥二)
KeyWords 三叉神経・自律神経性頭痛(TACs),発作性片側頭痛(PH),短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNHA),持続性片側頭痛(HC),国際頭痛分類第3版(ICHD-3)
10.その他の一次性頭痛疾患─睡眠時頭痛を中心に(須佐葉子)
KeyWords その他の一次性頭痛疾患,睡眠時頭痛,診断基準
二次性頭痛
11.危険な二次性頭痛の誤診を避け適切な治療へつなげるために─レッドフラッグとグリーンフラッグを用いた頭痛患者の初期評価(貞本泰孝)
KeyWords 二次性頭痛,レッドフラッグ,グリーンフラッグ
12.頭部外傷および開頭術による頭痛の最新知見(石川栄一)
KeyWords 外傷後頭痛,開頭術後頭痛,持続性頭痛,カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)関連製剤
13.可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)と脳静脈洞血栓症(CVT)の診断・治療戦略(加納裕也・山田健太郎)
KeyWords 雷鳴頭痛(TCH),二次性頭痛,可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS),脳静脈洞血栓症(CVT),画像検査
頭痛医療のトピックス
14.神経調節療法(neuromodulation)の現状と展望(今井 昇)
KeyWords 神経調節療法(neuromodulation),非侵襲的,片頭痛,群発頭痛
15.片頭痛と痛覚変調性疼痛(加藤総夫)
KeyWords 痛みの3つの機序,カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP),腕傍核,扁桃体中心核,広汎性痛覚過敏
16.片頭痛等価症と不思議の国のアリス症候群(島 淳)
KeyWords 周期性嘔吐症候群(CVS),腹部片頭痛,良性発作性めまい(BPV),良性発作性斜頸(BPT),小児反復性めまい症(RVC)
17.頭痛医療におけるDX,ICTとAI活用(伊藤康男)
KeyWords 片頭痛,DX(デジタルトランスフォーメーション),AI(人工知能),ICT(情報通信技術)
18.日本頭痛学会の歴史と役割─日本頭痛協会,JPAC,GPACHおよび国際学会の動向(團野大介)
KeyWords 日本頭痛学会(JHS),日本頭痛協会(JHA),JPAC(頭痛医療を促進する患者と医療従事者の会),GPAC(世界の頭痛患者を支援する会),GPACH(頭痛のための世界患者支援連携)
19.「頭痛専門医への道」プロジェクト─専門医資格の意義とキャリアパス(稲垣美恵子)
KeyWords 頭痛専門医,キャリアパス,専門医資格,頭痛診療,多診療科連携
20.小児の頭痛─基礎知識と最近のトピックス(山中 岳)
KeyWords 小児,片頭痛,神経発達症,起立性調節性障害(OD)
21.高齢者頭痛─健康寿命・幸福寿命の延伸に向けて(織田雅也・他)
KeyWords 高齢者頭痛,二次性頭痛,ポリファーマシー
