第2版の序
この書籍は,著者らが臨床での研究指導に長く携わってきた経験をふまえて,看護師が関心をもったり,実践をしながら疑問に思ったりする事象を,看護研究として探究することに役立ててほしいと願い,初版を2018年に書きました.改訂版を執筆した今もその思いは同じです.
第1版から約7年を経る中で,看護研究とそれを取り巻く状況にはいくつもの変化が生じています.
その一つは,研究の方法について極めて厳密であることが求められ,エビデンスが追究されているという点です.投稿論文や学会の演題登録の査読は厳しくなり,臨床の若い看護師さんたちは研究方法の難しさを体験していると思います.臨床現場においても,精度の高い量的研究および質的研究が必要になってきています.この背景には看護の専門性の高まり,すなわち看護実践の場において,それぞれの分野に特有のエビデンスが必要とされてきていること,そしてそれを求める専門性の高い看護の資格認定にそれらのエビデンスが関係していることが考えられます.量的研究においては,統計的な分析力が以前にもまして求められています.また,質的研究においては客観的な方法論の選定とその方法を厳密に適用することが求められており,学会発表でも多くの手法を目にするようになりました.ざっくりとした研究計画では,現場の「知」の必要性を満たせないということがあると思います.
またもう一つの大きな変化は,人を対象とする倫理指針の見直しが繰り返され,倫理申請や審査においては的確に倫理原則を守った具体的な手段を選ぶことが求められてきています.この流れはさらに今後も続くことが予測されます.
第2版では,これらをふまえて内容のブラッシュアップを行うとともに,わかりやすさと使いやすさを追及し,読み手のガイドとなる見出しを加え,説明を増やし,例を挿入しました.内容が少し難しくなったと感じるページもあるかもしれませんが,第1版同様,それらの疑問には丁寧に答えていきたいと思いますので,引き続きご意見等をお寄せください.
臨床の皆さんが「そうなんだ」「わかった」とうなずいていただけるよう,熱いパッションを込めてまとめました.お役立ていただければ幸いです.
2025年10月 粟生田友子,石川ふみよ
序文
看護師として「患者さんにもっといいケアを提供したい」と思うとき,「これってなんだろう」「何をすれば患者さんの痛みを軽くしていけるのだろう」「新しいケアを導入してみたいけれど効果はどうなのだろう」などと,いろいろな考えをめぐらせることでしょう.そこで直面しているのは,実践現場で「どのように探究するか」という課題です.看護の実践現場での探究(研究),これがこの本のテーマです.
この書籍は,研究をやり始めようとするときに,「これって何?」「どうやるの?」に答えるために書き下ろしました.研究は,いろいろ知識としてわかっていたとしても,やってみて初めて「わかる」ことが少なくありません.一応学習をしてみても「なんとなくわかったような」ところまではいきますが,探究を始めてみると,「やっぱりわからない」という経験をします.これは,自分の実践的な課題を探究するときの最初の難関です.研究としてのやり方がわかれば,自分自身の探究したい疑問【研究疑問】を表現し,目的は何かを明確に絞り込み【目的の明確化】,どんな方法がいいのか【研究方法】がすんなりと頭の中に浮かんできます.
著者である私たち二人は,これまで臨床の現場からの要望にこたえる形で,それぞれが医療機関での研究指導を20代からずっと続けてきています.私たちの喜びは,現場での研究の面接指導のたびに,「あー,そうなんだ」「そうやってやるのか」「そういう方法もあるのですね」とすっきりした顔で面接を終え,次の研究ステップに進んでいく姿を見ることです.それでもまた次の面接では「今度はこれがわからない」「ここまですすめてみたけれどこの先はどうしましょう?」と新たな疑問を抱えて面接に来ることが繰り返されるのですが,最後までがんばって成果が産生できたときには,それぞれが「やったあ」という喜びに満ちています.「研究って楽しい!」の声が聞こえるようで,そんな表情をみることが私たちの励みにもなっています.
研究に取り組むことにおいては,何よりも,研究を「やってみてよかったと思えた」と言えること,それこそが大事なのではないでしょうか.
この書籍は,臨床現場で研究に取り組んでいる,あるいは取り組んでいきたいと考えている看護職が,研究過程で直面する疑問を取り上げ,それに答える形で解説しています.現場の看護職が,「今回の研究でこれがわかった」と自信を持って言えるようにすることをめざしています.研究方法に苦しんで立ち止まってしまうのではなく,研究を前に進めていけるように構成しています.的確な方法を選定して企画された研究は,使えるエビデンスにたどり着きます.高いエビデンスにたどり着ければ,結果【研究結果】を現場のケアに取り入れていくことができます.患者さんたちに今よりよいケアが提供できるのです.
研究課題の絞込みから研究結果の発表まで,「ああそうだったのか」とわかる体験をしていただくことを大切に,研究過程での疑問を取り出しましたが,現実にはもっともっとたくさんの立ち止まりを経験することでしょう.それでも,一歩一歩「がんばれ」と伝えたいと思います.
また,こんな疑問にも答えてほしいということがあったら,お寄せいただければ嬉しいです.
2018年秋 著者
                        この書籍は,著者らが臨床での研究指導に長く携わってきた経験をふまえて,看護師が関心をもったり,実践をしながら疑問に思ったりする事象を,看護研究として探究することに役立ててほしいと願い,初版を2018年に書きました.改訂版を執筆した今もその思いは同じです.
第1版から約7年を経る中で,看護研究とそれを取り巻く状況にはいくつもの変化が生じています.
その一つは,研究の方法について極めて厳密であることが求められ,エビデンスが追究されているという点です.投稿論文や学会の演題登録の査読は厳しくなり,臨床の若い看護師さんたちは研究方法の難しさを体験していると思います.臨床現場においても,精度の高い量的研究および質的研究が必要になってきています.この背景には看護の専門性の高まり,すなわち看護実践の場において,それぞれの分野に特有のエビデンスが必要とされてきていること,そしてそれを求める専門性の高い看護の資格認定にそれらのエビデンスが関係していることが考えられます.量的研究においては,統計的な分析力が以前にもまして求められています.また,質的研究においては客観的な方法論の選定とその方法を厳密に適用することが求められており,学会発表でも多くの手法を目にするようになりました.ざっくりとした研究計画では,現場の「知」の必要性を満たせないということがあると思います.
またもう一つの大きな変化は,人を対象とする倫理指針の見直しが繰り返され,倫理申請や審査においては的確に倫理原則を守った具体的な手段を選ぶことが求められてきています.この流れはさらに今後も続くことが予測されます.
第2版では,これらをふまえて内容のブラッシュアップを行うとともに,わかりやすさと使いやすさを追及し,読み手のガイドとなる見出しを加え,説明を増やし,例を挿入しました.内容が少し難しくなったと感じるページもあるかもしれませんが,第1版同様,それらの疑問には丁寧に答えていきたいと思いますので,引き続きご意見等をお寄せください.
臨床の皆さんが「そうなんだ」「わかった」とうなずいていただけるよう,熱いパッションを込めてまとめました.お役立ていただければ幸いです.
2025年10月 粟生田友子,石川ふみよ
序文
看護師として「患者さんにもっといいケアを提供したい」と思うとき,「これってなんだろう」「何をすれば患者さんの痛みを軽くしていけるのだろう」「新しいケアを導入してみたいけれど効果はどうなのだろう」などと,いろいろな考えをめぐらせることでしょう.そこで直面しているのは,実践現場で「どのように探究するか」という課題です.看護の実践現場での探究(研究),これがこの本のテーマです.
この書籍は,研究をやり始めようとするときに,「これって何?」「どうやるの?」に答えるために書き下ろしました.研究は,いろいろ知識としてわかっていたとしても,やってみて初めて「わかる」ことが少なくありません.一応学習をしてみても「なんとなくわかったような」ところまではいきますが,探究を始めてみると,「やっぱりわからない」という経験をします.これは,自分の実践的な課題を探究するときの最初の難関です.研究としてのやり方がわかれば,自分自身の探究したい疑問【研究疑問】を表現し,目的は何かを明確に絞り込み【目的の明確化】,どんな方法がいいのか【研究方法】がすんなりと頭の中に浮かんできます.
著者である私たち二人は,これまで臨床の現場からの要望にこたえる形で,それぞれが医療機関での研究指導を20代からずっと続けてきています.私たちの喜びは,現場での研究の面接指導のたびに,「あー,そうなんだ」「そうやってやるのか」「そういう方法もあるのですね」とすっきりした顔で面接を終え,次の研究ステップに進んでいく姿を見ることです.それでもまた次の面接では「今度はこれがわからない」「ここまですすめてみたけれどこの先はどうしましょう?」と新たな疑問を抱えて面接に来ることが繰り返されるのですが,最後までがんばって成果が産生できたときには,それぞれが「やったあ」という喜びに満ちています.「研究って楽しい!」の声が聞こえるようで,そんな表情をみることが私たちの励みにもなっています.
研究に取り組むことにおいては,何よりも,研究を「やってみてよかったと思えた」と言えること,それこそが大事なのではないでしょうか.
この書籍は,臨床現場で研究に取り組んでいる,あるいは取り組んでいきたいと考えている看護職が,研究過程で直面する疑問を取り上げ,それに答える形で解説しています.現場の看護職が,「今回の研究でこれがわかった」と自信を持って言えるようにすることをめざしています.研究方法に苦しんで立ち止まってしまうのではなく,研究を前に進めていけるように構成しています.的確な方法を選定して企画された研究は,使えるエビデンスにたどり着きます.高いエビデンスにたどり着ければ,結果【研究結果】を現場のケアに取り入れていくことができます.患者さんたちに今よりよいケアが提供できるのです.
研究課題の絞込みから研究結果の発表まで,「ああそうだったのか」とわかる体験をしていただくことを大切に,研究過程での疑問を取り出しましたが,現実にはもっともっとたくさんの立ち止まりを経験することでしょう.それでも,一歩一歩「がんばれ」と伝えたいと思います.
また,こんな疑問にも答えてほしいということがあったら,お寄せいただければ嬉しいです.
2018年秋 著者
                            I 看護研究のアウトライン
これだけは知っておこう! 看護研究の流れ
II 研究での困りごとと解決方法
1.テーマ
1)テーマ設定
(1)なにを研究すればいいの? 誰か教えて!
(2)このテーマって看護研究になるの?
(3)研究テーマに自信がもてない!
(4)文献検索ってどうやるの?
(5)文献クリティークってなに?
2)テーマの表現
(6)何をする研究なのかわかりづらい!
(7)サブテーマにはなにを書く?
1のまとめ
2.研究の背景・目的
(8)なぜこの研究をするのでしょうか?
(9)研究すべき疑問はなんでしょうか?
(10)研究をするとメリットがある?
(11)何を明らかにしたいのですか?
2のまとめ
3.研究方法
量的研究と質的研究とは何がちがうのか?
1)研究デザイン
(12)この(その)研究デザインはどれ?
(13)概念枠組み,理論的枠組み,仮説は必要なの?
2)研究対象
(14)誰(なに)を対象に研究しますか?
(15)標本の抽出ってどうやるの? 必要な標本数は?(量的研究)
(16)研究参加者はどのように選ぶの?(質的研究)
3)データ収集方法
(17)この(その)データ収集方法であっていますか?
(18)質問紙ってどうやって作るの?
(19)面接ってどうやるの?
(20)参加観察ってどうやるの?
3のまとめ
4.分析
(21)統計処理ってどうやるの?(量的研究)
(22)分析ってどうやるの?(質的研究)
4のまとめ
5.事例研究
(23)事例を研究することってできるの?
(24)実践報告と活動報告ってなに?
5のまとめ
6.倫理的配慮
(25)「倫理的配慮」は大丈夫?
(26)研究するうえでの倫理観とは?
6のまとめ
7.結果・考察・結論
(27)分析結果をわかりやすくまとめるには?
(28)結果から結論に至るまでの道のりは?
7のまとめ
8.論述・発表
(29)論文らしくまとめるにはどうしたらいい?(書く,述べる)
(30)発表ってどうやるの? コツを教えて!
8のまとめ
索引
                            これだけは知っておこう! 看護研究の流れ
II 研究での困りごとと解決方法
1.テーマ
1)テーマ設定
(1)なにを研究すればいいの? 誰か教えて!
(2)このテーマって看護研究になるの?
(3)研究テーマに自信がもてない!
(4)文献検索ってどうやるの?
(5)文献クリティークってなに?
2)テーマの表現
(6)何をする研究なのかわかりづらい!
(7)サブテーマにはなにを書く?
1のまとめ
2.研究の背景・目的
(8)なぜこの研究をするのでしょうか?
(9)研究すべき疑問はなんでしょうか?
(10)研究をするとメリットがある?
(11)何を明らかにしたいのですか?
2のまとめ
3.研究方法
量的研究と質的研究とは何がちがうのか?
1)研究デザイン
(12)この(その)研究デザインはどれ?
(13)概念枠組み,理論的枠組み,仮説は必要なの?
2)研究対象
(14)誰(なに)を対象に研究しますか?
(15)標本の抽出ってどうやるの? 必要な標本数は?(量的研究)
(16)研究参加者はどのように選ぶの?(質的研究)
3)データ収集方法
(17)この(その)データ収集方法であっていますか?
(18)質問紙ってどうやって作るの?
(19)面接ってどうやるの?
(20)参加観察ってどうやるの?
3のまとめ
4.分析
(21)統計処理ってどうやるの?(量的研究)
(22)分析ってどうやるの?(質的研究)
4のまとめ
5.事例研究
(23)事例を研究することってできるの?
(24)実践報告と活動報告ってなに?
5のまとめ
6.倫理的配慮
(25)「倫理的配慮」は大丈夫?
(26)研究するうえでの倫理観とは?
6のまとめ
7.結果・考察・結論
(27)分析結果をわかりやすくまとめるには?
(28)結果から結論に至るまでの道のりは?
7のまとめ
8.論述・発表
(29)論文らしくまとめるにはどうしたらいい?(書く,述べる)
(30)発表ってどうやるの? コツを教えて!
8のまとめ
索引















