はじめに
あなたが医師として担当している患者さんの,あるいは,臨床検査技師として実施した免疫固定法の結果が下の写真のように出ました.あなたはこれを適切に解釈できますか?
もちろん,この写真には検査医による報告書としてのコメント(p.84参照)がついてきますが,その意味を正しく理解できますか?
あらゆる臨床医や健診医にとって,Mタンパクの検査,特に血清タンパク分画は,日常診療でよく利用する検査です.Mタンパクは高齢者の約3%に認められるため,日常診療や健診で日々遭遇します.Mタンパクが検出されたら,それがたとえばIgG-κ型,といったクラスとタイプを同定するために,免疫固定法や免疫電気泳動法の検査をオーダーします.これらの検査の方法や見方を理解していないと,結果が出てもバンドや沈降線の意味を正しく解釈することができません.病院や検査センターの検査医は,免疫固定法や免疫電気泳動法の報告書を作成します.院内で実施した場合はもちろん,外注で実施された場合でも,医師がコメントを院内で記載して報告すれば,免疫電気泳動法診断加算として診療報酬50点が加算されます.
病院や検査センターの臨床検査技師は,結果の意義を理解したうえで検査を実施することで,より適切に検査を行うことができます.また,検査医が作成したコメント内容を,担当医に報告する前に臨床検査技師がダブルチェックすることにより,記載のミスを見つけて修正することにつながります.
日本では,これまで長い間,Mタンパクの同定に主に免疫電気泳動法が用いられてきました.そのため,従来の医学書には免疫電気泳動法のみが記載されていました.一方,欧米ではMタンパクの同定に免疫固定法が用いられてきました.近年,多発性骨髄腫の国際的な治療効果判定基準での完全奏効の要件として,“血清および尿での免疫固定法での陰性化”があげられたため,日本でも免疫固定法が必要となりました.2018年以降,日本でも免疫固定法が保険で算定できるようになりました.免疫固定法は,より高感度にMタンパクを検出することができるため,現在,日本でもMタンパクの同定は免疫電気泳動法から免疫固定法に移行されつつあります.
また,Mタンパク自体の検査ではありませんが,“免疫グロブリン遊離L鎖κ/λ比”も2011年から保険収載され,骨髄腫の治療効果判定などに用いられています.従来の免疫電気泳動法が主体であった教育を受けた医師や臨床検査技師にとって,Mタンパクの新たな検査,特に免疫固定法を正しく理解する必要がありますが,これらに関する書籍はこれまでありませんでした.
私は東京科学大学病院(東京医科歯科大学が2024年の大学統合により名称変更)の検査部で,約30年間免疫電気泳動法と免疫固定法の報告書を作成し,また,血液内科で骨髄腫などの患者の診療に従事してきました.この間,医師や臨床検査技師から,「この泳動像からなぜこのような解釈ができるのか」という質問をたびたび受けました.そのため,実用的な解説書が必要であると感じて,本書を作成することにしました.本書では実践的な解釈力をつけるため,当院での実際の症例の検査結果を用いています.
本書の構成として,Part 1でMタンパクとその検査法について解説し,Part 2で実際の種々の症例のMタンパク検査結果を提示しました.Mタンパクの同定法として,今後は免疫固定法が主流となるため,検査結果は免疫固定法を主に提示しています.ただ,免疫電気泳動法にも利点はあり,また,過去に実施された免疫電気泳動法の結果をカルテ上で見返すこともあるため,免疫電気泳動法も提示しました.Part 3ではMタンパク検査に関連する重要な検査について簡単に記載しました.
本書は,病棟,外来,検査室に置いて,必要な箇所だけ読んでいただいても結構です.あるいは短時間で読み終わるよう必要な知識をコンパクトにまとめていますので,自宅で通読すれば,Mタンパクの達人になれることは間違いありません.
あなたが医師として担当している患者さんの,あるいは,臨床検査技師として実施した免疫固定法の結果が下の写真のように出ました.あなたはこれを適切に解釈できますか?
もちろん,この写真には検査医による報告書としてのコメント(p.84参照)がついてきますが,その意味を正しく理解できますか?
あらゆる臨床医や健診医にとって,Mタンパクの検査,特に血清タンパク分画は,日常診療でよく利用する検査です.Mタンパクは高齢者の約3%に認められるため,日常診療や健診で日々遭遇します.Mタンパクが検出されたら,それがたとえばIgG-κ型,といったクラスとタイプを同定するために,免疫固定法や免疫電気泳動法の検査をオーダーします.これらの検査の方法や見方を理解していないと,結果が出てもバンドや沈降線の意味を正しく解釈することができません.病院や検査センターの検査医は,免疫固定法や免疫電気泳動法の報告書を作成します.院内で実施した場合はもちろん,外注で実施された場合でも,医師がコメントを院内で記載して報告すれば,免疫電気泳動法診断加算として診療報酬50点が加算されます.
病院や検査センターの臨床検査技師は,結果の意義を理解したうえで検査を実施することで,より適切に検査を行うことができます.また,検査医が作成したコメント内容を,担当医に報告する前に臨床検査技師がダブルチェックすることにより,記載のミスを見つけて修正することにつながります.
日本では,これまで長い間,Mタンパクの同定に主に免疫電気泳動法が用いられてきました.そのため,従来の医学書には免疫電気泳動法のみが記載されていました.一方,欧米ではMタンパクの同定に免疫固定法が用いられてきました.近年,多発性骨髄腫の国際的な治療効果判定基準での完全奏効の要件として,“血清および尿での免疫固定法での陰性化”があげられたため,日本でも免疫固定法が必要となりました.2018年以降,日本でも免疫固定法が保険で算定できるようになりました.免疫固定法は,より高感度にMタンパクを検出することができるため,現在,日本でもMタンパクの同定は免疫電気泳動法から免疫固定法に移行されつつあります.
また,Mタンパク自体の検査ではありませんが,“免疫グロブリン遊離L鎖κ/λ比”も2011年から保険収載され,骨髄腫の治療効果判定などに用いられています.従来の免疫電気泳動法が主体であった教育を受けた医師や臨床検査技師にとって,Mタンパクの新たな検査,特に免疫固定法を正しく理解する必要がありますが,これらに関する書籍はこれまでありませんでした.
私は東京科学大学病院(東京医科歯科大学が2024年の大学統合により名称変更)の検査部で,約30年間免疫電気泳動法と免疫固定法の報告書を作成し,また,血液内科で骨髄腫などの患者の診療に従事してきました.この間,医師や臨床検査技師から,「この泳動像からなぜこのような解釈ができるのか」という質問をたびたび受けました.そのため,実用的な解説書が必要であると感じて,本書を作成することにしました.本書では実践的な解釈力をつけるため,当院での実際の症例の検査結果を用いています.
本書の構成として,Part 1でMタンパクとその検査法について解説し,Part 2で実際の種々の症例のMタンパク検査結果を提示しました.Mタンパクの同定法として,今後は免疫固定法が主流となるため,検査結果は免疫固定法を主に提示しています.ただ,免疫電気泳動法にも利点はあり,また,過去に実施された免疫電気泳動法の結果をカルテ上で見返すこともあるため,免疫電気泳動法も提示しました.Part 3ではMタンパク検査に関連する重要な検査について簡単に記載しました.
本書は,病棟,外来,検査室に置いて,必要な箇所だけ読んでいただいても結構です.あるいは短時間で読み終わるよう必要な知識をコンパクトにまとめていますので,自宅で通読すれば,Mタンパクの達人になれることは間違いありません.
はじめに
Part 1 総論
1 血清タンパクの成分
2 Mタンパクを呈する疾患
(1)多発性骨髄腫
(2)孤立性骨形質細胞腫と髄外性形質細胞腫
(3)原発性マクログロブリン血症
(4)意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)
(5)免疫グロブリン関連アミロイドーシス
(6)腎障害を伴う単クローン性ガンマグロブリン血症(MGRS)
(7)単クローン性免疫グロブリン沈着症(MIDD)
(8)寒冷凝集素症(CAD)
(9)クリオグロブリン血症
(10)POEMS症候群
(11)抗MAG抗体関連ニューロパチー
(12)重鎖病(H鎖病)
(13)その他の成熟B細胞性腫瘍
(14)反応性のMタンパクが検出される疾患
3 Mタンパクの検査法と結果の見方
(1)タンパク分画検査法(PEP)
(2)免疫固定法(IFE)
(3)免疫電気泳動法(IEP)
(4)免疫グロブリン遊離L鎖定量(FLC)
(5)尿タンパクの濃縮
(6)微量Mタンパクの最小検出限界
(7)Mタンパク関連検査法の使い分け
4 検査医による免疫固定法と免疫電気泳動法の報告書作成
5 今後のMタンパク検査
(1)キャピラリー電気泳動法によるタンパク分画検査
(2)Immunosubtraction法によるMタンパクの同定
(3)質量分析によるMタンパクの同定
(4)Mタンパク分画の面積百分率(面積%)の定量
Part 2 症例集
初級編
症例1 正常例
症例2 IgG型多発性骨髄腫
参考症例2 BJPを伴うIgG型骨髄腫
症例3 IgD型骨髄腫
参考症例3 IgD型Mタンパクを伴うアミロイドーシス
症例4 BJP型骨髄腫
参考症例4 BJP型骨髄腫
症例5 原発性マクログロブリン血症
参考症例5 原発性マクログロブリン血症
症例6 IgG型MGUS
参考症例6 IgG型MGUS
症例7 IgM型MGUS
参考症例7-1 IgM型MGUS(1)
参考症例7-2 IgM型MGUS(2)
中級編
症例8 ALアミロイドーシス
参考症例8-1 ALアミロイドーシス(1)
参考症例8-2 ALアミロイドーシス(2)
症例9 POEMS症候群
参考症例9 抗MAG抗体関連ニューロパチー
症例10 寒冷凝集素症
参考症例10 クリオグロブリン血症
症例11 重鎖病
症例12 BJP型MGRS
症例13 IgG4関連疾患
参考症例13 IgG4関連疾患
症例14 ダラツムマブ投与中の骨髄腫
参考症例14 モノクローナル抗体薬投与中の骨髄腫
症例15 自家末梢血幹細胞移植後の骨髄腫
上級編
症例16 1つのMタンパクで2本のM-bandを呈したマクログロブリン血症
参考症例16 1つのMタンパクで2本のM-bandを呈した骨髄腫
症例17 2種類のMタンパクを呈したALアミロイドーシス
参考症例17-1 2種類のMタンパクを呈した骨髄腫(1)
参考症例17-2 2種類のMタンパクを呈した骨髄腫(2)
症例18 M-bandの中抜け現象を呈した骨髄腫
参考症例18 M-bandの中抜け現象を呈したMGUS
症例19 尿BJPのM-bowが不明瞭であった骨髄腫
症例20 M-band様のアーチファクトを呈したマクログロブリン血症
参考症例20 M-band様のアーチファクトを呈したMGUS
Part 3 参考―Mタンパク以外の検査の見方―
1 血算
2 骨髄穿刺検査
3 フローサイトメトリー検査
4 染色体検査
5 X線検査
あとがき
資料 ダウンロード可能:IFE/IEP定型コメントの例,追加コメントの例(Part 2の症例に対応)
参考文献
索引
コラム Q&A
Q1 健診でどのような所見があったら,Mタンパク関連検査をオーダーすればいいですか?
Q2 FLCはどういうときにオーダーしますか?
Q3 Mタンパクの有無に関して,PEPとIFEの結果が異なっています.どう判断すればよいですか?
Q4 MGUSと診断したとき,どの程度の間隔で経過観察すべきですか?
Q5 IEPはどういうときにオーダーしますか?
Part 1 総論
1 血清タンパクの成分
2 Mタンパクを呈する疾患
(1)多発性骨髄腫
(2)孤立性骨形質細胞腫と髄外性形質細胞腫
(3)原発性マクログロブリン血症
(4)意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)
(5)免疫グロブリン関連アミロイドーシス
(6)腎障害を伴う単クローン性ガンマグロブリン血症(MGRS)
(7)単クローン性免疫グロブリン沈着症(MIDD)
(8)寒冷凝集素症(CAD)
(9)クリオグロブリン血症
(10)POEMS症候群
(11)抗MAG抗体関連ニューロパチー
(12)重鎖病(H鎖病)
(13)その他の成熟B細胞性腫瘍
(14)反応性のMタンパクが検出される疾患
3 Mタンパクの検査法と結果の見方
(1)タンパク分画検査法(PEP)
(2)免疫固定法(IFE)
(3)免疫電気泳動法(IEP)
(4)免疫グロブリン遊離L鎖定量(FLC)
(5)尿タンパクの濃縮
(6)微量Mタンパクの最小検出限界
(7)Mタンパク関連検査法の使い分け
4 検査医による免疫固定法と免疫電気泳動法の報告書作成
5 今後のMタンパク検査
(1)キャピラリー電気泳動法によるタンパク分画検査
(2)Immunosubtraction法によるMタンパクの同定
(3)質量分析によるMタンパクの同定
(4)Mタンパク分画の面積百分率(面積%)の定量
Part 2 症例集
初級編
症例1 正常例
症例2 IgG型多発性骨髄腫
参考症例2 BJPを伴うIgG型骨髄腫
症例3 IgD型骨髄腫
参考症例3 IgD型Mタンパクを伴うアミロイドーシス
症例4 BJP型骨髄腫
参考症例4 BJP型骨髄腫
症例5 原発性マクログロブリン血症
参考症例5 原発性マクログロブリン血症
症例6 IgG型MGUS
参考症例6 IgG型MGUS
症例7 IgM型MGUS
参考症例7-1 IgM型MGUS(1)
参考症例7-2 IgM型MGUS(2)
中級編
症例8 ALアミロイドーシス
参考症例8-1 ALアミロイドーシス(1)
参考症例8-2 ALアミロイドーシス(2)
症例9 POEMS症候群
参考症例9 抗MAG抗体関連ニューロパチー
症例10 寒冷凝集素症
参考症例10 クリオグロブリン血症
症例11 重鎖病
症例12 BJP型MGRS
症例13 IgG4関連疾患
参考症例13 IgG4関連疾患
症例14 ダラツムマブ投与中の骨髄腫
参考症例14 モノクローナル抗体薬投与中の骨髄腫
症例15 自家末梢血幹細胞移植後の骨髄腫
上級編
症例16 1つのMタンパクで2本のM-bandを呈したマクログロブリン血症
参考症例16 1つのMタンパクで2本のM-bandを呈した骨髄腫
症例17 2種類のMタンパクを呈したALアミロイドーシス
参考症例17-1 2種類のMタンパクを呈した骨髄腫(1)
参考症例17-2 2種類のMタンパクを呈した骨髄腫(2)
症例18 M-bandの中抜け現象を呈した骨髄腫
参考症例18 M-bandの中抜け現象を呈したMGUS
症例19 尿BJPのM-bowが不明瞭であった骨髄腫
症例20 M-band様のアーチファクトを呈したマクログロブリン血症
参考症例20 M-band様のアーチファクトを呈したMGUS
Part 3 参考―Mタンパク以外の検査の見方―
1 血算
2 骨髄穿刺検査
3 フローサイトメトリー検査
4 染色体検査
5 X線検査
あとがき
資料 ダウンロード可能:IFE/IEP定型コメントの例,追加コメントの例(Part 2の症例に対応)
参考文献
索引
コラム Q&A
Q1 健診でどのような所見があったら,Mタンパク関連検査をオーダーすればいいですか?
Q2 FLCはどういうときにオーダーしますか?
Q3 Mタンパクの有無に関して,PEPとIFEの結果が異なっています.どう判断すればよいですか?
Q4 MGUSと診断したとき,どの程度の間隔で経過観察すべきですか?
Q5 IEPはどういうときにオーダーしますか?















