はじめに
今日,中枢神経疾患に関するMRIやCTの脳画像の解説書は多数出版されていますが,その多くは中枢神経疾患の診断や神経症候に焦点が当てられています.しかし,臨床の場では,その神経疾患の治療に成功しても,なんらかの後遺症が残ることが多く,リハビリテーション(以下,リハ)による治療が続けられているのが現状です.そのためリハの現場に脳画像を読影し,積極的,かつ効率的に治療に活用していく立場から書かれた書籍の必要性を感じてきました.
そこで本書では,脳画像読影のプロセスまで踏み込んだ実践的な内容を中心に,脳画像読影に必要な基礎知識をもとに,疾患別に演習形式を採用することで,脳画像の全体像を俯瞰し,臨床に必要とされる脳画像を取捨選択し,症状の予測と患者の評価・訓練・ケアに役立つ情報を読み取る臨床的推論能力を身につけることを目的としました.
もちろん,脳画像読影では必ずしもいつも正確な症状を予想できるわけではありません.予想外の症状が出ることもあります.しかし,そのような状況こそ,脳の機能解剖,病態生理に基づき,可視化された脳画像と神経学,神経心理学の双方向の関係性の原点に戻って再考し,さまざまな推論を行う絶好の機会であると考えます.
臨床現場では,じっくりと考える時間的余裕はありません.常に問題意識をもちながら,日々タイムリーで効果的な臨床実践が求められます.従って,本書が臨床における仮説・実践・検証のための1つの道具として活用され,臨床上の効果的なリハスキルアップに役立つのであれば,著者にとってこれほどうれしいことはありません.
科学的根拠に基づくリハおよびケアが求められるなかで,臨床的推論能力に基づく脳画像の積極的な活用が,リハにかかわる専門職にとって各領域における疾患別リハおよびケアの確立のための羅針盤となることを期待します.
最後に本書を完成するにあたり,監修・執筆で支えてくださった恩師の酒井保治郎先生(群馬大学名誉教授,老年病研究所附属病院名誉院長),運動面のリハについての執筆に協力していただいた髙村浩司先生(健康科学大学),日頃より臨床神経心理への脳画像の活用に,温かい御理解と御協力を頂いている永関慶重先生(ながせき頭痛クリニック院長),診療放射線技師の長谷英明氏,臨床に対して,いつも奇譚のない有益な御指導をいただいている長沼博文先生(前国立病院機構甲府病院名誉院長),秋山巌先生(秋山脳神経外科病院院長),そして,企画から長い時間に渡り,粘り強く相談と校正に御協力していただいた医歯薬出版第一出版部の小口真司氏,鷲野正人氏をはじめ関係者の方々に心よりお礼申し上げます.
平成29年12月吉日
小宮桂治
今日,中枢神経疾患に関するMRIやCTの脳画像の解説書は多数出版されていますが,その多くは中枢神経疾患の診断や神経症候に焦点が当てられています.しかし,臨床の場では,その神経疾患の治療に成功しても,なんらかの後遺症が残ることが多く,リハビリテーション(以下,リハ)による治療が続けられているのが現状です.そのためリハの現場に脳画像を読影し,積極的,かつ効率的に治療に活用していく立場から書かれた書籍の必要性を感じてきました.
そこで本書では,脳画像読影のプロセスまで踏み込んだ実践的な内容を中心に,脳画像読影に必要な基礎知識をもとに,疾患別に演習形式を採用することで,脳画像の全体像を俯瞰し,臨床に必要とされる脳画像を取捨選択し,症状の予測と患者の評価・訓練・ケアに役立つ情報を読み取る臨床的推論能力を身につけることを目的としました.
もちろん,脳画像読影では必ずしもいつも正確な症状を予想できるわけではありません.予想外の症状が出ることもあります.しかし,そのような状況こそ,脳の機能解剖,病態生理に基づき,可視化された脳画像と神経学,神経心理学の双方向の関係性の原点に戻って再考し,さまざまな推論を行う絶好の機会であると考えます.
臨床現場では,じっくりと考える時間的余裕はありません.常に問題意識をもちながら,日々タイムリーで効果的な臨床実践が求められます.従って,本書が臨床における仮説・実践・検証のための1つの道具として活用され,臨床上の効果的なリハスキルアップに役立つのであれば,著者にとってこれほどうれしいことはありません.
科学的根拠に基づくリハおよびケアが求められるなかで,臨床的推論能力に基づく脳画像の積極的な活用が,リハにかかわる専門職にとって各領域における疾患別リハおよびケアの確立のための羅針盤となることを期待します.
最後に本書を完成するにあたり,監修・執筆で支えてくださった恩師の酒井保治郎先生(群馬大学名誉教授,老年病研究所附属病院名誉院長),運動面のリハについての執筆に協力していただいた髙村浩司先生(健康科学大学),日頃より臨床神経心理への脳画像の活用に,温かい御理解と御協力を頂いている永関慶重先生(ながせき頭痛クリニック院長),診療放射線技師の長谷英明氏,臨床に対して,いつも奇譚のない有益な御指導をいただいている長沼博文先生(前国立病院機構甲府病院名誉院長),秋山巌先生(秋山脳神経外科病院院長),そして,企画から長い時間に渡り,粘り強く相談と校正に御協力していただいた医歯薬出版第一出版部の小口真司氏,鷲野正人氏をはじめ関係者の方々に心よりお礼申し上げます.
平成29年12月吉日
小宮桂治
はじめに
第1章 脳画像読影の基礎知識
1.リハビリテーションスタッフにとって脳画像とは
1.脳画像読影に必要な基礎的な神経解剖学 2.脳画像読影に必要な基礎的な脳領域と機能
2. 日常臨床に必要な脳画像の種類と基礎的原理
1.CTの原理の基礎 2.MRIの原理の基礎
3. 日常臨床に必要な病態生理の基礎と画像読影のポイント
1.脳梗塞の病態生理と画像読影のポイント 2.脳出血の病態生理と画像読影のポイント
3.頭部外傷の病態生理と画像読影のポイント 4.脳腫瘍の病態生理と画像読影のポイント
4. 正常脳画像と脳の解剖学的対応
1.MRI水平断画像の見方 2.脳血管の評価 3.解剖学的部位と血管支配
第2章 脳血管障害の脳画像読影演習
1.前大脳動脈領域病巣の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習) 3.予想される症状
4.リハビリテーション介入のポイント(認知面を中心に)
5.リハビリテーション介入のポイント(運動面を中心に)
2.中大脳動脈領域病巣の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習) 3.予想される症状
4.リハビリテーション介入のポイント(左中大脳動脈領域病巣:失語,失行症状)
5.リハビリテーション介入のポイント(右中大脳動脈領域病巣:右半球症状)
6.リハビリテーション介入のポイント(中大脳動脈領域病巣:運動障害)
3.後大脳動脈領域病巣の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習) 3.予想される症状
4.リハビリテーション介入のポイント(認知面を中心に)
5.リハビリテーション介入のポイント(運動面を中心に)
4. 視床動脈領域(視床)の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習) 3.予想される症状
4.リハビリテーション介入のポイント(認知面を中心に)
5.リハビリテーション介入のポイント(運動面を中心に)
5. 外側線条体動脈領域(被殻)の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習) 3.予想される症状
4.リハビリテーション介入のポイント(認知面を中心に)
5.リハビリテーション介入のポイント(運動面を中心に)
6.前交通動脈領域病巣の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習) 3.予想される症状
4.リハビリテーション介入のポイント
7.後交通動脈領域病巣の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習) 3.予想される症状
4.リハビリテーション介入のポイント
8.椎骨脳底動脈領域病巣の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習) 3.予想される症状
4.リハビリテーション介入のポイント(中脳領域病巣)
5.リハビリテーション介入のポイント(橋領域病巣)
6.リハビリテーション介入のポイント(延髄領域病巣)
9.小脳領域病巣の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習) 3.予想される症状
4.リハビリテーション介入のポイント(小脳領域)
5.リハビリテーション介入のポイント(運動面)
第3章 頭部外傷の脳画像読影演習
頭部外傷の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習)
3.予想される症状 4.リハビリテーションの実際
第4章 脳腫瘍の脳画像読影演習
脳腫瘍の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習)
3.予想される症状 4.リハビリテーションの実際
第5章 水頭症の脳画像読影演習
水頭症の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習)
3.予想される症状 4.リハビリテーションの実際
索引
第1章 脳画像読影の基礎知識
1.リハビリテーションスタッフにとって脳画像とは
1.脳画像読影に必要な基礎的な神経解剖学 2.脳画像読影に必要な基礎的な脳領域と機能
2. 日常臨床に必要な脳画像の種類と基礎的原理
1.CTの原理の基礎 2.MRIの原理の基礎
3. 日常臨床に必要な病態生理の基礎と画像読影のポイント
1.脳梗塞の病態生理と画像読影のポイント 2.脳出血の病態生理と画像読影のポイント
3.頭部外傷の病態生理と画像読影のポイント 4.脳腫瘍の病態生理と画像読影のポイント
4. 正常脳画像と脳の解剖学的対応
1.MRI水平断画像の見方 2.脳血管の評価 3.解剖学的部位と血管支配
第2章 脳血管障害の脳画像読影演習
1.前大脳動脈領域病巣の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習) 3.予想される症状
4.リハビリテーション介入のポイント(認知面を中心に)
5.リハビリテーション介入のポイント(運動面を中心に)
2.中大脳動脈領域病巣の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習) 3.予想される症状
4.リハビリテーション介入のポイント(左中大脳動脈領域病巣:失語,失行症状)
5.リハビリテーション介入のポイント(右中大脳動脈領域病巣:右半球症状)
6.リハビリテーション介入のポイント(中大脳動脈領域病巣:運動障害)
3.後大脳動脈領域病巣の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習) 3.予想される症状
4.リハビリテーション介入のポイント(認知面を中心に)
5.リハビリテーション介入のポイント(運動面を中心に)
4. 視床動脈領域(視床)の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習) 3.予想される症状
4.リハビリテーション介入のポイント(認知面を中心に)
5.リハビリテーション介入のポイント(運動面を中心に)
5. 外側線条体動脈領域(被殻)の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習) 3.予想される症状
4.リハビリテーション介入のポイント(認知面を中心に)
5.リハビリテーション介入のポイント(運動面を中心に)
6.前交通動脈領域病巣の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習) 3.予想される症状
4.リハビリテーション介入のポイント
7.後交通動脈領域病巣の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習) 3.予想される症状
4.リハビリテーション介入のポイント
8.椎骨脳底動脈領域病巣の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習) 3.予想される症状
4.リハビリテーション介入のポイント(中脳領域病巣)
5.リハビリテーション介入のポイント(橋領域病巣)
6.リハビリテーション介入のポイント(延髄領域病巣)
9.小脳領域病巣の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習) 3.予想される症状
4.リハビリテーション介入のポイント(小脳領域)
5.リハビリテーション介入のポイント(運動面)
第3章 頭部外傷の脳画像読影演習
頭部外傷の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習)
3.予想される症状 4.リハビリテーションの実際
第4章 脳腫瘍の脳画像読影演習
脳腫瘍の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習)
3.予想される症状 4.リハビリテーションの実際
第5章 水頭症の脳画像読影演習
水頭症の脳画像読影
1.基礎的事項の確認 2.画像読影(演習)
3.予想される症状 4.リハビリテーションの実際
索引

















