まえがき
最近20年ほどのCRRTの臨床をめぐる挑戦は,目覚ましく行われてきた感がある.本書は,Precision CRRTを目指して第1版を発行し,その後15年の歳月を経ている.第3版では,Co-editorに東京大学医学部附属病院救急・集中治療科教授と臨床工学部部長を兼任している土井研人先生を迎え,そのアドバイスのもとコンテンツを吟味すると共に執筆者を大幅に刷新した.これにより,新たな視点で近年の知見をわが国の実情を踏まえつつ取り入れて,完成することができた.編集及び監修をしている私にとって,新たな学びになる記事も散見されている.あらためて本書の強みは,読者が必要な箇所をどこから読んでもスグに臨床に反映できるエッセンスを示している点だと思う.同時に単なるマニュアルとしての乾いた記述ではなく,大局観を示している記事が多く,本書を読むことで正しい視座を育むことができるであろう.
CRRT治療は,国内はもとより国外では施設間の事情が大幅に異なっており,前向きの多施設共同研究の推進には苦労が多く,有病率の高い内科疾患治療薬の治験のようなわけには到底いかない.そうした中で,近年ではSOFAスコアの活用で一定の病態をマッピングして成果を得る報告が出てきており,お作法が整いつつある感がある.CRRTを必要とする症例の治療では,エビデンスを念頭に置きつつも,医療チーム全体で症例毎にpersonalizeした展開をすることは必須で,限られた時間との勝負である.その中にあって,集中治療室でrenal replacement therapyを受けた患者死亡率は年を追うごとに減少しており,中でも重症例ではCRRTが選択されている点は見逃せない(6章─8を参照).先進国のcritical careにおいて,わが国の救急医学の質の高さを示すものである.同時に本書が提唱してきたPrecision CRRTの遡及効かもしれない.つまり本書へのニーズがあると考える根拠の一つである.また,AI全盛期になりつつある現在にあっても,当該領域の最適化解をAI主体で得ることはなかなか難しく,その点でも本書の存在意義があると確信している.
最適かつ最良のCRRT治療を,一人でも多くの重症患者さんが受けられることを願ってやまない.
2026年5月
野入英世(NOIRI,Eisei,M.D.,Ph.D.,F.A.S.N.)
最近20年ほどのCRRTの臨床をめぐる挑戦は,目覚ましく行われてきた感がある.本書は,Precision CRRTを目指して第1版を発行し,その後15年の歳月を経ている.第3版では,Co-editorに東京大学医学部附属病院救急・集中治療科教授と臨床工学部部長を兼任している土井研人先生を迎え,そのアドバイスのもとコンテンツを吟味すると共に執筆者を大幅に刷新した.これにより,新たな視点で近年の知見をわが国の実情を踏まえつつ取り入れて,完成することができた.編集及び監修をしている私にとって,新たな学びになる記事も散見されている.あらためて本書の強みは,読者が必要な箇所をどこから読んでもスグに臨床に反映できるエッセンスを示している点だと思う.同時に単なるマニュアルとしての乾いた記述ではなく,大局観を示している記事が多く,本書を読むことで正しい視座を育むことができるであろう.
CRRT治療は,国内はもとより国外では施設間の事情が大幅に異なっており,前向きの多施設共同研究の推進には苦労が多く,有病率の高い内科疾患治療薬の治験のようなわけには到底いかない.そうした中で,近年ではSOFAスコアの活用で一定の病態をマッピングして成果を得る報告が出てきており,お作法が整いつつある感がある.CRRTを必要とする症例の治療では,エビデンスを念頭に置きつつも,医療チーム全体で症例毎にpersonalizeした展開をすることは必須で,限られた時間との勝負である.その中にあって,集中治療室でrenal replacement therapyを受けた患者死亡率は年を追うごとに減少しており,中でも重症例ではCRRTが選択されている点は見逃せない(6章─8を参照).先進国のcritical careにおいて,わが国の救急医学の質の高さを示すものである.同時に本書が提唱してきたPrecision CRRTの遡及効かもしれない.つまり本書へのニーズがあると考える根拠の一つである.また,AI全盛期になりつつある現在にあっても,当該領域の最適化解をAI主体で得ることはなかなか難しく,その点でも本書の存在意義があると確信している.
最適かつ最良のCRRT治療を,一人でも多くの重症患者さんが受けられることを願ってやまない.
2026年5月
野入英世(NOIRI,Eisei,M.D.,Ph.D.,F.A.S.N.)
総論
1章 すぐ治療開始するため
1.CRRTの適応(小丸陽平)
ICUにおける急性腎障害とRRT/Renal indicationとnon-renal indication/AKI患者におけるCRRTの選択まで(腎後性・腎前性の除外)/AKIにおける腎代替療法施行の選択/Non-renal indication
2.どのように:モードと処方の決め方(小丸陽平)
持続か間欠か/CRRTのモードの種類/透析と濾過/除去効率/血液濾過の弊害/海外におけるCRRT/CRRTの処方とは/国内ガイドラインにおける記載/CRRT処方の実際
2章 医療用器材
1.補充液・透析液(浜崎敬文・土井研人)
組成/安全性に配慮した製剤設計
2.ヘモフィルタの選択(藤城和樹)
ヘモフィルタに求められる性能/膜材質の種類と特徴/膜面積の選択/使用時の注意点・合併症
3.バスキュラーアクセス(中村元信)
CRRTにおける既存バスキュラーアクセスの位置づけ/カテーテルの種類/留置箇所/カテーテルの留置方法/合併症/メンテナンストラブル
4.抗凝固薬の選択とモニタリング(塚田隆義)
抗凝固薬の必要性/CRRTで用いられる抗凝固薬の種類と特徴/まとめ
5.血液浄化装置(青木拓史)
血液浄化装置に求められる要件/血液浄化装置の新しい機能/各種測定値の概要/各種設定値
3章 トラブルシューティング
1.施行中の機器関連操作(島峰逸朗・渡邊恭通)
アラーム発生時の基本/各種アラームとトラブルシューティング
2.合併症:血圧低下(浅田敏文)
血圧低下のメカニズムとCRRT/全身状態の把握/血圧低下と病態/治療上の注意
3.合併症:出血(浅田敏文)
出血の原因/出血を認める場合のCRRT/まとめ
4.合併症:電解質異常(前田明倫)
低下しやすい電解質/そのほか注意が必要な電解質/モニタリングの重要性
4章 よりよい理解のために
1.CRRTの原理(小丸陽平)
拡散と限外濾過/治療法/その他の治療法
2.CRRTの治療量の考え方(吉田輝彦)
透析液・補液の流量を決める原則/物質の除去/体内からの物質の除去/CRRT条件設定(国際基準vs保険診療)
3.CRRT開始と終了(吉田輝彦)
CRRT開始の適応/CRRT終了:間欠的治療への移行/CRRT終了:RRTからの離脱
各論
5章 CRRTの適応
1.腎疾患:AKIに対するCRRT(土井研人)
いつCRRTの適応と判断するのか?/CRRTか,間欠的血液透析か?/まとめ
2.腎疾患:ESRD(ESKD)に対するCRRT(小丸陽平・浜崎敬文)
背景/対象/CRRTのモダリティ選択/CRRT施行時のバスキュラーアクセス/CRRTからの離脱とIHDへの移行/ESRD症例でのCRRT施行時の留意点
3.循環器疾患:CCUでのCRRT(松浦 亮)
心不全,心原性ショックに対するCRRT/心臓外科手術とCRRT/末期腎不全に対する治療/まとめ
4.敗血症および高サイトカイン血症(土井研人)
サイトカイン,敗血症,non-renal indication/CRRTによるサイトカイン除去の理論/CRRTによるサイトカイン除去の実際
5.急性肝不全・劇症肝炎(浜崎敬文)
急性肝不全・劇症肝炎/人工肝補助療法/急性肝不全に対する血液浄化療法/現在と今後の目標
6.急性膵炎(中村元信)
急性膵炎の定義と診断/治療
7.ARDS(急性呼吸窮迫症候群)(前田明倫)
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)/肺腎連関/ARDSとCRRT/ECMOとCRRTの併用戦略/ARDSに合併する呼吸性アシドーシスをCRRTで補正する場合の注意点
8.周術期のCRRT(前田明倫)
周術期のAKI/周術期のCRRT/抗凝固薬の選択/まとめ
9.頭蓋内疾患(前田明倫)
頭蓋内疾患でCRRTを要する疾患/頭蓋内圧に関する病態生理/頭蓋内疾患と腎代替療法
10.中毒および代謝障害に対する体外式血液浄化療法(井口竜太)
体外式毒物除去の基本原則/血液浄化療法の比較/毒物別管理法:エビデンスに基づく便覧/主要な代謝性疾患に対する血液浄化療法/実践的管理と補助療法
11.小児・乳幼児のCRRT(和田尚弘・澤田真理子)
適応となる病態/開始時期/CRRT施行の具体的条件/まとめ
6章 CRRT施行中の検討項目
1.輸液(小丸陽平)
考え方/実際の輸液/実際の輸液内容/術後/その他の電解質
2.栄養(中野秀比古)
重症病態の特徴と栄養療法の課題/CRRT施行時の具体的な栄養計画
3.薬剤(山本武人・大野能之)
CRRT導入患者への薬物投与の問題点/CRRTによる薬剤除去の原則/CRRT導入患者に対する抗菌薬の投与量設計/CRRT導入患者に対する薬物の投与量調節のチェックポイント
4.ECMOとの接続(岩﨑圭悟)
はじめに/接続方法/安全に運用するための注意点/おわりに
5.人工腎臓の性能評価(小丸陽平・渡邊恭通)
背景/「血液浄化器の性能評価法2012」/集中治療分野における性能評価の実際/治療効率の指標としての濾過クリアランス
6.吸着型CRRTと吸着フィルター(井口竜太)
吸着性能/フィルター寿命/吸着により除去される物質/新規吸着・免疫調節デバイス(CytoSorb,HA330/HA380,Seraph 100)/物質除去と臨床的効果
7.院内クラウド化情報管理システム(ICMCI)を活用したCRRT施行中の情報管理(八反丸善裕)
遠隔モニタリングの必要性/ICMCIの概要/期待できる効果/今後の展望
8.国内治療の現状~診療報酬データベースからの報告~(宮本佳尚・岩上将夫)
Diagnosis Procedure Combination(DPC)データベース/集中治療室におけるRRTを要した患者の予後
【参考資料】安全確認のためのチェックリスト(宮﨑 進)
CRRT使用中点検チェックリスト/CRRTプライミング後,開始後チェックリスト
索引
サイドメモ 目次
エコーによる体液量評価:VE×US
敗血症ショックに対する吸着膜を用いたCRRT
カフ付き皮下トンネル型カテーテルの留置
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)
海外における抗凝固薬の使用状況
血漿交換に必要な血漿量の求め方
アルブミン液を用いた人工肝補助療法
AKIに合併する肺障害の機序
脳浮腫
循環動態の不安定な児に対する対応
Refeeding Syndrome
CRRT施行時の栄養療法:To Do List
CRRTによる薬物のクリアランス(CLCRRT)
分子量による篩係数の違い
薬物除去率(fd)
分布容積(Vd)
Pharmacokinetics/Pharmacodynamics(PK/PD)理論
人工腎臓の歴史
疫学データのLimitation
1章 すぐ治療開始するため
1.CRRTの適応(小丸陽平)
ICUにおける急性腎障害とRRT/Renal indicationとnon-renal indication/AKI患者におけるCRRTの選択まで(腎後性・腎前性の除外)/AKIにおける腎代替療法施行の選択/Non-renal indication
2.どのように:モードと処方の決め方(小丸陽平)
持続か間欠か/CRRTのモードの種類/透析と濾過/除去効率/血液濾過の弊害/海外におけるCRRT/CRRTの処方とは/国内ガイドラインにおける記載/CRRT処方の実際
2章 医療用器材
1.補充液・透析液(浜崎敬文・土井研人)
組成/安全性に配慮した製剤設計
2.ヘモフィルタの選択(藤城和樹)
ヘモフィルタに求められる性能/膜材質の種類と特徴/膜面積の選択/使用時の注意点・合併症
3.バスキュラーアクセス(中村元信)
CRRTにおける既存バスキュラーアクセスの位置づけ/カテーテルの種類/留置箇所/カテーテルの留置方法/合併症/メンテナンストラブル
4.抗凝固薬の選択とモニタリング(塚田隆義)
抗凝固薬の必要性/CRRTで用いられる抗凝固薬の種類と特徴/まとめ
5.血液浄化装置(青木拓史)
血液浄化装置に求められる要件/血液浄化装置の新しい機能/各種測定値の概要/各種設定値
3章 トラブルシューティング
1.施行中の機器関連操作(島峰逸朗・渡邊恭通)
アラーム発生時の基本/各種アラームとトラブルシューティング
2.合併症:血圧低下(浅田敏文)
血圧低下のメカニズムとCRRT/全身状態の把握/血圧低下と病態/治療上の注意
3.合併症:出血(浅田敏文)
出血の原因/出血を認める場合のCRRT/まとめ
4.合併症:電解質異常(前田明倫)
低下しやすい電解質/そのほか注意が必要な電解質/モニタリングの重要性
4章 よりよい理解のために
1.CRRTの原理(小丸陽平)
拡散と限外濾過/治療法/その他の治療法
2.CRRTの治療量の考え方(吉田輝彦)
透析液・補液の流量を決める原則/物質の除去/体内からの物質の除去/CRRT条件設定(国際基準vs保険診療)
3.CRRT開始と終了(吉田輝彦)
CRRT開始の適応/CRRT終了:間欠的治療への移行/CRRT終了:RRTからの離脱
各論
5章 CRRTの適応
1.腎疾患:AKIに対するCRRT(土井研人)
いつCRRTの適応と判断するのか?/CRRTか,間欠的血液透析か?/まとめ
2.腎疾患:ESRD(ESKD)に対するCRRT(小丸陽平・浜崎敬文)
背景/対象/CRRTのモダリティ選択/CRRT施行時のバスキュラーアクセス/CRRTからの離脱とIHDへの移行/ESRD症例でのCRRT施行時の留意点
3.循環器疾患:CCUでのCRRT(松浦 亮)
心不全,心原性ショックに対するCRRT/心臓外科手術とCRRT/末期腎不全に対する治療/まとめ
4.敗血症および高サイトカイン血症(土井研人)
サイトカイン,敗血症,non-renal indication/CRRTによるサイトカイン除去の理論/CRRTによるサイトカイン除去の実際
5.急性肝不全・劇症肝炎(浜崎敬文)
急性肝不全・劇症肝炎/人工肝補助療法/急性肝不全に対する血液浄化療法/現在と今後の目標
6.急性膵炎(中村元信)
急性膵炎の定義と診断/治療
7.ARDS(急性呼吸窮迫症候群)(前田明倫)
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)/肺腎連関/ARDSとCRRT/ECMOとCRRTの併用戦略/ARDSに合併する呼吸性アシドーシスをCRRTで補正する場合の注意点
8.周術期のCRRT(前田明倫)
周術期のAKI/周術期のCRRT/抗凝固薬の選択/まとめ
9.頭蓋内疾患(前田明倫)
頭蓋内疾患でCRRTを要する疾患/頭蓋内圧に関する病態生理/頭蓋内疾患と腎代替療法
10.中毒および代謝障害に対する体外式血液浄化療法(井口竜太)
体外式毒物除去の基本原則/血液浄化療法の比較/毒物別管理法:エビデンスに基づく便覧/主要な代謝性疾患に対する血液浄化療法/実践的管理と補助療法
11.小児・乳幼児のCRRT(和田尚弘・澤田真理子)
適応となる病態/開始時期/CRRT施行の具体的条件/まとめ
6章 CRRT施行中の検討項目
1.輸液(小丸陽平)
考え方/実際の輸液/実際の輸液内容/術後/その他の電解質
2.栄養(中野秀比古)
重症病態の特徴と栄養療法の課題/CRRT施行時の具体的な栄養計画
3.薬剤(山本武人・大野能之)
CRRT導入患者への薬物投与の問題点/CRRTによる薬剤除去の原則/CRRT導入患者に対する抗菌薬の投与量設計/CRRT導入患者に対する薬物の投与量調節のチェックポイント
4.ECMOとの接続(岩﨑圭悟)
はじめに/接続方法/安全に運用するための注意点/おわりに
5.人工腎臓の性能評価(小丸陽平・渡邊恭通)
背景/「血液浄化器の性能評価法2012」/集中治療分野における性能評価の実際/治療効率の指標としての濾過クリアランス
6.吸着型CRRTと吸着フィルター(井口竜太)
吸着性能/フィルター寿命/吸着により除去される物質/新規吸着・免疫調節デバイス(CytoSorb,HA330/HA380,Seraph 100)/物質除去と臨床的効果
7.院内クラウド化情報管理システム(ICMCI)を活用したCRRT施行中の情報管理(八反丸善裕)
遠隔モニタリングの必要性/ICMCIの概要/期待できる効果/今後の展望
8.国内治療の現状~診療報酬データベースからの報告~(宮本佳尚・岩上将夫)
Diagnosis Procedure Combination(DPC)データベース/集中治療室におけるRRTを要した患者の予後
【参考資料】安全確認のためのチェックリスト(宮﨑 進)
CRRT使用中点検チェックリスト/CRRTプライミング後,開始後チェックリスト
索引
サイドメモ 目次
エコーによる体液量評価:VE×US
敗血症ショックに対する吸着膜を用いたCRRT
カフ付き皮下トンネル型カテーテルの留置
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)
海外における抗凝固薬の使用状況
血漿交換に必要な血漿量の求め方
アルブミン液を用いた人工肝補助療法
AKIに合併する肺障害の機序
脳浮腫
循環動態の不安定な児に対する対応
Refeeding Syndrome
CRRT施行時の栄養療法:To Do List
CRRTによる薬物のクリアランス(CLCRRT)
分子量による篩係数の違い
薬物除去率(fd)
分布容積(Vd)
Pharmacokinetics/Pharmacodynamics(PK/PD)理論
人工腎臓の歴史
疫学データのLimitation















