やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

特集にあたって
 回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)は,急性期から生活期への橋渡しを担う重要な治療ステージである.退院後の患者は入院生活とは異なる複雑な環境に身を置くため,環境整備や家族支援,地域資源の活用,移動手段の確保,社会参加の調整といった包括的マネジメントは,生活期の回復プロセスに大きな影響を与える.入院中に獲得した能力が十分に活かされず機能低下をきたす“post-discharge decline”は,国内外で共通の課題であり,退院直後から生活期へ円滑につなぐ連携体制の重要性は高まっている.
 2000年の介護保険創設とともにスタートした回復期病棟は,四半世紀を経て成熟し,転換期を迎えた.特に専従医制度の終了に伴い病棟担当医の外来診療が可能となったことは,生活期リハビリテーション治療への新たな展開として期待される.地域包括ケアシステムが定着しつつある現在,回復期で培った機能を維持・向上させ,具体的な活動や社会参加へつなげる可能性が広がっている.患者を中心に医療・介護・地域が一体となって支える体制の構築が求められている.
 本特集では,異なる地域特性や医療機能をもつ回復期の第一線でご活躍の6名の先生方に実学としての問題解決と具体的な臨床実践をご紹介いただいた.
 鳥取県・錦海リハビリテーション病院の角田 賢先生には,通所・訪問リハビリテーションの専門性と入院中からの連携,さらに生活基盤となる運転再開支援外来をご提示いただいた.宮城県・仙台リハビリテーション病院の渡邉裕志先生には,広域的な転院受け入れを背景とした外泊訓練,高齢者を含めた手厚い就労支援外来での良好な復帰率の成果をご紹介いただいた.千葉県千葉リハビリテーションセンターの菊地尚久先生には,自立訓練や就労移行支援施設との連携,県指定高次脳機能障害支援センターとしての機能,運転再開評価外来の実際をご報告いただいた.東京都・初台リハビリテーション病院の菅原英和先生には,都市型回復期での退院後支援と長期的な就労支援を通し,医学的リハビリテーションの重要性と「医療と福祉のハブ」としての役割を強調いただいた.千葉県・タムス浦安病院の竹内正人先生には,“動く・食べる・生きる”を支える多職種連携でのICFモデルを基盤とした入退院支援,重度認知症デイケアの活用,機能低下例への対応,専門外来への継続を解説いただいた.特定機能病院リハビリテーション病棟を担う川崎医科大学の新井伸征先生には,高い転科率という特有の環境下における評価項目の統一や通信機器を活用した退院支援,講座ネットワークを活用した診療連携・外来フォローの実際をご紹介いただいた.
 いずれの稿においても,退院前訪問,初期介入,機能再獲得,長期フォロー,就労支援・運転再開等,読み応えのある臨床実践が示され,現場の課題解決の示唆に富むものとなっている.
 本特集が,回復期病棟退院後の支援の質を高め,地域で生きる人々の生活を豊かにする実践へつながることを切に期待する.
 (編集委員会 企画担当:永田智子)
特集 回復期リハビリテーション病棟退院後の外来診療─生活を豊かにする実践─
 特集にあたって(永田智子)
 鳥取県西部圏域における回復期リハビリテーション病棟退院後の生活期リハビリテーション(角田 賢)
 地方都市における回復期リハビリテーション病棟退院後の外来リハビリテーションの役割(渡邉裕志)
 リハビリテーションセンター機能をもつ回復期リハビリテーション病棟退院後のリハビリテーション(菊地尚久)
 回復期リハビリテーション病棟退院後のリハビリテーション治療―都市型モデルにおける生活再建と社会復帰支援―(菅原英和)
 都市近郊型の回復期リハビリテーション病棟退院後のリハビリテーション治療(竹内正人 永田智子)
 特定機能病院リハビリテーション病棟退院後のリハビリテーション治療(新井伸征 道勇智子・他)

新連載 入院関連能力障害の評価と対応
 1.高齢者における入院関連能力障害(牛田健太 百崎 良)

連載
巻頭カラー 多領域から読み解くパラスポーツ支援の最前線
 5.デフスポーツにおける情報保障と医学的配慮―聴覚障害のある人が安全にスポーツを楽しむために―(根本 玲)

ニューカマー リハ科専門医
 (佐藤由美)

リハビリテーション医療に必要な画像診断の基本
 5.パーキンソン病と周辺疾患(植木美乃)

腸-筋-脳連関の臨床応用:マイクロバイオーム介入で拓くサルコペニア治療
 3.マイクロバイオーム介入と腸内細菌叢移植の可能性(石川 大 永原章仁)

AIと医療DX
 10.医療連携における生成AIの可能性(上田貴代 松本彰浩・他)

回復期リハビリテーション病棟―最新の治療
 2.エビデンスに基づく脳卒中上肢リハビリテーション―回復期におけるCI療法とロボット療法の実践例―(佐久間克也 川上途行・他)

呼吸リハビリテーションの最新知見と実践
 5.肺がん患者に対するリハビリテーション戦略―周術期から緩和期まで―(野口雅矢 東本有司)

神経・筋疾患治療の最前線
 11.脊髄髄膜瘤(二分脊椎)のリハビリテーション(田中弘志)

リハビリテーション室にある用具・器具
 8.ペグボード―上肢機能訓練における評価と治療の接点―(濱口豊太)

医療機関における運転指導
 10.脳損傷者に対する臨床現場におけるドライビングシミュレーターの活用(森松千夏)

臨床研究
 回復期リハビリテーション病棟より自宅退院した患者におけるHRQOLの短期的変化―探索的検討―(水端大貴 橋本圭輔・他)

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