特集にあたって
人工関節置換術は,整形外科領域において最も成功した治療の1つとして発展してきた.人工股関節および人工膝関節では長期成績が安定し,その有効性は広く確立している.人工肩関節,人工肘関節,人工足関節の適応も拡大しており,さらに腫瘍切除後の再建に用いられる腫瘍用人工関節においても,長期成績の向上を目指した独自の改良が重ねられている.
人工関節の進歩の特徴としては,インプラント設計の洗練,材料工学の発展,手術支援技術の進化が挙げられる.クロスリンクポリエチレンや高度な表面加工技術により耐摩耗性や固定性が向上し,3次元画像に基づく術前計画,ナビゲーションやロボット支援手術の導入によって,骨切り精度やインプラント設置の再現性も高まっている.これらの進歩は耐久性の向上にとどまらず,生来の関節運動やアライメントを可能な限り再現し,患者満足度の向上を目指す潮流とも軌を一にしている.
しかしながら,人工関節置換術は関節ごとに目的や侵襲の程度が大きく異なる.股関節や膝関節では早期荷重と機能回復が重視される一方,足関節では腫脹や創部合併症への配慮が不可欠である.また,同一部位であっても,全置換か部分置換か,連結型か非連結型か,解剖学的再建かリバース型(肩)か,セメント固定かセメントレス固定か,筋腱を切離するか温存するかといった術式の違いが,術後機能やリハビリテーション戦略に直結する.何を切除し,何が温存されているのか.どの組織が力学的安定性を担い,どの組織が再建されているのか─これらを理解せずして,適切な負荷設定や可動域訓練,動作指導を行うことはできない.人工関節置換術後のリハビリテーション医療は手術の延長線上にあり,術式の理解はその出発点となる.
人工関節置換術後のリハビリテーションにおいて重要なのは,標準化されたプロトコールを形式的に適用することではなく,各術式の特徴と制約を踏まえたうえで,段階的かつ個別性の高い介入を行うことである.さらに,「最終的にどこまで動いてよいのか」を患者と共有する視点も欠かせない.患者が自身の人工関節の特性を理解し,適切な活動レベルを主体的に選択できるよう支援することは,リハビリテーション医療の重要な役割である.
本特集では,各関節における人工関節および術式の進歩と,それに対応するリハビリテーション治療の考え方を改めて整理した.本特集を通じて,人工関節の特性と術式への理解を深め,個々の患者に対してどのようなリハビリテーション医療を提供すべきかを再考する契機となれば幸いである.
(編集委員会 企画担当:篠田裕介)
人工関節置換術は,整形外科領域において最も成功した治療の1つとして発展してきた.人工股関節および人工膝関節では長期成績が安定し,その有効性は広く確立している.人工肩関節,人工肘関節,人工足関節の適応も拡大しており,さらに腫瘍切除後の再建に用いられる腫瘍用人工関節においても,長期成績の向上を目指した独自の改良が重ねられている.
人工関節の進歩の特徴としては,インプラント設計の洗練,材料工学の発展,手術支援技術の進化が挙げられる.クロスリンクポリエチレンや高度な表面加工技術により耐摩耗性や固定性が向上し,3次元画像に基づく術前計画,ナビゲーションやロボット支援手術の導入によって,骨切り精度やインプラント設置の再現性も高まっている.これらの進歩は耐久性の向上にとどまらず,生来の関節運動やアライメントを可能な限り再現し,患者満足度の向上を目指す潮流とも軌を一にしている.
しかしながら,人工関節置換術は関節ごとに目的や侵襲の程度が大きく異なる.股関節や膝関節では早期荷重と機能回復が重視される一方,足関節では腫脹や創部合併症への配慮が不可欠である.また,同一部位であっても,全置換か部分置換か,連結型か非連結型か,解剖学的再建かリバース型(肩)か,セメント固定かセメントレス固定か,筋腱を切離するか温存するかといった術式の違いが,術後機能やリハビリテーション戦略に直結する.何を切除し,何が温存されているのか.どの組織が力学的安定性を担い,どの組織が再建されているのか─これらを理解せずして,適切な負荷設定や可動域訓練,動作指導を行うことはできない.人工関節置換術後のリハビリテーション医療は手術の延長線上にあり,術式の理解はその出発点となる.
人工関節置換術後のリハビリテーションにおいて重要なのは,標準化されたプロトコールを形式的に適用することではなく,各術式の特徴と制約を踏まえたうえで,段階的かつ個別性の高い介入を行うことである.さらに,「最終的にどこまで動いてよいのか」を患者と共有する視点も欠かせない.患者が自身の人工関節の特性を理解し,適切な活動レベルを主体的に選択できるよう支援することは,リハビリテーション医療の重要な役割である.
本特集では,各関節における人工関節および術式の進歩と,それに対応するリハビリテーション治療の考え方を改めて整理した.本特集を通じて,人工関節の特性と術式への理解を深め,個々の患者に対してどのようなリハビリテーション医療を提供すべきかを再考する契機となれば幸いである.
(編集委員会 企画担当:篠田裕介)
特集 人工関節の進歩とリハビリテーション治療
特集にあたって(篠田裕介)
人工肩関節の進歩とリハビリテーション治療(永瀬雄一)
人工肘関節のリハビリテーション(岩澤三康 内藤昌志・他)
人工股関節の進歩とリハビリテーション治療(門脇 俊)
人工膝関節手術の進歩とリハビリテーション治療(乾 洋 飯村晴香)
人工足関節の進歩と術後リハビリテーション(安井哲郎)
下肢における腫瘍用人工関節の進歩とリハビリテーション治療(吉田雅博)
対談 人間回復のためのMuscle Health~攻めのリハビリと栄養,そして街づくりへ~
(酒向正春 吉村芳弘)
連載
巻頭カラー デジタルフロンティア:次世代技術の展望
11.画像診断AI(中原龍一)
神経・筋疾患治療の最前線
5.重症筋無力症(Myasthenia Gravis)(今井富裕 上田智之)
ニューカマー リハ科専門医
(笠井健司)
最新版! 摂食嚥下機能評価―スクリーニングから臨床研究まで
23.頭頸部がんにおける嚥下障害マネジメント(上羽瑠美)
Muscle Health―多職種連携で拓く包括的介入の最前線
7.多成分介入の科学:運動×栄養×口腔管理で相乗効果を最大化(吉村芳弘)
支援機器の現在と未来―普及に向けた取り組み
9.コミュニケーション支援(聴覚障害)―補聴機器の現状と課題―(鈴木恵子)
リハビリテーション室にある用具・器具
2.プラットフォーム(中山恭秀)
医療機関における運転指導
4.妊娠期の自動車運転とシートベルト着用―母子の安全を守るための実践的指導ポイント―(花原恭子)
AIと医療DX
4.デジタルヘルスを促進するために(岡本 純 小林泰之)
リハビリテーション関連学会に行ってみよう!
11.日本精神障害者リハビリテーション学会(内野俊郎 吉田光爾・他)
臨床経験
気管切開後に遷延した嚥下障害が可動式気管カニューレ導入後に改善した脳幹梗塞患者(宇都恒平 越智光宏・他)
バックナンバー
投稿規定
特集にあたって(篠田裕介)
人工肩関節の進歩とリハビリテーション治療(永瀬雄一)
人工肘関節のリハビリテーション(岩澤三康 内藤昌志・他)
人工股関節の進歩とリハビリテーション治療(門脇 俊)
人工膝関節手術の進歩とリハビリテーション治療(乾 洋 飯村晴香)
人工足関節の進歩と術後リハビリテーション(安井哲郎)
下肢における腫瘍用人工関節の進歩とリハビリテーション治療(吉田雅博)
対談 人間回復のためのMuscle Health~攻めのリハビリと栄養,そして街づくりへ~
(酒向正春 吉村芳弘)
連載
巻頭カラー デジタルフロンティア:次世代技術の展望
11.画像診断AI(中原龍一)
神経・筋疾患治療の最前線
5.重症筋無力症(Myasthenia Gravis)(今井富裕 上田智之)
ニューカマー リハ科専門医
(笠井健司)
最新版! 摂食嚥下機能評価―スクリーニングから臨床研究まで
23.頭頸部がんにおける嚥下障害マネジメント(上羽瑠美)
Muscle Health―多職種連携で拓く包括的介入の最前線
7.多成分介入の科学:運動×栄養×口腔管理で相乗効果を最大化(吉村芳弘)
支援機器の現在と未来―普及に向けた取り組み
9.コミュニケーション支援(聴覚障害)―補聴機器の現状と課題―(鈴木恵子)
リハビリテーション室にある用具・器具
2.プラットフォーム(中山恭秀)
医療機関における運転指導
4.妊娠期の自動車運転とシートベルト着用―母子の安全を守るための実践的指導ポイント―(花原恭子)
AIと医療DX
4.デジタルヘルスを促進するために(岡本 純 小林泰之)
リハビリテーション関連学会に行ってみよう!
11.日本精神障害者リハビリテーション学会(内野俊郎 吉田光爾・他)
臨床経験
気管切開後に遷延した嚥下障害が可動式気管カニューレ導入後に改善した脳幹梗塞患者(宇都恒平 越智光宏・他)
バックナンバー
投稿規定















