特集にあたって
厚生労働省が,2001年に高次脳機能障害支援モデル事業を開始し,四半世紀が経過した.その間,診断基準が策定され,全国の高次脳機能障害者の生活,就学,就労に関する実態調査が行われ,リハビリテーション治療の手順が構築されてきた.そして,2023年以降現在まで,全国で高次脳機能障害およびその関連障害に対する地域支援ネットワーク構築促進事業が展開されている.すなわち,高次脳機能障害へのリハビリテーションが,「地域支援ネットワークの構築」にまで発展してきた.その理由は,高次脳機能障害が後遺する例には,地域リハビリテーションが必須であるからである.
高次脳機能障害の主な原因疾患である脳卒中,脳外傷は,発症時もしくは受傷時に意識障害が重篤な例,昏睡期間が長期に及んだ例は,高次脳機能障害が必発すると考えられる.後遺しやすい高次脳機能障害は,脳卒中と脳外傷でその質と程度は異なるが,注意障害,遂行機能障害,記憶障害,社会的行動障害(自発性の低下,易怒性,鬱状態等)が多い.こうした後遺障害のある高次脳機能障害者が,社会参加,もしくは社会復帰を目指す場合,回復期のリハビリテーション治療が終了しても,さらに高次脳機能障害の回復および代償手段の習熟,そして社会性を再獲得するために,生活期におけるリハビリテーション医療が必須となる.すなわち,地域でのネットワーク体制の構築である.
英国リハビリテーション医学会が発刊している脳損傷者へのリハビリテーション治療に関するガイドラインによると,脳損傷者の長期的なニーズに答える責任は,地域のさまざまな専門職(行政・福祉職,生活支援,健康指導,就労支援,教育,カウンセラー,ボランティア等)が分かち合う必要があること,そしてその長期的支援の目的は,当事者が自由に選択できる最適な社会参加活動を開始し維持できることであると述べている.
以上を背景に,厚生労働省は令和6年度から,高次脳機能障害者の社会生活支援とリハビリテーション医療に従事する専門職向けに研修制度を創設した.研修内容は,基礎研修(講義360分,演習360分),実践研修(講義400分,演習360分)に分かれ,各項目について,テキスト,動画が配備された.そして,これらの研修を受けることにより,高次脳機能障害者支援を行っている各事業所〔計画相談支援・障害児相談支援,生活介護,施設入所支援,共同生活援助,自立訓練(機能訓練・生活訓練),就労選択支援,就労移行支援,就労継続支援A型,就労継続支援B型等〕は,高次脳機能障害者支援体制加算を取得できるようになった.今後,わが国において,高次脳機能障害支援者養成研修を受ける専門職が増加することが見込まれる.そこで,本特集では,高次脳機能障害支援者養成研修に関し,各分野からその目的,内容,期待する点を解説していただくこととした.
(編集委員会 企画担当:渡邉 修)
厚生労働省が,2001年に高次脳機能障害支援モデル事業を開始し,四半世紀が経過した.その間,診断基準が策定され,全国の高次脳機能障害者の生活,就学,就労に関する実態調査が行われ,リハビリテーション治療の手順が構築されてきた.そして,2023年以降現在まで,全国で高次脳機能障害およびその関連障害に対する地域支援ネットワーク構築促進事業が展開されている.すなわち,高次脳機能障害へのリハビリテーションが,「地域支援ネットワークの構築」にまで発展してきた.その理由は,高次脳機能障害が後遺する例には,地域リハビリテーションが必須であるからである.
高次脳機能障害の主な原因疾患である脳卒中,脳外傷は,発症時もしくは受傷時に意識障害が重篤な例,昏睡期間が長期に及んだ例は,高次脳機能障害が必発すると考えられる.後遺しやすい高次脳機能障害は,脳卒中と脳外傷でその質と程度は異なるが,注意障害,遂行機能障害,記憶障害,社会的行動障害(自発性の低下,易怒性,鬱状態等)が多い.こうした後遺障害のある高次脳機能障害者が,社会参加,もしくは社会復帰を目指す場合,回復期のリハビリテーション治療が終了しても,さらに高次脳機能障害の回復および代償手段の習熟,そして社会性を再獲得するために,生活期におけるリハビリテーション医療が必須となる.すなわち,地域でのネットワーク体制の構築である.
英国リハビリテーション医学会が発刊している脳損傷者へのリハビリテーション治療に関するガイドラインによると,脳損傷者の長期的なニーズに答える責任は,地域のさまざまな専門職(行政・福祉職,生活支援,健康指導,就労支援,教育,カウンセラー,ボランティア等)が分かち合う必要があること,そしてその長期的支援の目的は,当事者が自由に選択できる最適な社会参加活動を開始し維持できることであると述べている.
以上を背景に,厚生労働省は令和6年度から,高次脳機能障害者の社会生活支援とリハビリテーション医療に従事する専門職向けに研修制度を創設した.研修内容は,基礎研修(講義360分,演習360分),実践研修(講義400分,演習360分)に分かれ,各項目について,テキスト,動画が配備された.そして,これらの研修を受けることにより,高次脳機能障害者支援を行っている各事業所〔計画相談支援・障害児相談支援,生活介護,施設入所支援,共同生活援助,自立訓練(機能訓練・生活訓練),就労選択支援,就労移行支援,就労継続支援A型,就労継続支援B型等〕は,高次脳機能障害者支援体制加算を取得できるようになった.今後,わが国において,高次脳機能障害支援者養成研修を受ける専門職が増加することが見込まれる.そこで,本特集では,高次脳機能障害支援者養成研修に関し,各分野からその目的,内容,期待する点を解説していただくこととした.
(編集委員会 企画担当:渡邉 修)
特集 厚生労働省による高次脳機能障害支援者養成研修制度
特集にあたって(渡邉 修)
高次脳機能障害支援者養成に関する研修の概要(深津玲子)
医学的リハビリテーション(渡邉 修)
失語症・コミュニケーション障害(内山量史)
制度活用・地域連携(今橋久美子)
小児への支援(廣瀬綾奈)
新連載 神経・筋疾患治療の最前線
1.筋萎縮性側索硬化症 Amyotrophic Lateral Sclerosis(和泉唯信 大崎裕亮・他)
連載
リハなひと
リハビリ当事者 横山和也さん
巻頭カラー デジタルフロンティア:次世代技術の展望
7.スマートフォンアプリを活用した行動変容支援(萩原悠太)
“こんなときどうする?” リハビリテーション臨床現場のモヤモヤ解決! 令和版
リハビリテーション科専門医取得後のキャリアアップ編(4)臨床と研究をつなぐ大学院進学戦略(百崎 良)
ニューカマー リハ科専門医
古閑丈裕
最新版! 摂食嚥下機能評価―スクリーニングから臨床研究まで
19.Eating Assessment Tool(EAT-10)(青柳陽一郎)
おさえておきたい転倒・転落予防の基本知識と現場での応用
15.転倒・転落予防と地域サポート(上田哲也)
Muscle Health―多職種連携で拓く包括的介入の最前線
3.悪液質: AWGC2023 基準の臨床応用(長野文彦)
知っておきたい! がんサポーティブケア
12.がん患者のアピアランス(外見)ケア(藤間勝子)
支援機器の現在と未来-普及に向けた取り組み
5.入浴支援機器(藤井 智)
回復期リハビリテーション病院・チームでキャリアアップ―私たちの院内研修
7.装具・車椅子管理(勝谷将史)
リハビリテーション関連学会に行ってみよう!
7.日本小児リハビリテーション医学会(小﨑慶介)
臨床研究
回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中患者のFIM改善を従属変数とした重回帰分析のレビュー:2019年11月からの5年間に掲載された19論文(徳永 誠)
臨床研究
地域生活を送るうえで65歳問題に直面した視覚障害単一障害者の2例(清水朋美 松井孝子・他)
開催案内
投稿規定
バックナンバー
総目次
特集にあたって(渡邉 修)
高次脳機能障害支援者養成に関する研修の概要(深津玲子)
医学的リハビリテーション(渡邉 修)
失語症・コミュニケーション障害(内山量史)
制度活用・地域連携(今橋久美子)
小児への支援(廣瀬綾奈)
新連載 神経・筋疾患治療の最前線
1.筋萎縮性側索硬化症 Amyotrophic Lateral Sclerosis(和泉唯信 大崎裕亮・他)
連載
リハなひと
リハビリ当事者 横山和也さん
巻頭カラー デジタルフロンティア:次世代技術の展望
7.スマートフォンアプリを活用した行動変容支援(萩原悠太)
“こんなときどうする?” リハビリテーション臨床現場のモヤモヤ解決! 令和版
リハビリテーション科専門医取得後のキャリアアップ編(4)臨床と研究をつなぐ大学院進学戦略(百崎 良)
ニューカマー リハ科専門医
古閑丈裕
最新版! 摂食嚥下機能評価―スクリーニングから臨床研究まで
19.Eating Assessment Tool(EAT-10)(青柳陽一郎)
おさえておきたい転倒・転落予防の基本知識と現場での応用
15.転倒・転落予防と地域サポート(上田哲也)
Muscle Health―多職種連携で拓く包括的介入の最前線
3.悪液質: AWGC2023 基準の臨床応用(長野文彦)
知っておきたい! がんサポーティブケア
12.がん患者のアピアランス(外見)ケア(藤間勝子)
支援機器の現在と未来-普及に向けた取り組み
5.入浴支援機器(藤井 智)
回復期リハビリテーション病院・チームでキャリアアップ―私たちの院内研修
7.装具・車椅子管理(勝谷将史)
リハビリテーション関連学会に行ってみよう!
7.日本小児リハビリテーション医学会(小﨑慶介)
臨床研究
回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中患者のFIM改善を従属変数とした重回帰分析のレビュー:2019年11月からの5年間に掲載された19論文(徳永 誠)
臨床研究
地域生活を送るうえで65歳問題に直面した視覚障害単一障害者の2例(清水朋美 松井孝子・他)
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