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まえがき
 本書は,『臨床栄養』に連載されたコラム「現場発! 管理栄養士のための臨床研究Tips」に一部修正を加えて書籍化したもので,日本リハビリテーション栄養学会管理栄養士部会(NST48)のメンバーにより執筆されたものである.
 すでに多くの書籍等で触れられているように,臨床現場の管理栄養士に臨床研究や論文執筆を求める声が高まってきている.たとえば厚生労働省の塩澤信良技官(元・保険局医療課課長補佐)は,「医療現場での先駆的かつ効果的な栄養管理を,現在および将来の患者に対し,制度に下支えされた形で安定的に提供できるようにするには,査読付き論文によるデータが不可欠であり,これをいかにつくっていくかが喫緊の課題ではないかと思われる」と述べられている 1).また,各種認定資格の要件に査読付き雑誌への論文掲載が認められているように,臨床研究と論文執筆は高度専門職の質を担保する物差しでもある 2-4).
 日本リハビリテーション栄養学会では,管理栄養士に対する論文執筆支援を早くから行い,現場の管理栄養士が筆頭著者となり,20編以上の英語論文を含む多数の論文を発表してきた.また,管理栄養士部会のメンバー48名がそれぞれ,質の高い症例報告の執筆ガイドラインであるCAREに準拠した論文を執筆し,書籍『めざせ! リハビリテーション栄養のNST48―CAREガイドラインに基づく症例報告』として発行した.未熟ではあるものの,臨床研究計画の立案・実施・論文執筆までを体験した多くのメンバーが在籍している.一方,このように実際に現場で臨床研究・論文執筆を行ってきた管理栄養士自らが経験談を伝える書籍はほとんどなかった.そこで,臨床研究を実施するための「具体的なコツ」や「陥りやすい失敗パターン」などをわかりやすく解説し,読者の皆様に臨床研究を身近に感じていただきたく本企画を立案した.対象とする読者は臨床研究に興味はあるがまだ実施したことがない方,学会発表は経験済みだが論文執筆は未経験の方などである.すでに臨床研究を数多く実践されている方にとっては当たり前すぎる内容かもしれないが,多くの読者と同じ現場管理栄養士が解説するところに本書の意義があると考えているのでご了承いただきたい.
 内容は,臨床研究を実施する際の流れに沿った構成となっており,また,臨床研究だけでなく症例報告についても触れている.現場で臨床研究を実践する際の参考にしていただけると幸甚である.
 長崎リハビリテーション病院 法人本部教育研修部/栄養管理室 西岡心大

 1)塩澤信良.平成30年度診療報酬改定が意味するもの―管理栄養士に期待される役割と課題.臨床栄養 2018;133:159-66.
 2)日本栄養士会.キャリアアップ.https://www.dietitian.or.jp/career/specialist/(accessed 2023-06-15)
 3)日本病態栄養学会.がん病態栄養専門管理栄養士制度規約.https://www.eiyou.or.jp/certif/cancer/index_new.html(accessed 2023-06-15)
 4)日本臨床栄養代謝学会.臨床栄養代謝専門療法士 認定規程.https://www.jspen.or.jp/qualification/cnm/jsp-14800/(accessed 2023-06-15)
 まえがき(西岡心大)
なぜ現場の管理栄養士が臨床研究を行うことが重要なのか
 (西岡心大)
大事な文献を見逃さない! 文献検索のイロハ
 (嶋津さゆり)
臨床研究の芽を育てる論文の読み方
 (山仁子)
症例報告のススメ
 1 一例報告も英語で論文化できる! 執筆のポイント
  ・症例の選択,CAREガイドライン,Introduction(鈴木達郎)
  ・Case,Discussion,References(横井由梨)
 2 How to査読対応
  ・査読を受ける際の心構えと対応のノウハウ(小蔵要司)
  ・よい査読対応・悪い査読対応(西岡心大)
現場の管理栄養士が実践しやすい研究デザイン
 (熊谷直子)
倫理的ではない研究は実施してはいけない―研究倫理と倫理審査委員会
 (種村陽子)
いまさら聞けない? 研究計画書の書き方の初歩
 (宇野千晴)
後悔しないデータ収集のコツ
 (浦田ちひろ)
統計解析,最低これだけ知っていればOK
 (清水昭雄)
よくわかる論文の構成と書き方
 1 Introduction(一島妃東美)
 2 Methods(西山 愛)
 3 Results(園井みか)
 4 Discussion(酒井友恵)
 5 References,Acknowledgements(ア美幸)
 6 TitleとAbstract(藤井杏奈)
投稿前に見直しを―Editingと英文校正
 (斎野容子)
どの雑誌に投稿する?―投稿先の選択
 (改發明子)
いざ投稿! オンライン投稿のコツ
 (中原さおり)
いずれあなたも査読者に―査読者の心得
 (上島順子)
めでたくアクセプト! 論文掲載後に行うべきこと
 (石田優利亜)

オンライン座談会
 臨床研究経験が臨床をどう変えたか―臨床研究のススメ(若林秀隆・西岡心大・小蔵要司・酒井友恵・橋本(浦田)ちひろ)

 おわりに(若林秀隆)