やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 糖尿病の日常診療や療養指導にあたって,患者にとって身近な食事療法に関する疑問や質問に根拠をもって簡潔に答える,というコンセプトで,“栄養指導・管理のためのスキルアップシリーズvol.2”として,「糖尿病の最新食事療法のなぜに答える 実践編」を2014年7月刊行した.この“vol.2”のコンセプトは,糖尿病の日常診療や療養指導に携わる医療関係者より「実践への迷いを解決できた」「個々の患者に応じたテーラーメイド療養指導へとつながった」と幅広く支持されてきた.
 そしてこのたび,“vol.2”を全面的にアップデートした改訂新版“vol.8”の刊行に至った.
 この4年近くの間に,2015年には世界保健機関(WHO)より糖分摂取に関するガイドラインが示され,2017年には日本糖尿病学会から「カーボカウント」の指導用テキスト,「高齢者糖尿病診療ガイドライン」が公表された.
 いま糖尿病療養には,高齢患者や外国人患者の増加への対処,合併する認知症やがんなどの疾患への配慮,食事時間や食事内容に関わる最新の知見や,コーヒーや清涼飲料水などのし好品と糖尿病の関係についての話題への対応など,日本が抱える社会環境とともに変化が求められている.さらに,患者それぞれに応じた多様な選択肢が求められている.このような背景のもと,本書では,食事療法とともに糖尿病療養の基本である運動療法や薬物療法の種類や効果について今一度見直し,現時点での最新情報を追加した.これらにより,新たなテーマを加え再編し,いっそうの内容の充実を図った.
 また先に“vol.7”として刊行した「糖尿病の最新食事療法のなぜに答える基礎編」との相互活用を念頭に置き,基礎編での「何を食事療法の評価指標とし,どのような指導・管理をすればよいか?」という解説をベースに,実践編ではプラクティカルな患者指導へとつながる,「栄養食事指導のポイントは何か?」とした項により,解説を掘り下げた.患者主体のチーム医療の実践あるいは医療者としてのスキルアップにあたって,基礎編と実践編をあわせての活用により,療養指導で奮闘される方々に役立つものと期待していただきたい.
 幸いにも,糖尿病診療の第一線の医師,各領域で高い専門性をもつ療養指導士の諸先生により,ご多忙ななかでの執筆が叶い,本書の刊行に至った.ここに改めて,深甚の謝意を表する次第である.
 最後に,刊行まで多くの協力をいただいた医歯薬出版編集部の各位に心より御礼申し上げたい.
 2018年 新緑の芽吹きを感じながら
 編者を代表して 本田佳子
 序文
食事療法の実際と最新の話題
 Q-1 境界型の場合,食事療法によって,正常な状態に戻るのでしょうか?(黒瀬 健)
 Q-2 3食の配分を均等にすることや,食事時間を規則正しくすることが,なぜ重要なのですか?現実の生活ではむずかしいのですが,どのようにしたらよいのでしょうか?(今井佐恵子)
 Q-3 働き盛りの元気な患者に,適正なエネルギー摂取など食事療法の実践について,どのように指導していくべきでしょうか?(戸田明代,山本育子)
 Q-4 幼児期・学童期の1型糖尿病への食事療法の指導は,どのように進めたらよいのでしょうか?(山本育子,戸田明代)
 Q-5 70・80歳代発症の糖尿病患者と糖尿病患者が高齢になったのとでは,食事療法は異なるのでしょうか?(荒木 厚)
 Q-6 カーボカウントの活用にあたっては,どのような点に注意して糖質を設定し,カウントするのでしょうか?また,どのくらい効果があるのでしょうか?(佐野喜子)
 Q-7 WHOの新しいガイドラインでは,1日あたりの糖分を全エネルギー量の5%未満とすることが推奨されています.この意味をどうとらえ,これからの食事療法にどのように活かしていけばよいでしょうか?(本田佳子)
栄養食事指導のコツ
 Q-8 病識もなく食事療法もしない患者を,どのように指導していったら,うまくいくのでしょうか?(小野百合)
 Q-9 糖尿病の栄養指導では,カウンセリング技法とカウンセリング理論をどのように活用すればよいのでしょうか?(金内則子)
 Q-10 栄養指導の導入のタイミング,初期指導と継続指導のポイントは?(土江節子,木亜里紗)
 Q-11 糖尿病患者が陥りやすい民間療法・健康食品の多用への指導・管理はどうしたらよいのでしょうか?(佐久間未季,小野百合)
 Q-12 外食・宅配食の利用を希望する患者への指導・管理は,どのように行うのでしょうか?(塚田芳枝)
し好への対応
 Q-13 アルコールは飲んでもよいのでしょうか?どのくらいの量で,どのような飲み方なら許容範囲でしょうか?(岸谷 讓)
 Q-14 たばこはなぜいけないのですか?やめようとしない患者への指導はどうしたらよいのでしょうか?(中村正和)
 Q-15 果物や菓子が我慢できない患者のし好や満足感に対応する方法を教えてください.(穴倉弘枝)
 Q-16 清涼飲料水は飲んでもよいのでしょうか?健康によいと思って大量に飲んでいる患者への指導はどうしたらよいのでしょうか?(榎本真理)
 Q-17 コーヒーを飲むと糖尿病発症のリスクが下がるというのは本当ですか?糖尿病患者では,コーヒーをどのように飲むのがよいのでしょうか?(森田智子)
運動療法への理解
 Q-18 糖尿病患者にはどんな運動療法が適しているのでしょうか?種目,強度,時間などを具体的に教えてください.(井垣 誠)
 Q-19 運動はどのような効果があるのでしょうか?食事療法との併用はどのように指導するのがよいのでしょうか?(本田寛人)
薬物療法などへの対応
 Q-20 薬物療法が始まった患者に,食事療法の内容変更は必要でしょうか?また,薬物の種類により考慮すべきことはありますか?(菅野宙子)
 Q-21 インスリン療法が始まった患者に,食事療法の内容変更は必要でしょうか?インスリン療法の特性と食事療法との関係を教えてください.(佐藤麻子)
 Q-22 シックデイでの食事療法はどのようにしたらよいのでしょうか?薬物療法中の患者への対応はどのようにしたらよいのでしょうか?(山下滋雄)
合併する疾患への対応
 Q-23 軽度認知機能低下および認知症を合併した糖尿病患者への栄養食事指導のポイントを教えてください.(伊藤眞一)
 Q-24 統合失調症を有する糖尿病患者への栄養食事指導はどのように考えたらよいのでしょうか?(寒河江豊昭)
 Q-25 がんを合併した糖尿病患者へはどのような配慮が必要でしょうか?栄養食事指導のポイントを教えてください.(大橋 健)
 Q-26 脳卒中後遺症のある糖尿病患者へはどのような配慮が必要でしょうか?栄養食事指導のポイントを教えてください.(生魚 薫)
 Q-27 高度視覚障害を合併した糖尿病患者へはどのような配慮が必要でしょうか?栄養食事指導のポイントを教えてください.(山田幸男,岩原由美子)
療養指導力のスキルアップ
 Q-28 どうしたら栄養食事指導のスキルアップができるでしょうか?そのトレーニング方法があれば教えてください.(岸本美也子)
 Q-29 バイキング体験,調理実習の上手な指導方法を教えてください.また,それを行うことが,患者指導になぜ有効なのでしょうか?(安原みずほ)
 Q-30 外国人糖尿病患者への食事指導では,どのような点に注意すればよいでしょうか?(土井悦子)

 索引